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2009年02月08日
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カテゴリ: カテゴリ未分類



眠いです(笑)



どぞ!!!





「おはようございます、はやお嬢様。」



「あ、うん。オハヨ。」



あの公園での出来事から、もう2週間が経とうとしていた。

執爺は変わらない。


変わったのはあたしだけ。





サックスの練習も部活だでやってるし、休日はあれをきっかけに公園で練習するようになった。

たまに宮沢くん兄弟と会うので、一緒に遊んだりしながら。





すごい。

ちょっと前までこんな風景考えられなかった。

執爺のお陰なのにな・・・・。


爺との会話は極端に減った。
当然だ。
あたしが避けてるから・・・。

幸いもうすぐコンクールなので、それに打ち込むってゆー後付けができる。


けど。



このままじゃ嫌だ・・・。



執爺はいつだって、変わらぬ笑みであたしを迎え入れてくれてるのに。





「爺。」


「何でございますか?」


「明日、コンクールなんだ。」


「はい。存じております。」







「行ってもよろしいのですか?」



「もっちろん!」



「ありがとうございます。
では、喜んでお伺い致します。奏太様もお誘いしてみますね。」


「うんっ。」



よしっ。

頑張った。



「はやお嬢様。」


「・・・ん?」


「頑張って下さい。
心より応援しております。」


「・・・・ありがと。」


ちょっと泣きそうになりながら、あたしは自分の部屋に姿を消した。



**********************

「中島さん!」



「あ、宮沢くん!
来てくれたんだ~。」

「おう、ヤスもな。」

「おねぇちゃん、ガンバってね!」


「ふふっ、ありがと~♪」


「私もいるんだけど?」

と、後ろ側から軽やかな声。



「・・・めい!
めいも来てくれたの!?」


「あのねぇ・・・。
そりゃ来るっしょ。大事な友達の晴れ舞台だよ。。・・・てか。」


小声であたしに囁いた。

「宮沢くんといつの間にこんな仲になったのよっあんたっ!!」


「あーーいやまぁ偶然が重なり・・・ちょっと。」

「じゃ、またね中島さん。」

「あ、うん、ありがとね!!」


と、去って行く宮沢くんを見送る。



「ったく、コンクールとは言えあんたは最近付き合い悪くなるし、執事様は見せてくれないし。」

「・・・見~せるって、見せ物じゃないわよ。
それにいつもタイミング悪かっただけで・・・!!」

「わかったわかった!
とにかく、今は成功するようにだけ、祈ってる。頑張ってね!」


「・・・・・めい。
・・・ありがとう。」


あたしはめいに抱きついた。
めいはとても素敵な友達だと、再確認。

「じゃね!アデュー!!」


めいの後ろ姿を見送りながら、あたしは客席をキョロキョロしてみた。

まだ執爺の姿は見えない。



・・・・・来るよね。

**********************


コンクールが始まり、次はあたしたちの番になった。


あれから客席を見てないから、執爺が来てるかどうかわからない。


・・・もしかしたら、あたし嫌われちゃったのかな・・・。
あんだけ感じ悪い態度取ってたから無理ないよね・・・。


でも。

今はとにかく、最高の演奏が出来るよう、集中しなきゃ。




「続きまして、8番、坂之上高校の演奏です。」



アナウンスに続き、あたしたちは舞台の定位置に着いた。


最初の集中力が物を言う。


あたしの目に映るのは、サックスと譜面だけ。




曲が始まった。




あたしは無我夢中で譜面を追う。

譜面以外は目に入らない。
入れたくなかった。





だけど。



偶然目の端に映ってしまった。



漆黒のスーツに、眼鏡をかけた、あたしの執事を。



テンションが一気に上がる。



それからのことはほとんど覚えてない。



ただ、帰宅したあたしを、執爺が満面の笑みと花束で出迎えてくれたことを除いては。



そうか。


あたしは、執爺が


この名前のわからない36歳が大好きなんだ。


恋かも知れない。


似てるけど違うかも知れない。


初めて覚えたこの感情に、ようやくあたしは向き合うことができたんだ。


**********************

「ねぇちゃん。」


「んーーー?」



「来週で母さん帰ってくんじゃん、だからさ、執爺のお別れ会、しない?」


「・・・・あ、そっか。」



そうだ、執爺、もうすぐいなくなっちゃうんだった・・・。

いつまでもいるような感覚だったから。



コンクール以来、あたしと執爺はまた元の仲良しに戻っていた。


たまに公園に散歩にも行った。


宮沢くんは大会が近くなったので部活に集中してるみたい。

となるとあたしの出番も出てくるってワケで。

執爺に練習に付き合ってもらったりした。



**********************

「はや様、日も暮れて参りました、そろそろ帰りましょう。
奏太様もお帰りになられているかも知れません。」


「・・・うん、そだね。」



あたしたちは家に向かって歩き出す。

いつもは色々話を聞いてもらうのだけど、もうすぐお別れってことが頭に引っかかって言葉が出てこない。


・・・・・執爺。




間もなく、家が見えて来た。
もう明かりが付いている。


「そーた、もう帰ってるみたいだね。」

「そのようですね。」


鍵を開け、玄関に入る。


「ただいまーーー。」



「おっかえり~~~♪」


予想した声と違う声が返って来たので、びっくりして振り返る。



「・・・・・お母さん!!なんで?帰ってくるの来週じゃ・・・。」


「うふっ早めに切り上げちゃった。
やっぱりあなたたちのことが心配になってねぇ。」


「よっく言うよ今更。
あたしたちなら心配無いって。」


「まぁ、そうかも知れないけど。
ありがとうねはや、奏太の面倒。
ふふっ、あんたったら、洗濯物のたたみ方、いつの間にみっちゃんのがうつったのかしら。」

「え?
ああ、執爺だよ。
もーーお母さん水くさいなぁ。言ってよね~。
そのために執爺を呼んだんでしょ。」



あたしの発言に、お母さんがきょとんとする。


「・・・しつじぃ??
なぁにそれ??」


「はは、お母さ~ん、もうバレてるから。
ごまかさなくていいんだよ。」


「・・・はや、あたし本当に知らないわよ?」


「・・・・え・・・?」


お母さんの顔はとても嘘を付いてるとは思えない。



じゃあ・・・・


じゃあ・・・・・・・



執爺は・・・・・何者?

どっから来たの・・・・・?



急いで後ろを振り返る。


けど、人の気配はこれっぽっちもない。



「・・・・・執爺?」




「はや、お母さんさっぱりなんだけど。何かあったの?」



「・・・・執爺って、人が・・・・・」



わけがわからなくなって、あたしは立ち尽くした。



「しつじぃ?
その人がどうかしたの?」



「あた・・・あたしたちのお世話をしてくれたんだよ!
ご飯作ってくれたり洗濯してくれたり、雨の日は迎えに来てくれたりコンクール見に来てくれたり一緒にサックス吹いてくれたり!」


「・・・・サックス?」


お母さんの目が開く。


「・・・そう。
トロイメライ吹いてくれた。お父さんみたいだった。」



「・・・みたいだったんじゃなくて、そうだったんじゃないの?」



「・・・え?
どう言うこと・・・?」


「・・・・トロイメライ吹いてって言ったら、あんたの知ってるトロイメライを吹いてくれたんでしょ?」


「・・・・?
うん・・・・。」



お母さんが優しく微笑む。


「あんたが聞いていたお父さんのトロイメライは、昔、お父さんが題名を間違えて覚えた、本当はモーツァルトの“子守歌”って曲なのよ・・・。」



「・・・・・うそ。」



・・・・・じゃあ・・・・トロイメライと言われてその曲を弾けるってことは・・・・



「みっちゃん以外に誰もいないわ・・・・。」



お母さんは



泣きながら



洗濯物を愛おしそうに眺めた。




あたしは外に飛び出した。





「・・・・爺・・・・。
しつじぃ・・・・しつじぃ!!!!」



夢中で叫ぶ。

周りの人がびっくりしてこっちを見るけど、構わなかった。




「しつじぃ・・・・お父さん!!!お父さんお願い!!!!」



お願い。


もう一度姿を見せて。



お父さん。





「そんなに叫ばれてはご近所にご迷惑ですよ。」



柔らかい声がした。



涙でぐちゃぐちゃになった顔で振り向く。

そこには。


お父さんがいた。



「はや。」



嗚咽が邪魔して何も言葉が出ない。


たくさんたくさん言いたいことがあるのに。


せっかく会いにきてくれたのに。


あたしに。




「ははは、小ちゃい頃と変わんない泣き顔だなぁ、はや。
眼鏡と七三わけを加えただけで変装になるもんなんだな。」



「・・・・・・っ。」




「泣くな泣くな。
父さんはお前を泣かしにきたわけじゃないんだ。」



そう言って、頭をポンポン叩いた。



「ずっとな、お前のことが気がかりで、トロイメライを吹いてたから、上に行けなくてな。

だから少しの間でもお前たちのそばにいて、何でもしてやりたかった。」



・・・・・だから、あたしはちゃんと眠れてたんだね。

あたしの知らないところで、ずっと、そばにいてくれたんだね。




「・・・・あた、あたしね、お父さん、お父さんじゃなかったら、好きになってたよ、絶対。」


やっと、絞り出した。



「ははっ、そりゃ当然だ。父さんだってはやが娘じゃなかったらぞっこんだったぞ。
でも、宮沢って奴も、なかなかじゃないか。」


「・・・・宮沢くん?」


「ああ。
父さんの若い頃に似てる。」



その言葉に、あたしは笑った。



「よしよし。
はやのとびきりの笑顔が見れたし、そろそろ行かなきゃな。」


「・・・・!!
もう会えないの・・・・?」


「姿はな。
でも、父さんはいつでもお前たちの心の中にいる。」



お父さんの体が光に包まれた。



「・・・・お父さぁんっ!!!!」



「辛くなったら思い出してごらん。
父さんはいつでも、はやたちの味方だからな。」



「・・・・・お父さん、ありがとう、大好きだよ!!!!」





あたしの言葉を胸に、お父さんの魂は天へ昇って行った。



・・・・・お父さん。
あたしが覚えてなくても、お父さんはあたしにちゃんと愛をくれてた。




あたし、忘れない。


あたしに吹いてくれたトロイメライ、執爺になってあたしに会いに来てくれたお父さん、そして




心の中にいつでもいることを。





ーーーー終わりーーーー





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Last updated  2009年02月09日 01時02分35秒 コメントを書く


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