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ふと、思い出したのですが、歌のレッスンの先生クリスの家に行く途中に車で森を抜けます。

この森は近くにイギリス海軍の基地のある関係で、兵士の方の演習にも良く使われているのですが……。

別に一般人の足の踏み入れが禁止されているわけでもなく、

時間つぶしに車をおりて散歩していると、行軍してくる迷彩服の兵士の方が一杯。

皆さん、私の顔を見ると愛想よく、手を振ってくれます。

その森で10月に日本に出発する前にギニーピッグを見かけました。

ギニーピッグ、多分日本語でモルモットでないかと思うのですが、

大きさは体長20cmぐらい、幅10cmぐらい、一見大きいねずみと言う感じでした。

でもとっても愛らしくて藪を出たり、入ったりして、一生懸命餌を探している様子で、全く私たちに気がついていません。

「ねえ、見て、見て。あそこに何かいる。あれ何?」

と最初に気がついたのは私。

「ギニーピッグ、だ!へ~え珍しい。」

と一緒に居たイギリス紳士。

「ギニーピッグ?イギリスに野生にいるの?」

「いや、ペットとして飼われていたものか、それとも実験動物だったのか。

誰かがここだったら生きていけると思って放したのかな。」

彼の様子、藪をちょこまかと出たり入ったり、何かを必死に探しているようで

私達の様子など全くお構いなし。

人生が楽しくてたまらない、することが一杯という様子。

「これからの寒い冬にここで生きられるの?」

「さあ、分からない、気温しだいかな。」

「ねえ、捕まえて。お願いだから。

冬の間飼って、暖かくなってからここに連れて来て放せばいいでしょう。」

とすぐに日本に帰る予定だったのに、非常に無責任な事を言っている私。

女性にとっても優しいイギリス紳士、女性がこういって頼めば否やを言うはずもなく、

早速捕獲にかかってくれました。

ところが彼または彼女はこっちの思惑は全く考慮の余地なし……。

さしのべた手をうっとおしい、余計なお世話、

と藪の下、人間の手の届かないところにさっさと逃げ込んでしまいました。

そうかと思うとまたはるか先から出てきて、先ほどの探索作業を楽しそうに続けています。

さしてあわてて人間から逃げる様子も見えないのですが……。

過去確かに人間に飼われていたのかも……とも考えさせられるような……。

「今日は何も用意を持っていなし、素手で噛まれたら危険だし。

獣医とも相談して良いようにしておくから、心配しないで。」

「本当に。お願いね。」

と私。

そのまま日本に帰国し、あまりの忙しさに彼のことは忘れていたのですが……。

この間、再びレッスンに行くためにその森を抜けた時に彼のことを思い出しました。

「ねえ、この間のギニーピッグあれからどうなったかしら?」

「獣医に聞いたところでは、

この寒さであれば何とか戸外で生き延びるだろう、って言っていたよ。

(今年はイギリスも暖冬です、全然そうは思えませんが……)」

「本当に?じゃ、まだこの森のどこかに生きているのかしら?」

「狐にさえ捕まらなければ多分大丈夫、って言ってたよ。」

イギリスにはまだ一杯、森には狐が棲んでいるのです。

時折一緒に歩いていると、狐のいるにおいがする、

と彼らは言うのですが、私には全く分かりません。

それどころか、ほら、今、あそこを駆け抜けたよ、と教えてくれるのですが、

ど近目の私、それにのろまと来ているので、まだ狐の姿をこの目で捉えられていません。

それはともかくとして、その獣医の方の言葉を信じて、

冬を生き延びてくれるであろうことを期待して

特に捕獲のためのわなも仕掛けなかった、ということでした。

もちろんその後、彼も何度かその森に来たのですが彼の姿は見かけなかったと……。

果たして、その森を今もギニーピッグの彼がちょこまかと楽しそうに動き回っているのか、

それとももう生を終えてしまったのか、私達が知る術はありません。

彼の前半生がいかなものだったのか、檻ぐらし、だったのか、

それゆえにあんなに楽しそうに生を謳歌していたのか、

それも私達は知ることはありません。

本来野生にいるはずのない彼が一匹で生き延びることができるのかどうか……

考えすぎ、と分かっているのです、が……。

保護しようという人間の手を振り切って藪の中に消えて行った彼、

もちろん単なる動物の本能なのでしょうが、

太く短くも自由に生きることを選んだような……。

檻に囚われて長く生きるよりも自分の生を燃焼させる事を選んだような、

宿命、それとも潔さよさ?を感じているのですが。

私の思い過ごしかな……。

きっと考えすぎでしょう、自分の思いを投影しすぎている、と思います。

でもこれからも歌のレッスンに行く度に、そしてその森を抜けるたびに

彼の事が私達の会話に上ることでしょう。

その広い森のどこかで彼が生きていることを願いながら……。






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最終更新日  2007年02月25日 07時15分59秒 コメントを書く
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