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カテゴリ: This is my story

今も絶えず思います……。

どうして母の病状があのような比較的珍しい経過をたどったのか、と。

直腸がん、が肺に転移すること……

それはないことでないにしてもそれほどに一般的な経過ではなかった筈なのです。

人工肛門をつけ、何年もあるいは何十年も元気に過ごされる方もいますし、

当時の主治医の方が気にされていたように

肝臓への転移の方がはるかに一般的でしたでしょうに。

今、自分がその末席を汚す身となって、

典型的でないがゆえに診断は難しかった事だろう、と思います。

でもやっぱり疑って欲しかった、とも思います。

ただ後にお話する母の若かりし日の恋人の思いがけない登場など

何か母の人生がものすごい勢いで収束へと向かっている、

という感じは私の中に当時強くありました。

ですからあれは医療の力はるかに及ばない母の定めだったのかもしれません。

後に医師になって間もない頃……

私は一人の肺がんの女性の方の主治医をしておりました。

その方がある日、母と非常に似たことを口にされました。

その方は視力の異常ではなく、歩行時に体が一方向に偏っていってしまうと

口にされました。

これと似たことが母の訴えの中にあったこと、

私の記憶には鮮明に刻み付けられていました。

非常に元気でしゃきしゃきと歩かれていらっしゃいましたが、もしかしたら……。

気になった私は頭部のMRIを依頼しました。

しかし、結果は……異常は認められない、というものでした。

にもかかわらず、その後も彼女の訴えは続き、

検査で異常がなかったということで自信なさげでしたが

やはり症状は変らず続いているとの事でした。

どうしても母のことが頭から離れない私は見過ごしにできず、悩んだ末に

放射線科の方のもとを前回のフイルムを携えて伺い、

それぞれのスライスの間を撮影してくれるようにと依頼しました。

頭部のMRIは当時勤めていた病院で大体1cmの間隔で撮影されていました。

つまり1cm未満の大きさの癌であれば

スライス間に隠れてしまうことが予想されたのです。

もしかしたらその可能性があるかもしれない、母が訴えたのと同じ強さを彼女にも感じ、

彼女を信じ、再検査MRI、を決意しました。

前回のMRIから日も経っていず、保険請求上の問題も……

と渋る放射線科に未熟な研修医が必死にお願いして上がってきた写真は……

今度はまごうかたなく、非常に小さい頭部への転移をとらえておりました。

その写真を見て……

仕事中にもかかわらず、ただ涙だけで……。

あのときの母のあれほどの強い訴えを

あのときのドクターが耳を貸してくれていたならば……。

母の運命も、父の運命も、私の運命も、もっと違ったものになっていたかもしれない……。

でももう時は遅く、母は泉下に……。

父もまた後追うように……。

あなたの事があったから、あなたの苦しみがあったから

あなたの娘は医師になり、

あなたとの経験から一人の患者の方の命を救うことができたのだと

いえ、少なくとも一人の方の命をわずかでも延ばすことができたのだと

いつか私があの世で語ることができたら……

母は喜んでくれるのでしょうか、少しは誇らしく思ってくれるでしょうか。

それとも私は助けてくれなかったのに……

と口を尖らせるのでしょうか。

                     次は話は医師になる前のことに戻します……。






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最終更新日  2007年05月18日 05時55分47秒
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Re:両親のこと4(05/17)  
♪ranchan♪  さん
経験とかやはり積み重ねた結果はいつかどこかで誰かのお役に立てる物ですね。その方のご家族がロビンスさんに感謝された事は間違いないと思います。

余談ですが私は「何でも自分に返って来るもの」だと思ってます。
いい事も悪い事も......
やはり行き着く所は「自分がどうありたいか」でしょうか。 (2007年05月18日 11時22分28秒)

Re:両親のこと4(05/17)  
hanaemibibi  さん
その肺がんの女性、一生懸命診てくれた研修医のこと、忘れないと思います。
1度目のMRIの結果ではなく苦しい自分の訴えを聞いてくれたこと、たとえ亡くなったとしても忘れないと思います。

昨年救急で診ていただいたとき、何もいえない私の手を握って一緒に泣いてくださった、小児科の先生と婦長さんのこと、私も一生、死んでも忘れないですから。 (2007年05月18日 15時11分22秒)

Re[1]:両親のこと4(05/17)  
robbins  さん
♪ranchan♪さん
>経験とかやはり積み重ねた結果はいつかどこかで誰かのお役に立てる物ですね。その方のご家族がロビンスさんに感謝された事は間違いないと思います。
本当に本よりも何よりも経験の持つすごさをしみじみと感じた出来事でした。
私の診断が間違っていなかったことはうれしかったですが(本当に経験の長い偉い方々を向こうに回して自分の主張を貫き通したので)、でもやっぱり一番助けたかったのは……。それを思うと本当にやりきれない気持ちでした。

>余談ですが私は「何でも自分に返って来るもの」だと思ってます。
>いい事も悪い事も......
>やはり行き着く所は「自分がどうありたいか」でしょうか。
やっぱり人生に嘘はつけないと、いくら自分を偽っても最後には帰ってくるのだと思います。
省みて自らに恥じることなく生きたいと思います。 (2007年05月19日 07時38分06秒)

Re[1]:両親のこと4(05/17)  
robbins  さん
hanaemibibiさん
>その肺がんの女性、一生懸命診てくれた研修医のこと、忘れないと思います。
私もその方のことはきっと一生忘れないと思います。
多分もうなくなられていると思います。

>1度目のMRIの結果ではなく苦しい自分の訴えを聞いてくれたこと、たとえ亡くなったとしても忘れないと思います。
多分ははのことがなければ、そしてあれほどに似た訴えでなければ私も無視したと思います。診断技量と言うことでないのです。

>昨年救急で診ていただいたとき、何もいえない私の手を握って一緒に泣いてくださった、小児科の先生と婦長さんのこと、私も一生、死んでも忘れないですから。
医療人も結局は人間なのです。人の不幸は人の不幸と割り切ってしまえる人間はそんなに多くないのです。やっぱり、一緒に手をとって泣きたいし、自分のふがいのなさに情けない思いをすることも数多くあるのです。でも人間のふれあいがどうにもならない過酷な運命の中でも人の心を救うことがあると、私は信じたいと思います。 (2007年05月19日 07時43分30秒)

Re:両親のこと4(05/17)  
柴ママ  さん
一生懸命読んでいます。きっと貴女はず~っと蟠りを抱えて来て、何処かで吐露する必要があったのだと感じていました。きっと誰かが貴女の気持ちを察してあげて、気を楽にしてあげて欲しかったと思っています。

本当に私ごときですけれど、貴女は出来る事を精一杯やった。間違っては無かった。例え行き違いがあったとしても、それぞれがそれぞれ、お母様を思いやっての結果なのだから必ず和解出来ただろうと思うこと。
そして、例えばその時貴女の希望が叶えられたとしても、お母様の命が延命されたとは必ずしも言えない事。新たな病状に悩まされたかも知れない・・・などなど。
義父も大腸がんでした。逝くまで何日も夜も昼も傍に付いていました。少しは解る気が致します。

だから、その時の必死な思いは十分お母様に伝わっていたし、なにより素晴らしい娘であった事は間違いと思います。

今はもっとソコから進んで患者様を心からケアして下さる立派な心と知識をもったお医者様になられたんですから、誇りに思わない訳がありませんよ。

私はそう思います。的外れでしたらごめんなさいね。 (2007年05月19日 08時14分28秒)

Re[1]:両親のこと4(05/17)  
robbins  さん
柴ママさん
人生に何が正しく何が間違っていたなんて、とってもいえないことだと思います。
絶対に後悔は残したくないと必死に色々しましたが、必死なあまりに、いろいろの人を傷つけてしまったことも事実です。
自分を省みずに、人のせいにして逃げようとしているのかもしれません。

人が、誰が、というよりも人生そのものに納得がいかないところでしょうか。
でも誰もがそんな心の漣を抱えて生きていかなければならないのだと思います。 (2007年05月22日 16時25分37秒)

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