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左手には東大グラウンドの広がりがあり、フェンス越しの空は思いのほか大きい。そこを過ぎると、道はゆるやかに下り始める。この坂道には名前があるのだろうか、とふと考える。だが答えを探すほどの熱心さはなく、その疑問は胸の奥に小さくしまわれる。考えるよりも先に、足は今日も同じ調子で前へ前へと運ばれていく。
坂の途中には、見慣れた建物たちが肩を並べている。
控えめに白い看板を灯す歯医者、地域の空気を溜め込んだ町内会館、古い木材の匂いが外まで滲み出してくる南海堂。そして、その先に福太郎。どれもそこに立ち続けてきた顔ぶれだ。変わらないようでいて、よく見ると外壁が新しくなっていたり、看板の文字が少し洗練されていたりする。時間は確実に流れているのに、その変化はいつも控えめで、気づいたときにはすでに過去になっている。
この道を歩くたび、私は建物たちが何かを語りかけてくるのを感じる。
歯医者の前では、順番を待つ人々の張りつめた沈黙が、町内会館の前では、かつての集会のざわめきや拍手の残響が、南海堂の前では、ページをめくる乾いた音や鉛筆の先が紙を走る気配が、遠い記憶の底から浮かび上がってくる。建物たちは多くを語らない。ただ黙って立ち、時代の移ろいと人の営みを、その壁と床に静かに刻み込んできた。そして私たちもまた、気づかぬうちにその記憶の一部として、ここに重ねられていくのだろう。
瑞穂橋に差しかかり、欄干に手をかけて振り返る。
歩いてきた坂道と、その両脇に並ぶ建物たちが、夕陽を受けてゆっくりと色を変え始めていた。古いものも新しいものも区別なく、同じ光に包まれ、同じ時間の中に佇んでいる。その光景をしばらく眺めてから、私は再び前を向く。坂の先に続く道もまた、何事もなかったかのように、静かに私を待っていた。
(文:Claudeによる)
東大グランドから瑞穂橋までの間(写真1+Artguru)
東大グランドから瑞穂橋までの間(写真2+fotor)
東大グランドから瑞穂橋までの間(写真3+fotor)
東大グランドから瑞穂橋までの間(写真4+fotor)
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