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光は八月のそれほどまぶしくない。けれど弱くなったわけではなく、ただ少しだけ遠慮を覚えたのだと思う。川面に落ちた光は細かな銀の鱗になり、風が吹くたび、魚の群れのように一斉に向きを変えた。
土手の草は、緑の盛りを過ぎていた。ところどころに褐色の穂が立ち、名も知らない小さな花が、誰に見られるでもなく咲いている。蝉の声はもうなく、代わりに、草むらの奥から虫の音がかすかに聞こえた。耳を澄まさなければ気づかないほどの音だったが、それは夏が消えたあとに残る、季節の骨のようだった。
生甘酒こうじくん。そう書かれたラベルの文字は、どこか人の名前のようで、見るたびに少し笑ってしまう。けれど蓋を開ければ、笑いなどすぐにほどけてしまう。米と糀のやわらかな香りが、空気の中に白くひろがるからだ。
土手の上を、自転車が一台通り過ぎた。荷台には、糀弁当のプクプクが積まれていた。蓋の丸みを帯びた弁当箱は、光を受けて、まるで小さな月のように見えた。プクプクという名前は、ふしぎに弁当の姿に似合っている。昼になって蓋を開けると、弁当はひとつの風景になる。私は花見川のそばのベンチに腰を下ろし、プクプクを食べた。
ひと口ごとに、身体の中へ小さな秋が入ってくる。夏の疲れでざらついていたところが、少しずつ丸くなっていく。川は相変わらず流れていた。上流から何かを運び、下流へ何かを手放しながら、どこにも立ち止まらずにいる。その姿を見ていると、自分もまた、過ぎた日々を完全に捨てる必要はないのだと思えた。
思い出は、流れていくものではなく、流れながら形を変えるものなのだろう。
(文:Manusによる)
9月の花見川と生甘酒こうじくん(写真1+Google)
9月の花見川と生甘酒こうじくん(写真2+Google)
9月の花見川と生甘酒こうじくん(写真1〜5) コラージュ
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