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海浜幕張駅の南口では、人々がそれぞれの行き先へ流れていく。遠くから、潮の匂いが届く。海は見えない。それでもこの街では、ときどき風のほうが先に、海のことを思い出す。
駅前のベンチに男が座っていた。膝の上には、角の擦れた紙袋。誰かを待っているようにも、ただ時間をやり過ごしているようにも見えた。
スマートフォンの画面は、何度見ても同じ時刻を示している。約束の時間まで、あと三分。たった三分が、こんなにも長いものだったかと、男は思った。
人波のなかに、見覚えのあるコートがあった。十年前より少し明るい色で、肩のあたりがわずかに細くなっている。彼女は男を見つけると、驚いたように立ち止まり、それから、笑うともためらうともつかない顔をした。
「久しぶり」
その言葉のあとには、言わなかったことがいくつも続いていた。元気だったか。あのとき、どうして。今でも覚えている。けれど、駅前を行き交う人たちは、ふたりの沈黙など知らずに通り過ぎていく。
(文:Manusによる)
海浜幕張駅 南口、2026年10月(写真1+Google)
海浜幕張駅 南口、2026年10月(写真1+Google)
海浜幕張駅 南口、2026年10月(写真2+Google)
海浜幕張駅 南口、2026年10月(写真2+Google)
海浜幕張駅 南口、2026年10月(写真1〜2) コラージュ
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