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2006年05月01日
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カテゴリ: 思想・哲学・宗教
日本人のためのイスラム原論

 中東は、日本人の生活にとっては、”石油”という意味において、本当に切っても切れない大切な地域。しかし、その地域の中心規範ともいうべき、イスラム教は本当に恐ろしいほど程遠いのではないだろうか?世界三大宗教(仏教・キリスト教・イスラム教)の中で今でもものすごいスピードで世界中で信者を増やしている宗教にも関わらず、マホメットが創始した唯一神アッラーを崇拝し、1日に5回の聖地メッカに礼拝することや、断食があることなど、そういった程度しか知られていないのではないだろうか?自分は正直そのレベルでしかない。しかし、宗教としての世界レベルでの影響力や日本人の生活から考えると、そのイスラム教の考え方を知ることは必要だと思い、碩学の小室直樹先生のこの書を読んだ。

 不思議なことだが、世界中で今だ信者を確実に増やし続けているイスラム教が、日本では全然受け入れられていない。三大宗教のうちの2つ、仏教とキリスト教は受け入れたにも関わらず、イスラム教は、ほとんど受け入れられていないといってもいい。

 その理由を小室先生は、世界三大宗教の中でイスラム教だけが、人間の外面的行動への命令=”規範”を持っている。外面的行動とは、1日5回の定時の礼拝(いつでもいいわけではない)や、進行を絶えず口に出さなければならないこと、貧しい人への喜捨(方法も定められているや、断食や聖地への巡礼など、それぞれが方法も定められていて、例外もあるのだがその例外も明確に規定され、日本にありがちなグレーゾーンがないようになっているということだ。

 そして断食や巡礼といった全ムスリムの義務が、民族や貧富の違いを乗り越え、イスラム教徒としての連帯を生む。コーランをはじめとするイスラム法によって外面的行動が明快に規定されることが、イスラムの宗教の法が社会の法となる。

 一方のキリスト教は規範はないといっていい。なぜなら基本的に「信仰のみ」であり、心構えを説いたものであるからだということだ。唯一神を信じる宗教として、ユダヤ教があるが、ユダヤ教は、規範のある宗教で、キリスト教はそのユダヤ教という土壌の中から、規範を否定することでその教えが完成されたと説く。いわゆる「信じるものは救われる」という言葉に表されるように

 小室先生は、日本においてなぜ仏教やキリスト教が広がったように広がらなかったのかを、この”規範”に求める。日本人は規範が嫌いゆえに、規範にうるさいイスラム教は受け入れられなかったと説く。仏教も、いつのまにか念仏を唱えさえすればいいという形になっていったように、日本人は、規範性が強い宗教が好きでないことが、仏教を例に挙げて説明される。

 この書を通して思ったことは、自分自身の考え方が、本当に欧米中心史観的なものになっていることに気づく。考えてみれば、世界史を習うといっても、基本的には中国とキリスト教世界の西洋(欧米)が中心で、中東のイスラム世界は、西洋と比べるとある意味付属的なものだといってもいいレベルだと思う。ただ、実際に西ローマ帝国滅亡後のギリシャローマの文化遺産や歴史を受け継いだのは、イスラム世界であり、世界三大発明もアジアやイスラム世界からのものであったように、またこの書にも掲載されたエピソードに、フランスのブルボン朝絶頂期のルイ14世が造らせたベルサイユ宮殿が完成したときに、オスマントルコの大使が招かれて、案内されたときに、たったこれだけの広さなんですかということだった。

 イスラム世界にとっては、もともとは自分たちのほうが、西洋世界よりも富を持っていたし、文化や技術についても、ギリシャローマを継承し、発展させて、西洋に里帰りさせた意識があったわけだが、それが十字軍という形で攻め込まれ、足掛け3世紀にわたる戦いがなされた。イスラム世界はモンゴルによって征服されるのだが、その地域を支配したモンゴル人は、その後イスラム教に改宗し、宗教としてはイスラム教の軍門に下ったが、キリスト教徒である西洋人はそうならなかったところに、イスラム世界の「十字軍コンプレックス」が残り、そのコンプレックスが今の国際情勢の不安を生み出していることを説く。日本人の多くが、アメリカンフィルターや、世界史で習う形で身に着けてしまう西洋フィルターにより、判断しづらくなっていることが良く分かった。

 少しイスラム教のことが分かった気がするとともに、やはり今のアメリカと中東の関係の難しさを改めて認識させられる1冊だった。


日本人のためのイスラム原論
著:小室直樹 発行所:集英社インターナショナル
2002年4月22日第2刷発行 1,600円+税





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最終更新日  2006年05月01日 23時10分57秒
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