新年早々、私の「日米口語辞典」を見直した。 深い仲(になる)が(become) involved with になっている。 文中にreally close とあるが、これは「非常に親しい」ということで、「深い」となると、情の通った状態(emotional involvement)なので、他者から見れば「やばい」関係になる。 この「やばい」に合致する口語表現は、too close for comfort である。 こういう英語のヤマト言葉が一流英語雑誌の見出しに出るのである。 この手の斬れる口語表現は、残念ながら「日米口語」では学べない。
30年間も愛読されてきたベストセラーだが、文筆家の福岡伸一氏(「生物と無生物のあいだ」の著者)のことを念頭において本年も、心を鬼にして(hardening my heart) 自分の辞書を改訂し続ける。 難訳辞典を原点として「使える口語辞典」を狙ったのがスタートラインであったから、原点に戻る(get back where we started from)つもりである。
They’re getting too close for comfort. つまりディベートできる関係がなくなり、ベタベタになるからだ。 表に名前の出た筆者がハリガネムシに脳幹を犯されたカマキリのように、発言ができなくなる。
今、私の独断と偏見でペンを踊らせている。 恋心も筆者の想いもヒートアップすると、やばくなる(too close for comfort)。 「ねんごろな仲」は「日米口語」では intimate となっているが、使いにくい。 「マフィアとねんごろ」なら、be part of (close to) the Mafia でよい。 become quite involved with は状態を示しているだけ。 「日米口語」の「深入りする」(get deeply involved)は、書き言葉に近い。 あまりに静的だ。 close のシンボルは「スレスレ」だ。
That was close. (スレスレだった。やばかった。) こんな口語表現が映画やテレビに出るのだ。 too close to call という表現がよく欧米のメディアで使われたが、ゴアとブッシュの大統領選で、vote count があまりにもスレスレ(接近)になった時の様子がtoo close to call で表現された。 最近では、オバマとヒラリーがtoo close to call となった。 接戦のことを a close contest.
ここでは by a close shave スレスレの票差で勝敗が決まる。 close のシンボルが見えないと、使えない。
35年も前のころから、英語のインプットも増し、口語英語のシンボルがわかる。 そして同時通訳する時は、シンボルの流れをイメージしながら訳している。 だから文脈(the context)も活かして、かなり忠実な訳(a close translation)を施しているつもりだ。