落日

落日

2007年01月03日
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カテゴリ: 残像
晒し者の列にいることを息苦しく感じながら、由香利は間宮の痩せた背中を見た。
歳月にも関わらず、間宮は変わっていなかった。少なくとも、彼女はそう思った。
こんなときでなければ、間宮の瞳を真正面から見て微笑むこともできたが、決まりの悪さからそうしなかった。

フラッシュバックしたのは、日常に戻ってからのことだった。
二の腕に、抱きしめたときの間宮の肩の感触が蘇って、由香利はギョッと身をすくめた。

ひと月後、夢を見た。
間宮は、相変わらず真剣とも玩弄しているとも取れる態度で、由香利の仕事ぶりをたしなめ、他の女子社員の転職の相談に乗っていた。
醒めてなお、由香利は夢を貪った。
夢は切れ切れに続いた。

夢ということは判っていたが、間宮の存在に触れていたかった。

絶望的な寂寥。
あの人はきっと私を忘れたわ。たとえ思い出したって、厭な顔をするに決まっている。
由香利は顔を覆った。





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最終更新日  2007年02月08日 21時12分27秒
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