2004年06月27日
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   ~ ”日本の中心で アレ を叫ぶ” ヨッパライ麻生百合之介のカレイな挑戦・中編~

(風の中のす~ば~る~♪砂の中のぎ~んが~♪みんな何処へ行っ~た~♪見送~られることもなく~♪)




ず、ずずぅ~ん・・・んん・・・


突然の音に、テントの中で談笑していた漢達の笑顔が凍りついた。


(雪崩・・・)


誰もが皆、耳を欹ててその音の名残を聞いていた。テント場は、雪崩の危険性の乏しい所。だが、降り積もる雪は、一歩テント場を離れればいつでも雪崩の危険を孕んでいる。出川は無事か・・・そのことだけが漢達の脳裡に不安となって浮かんでいた。




その時―。



「うお~っ寒みぃ!!」



と言って、テントの天幕を開けて、全身雪塗れの男が入り込んできた。・・・出川だった。。。



「出川!無事だったか!」


「どうしたんだ、そんなに雪塗れになって・・・!!」


漢達は皆、口々にそう言って、出川の無事を・・・喜んだ。



「あー、もー、最悪ッスよ~。テントの傍じゃまずいと思ってちょっと離れた所で 雉撃ち ケツが凍る かと思いました。ザックの中の紙はなかなか出て来ないし・・・。で、用済ませて戻ろうと思ったら足踏み外して 雪庇から落ちちゃいました。あ~痛ぇ・・・ 」




『・・・・。』



 あの音は、出川が雪庇から落ちた音だったのか・・・。百合之介は、百叩きにしても死にそうに無い出川の身を案じたことを 少し後悔 していた・・・。



「ほじぎだなみっだぐないごどしてんな、この馬鹿たれ。こだどごで ひっくらがえて あえまずすねけが。」


山縣も、ちょっと怒っていた。


「隊長、今日はもう遅いですし、もう寝ませんか?」


自衛隊出身の野比田くんが、目を擦りながら、そう言った。


「んだべなす。明日はまたあらがなければなんねがら、よぴかりはんまぐねぇ。もう寝るべ」




そう言って、山縣と同じテントで寝る仲間達は、それぞれ元のテントに戻った。





百合之介は、雪を払いながら呑んでいる出川に、そう言った。


「う~ん、もうちょっと呑みませんか?さっき雪被って酔いが覚めちゃって・・・」


出川は物足りなさそうに・・・そう言った。


『仕方の無い奴だのう。寝る準備だけ致せ。もう少し付き合って進ぜよう。』


今日は大晦日―。百合之介は毎年呑んだくれて年を越す習慣なので、まだ呑むつもりだった。





と言って、出川が指差す先には、確かに寝袋が用意してあった。だが、しかし・・・。


『???お主、寝袋だけか?シュラフカバーは如何致した?』



冬山では、通常の寝袋では寒くて眠れないので、シュラフカバーをもう一枚、寝袋に被せて寝るのが 常識 だった。厳冬期用の寝袋ならば、それも不要だが、出川のそれは明らかに春・夏・秋のスリーシーズン用寝袋だった・・・。



「 大丈夫ッス!! これで十分寝られるッス!!ほら、呑んで呑んで~♪」


出川は百合之介の心配を意に介する風も無く、そう言って酒を注ぎ続けた・・・。バーナーの火で温まったテントの中で、呑んだくれの漢達の酒盛りは 延々と続いた 。。。












(ガサゴソガサ・・・ガサガサ)



暗闇の中で音がする・・・。麻生百合之介は深い睡みの中で何かが動く音を聞いていた。



(パチッ)



と言う音がして―。目の前が明るくなった。・・・誰かがランプを点けた音だった・・・。



(う・・・む?)


眠い目を開くと、そこに、野比田くんの顔があった。


「麻生殿、もう準備しないと日の出に間に合いませんよ。」


『う・・・おお、もう朝か・・・。』


朝―と言っても当然陽は昇っていなかった。




・・・時計を見ると、午前三時―。


百合之介は横になったまま、傍らの出川を観た。出川の顔は蒼褪めている。『いかが致した?』と、百合之介が声を掛けると、出川が言った。




「・・・さ、寒くて・・・寝られませんでした。。。」





『わははははは、馬~鹿♪』



と、物凄い笑顔で百合之介はそう言って、出発の準備をするべく起き上がろうとした。




『よ~し、そろそろ拙者も起きようかな、よっこら・・・』









パタッ・・・






(・・・・?)




力を入れて起き上がったはずなのに、百合之介の体は 力無く元の寝転んだ体勢に戻った。




(・・・・???おかしいな、もう一度・・・)




『・・・せっ!と』




パタッ!






(・・・あり?)





と思った瞬間―。





目の前の光景がぐるぐると回って見えた







(・・・え~と・・・ひょっとして拙者・・・ ̄∀ ̄;)







”まだ”酔ってますか?
(T▽T)






―それは、信じられないできごとだった・・・。



高所でのアルコールの摂取は、平地に比べて身体に及ぼす影響は大であることは、百合之介も重々承知していた。しかし、そんなに呑んだのか・・。百合之介は、枕元に置いてある、ウィスキーの瓶を観た。




























空っぽだった・・・。

























(いっか~ん
(T▽T)!!)




 グルグル回る目の前に、百合之介は愕然とした。この厳冬期の冬山で、二日酔い―。このままでは・・・。











初日の出拝めません
(T▽T)。













当然・・・










日本の中心で”アレ”も叫べない
(T▽T)




初心者向きの山とは言え、素面でも危険な山、まして 冬山。 外では風が、不気味な音を発てていた―。



(こ、こんな状態でアタックできるのか?!安全を考えて回避するか―。し、しかしここまで来て 撤退 なんて なんてこったい 。し、しかし、起き上がることも出来ないんじゃ、歩くこともままなるまい。どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする・・・・)



 百合之介が考えあぐねていると、 銀行強盗みたいな格好 した山縣が、テントの中に入ってきた。



「にさ、まだ寝でるのが?・・・なんと、まだ酔っ払っでるのが!?ないだてほでなすな奴だなまるっきし。」



『め、面目無い・・・(T▽T)』



「もっくらたっからしてって陽が出ちまうぞ。どうすんだ、ここで行かねぇと、くいすべぇ」



(そ、そんなこと言われても、起き上がることもできないんですが(T▽T)。。。)



 山だけに行きたいのは山々でも、体が言うことを利かない・・・。この時ばかりは、呑んだくれな自分を・・・恨めしく思っていた。






 しかし、その時だった―。



 10分程こうして ウダウダ していたが、百合之介は、あることを閃いた。百合之介はズキズキする頭の痛みを堪えながら、食料を入れた袋を取り出そうと、ザックの中に手を入れた。



(・・・あった。。。)



 百合之介が手を引き抜くと、その手に掴んでいたのは・・・









カリカリ梅が一杯





梅干のクエン酸は、二日酔いの痛み―脳のむくみ―の特効薬である。百合之介は、 あらん限りのカリカリ梅を口一杯に頬張って食べ 、更に、たまたま持参していたグレープフルーツジュースで流し込んだ。グレープフルーツの果糖は、アルコールの分解を促進する飲み物―だった・・・。





カリカリカリ・・・ゴクゴクッ・・ゴクッ・・・




ヨッパライは、必死の思いでカリカリ梅を齧り、氷のように冷え切ったグレープフルーツジュースを飲み干した・・・。







『す・・・














 酸・・・












(酸っぺぇーーーッ
(T▽T)!!!)




口の中一杯に 酸っぱい臭い が、広がった・・・。しかし、目的を果たす為に・・・その身悶えするような酸味に、漢は耐え続けた―。






ほどなくして、山縣が再びテントの中にやってきた。



「おい、百合之介、どうすんだ?このまんまここで引き返すのか?」



このまま、百合之介の復活を待っていては初日の出に間に合わなくなってしまう。・・・苦渋の決断をしなければならない時―だった・・・。





しかし・・・。


















『やっぱ行く!!』




それは、信じられないことだった・・・。先程まで、 水死体の様な顔をしていた 百合之介が、すっくと立ち上がって力強く言った。



―どうやら、カリカリ梅を食べたのが効果を表したようだった・・・。





「よっしゃ~♪それでこそ漢だべ~♪」



山縣が、満面の笑顔で、そう言った・・・。





百合之介は起き上がるとフラフラする脚を踏ん張って、雪中行軍の用意をした。15分後、 完全武装したヨッパライ が、まだ暗い白銀の世界に仁王立ちしていた。




目指すは、標高二八八九米、赤岳山頂―。初日の出まで・・・残り二時間―。




目の前には、急坂の、文三郎尾根―。




ヨッパライとその仲間達は、ついに、アタックを開始した・・・。それは、これから起こる”悲劇”への第一歩だった・・・。




漢達の物語は・・・まだ・・終わらない―。



(尚も次回に続く)





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最終更新日  2004年06月27日 22時15分58秒
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