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気分はオーストラリアR6
<気分はオーストラリアR6>
先日、『奇跡の2000マイル』という映画を観たのだが、オーストラリア映画を観たのはこれが最初であるが・・・ええでぇ♪
ショーン・タンというオーストラリア国籍の絵本作家にぞっこんの大使であるが“気分はオーストラリア”である。
ということで、オーストラリア関連を集めてみます。
・『民族世界地図』4
・オーストラリア森林火災
・アボリジニ現代美術展
・「おバカ大国」オーストラリア
・「アボリジニの芸術」
・場違いな人
・ミア・ワシコウスカ
・現代アボリジニ・アートの世界
・隣のアボリジニ
・奇跡の2000マイル
・鳥の王さま
・アボリジニー文化
R6:『民族世界地図』を追記
<『民族世界地図』4>
図書館で『民族世界地図』という細長い装丁の本を、手にしたのです。
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)
【民族世界地図】
浅井信雄著、新潮社、1993年刊
<「BOOK」データベース>より
国境が変わり、民族が移動し、至る所で硝煙のあがるこの二十世紀末―。複雑をきわめる民族対立の歴史をふまえつつ、世界の緊張空間を地図三十枚に集約。
<読む前の大使寸評>
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)
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民族世界地図
『民族世界地図』4
:オーストラリアの「迷い」
<オーストラリア森林火災>
オーストラリアで発生している森林火災の勢いが止まらないようです。
「サイエンスジャーナル」サイトを覗いてみたら、えらいこっちゃの状況でした。
2020/1/14
まるで地獄絵図!コアラ、ワラビーなど約5億匹も焼死?オーストラリア森林火災
より
■約5億匹の動物が亡くなった
オーストラリアで発生している森林火災の勢いが止まらない。 9月からこれまでに焼失した面積は1200万ヘクタールとも報道されており、日本国土の3割近い計算だ。
立ち昇る煙は隣国のニュージーランドのみならず、1万キロ以上離れた南米のチリやアルゼンチンでも観測された。 オーストラリアは森林の減少などから多くの動物の生息環境が悪化しており、WWF(世界自然保護基金)の会長が政府に改善を求める手紙を昨年公開したばかり。そこに襲いかかった山火事で、絶滅危惧種の動物や昆虫を含めた生態系への影響が強く懸念されている。
特にシドニーのあるニューサウスウェールズ州の火災が深刻で、同州だけで5億匹近い動物が死んだと推計。野生の固有種の宝庫として知られる観光名所カンガルー島は3分の1が焼失し、この島だけで2万5000頭のコアラが命を落とした。一部ではコアラ絶滅の可能性まで報道されている。
同州のコアラ病院がクラウドファンディングで募金を集めたところ、全世界から応募が殺到した。2万5000ドルの目標に対し、およそ600万ドル集まり、その額は今も増え続けている。山火事の余波で、オーストラリアの複数のラジオ局は「Fire(火事)」とつく曲の放送を自粛しているそうだ。
オーストラリアの昨年の平均気温は観測史上最高を記録し、降水量も1900年以降で最も少なく、最悪の干魃状態となっている。 実は、2019年の平均気温が高いのは世界的な傾向だ。
欧州連合(EU)が運営しているコペルニクス気候変動サービスは1月8日、2019年の世界の平均気温が観測史上2番目の高さだったと発表した。過去の上位5位の高温記録がすべてこの5年間に出ているという。
気象庁も令和元年の日本の年間平均気温が、全国的にかなり高かったと発表したばかりだ。南半球はいま、夏真っ盛り。これから4月にかけて高温傾向が続く予報が出ている。山火事は鎮火する様子を見せておらず、コアラやカンガルーなど野生動物への影響が懸念されるばかりだ。
<アボリジニ現代美術展>
図書館で『アボリジニ現代美術展』という本を手にしたのです。
ぱらぱらとめくると・・・おお アボリジニの岩絵も見えるではないか。
この本には「現代に生きるドリーミング」というコンセプトが読みとれるわけで、ええでぇ♪
大使は国立民博のリピーターであるが、いつ行っても、アボリジニの岩絵の前にたたずむわけでおます。
色彩といい造形といい、アボリジニは、まるで天賦のアーチストではないか。
昨年見に行った企画展「ワンロード 現代アボリジニ・アートの世界」も良かったが、この本は、さらに遡った2003年「アボリジニ現代美術展」の公式ガイドブックのようです。
掲載された作品、解説ともに素晴らしい本だと思うのです。
精霊の世界とドリーミングあたりを、見てみましょう。
p14
<精霊たちのふるさと:ジェニファ・アイザックス>
オーストラリアの先住民アボリジニの芸術には、新鮮な魅力が満ちあふれているが、その起源は古い。古代の岩壁画や洞窟画から、地面や体に描かれた絵、そして今日のキャンバス画や樹皮画へと連続しており、彼らの土地との精神的なつながりを探求するものなのである。
本書に今回掲載される作品は、中央砂漠、キンバリー、アーネムランドおよびその島嶼部にあるコミュニティーに、通底して流れている精神性の歴史をみいだすことを目的として選んだものである。これらの作品はすべて深い宗教性をもつが、その一方で現代美術の批評家やコレクターを興奮させるような、数多くの表現法をきり拓いてきたものである。
砂漠地方では、地面に描かれていた絵が、点描画に置き換えられ、それが今日の表現法の中心となった。キンバリー地方では、土地と祖先の物語を近年の社会史に融合させ、それをキャンバスに自然顔料で描く独自のスタイルができた。
アーネムランドの伝統的な樹皮画にも、現代的なフォルムがとりいられるようになった。たとえば格子状文様は、洗練された繊細な描法へと変わっている。それにもかかわらず、これらの作品は伝統の本質を失っていないのである。
■人々と土地
アボリジニは、オーストラリア大陸北部の熱帯湿地から中央部の広大な砂漠地帯、豊かな沿岸部の河川地域、そしてタスマニアを含めた島嶼部にも住んでいた。そんな多様な自然環境のなかで、人々は大地との関わりを深めつつ、さまざまな文化をつくってきたのである。
考古学資料は。アボリジニが東南アジアから島伝いに、海を渡ってやってきたことを示している。その時期はまだ明らかでなく、紀元前4万年から10万年のいずれかの時点であるといわれている。中央砂漠の神話では、祖先である精霊が地下から現れ、大陸を旅しながら部族の地をつくっていったとある。一方、北部ではカヌーをつかって海を渡ってきたと物語られている。
かつてこの大陸では200以上の言語が話されていた。しかし、現在使われている言語は50以下に減ってしまった。そのため言語の重要性が再認識され、識字プログラムやバイリンガル教育などの振興がはかられている。
アボリジニは定住せず、季節に応じて自らの領域を移動する。豊かな沿岸部では領域は狭い。これに対し乾燥した地域では、ときには数百平方マイルにおよぶ広い領域のなかを、簡素な道具や武器を携えて、食糧を求めて移動したのである。
200年前、ヨーロッパ人が初めてオーストラリアに移住してきた頃、アボリジニは「最後の石器人」とみなされていた。これは18世紀当時(時には、現在でも)西欧文明を尺度にして人種の優劣を決める無知ゆえに生じた概念であった。石器を使っていたということを、文化的に劣っている証拠だとみなしたわけである。
■精霊の世界とドリーミング
アボリジニの哲学は、土地と祖先、創造と生命という根源的問題に答えるものである。その体系は、地方によって呼び方が異なるが、ビチャンチャチャラなど砂漠の民は「チュクルパ」と呼んでいる。ここではこの言葉を使うことにしたい。
チュクルパは「ドリーミング」と英訳される。いい言葉だが、本来の概念の多様な位相を説明するにはなお十分ではない。チュクルパは過去にも現在にも使われるが、基本的には大地に生きる生命をつくった偉大な「創造神Creation Ancestors」が、天地創造を行った時代のことである。精霊は、人間、動物、植物など、さまざまな形をとる。モノであったり、現象であったりする場合もある。
チュクルパの時代、精霊は大地を歩き、創造と破壊のめざましい偉業を成し遂げた。旅のルートは記憶され、行った先々には聖地ができた。
チュクルパは遥かな過去の創造の力であり、いまも変わらない力なのである。チュクルパの記録は、山、川、池、木や石に刻まれた特殊な模様であることもある。そういうものを通して、祖先が今も人々に語りかけているのである。
ただ、このチュクルパは西洋人には理解しがたい観念である。画家は絵を指して「チュクルパだ」と言うし、誰かが、儀礼のために不在になったときは、彼の親族は、「彼はチュクルパに行ってしまった」という言い方で、それを表現したりする。夢から目覚めた人が、ある人が歌を歌って、彼に新しいチュクルパを授けた、と言うこともある。このように、チュクルパは多様な貌をもっているため、理解することが難しい観念なのである。
チュクルパはまた、アボリジニの法でもある。法は、さまざまな要素のバランスを保ち生命を確保するために、正しく守らなければならない。
【アボリジニ現代美術展】
小山修三、他著、現代企画室、2003年刊
<「BOOK」データベース>より
現代アボリジナル・アートとは何か(小山修三)/精霊たちのふるさと(ジェニファ・アイザックス)/現代に生きるドリーミング-アボリジニナル・アートの目指すものは何か(杉藤重信)/「その他のアボリジナル」アート(上橋菜穂子)/ストールン・ジェネレーション-アボリジニ政策と芸術表現(佐和田敬司)/カナダ・イヌイットとアート(岸上伸啓)/アイヌ-「風の家」の力(太田昌国)/展覧会「精霊たちのふるさと」(中央砂漠/キンバリー地方/アーネムランド&ガルフ・カントリー/都市部)
<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると・・・おお アボリジニの岩絵も見えるではないか。
この本には「現代に生きるドリーミング」というコンセプトが読みとれるわけで、ええでぇ♪
rakuten
アボリジニ現代美術展
<『「おバカ大国」オーストラリア』>
図書館に予約していた『「おバカ大国」オーストラリア』という本をゲットしたのです。
オーストラリアには個人的に好感を持っているし、ミニブームの感があるのです。
【「おバカ大国」オーストラリア】
沢木サニー祐二著、中央公論新社、2015年刊
<「BOOK」データベース>より
犬は基本、放し飼い。泥酔文化にドラッグ蔓延。移民に仕事を奪われ、失業保険で暮らす…。そんなオーストラリアは、こんなに幸せな国だった!おバカと幸福、相反する二つが同居する秘密を在住18年の著者が探る。賢い日本、今こそ「おバカ大国」に学べ!
<読む前の大使寸評>
オーストラリアには個人的に好感を持っているし、ミニブームの感があるのです。
<図書館予約:(1/12予約、2/23受取)>
rakuten
「おバカ大国」オーストラリア
<(終わりと始まり)「アボリジニの芸術」>
大使の新聞スクラップの一つに(終わりと始まり)シリーズがあるのだが・・・
そこに載っていた「アボリジニの芸術」がええでぇ♪ということで、紹介します。
つい最近読んだ『氷山の南』という小説にも、アボリジニの芸術に触れていました。
ドリーミング
2016-10-5
(終わりと始まり)アボリジニの芸術、人と土地をつなぐ神話
より
明治のはじめ、西欧語に対応する日本語が多く作られた。「科学」も「哲学」も「思想」もその時に生まれた。先人たちの苦労が日々役だっている。
しかし、ちょっと惜しかったと思うものもいくつかある。例えば、「権利」の本来の意味は「正しい」ということだ。正しいから要求できる。そこに利の字を使ったために、この概念はどこか物欲しげになってしまった。「権理」であったら、理は「ことわり」だから、もっと堂々と要求できたのに。
「文明」では最も大事な「都市」のイメージが伝わらない。人間は農耕を始めて余剰な食糧を得、農業から解放された人々が集まって都市を作った。人間とモノの高密度が知的な進歩を促した。今の都市は縦方向にも伸びて、農村よりも何桁も大きい人口密度を実現しているし、それを我々は通勤電車で体感している。
古代以来さまざまな都市が栄えたが、どこもいずれは消滅した。問題はエネルギーで、薪を使っていれば周囲の森を使い尽くしたところで都市の寿命は終わる。現代人がなおも原発に頼るか太陽光や風力に移行するか、悩んでいるのも、これが我らの子孫たちの命運を左右するからだ。
(そして、日本を動かしている面々は既得権益にしがみつくばかりで、柔軟性に欠け、この国の未来をいよいよ暗いものにしている。)
*
数万年前から文明に依らずに生きてきた人たちがいる。オーストラリアのアボリジニ(先住民)。
彼らは遠い昔にあの大陸に渡り、その後は地殻変動で他の地域から隔離されたまま、延々と世代を重ねてきた。
雨が少ない土地なので農耕はむずかしい。狩猟採集で生きることになるけれども、密度が薄いので移動を続けなければ充分な食糧が得られない。オーストラリアには馬やラクダやリャマのような駄獣がいなかったので、人は持てるだけのものを持って旅を続けた。都市とも文明とも無縁な歴史。
その代わりにかどうか、彼らはとても精緻で壮大な神話体系を作り上げた。世界解釈としての神話である。世界は遠い過去に創造されたのではなく、人間の動きと共に今も創造されつつあり、それは未来へも続く。
大事なのは人間と土地との絆だ。すべての土地に固有の神話があって、人間はいわばそれを鋤(す)き返しながら旅をする。そのルートは歌で記憶されるからソングラインと呼ばれる。
更に彼らは絵画に長けていた。今も多くの岩壁画が残っていて、その規模と完成度と創造性は目を見張るほど。文明がなくとも芸術は生まれる。芸術は人間そのものに属しているから。
何万年にも亘る彼らの生活を壊したのはイギリス人だった。「文明」を持ち込み、アボリジニを蔑視し、定住を強い、子どもたちを親から隔離した。彼らを二級の国民の身分に押し込めた。
事態が変わったのは、1967年に市民権が認められてからだ。2008年にはケビン・ラッド首相は彼らに公式に謝罪した。この間に彼らの人口は30万から70万まで増えた。教育水準も高まり、例えば医師になる者も増えて、人口比ではオーストラリアの平均を凌ぐという。
彼らの地位回復を支えたものの一つに絵の才能がある。優れた画家が次々に輩出し、世界中の美術愛好家の注目を集めた。伝統的な様式とアクリル絵具の出会いが見事な花を咲かせた。
*
1906年、ある男が北の牧場地から南の食肉市場まで一本の道を造ろうと思い立った。鉱山労働者の食糧として牛を追って運ぶ1850キロの道で、この男の名をとって「キャニング牛追いルート」と呼ばれた。
この道は途中、多くのアボリジニの聖地を縦断するもので、さまざまな軋轢を生み、弾圧を生んだ。
ほぼ百年たって、この歴史をアート活動で再現しようと、「ワンロード」という企画が実行された。アボリジニのアーティストが参加して、みんなで絵を描きながらこのルートを辿って旅をする。絵はそのまま父祖の記憶であり、神話である。
この時に制作された作品127点のうちの34点が日本にもたらされて展覧会が開かれている。
ものすごく抽象的で、その一方で歴史という事実の裏付けのある具体的な、つまり人間の思考の全領域をそのまま表現するような絵。イメージと説明の文章を合わせて鑑賞する――「とてもたくさんのジルジ〔砂の丘〕が、私たちのカントリーにある。登っては降り、登っては降りなくてはならない。白人たちはそれにうんざりしている!」という文はそのまま詩である。
「ワンロード 現代アボリジニ・アートの世界」展は千葉県の市原湖畔美術館で開かれている(来年の1月9日まで)。その後は来年の4月7日から釧路市立美術館で開かれる。
紙のスクラップとWebデータとで、重複保管になるのだが、ま~いいか。
<場違いな人>
上橋菜穂子著『明日は、いずこの空の下』という本から、アボリジニとの交流の一端を、見てみましょう。
p91~94
<場違いな人>
深夜の道路脇に、赤ん坊を抱いた若い女性がひとり、ぽつんと立っていたら、かなり怖い光景になりそうですが、たとえ真っ昼間でも、周囲数百キロ人家がない大自然の只中で、そんな光景を見かけたら、思わず目を疑ってしまうものです。
アボリジニの友人たちとキャンプに行った帰り道でのこと。深い森の中に延々と続く赤い土の道を四輪駆動車で走っていたとき、赤ん坊を抱いて、ぽつんと道端に立っている白人の女性に出くわしました。
ちょっとハイキングに来たという感じのTシャツとジーンズの軽装で、赤ん坊を胸に抱いていた彼女は、私たちの車が傍らに止まると、心底ほっとした顔になって、
「神様ありがとうございます!ああ、たすかった!ピクニックに来たのだけれど、川縁で車がスタックしちゃって」
と、助けを求めてきたのです。
車がスタックする、というのは、ご存知のとおり、車が何かに乗り上げたり、はまったりして、タイヤが空回りし、動けなくなってしまった状態を言うのですが、彼女と赤ちゃんを車に乗せて川まで下りてみると、いかにも都会風のピカピカのセダンタイプの車が、川縁の泥の中で見事にスタックしていました。
車の中には、彼女の夫とおぼしき白人男性がひとり、しきりにアクセルを踏んでタイヤを空回りさせては、盛大に泥をはねあげています。
アボリジニの友人たちが車から降りていき、しばらく状況を調べていましたが、やがて、「こっちの車と、そっちの車を針金で繋いで引っ張ってやるから、おれたちが合図したらアクセルを踏めよ」と、その旦那さんに指示して、戻ってきました。
四輪駆動車の後ろにくっついている台車などを連結する金具と、セダンのバンパーを針金で繋いで、「いっせ~のせ!」という感じで引っ張ったのですが、何度やっても針金がぶち切れるだけで、セダンは泥の中から抜け出せません。
40度近い暑さの中で、みんながへたばりはじめた頃、私はふと、あることに気づきました・・・・セダンに乗っている男性の体格です。どう見ても百キロは軽く超えている、お相撲さん体型の彼が運転席に乗っているから、針金では引っ張れないのではないか、と思い、
「あの・・・私がアクセル踏んでみてもいい?」
と、声をかけると、男らはみんな、え?という顔で振りかえりましたが、すぐに全員、私が敢えて口にしなかった理由に思い当たったようで、代わってやってくれ!と、白人男性を運転席から出して、私を座らせてくれたのでした。
どうなったと思います?いや、もう、実に簡単。「いくぞ!」の声に合わせて、アクセルをめいっぱいに踏むや、車は跳びだすようにして泥地から解放されました。
何か、ちょっと映画みたいだったな、と、私はけっこう興奮していたのですけれど、真っ赤な顔に汗をたらたらかいて、「いや、たすかった。ありがとう」と言っている男性と、うんざりした顔の奥さんに手を振って別れたあと、アボリジニの友人たちは、しきりに、ブッシュの中に、あんな都会用の車で入ってくるのが間違っているんだ、赤ん坊まで連れてて、冗談じゃねぇよ、おれたちが通りかからなかったら死んでるぜ、と怒っていました。
彼らの怒りはもっともで、オーストラリアでは、原野に出れば、あたりには家もガソリンスタンドもない状態が当たり前。油断して、用意を怠れば、容易に命を奪われる危険が生じるのです。
あの車がスタックしていた場所も、周囲百キロぐらい人家などありませんから、ほんとうに偶然、私たちが通りかからなかったら、あの太った旦那さんでは、とても助けを求めに行けなかったでしょう。
・・・いや、ワイルドなお話ですね。
【明日は、いずこの空の下】
上橋菜穂子著、講談社、2009年刊
<「BOOK」データベース>より
17歳の夏、初めて旅したイギリスとフランス、フィールドワークで訪れた沖縄やオーストラリア。そして海外旅行で訪れた国々…物語が芽吹く土壌となった旅のエッセイ。国際アンデルセン賞受賞記念出版!
<読む前の大使寸評>
獣の奏者や精霊の守り人の著者ということもさることながら・・・
大使の場合、オーストラリアのアボリジニとの交流のエピソードが興味深いのです。
rakuten
明日は、いずこの空の下
<ミア・ワシコウスカ>
「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」のアリス役:ミア・ワシコウスカがええでぇ♪
・・・ということで、朝日の記事を見てみましょう。
2016/07/08
自分を信じて再び冒険 ミア・ワシコウスカ
より
■「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」に出演
色鮮やかでファンタジックな不思議の国は不変。だからこそ、アリスの「変化」がよりくっきりと浮かび上がる。
ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」のその後を映画化し、大ヒットした「アリス・イン・ワンダーランド」から6年。その続編である「時間の旅」で、再びアリス役に臨んだ。
「きっともうないんだと思っていた時に続編の話が持ち上がったので、サプライズでした」。監督だったティム・バートンが製作を手がけ、ジョニー・デップやアン・ハサウェイらが再び結集した。「新しい方々も含めて大好きなみなさんと、この作品をつくることができて楽しかった」
当時は20歳。アリス役はハリウッドでの出世作となり、その後、個性派監督の作品を中心に活躍の場を広げている。「アリスは超大作で、自分を知ってもらうきっかけになった。この映画に出ていなければこういう道のりでなかったと思います」
物語は前作から3年後。父の後を継いで船長として世界中を旅したアリスが、帰国した英国で厳しい現実に直面し、再びワンダーランドへ誘われる。そこで再会した友人マッドハッター(デップ)のため、アリスは時間をさかのぼる旅に出る――。
前作と比べてアリスは、より強い意思を持ち、主体的に行動していく。「あれからたくさんの作品に関わって、世界のことも映画の仕事も、より深く知ることができた。様々な経験を積んで自信を得たアリスと自らの道のりが重なったことが、今回の演技にも生かされたと思います」
その半面、飛んだり跳ねたり走り回ったりと体力が求められるシーンが多く、「エネルギーを保たなければいけないのが一番の挑戦でした」と振り返る。「普段は怠け者なんですけど」と小声で付け加えながらも、撮影前の2週間は必要な動きの確認やトレーニングに集中したのだという。
映画に込めたメッセージは、自らの歩みそのものだ。「自分がやりたいこと、好きなことを信じ、実行するアリスを見て、世界中の女性に自信を持ってもらえたら」
◇
Mia Wasikowska:1989年、オーストラリア出身。バレエを学び、15歳で演技の道へ。「イノセント・ガーデン」「奇跡の2000マイル」「クリムゾン・ピーク」などに出演。「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」は公開中。
なお、彼女がオーストラリア人ということで、このサイトに収めました。
<現代アボリジニ・アートの世界>
民族学博物館で「ワンロード: 現代アボリジニ・アートの世界」という企画展が開催中のようです。
・・・・これは大使必見やで、ということでネット情報を見てみました。
企画展「ワンロード: 現代アボリジニ・アートの世界」
より
オーストラリア西部の砂漠を縦断する1850 キロの一本道があります。
世界最長の牧畜移動路とされるこの道は、先住民と西洋社会が交叉する場所でもありました。その場所で、オーストラリア国立博物館が現代のアボリジニ・アーティストと行ったプロジェクトから生まれた作品をご紹介いたします。
「ワンロード」展は、かつてそこに住んでいたアボリジニとその子孫であるアーティスト60名が、2007年に5週間にわたって旅をし、「白人」の側からしか語られて来なかったキャニング牛追いルートの歴史をアボリジニ自らがたどり直す過程で描いていった絵画を中心に、映像、写真、オブジェ、言葉によって構成されます。
会期:2016年6月9日(木)~7月19日(火)
場所:国立民族学博物館 本館企画展示場
開館時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:水曜日
無料観覧日:6月19日(日)
観覧料:一般420円、高校・大学生250円、小・中学生110円
主催:国立民族学博物館
共催:オーストラリア国立博物館
<隣のアボリジニ>
26日のNHK『スイッチインタビュー達人達』を観たのだが、良かった♪
野生動物に対して人間はどう対するべきかを、作家上橋菜穂子と獣医師が語っていたが・・・とにかく自然や野生動物に対して、お二人の独特な感性とリスペクトが表れていました。
SWITCHインタビュー 達人達「上橋菜穂子×齊藤慶輔」
より
綾瀬はるか主演「精霊の守り人」はじめ壮大なファンタジーを紡ぎ出す作家・上橋菜穂子が、世界でも珍しい野生動物の獣医・齊藤慶輔と、命の神秘や自然と人間について語る。
送電線による感電や交通事故、人間生活の犠牲となった動物たちを治療し野生復帰させてきた齊藤。ワシやタカとの意思疎通に必要なのは目ヂカラ?野生動物の「心」まで知り尽くす齊藤からは驚異の経験談が次々と飛び出す。
一方の上橋は「物語が突然降りてくる」天性の作家。何気ないきっかけから人物設定や名前、声や体温までありありと浮かぶのだという。
番組でも上橋さんのアボリジニに対するフィールドワークが紹介されていたが・・・
ええやんけ♪ということで、上橋さんの本をネットで探したら『隣のアボリジニ』がヒットしたのです。
【隣のアボリジニ】
上橋菜穂子著、筑摩書房、2010年刊
<「BOOK」データベース>より
独自の生活様式と思想を持ち、過酷な自然のなかで生きる「大自然の民」アボリジニ。しかしそんなイメージとは裏腹に、マイノリティとして町に暮らすアボリジニもまた、多くいる。伝統文化を失い、白人と同じように暮らしながら、なおアボリジニのイメージに翻弄されて生きる人々。彼らの過去と現在をいきいきと描く、作家上橋菜穂子の、研究者としての姿が見える本。池上彰のよくわかる解説付き。
<読む前の大使寸評>
アボリジニといえば、自然人、岩絵を描くアーティストというイメージがあるのだが・・・
上橋さんが報告する現代のアボリジニが興味深いのです。
<図書館予約:(とりあえず、予約カートに入れとこう)>
rakuten
隣のアボリジニ
上橋さんは、民族学的研究としてアボリジニに接したようだが、単なる学者ではなかったようですね♪
オーストラリア人(白人)のイメージは、概して、タフで心優しき田舎者という感じであるが・・・上橋さんがそのあたりを語っています。
p92~96
<「良いアボリジニ」と「悪いアボリジニ」>
より
ミンゲニューのパム校長に頼まれて、ジェラルトンの小学校に移ったとき、その小学校に子どもを通わせていた三家族が、私のホストファミリーとして名乗り出てくれました。この三家族は、みな白人の家族でしたが、それぞれライフ・スタイルが異なるこの三家族との暮らしはとても面白く、アボリジニ研究をするのなら、現在のオーストラリア社会の主流民族たるアングロ・ケルト系の白人のことも当然知るべきなのだ、と気づかされたのでした。
とくに、タイヤ販売店に勤めるモートンと元気な主婦サマンサが築き上げてきた、陽気なロースン一家は、アボリジニの友人たちと同様に、私をオーストラリア社会日常生活へひっぱりこんでくれた、大切な<場>となりました。
この一家の飾り気のなさは天下一品。
私がはじめて泊まった日の朝、サマンサは私を食卓に引っぱっていき、
「すごい写真があるの。北部に旅したときの写真でね。ラクダやワニを見せてあげる!」
と、楽しげに写真を広げたのですが、私は、見せられているラクダやワニより、それを見せているっサマンサが、ネグリジェだけのアラレモナイ姿だということの、度肝を抜かれたものです。
はじめて会う外国人が家に泊まるとなったら、私なら「日本人の代表として、いいところを見せなくちゃ」という気分がどこかで働くに違いありません。ところが、ロースンさんたちは、昨日までしてきた生活を、ただ、そのまま続けていくだけなのです。おかげで、彼らの生活を邪魔しているという負い目や気遣いを感じることなく、魚がするりと川に滑りこむように、ごく自然に彼らの生活のリズムに溶けこむことができました。
(中略)
自信たっぷりのタフネス・・・・オーストラリア人(特に白人)をステレオタイプ化して笑いのタネにした映画が『クロコダイル・ダンディ』だとすれば、アウトバック(辺境地域)に暮らすオーストラリア人のイメージは、こういう気取りがなくて、のんきで、タフな田舎者ということになるのでしょう。
ジェラルトンはいわゆるアウトバックではありませんが、この町から北は広大なブッシュ・カントリーだという、いわば州南部(都市部)と州北西部(辺境)との境目に位置し、パースに暮らす人たちからは、よく「荒っぽい田舎町」のイメージで描写されていました。
ステレオタイプの危険性を充分承知しつつ、それが「他者を見たときに特徴的に見えるイメージ」なのだということを実感したのも、サマンサたちと暮らしたときでした。
(中略)
こんな風に書くと大トラ・ガラッパチの女性を想像されるかもしれませんが、サマンサは裏表のない、大らかなやさしい人で、小学校の頃からの親友だというアボリジニ女性が、時々遊びに来ることもありました。その女性は、アボリジニが差別されていた当時でも、サマンサは今とまったく同様に、気楽に友達づきあいする子だったと言っていました。 そういう仲良しの友達もいるせいか、サマンサはアボリジニに対しても、好感を抱いているようです。それでも時折、苦情を漏らすこともありました。
<奇跡の2000マイル>
【奇跡の2000マイル】
ジョン・カラン監督、2013年豪制作、H27.9.2観賞
<movie.walker解説>より
ラクダ4頭と愛犬を連れ、オーストラリア西部に広がる砂漠2000マイル(約3000キロ)を横断した女性の回顧録を映画化。オーストラリア各地で大規模ロケを敢行、アリス・スプリングスからウルル(エアーズロック)を経由しインド洋へと彼女がたどった道程を再現している。監督は「ストーン」のジョン・カラン。製作には「英国王のスピーチ」のイアン・カニングとエミール・シャーマンが加わっている。冒険の旅に出た女性を「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカが、ナショナルジオグラフィックの写真家を「フランシス・ハ」のアダム・ドライバーが演じている。第70回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
<大使寸評>
ラクダ4頭と愛犬を連れ砂漠2000マイルを横断する実録の映画化なのだが、予想にたがわずかなりワイルドな砂漠、ラクダが見えて・・・ええでぇ♪
驚いたのはオーストラリアでは野生のラクダが闊歩していることです。
世界でも野生ラクダの数はオーストラリアがいちばんとのこと。
(オーストリア大陸へ家畜として人間が移入した後に野生化したようです)
それから・・・
向かってくる野生ラクダを撃ち殺すシーンがあるのだが、実際、野生ラクダは危険なので、砂漠横断には銃の携行はかかせないとのことです。
この映画で見えるラクダは、大使がサウジで見た種類よりもやや大きくて、かなり強面の種類のようです。
母の死があって以降、人間不信に陥っている主人公は、父親の跡を継ぐように砂漠横断を決意するわけで・・・ラクダを手に入れるために食堂やラクダ牧場で、アルバイトに精を出すのです。
ラクダ4頭を手に入れて、砂漠横断に踏み出すと・・・
過酷な砂漠や、アボリジニーとの交流がドキュメンタリー映画のように描かれていて飽きないわけでおます♪
彼女の砂漠横断は、ナショナルジオグラフィックの資金援助で実現したのだが・・・
この映画でも、5,6週間おきにカメラマンが撮影に訪れるのです。
movie.walker
奇跡の2000マイル
『奇跡の2000マイル』公式サイト
砂漠の映画あれこれ3
byドングリ
<鳥の王さま>
このところショーン・タンの本をしつこく追っかけているが、この本でショーン・タンの魅力の秘密がわかるかも?♪
【鳥の王さま】
ショーン・タン著、河出書房新社、2012年刊
<「BOOK」データベース>より
『ロスト・シング』でオスカーを獲得、『アライバル』で世界中の読者を魅了した作家の想像力の源泉を集めて贈る魅惑のスケッチブック。
<読む前の大使寸評>
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<図書館予約:(6/06予約、7/10受取)>
rakuten
鳥の王さま
鳥の王さま
byドングリ
ショーン・タンの画像を見てみましょう♪
bing
ショーン・タンの画像
より
proud parents
鳥の王さま、p16、17
<アボリジニー文化>
アボリジニー文化に関しては、The Didjshopのサイトが充実しています♪
オーストラリアのアボリジニー文化
より
オーストラリアのアボリジニー文化は、地球上で最も古い歴史を持つ現存する文化であると言われています。
サーモ・ルミネッセンスと近代の起源調査技術を用いたオーストラリア大陸における考古学調査によると、アボリジニーは少なくとも4万年以上前からオーストラリアに存在していたと言われています。また6万年以上前であるという指摘もあり、それを裏付ける証拠もいくつか存在します。
アボリジニー文化の特徴は、’自然との単一性’です。古くから伝わるアボリジニーの信念体系では、自然と大地はキリスト教における聖書と同じくらい重要な地位にあります。突起した岩々、深い渓谷、川、滝、島々、浜辺そして太陽、月、きらめく星々に動物たちと、それらは創造と相互連結のストーリーを各々持っています。自然環境こそが彼らオーストラリアのアボリジニーのバイブルであり、根幹なのです。また彼らにとってそれらは全て神聖なものです。
この自然への深い敬愛から、彼らは大地そしてそこに住む動物たちと調和を保ちながら生きてゆく術を学びました。
私たち現代人は、彼らから多くのことを学ぶことができるでしょう。
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