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2021.05.19
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カテゴリ: カテゴリ未分類
図書館で『民族世界地図』という細長い装丁の本を、手にしたのです。
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)





浅井信雄著、新潮社、1993年刊

<「BOOK」データベース>より
国境が変わり、民族が移動し、至る所で硝煙のあがるこの二十世紀末―。複雑をきわめる民族対立の歴史をふまえつつ、世界の緊張空間を地図三十枚に集約。

<読む前の大使寸評>
1993年刊行とやや古いが、国際政治経済情報誌「Foresight」で連載した記事をもとに単行本にしたとのことであるが・・・
とにかく、洋書のような装丁がお洒落なわけで、これがチョイスした決め手でした。(ややミーハーだったかも)

amazon 民族世界地図

映画『渚にて』

おバカ大国とも揶揄されるオーストラリアは好きな国なんだが・・・
オーストラリアの「迷い」が語られているので見てみましょう。
p111~115
<オーストラリアの「迷い」>
 世界中の新聞がソ連クーデターを一面トップで報じていた91年8月21日、オーストラリアの二大新聞、『シドニー・モーニング・ヘラルド』と『ジェ・オーストラリアン』の一面をほぼ埋めつくしたのは、前日議会で公表された新年度(91年7月~92年6月)政府予算案の記事だった。

 国民の関心はもっぱら悪化する経済の方にあった。新年度予算案をみると、5年ぶりの財政赤字への転落である。「人びとは宗教同然に経済にとり憑かれ、文化状況が歪んでいる」「お金の議論に熱中して、国家アイデンティティの重要な議論が忘れられた」などと嘆く声さえ聞かれる。

 オーストラリアのロシアへの関心の薄さは、南半球国家たるこの国の重要な特性である。ロシアがどうなっても大した影響なしとの認識だ。1959年制作の米国映画「渚にて」は、第三次大戦の核の恐怖がついにオーストラリアを訪れる恐怖をえがいているが、「ソ連の脅威が及ぶとしても地球上最後だ」の意識が重要だ。

 1988年、オーストラリアは「建国二百年祭」を祝った。1788年、英国のA・フィリップ海軍大佐一行がシドニー湾近くに上陸、植民地建設に着手したのを記念したものだ。一行千数百人のうち七百人以上が流刑囚で、この大陸を「地の果て」視したことがわかる。

 彼ら英国の価値観に基いて、アングロ・ケルティック系白人だけの新天地建設を目ざしたのだが、それが白豪主義と呼ばれる白人至上主義を強め、二種類の民族問題を抱え込んでいった。

 第一は、四万年以上昔からこの地で独特の文化を伝えてきた先住民アボリジニーへの迫害で、白人はスポーツとして「アボリジニー狩り」をした。植民開始当時、約30万いたアボリジニーは約18万に半減し、総人口1703万(90年)の1%強にすぎない。アボリジニーに市民権が与えられたのは1967年のことだが、「二百年祭」記念行事に招かれた彼らは当然ながら参加を拒否した。

 第二の民族問題は、アングロ・ケルティック以外の移民との摩擦である。1901年に「オーストラリア連邦」として独立へ歩みだすとすぐ非ヨーロッパ人を規制する移民制限法をつくり、それが60年代まで続く白豪主義を支えた。
 だが、第二次大戦後の経済発展期に入ると、人材確保のため移民増政策がとられる。アングロ・ケルティックだけでは需要を満たせず、他の西欧人、次いで東欧、北欧、さらにイタリア、ギリシャや南欧やトルコにも対象を拡大し、ベトナム難民などアジア系も受け入れた。

 戦後の移民受け入れは450万以上に達した。それでもアングロ・ケルティックが総人口の七割前後で白豪主義の基調に変化はないが、いま4%のアジア系が増加一途にあるのも否定できない。72年に登場したウィットラム労働党政権が唱えた「多元文化主義」は白豪主義の終焉を目ざす宣言に等しい。
 多元文化主義とは、民族・文化の多様性に価値を認め、その上に共生の政策と制度をつくることだ。個別の民族・文化の特性の保持を前提とするため、「サラダボウル主義」ともいわれる。

 ところが、外見上も異質なアジア系の流入は文化的には「脱欧入亜」への大転換であり、白人の間に伝統的なアジア警戒論を呼び起こした。またアボリジニへの人権論議も刺激した。80年代は「オーストラリア人のアイデンティティは何か」の国民的論争で沸き続けた。経済的苦況を引き金として民族紛争に火がつきかねないとの不安もある。


『民族世界地図』3 :複雑なロシア共和国
『民族世界地図』2 :日本人
『民族世界地図』1 :漢族





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Last updated  2021.05.19 00:13:11
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