BLUEVELVET日記_SecondSeason

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フランク・鰤杜

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2007.12.22
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カテゴリ: 番外編
クリスマスプレゼント

 常連のお客様で奥様、娘さん息子さんの四人家族の方がいらっしゃる。
 そして今年、もう一人、いやもう一匹家族が増えた。「クエルボ」とい雑種犬だ。
このお客様が、テキーラが大好きで犬の名前が「クエルボ」になった。
 その娘さんは小学校六年生、息子さんは四年生。まだサンタクロースを信じているそうだ。
 特に息子さんは、サンタクロースは八頭だてのそりに乗り、荷物をたくさんもってやってくる。その荷物の中に、自分のプレゼントがあると信じているそうだ。
 お客様は息子さんに「クエルボは外で飼っている番犬だ。夜中に人が庭に入ってくると吠えるだろう。だから、サンタクロースがうちにやってきたらクエルボが吠えて、サンタクロースが入って来れないかもしれない。だから、今年のプレゼントは無しだな。」と言ったそうだ。
 すると息子さんは「クエルボを家の中に入れてほしい」と真顔で言ったそうだ。

 息子さんに意地悪なことを言わないでくださいね。まだ、純粋なんだから。

 既に、時計はクリスマスイブからクリスマスに変わってしまっている。普段なら、もう閉めてもよい時間だが、先程までお客様がたくさんにいらっしゃった。そのほとんどがカップル。どこかで食事をして、良い事をした後だろうか、それともこれからなのだろうか。
 僕は二年連続で、クリスマスイブは出勤だ。彼女がいないから自分から志願したわけではなく、偶然だ。
 カップルを見ていると楽しそうに話をしている。普段だってデートくらいしているだろうに。
 今晩しか会えないわけではないのに、クリスマスイブだからかだろうか、それともプレゼントをもらえたからだろうか。
 話しが弾んで、せっかく作ったクリスマス用のカクテルには口もつけてくれないカップルもいる。
 クリスマス用のカクテルは、ヨーグルトを使ったレアチーズ風のカクテル。わざと赤と白のカクテルは避けた。
 「今晩はクリスマス用のカクテルを用意しています」と言っても、「あ、それでいい」と言って、カップルは話に夢中だ。
 ともかく、今晩はその繰り返しだった。
 僕は独りぼっちで、楽しそうなカップルを相手に呑んでくれないかもしれないカクテルを一生懸命作っている。


 心も体も疲れて、ホッと、一息すると。扉のところに影が見える。
 またカップルか・・・いや、そうではない!
 「いらっしゃいませ」
 「マダ、イイデスカ」
 「どうぞ、今晩は遅くまでやっています」

 「えっ!」
 なんと外人の年配の方と若い男性八人が入ってきた。
 なんでなんだ。
 会社のクリスマスパーティーでもあったのだろうか。スーツを着ていないから、そういうわけでもなさそうだし。僕はメニューを三つ取り出し、年配の男性に一つ、残りの二つを八人に渡した。
 「いかがいたしましょうか。」
 「ウォッカヲ、9ツ、ストレートデネ」
 「かしこまりました」
 僕はショットグラスを九つ用意した。そして、ワンショットよりも少し多めのストレートを作った。
 カップルじゃない分、少し多めだ。
 九人はショットグラスを持って、軽く乾杯をして、一気にあおった。そして、九人は顔をあわせて、にこやかな顔になった。
 年配の男性は人差し指をあげて、皆にもう一杯と九人のグラスをさした。
 「オカワリネ」
 「かしこまりました」
 僕は注ぎながら思った。「日本語はうまい!」日本人のように流暢ではないが、そこそこしゃべる事ができるようだ。もしかすると、英会話スクールの先生達かもしれない。今晩は生徒さんを集めて、クリスマスパーティーでもやったのだろうか。
 「日本語お上手ですね」
 「アア、オレタチ9ニンハ、ニッポンタントウナンダ。ニッポンニキテ、モウ5ネンニナルヨ。カンジダッテ、ヒラガナダッテ、ヨメルヨ」
 やっぱり、英会話スクールの先生だ。
 「コドモタチガカイタ、オテガミヲ、ヨマナキャイケナイカラネ」
 子供たちの手紙?子供向けの英会話スクールか。
 「ソレニ、ヒョウサツのカンジダッテ、ヨマナキャイケナイネ」
 なに、英会話教材の訪問販売もやっているのか。そういや、最近の会社では英語力もとわれるらしく、試験があるとお客様がおっしゃっていた。子供の頃から英会話かぁ。大変だな。
 「やっぱり、子供の頃からやっていたほうがいいですかね」
 「イヤ、オトナニナレバ、カレシヤカノジョガイルデショ」
 なにぃ!最近は外人の彼氏や彼女がいる奴がそんなに多いの。僕には日本人の彼女もいないのに。

 僕が困惑している間に、年配の男性が八人になにか話しかけている。
 「タシカ、キョネンハ、イヌガイナカッタノニ。イヌガホエルト、コドモガオキルンジャナイカト・・・」
 他の八人は年配の男性の話を黙って聞いて、うなずくだけ。なんだろう、あの年配の方が英会話スクールの偉い人なのだろうか。
 僕はあと片付けをしながら、年配の男性の声をところどころ聞いた。
 「サイキンハ、ゲームソフトバカリ。ニンギョウヤ、プラモデルハヘッタナ・・・・。12ガツにハツバイサレタバカリノ、ゲームソフトハ、タイヘンダ・・・・『ダッシャー』、『ダンサー』、『プランサー』、『ヴィクセン』ハ、テワケシテ、ヨクナランダナ。」
 名前を呼ばれた四人が彼らだろう、ニコニコとしていた。しかし、なんでゲームソフトなんだろう。そんな英会話の教材でもあるのだろうか。
 「デモ、サイキンノイエハ、エントツハナイシ、ドロボウヨケニ、ケイホウキガツイテル。スグニケイビカイシャガヤッテキテ、ドウナルカトオモッタヨ」
 警備会社?まさか泥棒。
 いや、こんな大人数で、そういえばさっきは、手分してとか言っていた。新手の外人泥棒団かぁ。まさか。
 僕は何がなんだか分からなくなってきたので、年配の男性に尋ねてみることにした。
 「あのぉ。ゲームソフトを英会話スクールで使ったりするのですか?」
 「エイカイワスクール?」
 「先生でよね」
 「イヤ、チガウヨォ」
 なにぃ?
僕は九人の姿をもう一度見回した。
 年配の男性に八人の若い男性。
 年配の男性に八人・・八、八、八頭だてのそり・・!!
 いや、そんなはずはない。
 サンタクロースなっているわけが無い。僕の枕元におもちゃを置いてくれたのは両親だった。
 しかし、話の内容といい、もしかして。
 「あのー、もしかして、サンタクロースですかぁ!」
 年配の男性はにこりと笑って、首をたてにふった。
 「じゃあ、プレゼントを配り終えたあとですか。いやぁ~、バー開けていて良かったですよ。」
 「アア、コノジカンニ、アイテルミセハナクテネ。ソラカラサガシテイタラ、ココガマダ、アイテイタンデ」
 「じゃあ、こちらの八人というか、八頭のかたはトナカイですか。どおおりで、何もしゃべらないで、サンタさんの話をずっと聞いていて。」
 「ニンゲンノスガタヲシテイルガ、ソノトオリ、トナカイナンダヨ。『ダッシャー』、『ダンサー』、『プランサー』、『ヴィクセン』、『コメット』、『キューピッド』、『ドナー』、『ブリッツェン』、モウイッパイモラエルカナ」
 「かしこまりました」
 まさか、サンタクロースがいるなんて。あのお客様の息子さんは正しかったんだ。それに、去年は犬がいなかったと言っていたが、息子さんのとこかもしれない。
 「ライネンモ、アケテオイテ、クレルカナ」
 「もちろんですとも」
 「ソレデ、バーテンダーサンハ、カノジョカラ、ナニカモラッタノカナ」
 「いや、そのもらったって、そのもらう彼女がいなくて。」
 「ソウカ、ジャア、バーテンダーサンニハ、ワタシタチカラ、カノジョヲ、プレゼントシヨウ」
 「えー。そんなのもらえるんですか。」
 「シカシ、カノジョヲプレゼントシタラ、ライネンハ、ミセヲアケテオイテ、クレンカモシレンナ」
 「いや、その時は・・・。あーどうしよう。」
 「マアイイ。アシタ、サイショニ、ハイッテクルジョセイガ、バーテンダーサンノカノジダヨ」
 「えー!」
 「ジャア、ソロソロカエルカラ、オカンジョウヲ」
 「いや、サンタクロースからお金なんかもらえないですよ。それにプレゼントもらっておいて・・」
 「ソウカ、ジャア、オコトバニアマエテ、メリークリスマス」
 「メリークリスマス」
 年配の男性は八頭といっていいのだろうか、八人のトナカイの後ろをついて出て行った。
 サンタクロースはやっぱいるんだ。それに、明日、いやもう今晩、最初に入って来る女性が僕の彼女か。
 気分がよくなった僕は、たくさんやって来たカップルのことなど忘れ、あと片付けを始めた。
 そしてバーの扉の鍵を閉めた。

 次の日、いやその日の晩だ。僕はいつもより早くバーにやって来た。下ろしたてのシャツに、髪の毛だっていつもより時間をかけてセットした。
 足元を見られて、靴が汚いといけないから、一生懸命磨いた。それに、見えないところもきれいにしておかなきゃいけないから、パンツだって下ろしたてをはいてきた。もしものときのためだ。
 そして、彼女が現れたの、扉の鍵を開けるとすぐだった。
 「よろしいですか」
 「どうぞ、お待ちしていました。」
 「えっ!」
 彼女は少し驚いたようだった。
 この女性か。
髪は短め、目鼻立ちがはっきりとしている。口はちょっと大きめで上唇が少しだけあつい。そして、黒っぽい上下のパンツルックに白いブラウス。身長だって高いし、すらりとした長い足。
 そして、タカラヅカを思わせるはっきりとした口調。気が強いかもしれない。
 それに、多分僕よりも一、二歳年上だ。
前から年上の女性と付き合ってみたかった。
ちょっとかわいがられるようで、好きだ。
 「どうぞ、カウンターの真ん中のお席へ」
 「いえ、立ったままでいいです。」
 「えっ!立ったまま」
 「わたくしは、博多署の××という刑事です」
 彼女はそう言って、僕に警察手帖と名刺を見せてくれた。
 刑事さんが彼女かぁ~
 「昨晩、サンタクロースを装った無銭飲食が、この近辺のバーで・・・・」

「・・・・やられましたか」
刑事さんは、話を聞いて落胆する僕を見てうなずき、そう言った。
 しかし、僕が落胆する理由は27杯のウォッカを飲み逃げされたことではなく、この刑事さんが僕の彼女ではなかったことだ。
 僕の好みのタイプなのに。

 GoodNight





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Last updated  2007.12.22 14:17:40 コメント(20) | コメントを書く


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