窓をたたく音がする。
誰かと思うとそれは雨だった。
あの人かと思ってしまった。
彼女は一途だから、
もしかしてこの嵐の中でも
僕のところに来るのではないか?
なんてうぬぼれてしまう。
今夜、逢おうと約束していたのだが、
嵐になるから取りやめたのだ。
それでも、もしかしたら、
と淡い期待をしてしまう。
突然電気が消える。
停電だ。
慌てて懐中電灯を探したが、
電池切れでつかない。
手探りで物置の奥の
ろうそくを取り出す。
マッチも一緒に取り、火を点ける。
ゆらゆらと揺れる炎を見ていると、
なぜか心が落ち着いてくる。
いくら彼女だって、
こんな嵐の中を来るはずがない。
そう思っていると、
今度はドアを叩く音がする。
もっと風雨が強まったのか。
呼び鈴まで鳴る。
さすがの雨も呼び鈴までは
押せないだろう。
慌ててドアを開けた。
ずぶ濡れになって立ってる彼女。
「なんでこんな嵐の中を。」
「こんな夜中にごめんなさい。
どうしても逢いたかったの。」
愛しくなって、
思わず抱きしめてしまう。
「早くシャワーを浴びて、
体を温めるんだ。」
素直にうなずいて、
バスルームへ向かう。
「着替えはどうしよう」
と彼女に聞くと、
「あなたがいい」と言う。
ドキッとしたが、
とりあえず僕のワイシャツだけ
洗面所に用意しておく。
まだ彼女とは
そういう関係になったことがないのだ。
お互い経験がないわけではないだろうが。
こんな嵐の夜にずぶ濡れになりながら
来てくれたのに、このまま
何もせずに帰す訳にもいかないよな、
と自分を納得させている。
シャワーの音と嵐の音が重なり、
ますます激しくなったように感じた。
嵐がやんだように静かになる。
シャワーが終わったようだ。
ワイシャツ一枚で現れた彼女。
抱き寄せてそのままベットへ。
後は夢のようで覚えていない。
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