MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」14





銀座に行くって言っても、

かぐや姫はどこにあるかも知らないんだよな。

やっぱり僕が連れていかなくてはいけないんだ。

電車にしようかと考えていたら、

以前、電車に一緒に乗った時のことを思い出した。

彼女の腕に触れただけで、ドキッとしたんだよな。

まあ、今でもキスまでしか進展はないけど・・・。

とにかく電車で行くことにしよう。

タクシーじゃ運賃がかかりすぎるからな。

一緒に電車に乗ったが、割に空いてる。

今日は、彼女もつり革につかまった。

前みたいに僕の腕につかまらせたいところなんだけど。

なぜか少し距離を感じるんだよな。

「僕につかまっていいよ。」と

さり気なく言ったつもりだったのに、

「あなたに頼りたくないから。」

冷たく拒否されてしまう。

「こうして一緒に行ってやってるじゃないか。」

つい恩着せがましく声を荒げてしまった。

「だから、これ以上頼りたくないの。」

ツーンと綺麗な顔を横に向ける。

「じゃあ、勝手にしろよ。」

僕もさすがに頭にきた。

次の駅で降りようとするが、

彼女は止めようともしない。

悔しいから、一旦電車から降りて、

隣のドアからまた乗る。

一人でどこまで出来るか見てやるんだ。

僕も結構意地悪だよな・・・。

彼女は、僕をしばらく探していたが、

溜息をついてから、窓の外をじっと見ている。

何を見ているのかと思ったら、

月が出ていたのだ。

雲が少しかかって、薄絹をまとっているようだ。

帰りたいのかとも思うが、

そんなことは言わない。

「銀座」のアナウンスを聞いて降りる彼女。

僕がいなくても大丈夫なのか。

少し離れてついていく。

尾行なんて、なんか情けないよな。

こんなんだったら、一緒に行ってやれば良かった。

彼女は駅を出て、歩道をさっさと歩いていく。

人込みの中で見失うまいと、早足で歩いていくと、

急に彼女が立ち止まって、振り返った。

見つかったかとあせったが、

また前を向いて歩き出す。

やっぱり一人では不安なのかな。

可哀相なことしたのだろうか。

また立ち止まり、小さなビルのネオンを見上げている。

意を決したように、そのビルに入り、

エレベーターのボタンを押す。

彼女だけを乗せたエレベーターが、

5階で止まった。

僕は階段で上がっていった。

結構きついな。

エレベーターにすればよかったか。

早足で上がったので、少し息切れしてしまった。

もう彼女は中に入ったらしく、ドアの前には居ない。

ドアには金色の文字で「月光」とある。

それで、このバーを選んだのか。

中から、女の嬌声が聞こえてくる。

「かぐや姫とはいいわ。

ここにぴったりよ。」

今だと思ってドアを開ける。

「こんばんわ。

かぐや姫が居るんだって?」

「いらっしゃい。よくご存知ね。」

愛想のいいママさんらしい。

「今聞こえたんだ。

かぐや姫を指名したいんだけど。」

「あら、残念。

もう別の人の指名が入っちゃったの。

最初から売れっ子ね。」

「だって、今来たばかりじゃないか。」

つい言ってしまったら、怪訝そうな顔で見る。

「そうだけど、お客さん・・・誰?

彼女のヒモならお断りよ。」

「そんなんじゃないよ。」

慌てて手を横に振るが、

かえって怪しまれてしまったかな。

「ならいいけど。かぐや姫以外にも、

綺麗な娘が揃ってるわよ。」

そう言われても、彼女以外は

興味ないんだよな。

というわけにもいかないから、

仕方なく誰でもいいと頼む。

続き



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