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豊は静にT家の主人が死んでいた現場の写真はないかと尋ねた。 この弟はその昔、ある地方で発生した未解決の母子殺人事件で、一枚の写真と現場状況の説明を聞いて、殺人ではなく心中事件と見抜いたことがあった。静は後日医者に聞いてみると答えた。 「殺しは現場が大事なんだ。現場の状況がかもし出す雰囲気が、事件の真相を語りかけてくるんだよ。T家の主人が倒れていたという応接間の細かい状況が知りたいとこだな」 (なあおい。扇風機をかけっ放しにした死亡例って聞いたことがあるか?) 静がふと思いついて聞くと、豊は黙った。そして一呼吸おいて意外なことを問いかけてきた。 「ところでさしずさん、扇風機に吹かれてれば人って死ぬものなの?」 静は一瞬絶句した。 扇風機に吹かれるうちに人は全身機能障害から低体温に陥り、心臓麻痺で死に至る。死への順序はわかっている。だがよく考えると、静は“扇風機で死にかけた患者”および“扇風機遺体”の経験はない。長い医者生活の間、噂を耳にしたこともなかった。 「おれも扇風機が好きで、うっかりかけっ放しで眠ることもある。でもこの通り」 生きてるよ、と豊は続けたいのだろう。つけっ放しの扇風機は家族などが止めたはずだ。 こういうふうに、豊は素朴な疑問から推理に入る。疑問に解答を得て、次に進む。 今回も、扇風機を原因とする死に医療行為の専門家であるこの兄が出会っていない以上、扇風機に吹かれていて人が死ぬかどうかは豊には判断できなかった。ゆえに、扇風機のつけっ放しによる人体への影響に関心を持つというのが、彼なりの推理の順序になるのだろう。 あらためて訊かれると、静も扇風機と人の死の関係に自信を持って答えられない。法医学の教授に細部にわたり、質問を詰めなければならないと考えた。 「扇風機はたしかに動いていたんだね?」 豊は自分のおやつを食べてしまったのがいずれの兄かを突き止めようとするかのような尋問口調で尋ねてきた。 動いていた。医師は押されている「強」のボタンを確かめて「停止」ボタンを押した。 「首は振っていなかった」 (そう聞いている) 「扇風機と死体は距離にしてどのくらい離れていたの」 (それは・・・・) 静は老医師からそこまでは聞いていない。だが、非常に重要な質問だと感じた。会って、確かめなければならない。 「応接間の電気はついていたのかな」 (どうだろう・・・・) 「その事件、いや事故かもしれないけど・・・・いつの話?」 (それは追及しない約束になっている) この“冷たいカルテ”を打ち明けられる時点で、静は老医師に何年前の症例かと聞いている。だが、医師はそれには一切答えないことを条件に話の穂を継いでいた。静の予想では、7,8年、長くても10年以内の事件だと思った。このカルテが殺人事件なら時効は十五年以内であり、T家の夫人の罪は成立し、同時に医師も処罰の対象になる可能性があった。発生の年月日を言わないのも当然である。医師は事実だけを知りたいのだ。 豊もすぐ事情を呑み込み、深く追求せずに話題を変えてきた。兄に扇風機をかけっ放しで寝たことはないかと訊いた。 (ないな。ぼくは扇風機が嫌いなんだ) 「おれはよくかけっ放しで寝るけど、目は覚めるよ。くしゃみが出たりしてさ・・・・寝込んじゃったT家の旦那さんがよくわからない」 (酒を飲んで帰ってきて、風呂のあとまたビールだ。かなり酩酊してたんじゃないのか) 「考えられるな。缶ビールの中身は検査してないよね」 (検査してないと思うがな) 「しずさん。なんで目を覚まさなかったかというのが、この件の鍵じゃないかと思うよ」 (そうか・・・・) 生返事になったのは、弟の視点とズレを感じたからだ。 T家の主人が覚醒しなかったのは過労に加えて、飲酒、それに睡眠薬を盛られたかのいずれか、またはその複合的な理由によるものに違いなかった。鍵は夫人に殺意があったかどうかに思えたのだが、豊はそう見ていないようだった。 いずれにしても、静は再度、老医師に会わなければならない。弟から宿題を課せられたのである。 (さて、そっちの尾行の話に戻るが・・・・ともかく、おまえはいちいち危なっかしくていけない。差し当たって必要と思われる書類を留学生楼宛てにEMSで送っといたからな。友人の法医学者から特別にコピーさせてもらった、警視庁の尾行要員教習マニュアルだ。ちゃんと目を通しておけよ) 「警視庁じゃざっと読んだくらいで素人が尾行要員になれるもんなのかよ。いいかげんだな」 (文句は読んでからにしろ!) 「わかったってば!」 (おい。ひとつだけ注意しておく) 「んん?」 面倒臭げに相づちを打つ豊を恫喝する勢いで、静は一気にまくしたてた。 (虫も殺さない顔だからって油断するなよ。こういう女にかぎって偏執狂なものだ。そうじゃなくても人に付きまとって悪事を為す性悪なのだ。兄へのこまめな連絡を欠かさないようにな!)←しずさん、単にゆんゆんに電話してもらいたいだけなんじゃ・・・・。 次回交信更新は7月2日(日)。 ●秒殺●です。何にコロされた!? オットによる本日の日記----------------------------------- DVDのリモコン、見つかったーーーーー!!!!! 平和よありがとう 鳩よ飛べ 参考文献は じゃなかった→こちら ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ◆最近暑過ぎ。ぼくの友人が訪ねたインドな気分にちょっとならないか。
2006年06月30日
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『イカとタコ』第三節●タコ● 「それが・・・・」 夫人は少し言いにくそうにして、 「もう二十年も前から寝室は別でした。主人のいびきには誰も耐えられないと思います」 「そうでしたか・・・。寝室で寝るようになぜ強く言ったのですか?」 「ゴルフ狂というのでしょうか。グリーンに出ない日は練習場でボールを打たないと気が済まないのです。そこで一緒の人と飲んで食事をして帰る毎日でした。お風呂を使い、缶ビールを飲みながらそのソファで休むのですが、寝入った日の朝方はくしゃみを連発しているのです」 「夏風邪ですか」 それにしては診察に来ないと医師は思った。他の医者にかかるはずはなかった。 「風邪をひく一歩手前です。この暑いのに朝から卵酒を作らされました」 「扇風機もいつも?」 「いえ、その日の気分によるのでしょうが、クーラーが嫌いなもので」 応接間の戸は開け放たれ、窓もすべて開いていた。 医師が主人の足もとをふと見ると、スリッパのあたりが濡れていた。合成樹脂のスリッパで、足底とスリッパの間が水に浸したように濡れている。もとはもっと濡れていたのではないかと思われる。医師はすでに死後硬直の始まった脚を持ち上げ、足底部とスリッパを観察した。足底部はやや赤みを帯びた死斑が強い程度で異常はなかったが、絨毯にも少し濡れた跡が残っていた。 「この濡れた足はどうしました」 「何度言っても直りません。お風呂の後、足も拭かずにそのままスリッパを履くのです。廊下も絨毯も濡れるのでやめてほしいと頼むのですが・・・・気持ちいいからと」 「気持ちがいい? 濡れたままのスリッパを履くのがですか」 「私も普通は逆だと思います。ただ主人は濡れているのが気持ちいいといって・・・拭くのが面倒でそんな言い訳をしていたのかもしれません。全く子供のような人でした」 「そうでしたか・・・」 目を移すと、テーブルに缶ビールが二本乗っている。二本ともロング缶で、一本は栓をしたままだった。栓の開いた方を医師が持ち上げてみると、わずかにビールが残っていた。鼻を寄せてにおいをかいでみるが、アルコール臭がするばかりである。 「お風呂の後、二本飲んで寝るのが習慣でした」 夫人が気をきかせて注釈した。 「一本まるまる飲み残していますね」 「昨夜は相当お酒が入っていましたので、二本飲めなかったのでしょう」 「つまみらしきものはありませんね」 「なにか食べながら飲むように常々話していたのですが、酒が不味くなるといって・・・」 夫人は困り果てた表情だった。 医師は改めて応接間を見渡したが、特筆するような異常は見つからなかった。 ついで、医師は主人の姿態を仔細に眺めた。 右腕は肘掛けにもたせかけ、手先はだらりと床に向けて垂れている。一方、左腕はまっすぐソファの背もたれに伸びていて、手のひらが上部に止まって天井を向いていた。 身体の表面には何ら異常が見られなかった。が、背もたれの上部に置かれた左手のひらに何ヶ所か皮膚変色が見られた。人差し指から小指にかけて、それぞれ指の付け根がやや盛り上がり、小豆大に灰色に変色している。触れると変色部分が硬くなっていた。 医師が遺体を前にして初めて発見した異常である。 「これは何でしょう」 医師は振り向いて夫人に尋ねた。夫人はおそるおそる手のひらを覗き込んだ。 「この部分、豆のように硬くなっています」 「ああ、それはゴルフで出来たタコだと思います。主人は一日としてゴルフクラブを握らない日はありませんでしたから」 「なるほど、タコでしたか・・・・」 医師は肘掛けに垂れている右手の方も観察した。この手の方にも指の付け根にタコが並んでいた。もはやゴルフタコに疑いなかった。 「先生、主人は自殺でしょうか」 夫人は急に尋ねた。 「自殺?」 あまりに唐突な質問に、調子外れの声が出た。 「ご主人のどこが自殺ですか。それとも、自殺するような言動でもありましたか」 「いえ、何もありませんが・・・・」 「では、どうしてそんなことを聞かれるのです」 「自殺ですと・・・・これは噂を耳にしただけですが、警察が来て調べると聞きましたから」 「それは調べます。自殺でなくても、変死の場合はすべて検死を受けるのが決まりです」 「変死・・・・」 夫人は初めて耳にする言葉におののいたようだった。 「主人・・・・主人の場合はどうなるのです?」 「正しく言えば、変死です」 変死には違いなかった。ただ、死亡原因は扇風機をかけっ放しのまま酔いつぶれて心機能不全に陥ったことが考えられた。その根底には不整脈の持病があった。 医師はT家の主人の死を確認しながら、警察に通報すべきか迷った。これがあまりよく知らない相手なら、迷いなく警察に報せていた。だが自分は主人の家庭医として日頃から健康を管理している。一週間前に健康診断を終え、異常なしの結論を出している。死亡原因を明らかにするために行政解剖に付すことも考えられる。だが当分治療の必要なしと診断した相手に重大な病気が隠されていたり、重い不整脈でも見つかれば自分に誤診を問われるおそれも生じる。開業の存続も危ぶまれるだろう。 ──急性心不全。 その病名の下、あらゆる問題は解決する。夫人は主人の死に際し、門前にパトカーが到着し、ヤジ馬が群がる事態をおそれているのだろう。名家ならではの見栄と危惧だと思えば不思議はない。さらにまた、医師は主人の死に犯罪性を感じなかった。夫婦仲は普通だったし、主人の死の前の数日中にも普段と変わった様子はなかった。 ──やはり、急性心不全しかない。 医師はようやく胸の中で決断を下していた。 「ご主人は正しくは変死ですが、私の患者であることも事実です」 「どういうことでしょう?」 夫人は怪訝な顔をした。 「ご主人は私の患者ですから診断は私が下します。心臓が悪かったご主人は急性心不全で本日亡くなりました」 「すると警察は・・・・」 「呼ぶ必要はありません」 不確かな部分はあったが、医師は夫人にそう申し渡した。 まだ眠っていた夫人の妹を起こして手伝わせ、主人の遺体を客間に移し、清拭を済ませて横たえた。その際も医師は遺体を詳しく観察した。だが異常は見つからなかった。 医師は死亡診断書を書いて辞した。T家の主人の死亡が医学的に確認されたのである。 これが事が終われば“冷たいカルテ”にはならなかった。 だが、主人の葬儀が済んで二、三ヶ月ほど経ったあと、医師の耳に妙な噂が聞こえてきた。 それはT家の主人の女性問題にまつわるもので、主人が夫人の妹を手込めにしていたという話だった。夫人の妹というのは夫人と十三歳も年齢が離れていて、40代だった。もともとは電気店に嫁いでいたが、夫が新事業に失敗して自殺したのを機にT家の世話になっていた。その妹を女好きなT家の主人は囲い女のように自由にしていたという。作り話なら悪趣味としかいいようがなかった。だが本当に妹と関係があったのなら、その不実に姉妹が力を合わせて天誅を下した可能性も出てくる。 それから後も、散発的にT家の噂話が医師の耳に入ってきた。 T家の主人の死後、多額の生命保険が夫人ばかりか妹にも支払われたという話だった。この話は気になった。 医師は生命保険会社の嘱託医もしているので、出入りの外交員にそれとなく確認したところ、医師も驚くような億単位の多額な保険金が、確かにふたりに支払われていた。 このとき、医師の背筋に冷たいものが走った。もしかすると、姉妹による殺人に巧妙に乗せられたのかもしれない。だが噂は広まったものの、警察が医師のもとに話を聞きに来たことは一度もなかった。T家の主人の死は、医師の手によって正当に処理されている。殺人など、身近にありえない話だ。だがやはりどこか気になる。 その気になる話を持っていった先が、不二静医師だったのである──。 兄の“冷たいカルテ”の話を聞き終わった豊は、国際電話の受話器に向かって、 「それは少し臭うな」 とつぶやいてしばらく黙っていた。そしてややあってから問いかけるようにして言った。 「殺しの可能性があるんじゃない?」 次回は●弟の質問●です。 兄さんになにを訊くのかな? 本日の日記------------------------------------------------- 『プロフィールが確定しました!』(ぴょんぴょん跳び上がりながら) プロフィールについて、皆さまからアドバイスいただけたこと、本当に感謝です! はじめに、秋野真珠さんのご意見として、「誕生>きっかけ>転換>結果>現在」についてしっかりと書き込んだ方がよいとのアドバイスが編集部に注目され、以下のように編集者に書いていただくことができました。真珠さんの快刀乱麻の至言が、余すところなく反映されているプロフィールだと自負しております。 真珠さん、真珠さんからアドバイスをいただいて、なんだかこのプロフィールに関して、翻訳のパートの履歴書であるかのように勘違いしていた小夜子は、夢から醒めたかのように視界がはっきりしたのです。本当に本当にありがとうございました。 そして、架月真名さんからは、「最近ではホームページのURLを載せてるケースをよく見ますが、ここのを載せたらダメなんでしょうか」という実践的アドバイスをいただきました。こちらも編集部が快くOKを出してくれました! 実は私、アルファポリスには市民サイトという登録項目があるし、HPではない楽天のブログというかたちでのURLはNGなんじゃないかと杞憂していました。けれども、これはまったく問題なくクリアです。真名さん、ありがとうございました。本のプロフを読んでくれた方が、小夜子のブログに遊びに来てくれて、そこで真名さんにも出会って・・・素敵なつながりを夢想してしまいます☆ 草稿の段階の「2005年8月、パートのギャラでPCを購入し、『青木学院物語』のHPを立ち上げたことで人生が変わった」との一文に感涙してくださった舞夜じょんぬさま、アルファポリスに出会えたこと、出版化にこぎつけられたこと、そのすべての節目にじょんぬさまのお力があります。本当にありがとうございます。感謝してもしきれません。胸いっぱいの想いを、どうかお受け取りくださいませ。 ─── 山口小夜(やまぐち さよ) 1972年生まれ。横浜市出身、東京都在住。 聖心女子大学文学部歴史社会学科卒業。 高校在学中に、自らの体験を基にした小説『青木学院物語』を手書き で大学ノートに書き上げる。本書の前身となったこの物語は、学年を 超え多くの生徒達に熱心に廻し読みされ、やがてその評判を聞いた印 刷会社が好意により無償で製本、当時の同級生や知人らに配られるこ とになった。 それから10年以上の歳月を経た2005年、病に倒れた友人の希望により 一念発起。原稿に改良を加えPCに打ち込むと、ネット上で公開。 (以下略)出版化に至る。 HP「山口小夜の不思議遊戯」 http://plaza.rakuten.co.jp/fujikkofamily/ ─── よくあるプロフィールとは一風変わっていて、私は気に入っています。 皆さまに一足お先に、奥付に載る「プロフィール」の部分をお知らせ致します。 小夜子とともに喜んでいただき、ありがとうございました。 次回更新は6月30日(金)「サインについて」・・・どうかお楽しみに! ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ ありがとうございます。励みになります!
2006年06月28日
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ある日の早朝、老医の診療所に一本の電話がかかってきた。 T家の夫人だった。その土地の名家で老医はその家族を昔から診ていた。 夫人が取り乱した様子で、 「先生、主人、主人が死んでいるようです」 と電話口で告げた。 「死んだ・・・・」 そう呟いた老医師は絶句した。「主人」というのは67歳のビル経営者で、身近な患者だった。心臓に不整脈が出ていたが、ここ一年具合が良いというので服薬を中止していた。一週間前に半年に一度の定期健康診断を実施したばかりで、血圧が多少高い程度のほかこれといって治療を要する身体ではなかった。それが死んだと聞いて、にわかには信じられなかった。 「ソファで主人が冷たくなっています」 「死んでいるのですね」 「そうだと思います。まだよくわかりません」 夫人の言葉は涙声に変わった。 「すぐ伺いますから、そのままにしておいて下さい」 医師は電話を切り、T家に急いだ。まだ朝まだき、6時前のことだった。 夫人は門の外に出ていて医師を出迎えた。広い邸宅ながら住んでいるのは夫婦と夫人の妹の三人だけである。夫婦に実子はいなかった。 「こっちです。こっちです」 夫人は医師を家の中に導いた。意外にも夫人は寝室への階段を上らず、一階の応接間に案内した。二十畳はある広い応接間に調度品が並び、中央にソファとテーブルがある。 その革張りのソファにT家の主人が肘掛けに右半身を預け、横たわっていた。後頭部は天井を仰ぐ姿勢で背もたれの上部に置いていた。血の気は失せて顔面蒼白で、一見してすでに骸と化していることがわかった。主人は白いバスローブを身にまとっている。酒の匂いが漂っているのは、テーブルに置かれた缶ビールのためだろう。 医師はただちに主人の頚動脈に三指をあて脈をとった。予想した通りこと切れている。瞳孔反射はなく、眼球はわずかに溢血点がみられた。聴診器を胸に這わせたが、心音も呼吸音もない。 「お亡くなりですね」 医師は応接間の入り口で身を縮めたまま立ち尽くしていた。何か言いたそうにしている。 「本当に・・・先生・・・」 ようやくかすれた声が出た。 「残念ですが・・・」 そのとき医師はつけっ放しにされた扇風機に気づいた。 スタンド式の背の高い扇風機だった。青い羽根が勢いよく回り、強い風を死んだ主人の方に送っている。主人の診察に一生懸命だった医師はその意外に強い風に初めて気づかされて驚いた。 「扇風機は回ったままでしたか」 医師は尋ねた。 「ええ、まわっていました」 夫人は小声で答える。 「この風は危険です」 いさめるように医師が言うと、 「そのままにしておくように先生が言われましたので、何も触らずにおきました」 夫人は言い訳めいて口にした。医師の指示に従っただけという考えである。 「止めましょうか」 「いや、わたしがやりましょう」 医師は扇風機に近づいた。扇風機は強風で体熱をとる働きが度を越せば死さえ招く危険な道具である。高齢者、乳幼児、免疫力低下の病人──特に心臓に疾患のある者にとっては突然死を引き起こす、危険極まりない製品である。 応接間の扇風機に首振り機能はない模様だった。風は「強」のボタンが押されていた。 「この扇風機はいつからついていましたか」 送風を止めて医師は尋ねた。扇風機をつけっ放しにしたまま寝入って、体温が急速に下降し、循環障害が発生、各臓器に異常をきたし、呼吸数心拍数は減少し、血液内で酸素の運搬に支障が生じて心臓の筋肉は低酸素症に陥り、やがて心停止。つまり急性心不全を起こしたと思われた。まして相手は不整脈で治療していた患者である。扇風機の強風への抵抗性は、健康人より数段劣っている。 「昨夜、遅くからだと思います」 「思いますとはどういうことですか。一緒ではなかったのですか」 「主人が帰宅したのは十二時頃でした。それまでは起きていたのですが、私は疲れていまして門柱と玄関の電気を消して寝ました」 「奥さんが寝たあと、ご主人はお風呂に入って、ここで休まれたのですね」 「お風呂好きな人でした。寝る時は寝室で寝るようにあれほど強く言っていたのですが・・・」 夫人は口惜しそうだった。 「寝室にご主人が来ないので変だとは思いませんでしたか」 「それが・・・・」 夫人は少し言いにくそうにした。 次回更新は6月28日水曜日●タコ●です。 T家の主人が・・・タコだったといかいうオチはないですから。 本日の日記-------------------------------------------- 本文、おどろな内容で恐縮です(笑) 法医学推理モノを狙っているのですが、皆さまも話が進むにつれ、ゆんゆん&理系美人(←誰だ)と一緒に推理してみて下さい☆ 本日、午前中に『三校が無事到着』したとの連絡が編集部から入りました。 実はこの三校、昨夜10時過ぎに郵便局の本局窓口(24時間稼動)まで行って郵送したものです。「渋谷区なら明日の午前中に届きますよ~」との局員さんの言葉に半信半疑ながらも時間指定で送付しました。そしたら、ちゃんと届いた! 宅急便の集積所でもダメだったのに・・・郵便局もたまには役立つこともあるのですね。ちょっと見直しました。 三校送付の後は、よほどのことがない限りは私が原稿をチェックするなどの細かい作業からは解放されます。皆さま、リライトからの長きにわたり応援いただき、本当にありがとうございました。おかげさまでこの期間、全力を尽くして駆け抜けることができました。本当に本当に皆さまの応援メッセージの賜物です。心からの感謝を──。 さて。本日はちょっと趣向を変えて、兼ねてから延期が続いておりました『現代幼稚園事情』についてお話させていただければと思います。 実は私、子供を持つまでは、幼児関係の話題について「世界で一番興味のない分野だ・・・」と思い込んでいたサボテン女だったので、「知らなかったのか!? そんなん今は常識だよ」という話題だったら恐縮なのですが・・・最近の幼稚園の運営というものは、ものすごーくハイテク&利便化されている! ということに今さらながら気がついたのです。 そのひとつ。 娘の美祝は“園バス”なるおもちゃ箱のような小型バスに送迎してもらっているのですが、今や“バスナビ”という機能があって、バスが自宅から二個前の信号まで近づくと、自宅のPCおよび携帯電話にそのことを報せてくれるのです! なので、それが鳴ってから玄関を出るとピタリ送迎に間に合うということで、とても便利に使っています。雨の日などには本当にありがたい機能です。 この“園バス”に関しては、まだまだ便利にしていることがあります。 園バスには地域ごとに分かれていろいろなコースがあるのですが、なんと1ルートにつき2便バスが出るのです。つまり、7時台便と9時台便で、働くママのいる子には早い便。主婦のママの子は2便で幼稚園に向かうのです。私は2便で大丈夫なのですが、これ、働くママにとっては涙が出るほど嬉しいバス便だと思うのです。早い便に乗ってくる子は、幼稚園で遊びながら2便のお友達の登園を待ちます。同じように、お帰りのバスにも2便があります。 まず、2時台の先発便。これにうちの子のような主婦のママたちの子が乗ります。 この帰りの1便にも、便利な制度がもりこまれています。すなわち、プールやピアノなど、他のお稽古事がある子は、事前に一週間のカリキュラムを園に連絡しておきます。すると、お稽古事のある日は、いつもの行き帰りのルートのバスではなく、その最寄まで行くルートの園バスに乗せてもらって、そこで降ろしてくれるのです。ママたちはお稽古事のあるお教室の前で、バスの到着を待っていればいいのです。 後発の方はちょっと遅くて、18時に最寄の駅前にだけ園児を送り届ける便が出ます。 つまり、幼稚園の保育時間が終わってから、“お預かり”という時間があって、これは500円程度の追加料金で4時間延長して子供を預かってもらえる制度なのです。午前保育の場合は二倍の値段でやはり午後6時までお預かりが可能です。 働くお母さんたちはもちろん、主婦ママでもなにかの用事があった場合、9時に園バスで子供を送り出してから、9時間も親は自由、午後6時に指定の駅に到着すれば、幼稚園までお迎えに行かなくてもそこで直に子供を受け取れるというわけです。 お預かりの間も、ただ漫然と子供たちを遊ばせているのではありません。月・水・金はプロの体操教室の先生たちが開講する“体操教室”“新体操”“サッカー教室”、火・木はそれぞれ“学研”と“公文”のお教室が入って、おやつの時間をはさみながら園児の面倒を見てくれるのです。 信じらんねーっ!!! 初め説明を受けた時、マジでそう感じました。 給食だって毎日あります。我が家はお弁当派なのですが、一ヶ月前に献立表が配られるので、おもしろそうな献立(カレー、うどん、そうめんなど)があればあえて月に二回くらいは給食にします。夏場など、食品がいたみやすい季節などは給食の方が安心かもしれません。給食といっても、近隣の主婦たちが立ち上げた会社で、作りたてを持ってきてくれるのでいわゆる「給食の感じ」はしないのです(味見済み☆)。 バスの送迎はともかく、幼稚園のお預かり、給食の制度には賛否両論があることでしょう。 フルタイムのお仕事をされているお母さんの子供が、近くにご親戚もなく、毎日幼稚園にお預かりになることも大変だなぁと私も思います。けれども、再校の校正中、一度だけ娘を“お預かり”してもらった時、やっぱりありがたいと実感しました。美祝も「明日またお預かり行くね☆」とせがんでくるほど、園も楽しいひとときを工夫して提供してくれているようです。 どの幼稚園もそういう形態をとっているとは考えられないほど、いろいろな制度が徹底しているうちの子の幼稚園ではありますが、ただ近くにあって悪いウワサも聞かないからという理由だけで入園してみて、とにかく驚いたことが多かったので、本日ここに特筆させていただきました。 現代幼稚園事情──皆さま、いかが感想をお持ちになったでしょうか。 親の都合に合わせるかたちの制度の充実という見解も否めないと思います。 「うわ~、ベンリ!」という率直な反応もあるかと思います。 重要なことは、そういった利便性の恩恵を受けつつも、家庭内で親子が仲良しであれば、ほかはなんであってもそれがイチバン! であるような気がします。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!
2006年06月26日
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『イカとタコ』 第二節●冷たいカルテ● (ちょっと、いいかおまえな、豊!) 静からの国際電話の怒声が脳天を直撃する。 (バカものが! 聞いていればなんでそう、教授に向かって口のきき方がなってないんだ!? おまえ何様のつもりだ!? 外国語の時はガラが悪くなるから気をつけろってあれほど・・・・) 「だぁって!!・・・・あの男、天罰だよ。こんな美人ポイするなんて──それも理由も言わないで研究グループから外すなんてひどい捨て方でさ・・・・せいぜい付きまとわれて放火でもされてりゃいいんだ」 研究レポートならぬ、探偵レポートに留められた写真をかざし、豊は口を尖らせた。 それは依頼人の教授の自宅の裏にひっそりとたたずむ女性、郭錦詩の姿であった。 美人というのは誇張ではない。色白でなめらかに整ったデリケートそうな卵形の顔。ゆるやかに肩に波打つ漆黒の髪。海のように深い憂いに濡れた闇色の瞳。唇だけに残る幼さ。 雨の夜の撮影だったので、薄手のコートをはおったスレンダーな身体が濡れて、ひどくはかなげに見える。ポケットに手を突っ込んで駐車場からじっと見上げている──開かない窓を。王志軍のいる部屋の窓を。 見ているだけで同情できるような写真だ。むしろ自分も加勢して王志軍の玄関に、猫の死体でも放置してきてやりたい。 (尾行のターゲットが織と結──双子の姉妹。静の妹で豊の姉──の年齢ねぇ。ま、おまえには打ってつけのケースなのかもな。どうしたわけか、三千世界の妖異込みで年上ウケする男だからな、おまえは。おちょくってみたくなるタイプなのかもしれん) 「喜べねーな」 (ところで豊。例の“冷たいカルテ”の件だが) 静がいきなり話題をふった。 彼の最近の懸案──医者の世界の“事件”に関することだ。医療の現場でもかなりの上役になっている静だが、その知識を見込まれて、刑事になった友人から専門知識を借りられることも少なくない。静自身も迷宮入り犯罪に関する嫌悪と挑戦心は尋常でないところがあり、その全貌を明らかにしようとするあまり、自分の専門知識に頼るのみならず、遼や豊の直感を総動員させることもままある。 “冷たいカルテ”というのは死因が明確でないにも関わらず医者が書いた死亡診断書を指す。他方では誤診や医療過誤を指す“苦いカルテ”というものも存在するが、いずれにせよ経験を積んだ医者であればあるほど、一枚や二枚持っているものである。それだけならいいが、場合によっては数え切れないほどのカルテをしまっている医者もある。 家族の誰かが自宅で死亡した場合、遺族が警察の介入を忌避することがままある。世間体やその後の手続きの面倒などの理由だ。よって、面識のある医者があるなら、その医者に懇願して死亡診断書を書かせてしまう。医者の方も家族からの様子を聞いて、原因がある程度固められることや、犯罪性を疑えない場合はその場で不確かな死亡診断書を出してしまうことは少なくない。そうしたいわば善意で発行した死亡診断書の中に、あとで振り返ると疑問符の残る死が思い出される場合がある。 目下、静に引っかかっているのは、ある内科の老医が告白してきたケースであった。 次回更新は●T家の夫人●です。 しずさんの心にひっかかっている事件の全貌が明らかにされます。 ご期待ください! 本日の日記------------------------------------------------- 皆さまおはようございます! ブラジルとのことはもう何も言うまい。こちとら身近なニュースといえば、うちの子のクラスが昨日金曜日に“学級閉鎖”になりました。現在、親の方が苦しんでいる“咳風邪”ではなく、“プール熱”&“手足口病”だそうです。が、娘はどこ吹く風なので、昨日から家で元気を持て余し気味です。つか、“プール熱”&“手足口病”って、何!? 病名聞いただけでもなんだか怪奇なカンジがするのですが(こわいよ:泣)。 というわけで、本日午前中に『三校が到着』したのを受けての更新です。 さすがに三校なので、青(訂正要求箇所)は少ないです。この三校は、著者が見ることのできる最後の原稿となりますので、念押しの意味で“念校”とも呼びます。念校を送付した後、著者である私にできることはもはやなくなります。その後の出版までの日々は、ひたすら、出版社を信じてお任せするのみとなるのです。 さて昨日、この三校が本日の午前中に届くこと、締め切りが26日月曜日であること(ひえ~っ! 明日には出さんといけんが~)との編集部からのメールを受け取り、そこに『プロフィール』を書くようにとの付け加えがありました。 プロフィールについては、26日締め切りではないそうです(とはいえ、来週前半には書き上げるべきだとは思いますが)。 プロフィール──つまりいわゆる一般的な書籍に掲載されている「著者紹介」の文とのことです。 「著者紹介」であって「著者自己紹介」ではないので、フレンドリーな調子というのではなく、あくまでも事実を伝えるイメージで、スペース的には横書き10行くらいとのことです。 となると、どうなる? 事実を列挙するならば、こちらのブログのプロフィールに実際の大学名を入れた感じになるのかな。 アルファポリスで既刊になっている作者さんたちのプロフィールも確認してみたのですが、かなり千差万別で、どれがどうというより別段に目を引いたものはなし──(辛口)。 私にしても、『青木学院物語』にとって必要な著者略歴は、 1972年生まれ、横浜市出身、東京都在住。 くらいなものなので、正直言って何を書けばいいのか迷っています。 あんまりフリースタイルに書くと、『青木』に流れる空気を壊してしまう。 同じことは、『鳥取物語』にも言えるのでしょう。ネタっぽい話は『不二一族』関連にこそ似つかわしいもの(笑)。 三校で“プロフィール”の位置を確認して、その後メールで送信すればOKだそうですが、そんなに時間的にも余裕はなさそう。 ううーん。私の略歴は余分なものが多いので、ことさらに列挙するのもはばかれるが、実際の大学名などを入れると卒業生や関係者などの親近感を得られるかもしれない──それを見込んで入れてみるのもひとつのアイディアかもしれません。 ここだけの話、これが実際のプロフィールです。下記のどこまでかは実際の奥付の部分に載るのでしょうから、ここで公開してしまいましょう。具体的に挙げておいた方が、アドバイスもいただきやすいでしょう。 1994年、聖心女子大学文学部歴史社会学科卒業 その後、中国に留学、帰国して博士課程まで行ったがあまりイミはなかった。 本業は主婦、たまにパート(オットのゴーストとも言う←けど、これは書かない)で各種ライター及び翻訳業など。東京書籍『仏教美術事典』項目執筆。 2005年8月、パートのギャラでPCを購入し、『青木学院物語』のHPを立ち上げたことで人生が変わった。 こんなのでいいのかなぁぁぁ??? 皆さま、事実を伝えるプロフィールを書くようにと言われたら、どんな感じに仕上げることになるでしょう。ぜひお知恵を拝借できればと思います。「青木とは全然関係ねーじゃんか!」など、なんか文章が鼻につくようでしたら、どうかご指摘ください☆ 次回更新は、三校送付後の6月26日月曜日をメドに予定しております。 夜になっても更新がなされない場合、小夜子になんかあったと思って心配してください(泣)。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆
2006年06月24日
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雨の中、靴音が近づいてくる。 「なにしているの?」 落ち着いた紺色のバーバリー・チェックの傘の下から、匂うばかりの東洋美人顔が覗き込んできたとき、不二豊は覚悟を決めた。 やるっきゃないでしょ。 気のきいたナンパトークは自信ナシだが、この時のために練り上げた脚本はスタンバイOKだ。 「すいません、通り道ふさいで。ちょっと失くしものを探していて」 二時間待機した暗がりで、豊はゆらっと立ち上がる。 視線が合った瞬間、なぜだかピトンと粘着質の触手に捕獲された気がした。やはり危険なターゲットなのか。 絶世の美女、アインシュタイン級の頭脳だといっても、相手はある種の変質者。とんでもない曲者なのかもしれない。 呑まれるな。一度引き受けた仕事だ。 もう引き返せない──。 ─── 「盗聴器が二ヶ所、盗撮用のカメラは部屋のエアコンの中に。おれが・・・じゃなかった。私が発見したかぎりは──ですね」 これが前日のことだ。 豊はロウテーブルに行儀悪く脚を上げて、調査レポートを読み上げていた。 「教授はストーキングされてます。たぶん毎晩」 「そんなことは知っている」 相手は眉をひそめて、実年齢よりはずいぶんと若く──十代にも見えるこの日本人の留学生を睨んだ。 「ストーカーの正体が“あいつ”だというのも知っている。いまだにわたしの同僚で、なにくわぬ顔で研究室に来る」 「そして最近まで、あなたの研究助手もしていた・・・・あなたに確たる理由もなく冷たく助手の枠を外されたのを恨んでいる、と」 「だからってしつこく脅迫状を送りつけたり、無言電話かけたり、留守中に忍び込んでわたしの トランクスを5ミリ角に切り刻んでいいというわけじゃない! 留学早々に、しかも他学部の教授からの頼まれごとだからといって、いいかげんに思っているんじゃないだろうねッ!?」 だんっ! 苛立った教授は、テーブルを叩いた。 「学生たるもの、師には絶対服従のはずだ! これが中華伝統の思想だ」 そんなこと仰るならば、他の学生に鞍替えすればいいようなものだ。なにしろ豊が留学のためにここ北京に居を移してから、ひと月ちょっと。生活の安定もへったくれもないが、はなから留学生に対する教授たちの依頼事項は多い。留学生が引っ張りだこというのは、天安門事件以来、一般学生が信用ならぬという、大学構内が不穏な証拠なのだろうが。 「まあ、いい。とにかく、だ」 依頼人は髪を撫で上げ、留学生楼にある豊の部屋をじろりと見渡した。 あまり、いい感じのするヤツじゃない。 王志軍とかいう名で、眼鏡をかけた五十代半ばの男だ。北京大学でも優秀な教授らしい。そりゃインテリだろうけど、傲慢でおまけにケチっぽい。 豊がストーカーの立場だったら、こんな野郎には付きまとわない。 「・・・・とにかく、きみはまだ留学して日が浅いから、面も割れていない。ゆえに、わたしはこの件においてきみに白羽の矢を立てたのだ。なんとかきみが動いて、さっさと馬鹿な行為をやめさせてくれ。わたしの身のまわりのごたごたが大学にバレないうちに」 「わかりましたって!」 自分が被害者であるのに、大学にバレたくないというのが相当アヤシイ。 なんか脛にキズ持ってるっての、自分でもわかってんじゃねーの、コイツ。 次回は●冷たいカルテ●です。 弟くん、国際電話でもいきなり怒られてます(笑)。 本日の日記------------------------------------------------------ 皆さま、ご心配いただき、ありがとうございます。 鬼の霍乱の症状は、おかげさまでだんだんに持ち直してきました。 ただし、咳は後もうちょっと、というところです。どうか皆さまもくれぐれも体調にはお気をつけください。 『趣味ではなく芸であること』 病身なのに、なぜ更新を始めるのか──疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。 作品を公開している私にとって、文章を書くということは‘趣味’ではなく‘芸’です。‘芸’なので、なにを措いても「文章を書くこと」が生活の大部分を占めることになります。 また、一日書かないと、それまでのペースを取り戻すのに三日かかるので、取りかかった作品は完成するまでペースを落さずに書き続けます。毎日書かないと、頭の中で物語が張りをなくすのです。世間では「肩に力の入らない文章がよろしい」とされていますが、この「余分な力の抜けた」状態とは、私にとっては「全力を尽くしている」状態と紙一重です。全力疾走をしていないと、「力を抜いている」状態が掴めないからです。 それはそれとしても、ブログは私にとってまさにアイドリングです。ここで書き続けることをやめてしまうと、おそらくは三校が到着した後、指が固まってしまって思うさま書けなくなっていると思うのです。本番を書くとき、すぐに設定を切り替えて書き始められるのは、ブログで指慣らしをしているおかげです。三校を待つあいだ、芸が錆び付かないよう、やはりこうして書き続けることに致します。どうか皆さま、よろしくお付き合いいただければとお願い申し上げます。 今回、しずさんがしゃべりまくります。舞台は豊の留学先の北京ですが、そこにしずさんが持ち込んだ大ネタが絡んでまいります。まずは次回更新、お楽しみに! さて、病身の私に滋養をつけさせるために、オットがみょ~なクスリを買ってきたのです。見たこともない品物で、なんだかアヤシイ感じがしたので、 「症状をどんなふうに説明したの?」と聞いたら、 「徹夜明けのホストが死にそうなほど疲れている時に飲む栄養剤を下さい」って言ったら、その漢方薬局の奥の間から出てきたモノらしい・・・。 二錠で2800円って、○○アグラの姉妹品のように高いです。 話は変わりますが、アルファポリスの編集部からオットに用事があったらしく、メールでやりとりをしたようです。その後、編集者から「ご主人様、すごく愉快な方のようで(笑)」とのメールが・・・。オットよ、編集者になにを言ったんだ(不安)。 それはともかく、中田よ、FWに入ってくれーっ!!! 私、さほどのサッカーファンではありませんが、それでも高校生の時、体育委員を歴任していた折、「マタイ」「マルコ」「ルカ」「ヨハネ」の四大福音史家の名前を冠したグループリーグを開催した覚えがあります。「女子がボールを蹴るとは何事」とおかんむりだったシスターが、よくこの名前を許してくれたもんだ・・・・今でもナゾではあります。 微熱ゆえ、少々話題がとっちらかっていることが否めませんが、次回はおそらく三校到着のメドが立ったご報告がてら、『現代幼稚園事情』についてお話させていただければと思います。 ほんと、びっくりするくらいに便利な世の中になりました。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆
2006年06月22日
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『サバンナの呪師』 最終話●創世神話● 「タイトルは『チャドの創世神話』。不二先生にはこの草稿と史料をまとめていただいて、入稿は7月末の予定で。枚数にして1200枚」 「冗談じゃない。そりゃあよっぽど尻ぴっぱたいてもらわないと。無理となったら頬っかむりして、現地調査(フィールドワーク)に逃げ出しちまう」 「そこをなんとか。チャド族のトーキング・ドラムを解読できるのは、不二遼先生を除いていないんですから・・・・」 エアコンを暴力的にうならせた天井の高いシンプルな書斎。編集者に側をかためられ、遼はめずらしくマジメに机についている。 「おう、シンディか! はいれよはいれよ」 と、臨月の妻を手招く遼。 「あ、どうも奥さま。おかげで締め切り日のチェックは安心できます」 「あら」 編集者たちに会釈をかわすと、シンディはすとんとソファに腰を落とした。 「ハルカ。また締め切り迫ったら、現地調査に逃げるつもりでしょ」 「あ」 「そんなことだから浮気されるのよね、未熟者の年増おにいさん」 「へ?」 「今日、チャド谷の通信基地からマキが無線使ってわたしのコンピュータに送ってきた電波を受信したの。彼女、あなたをフッて、別の人と結婚したって」 「あああ!?」 思わず腰を浮かす遼。 「お相手はアシタカ似の誠実な男の子らしいわよ」 「アシタカって、あの──ヤックル乗ってるヘンなヤローかよ!?」 「妬かない妬かない。ガゼルには乗ってるかもしれないけど・・・・」 シンディは遼ににこっと笑いかけた。 「マキのチャド族とは仲悪かったはずのズナ族の子だそうよ。このふたりの結びつきによって、チャドの平和と発展は約束されたらしいわ」 明確に過去を否定しながら、時はめぐっている。それとはっきり気づかされるのは、下の代からの突き上げによる事象の変化。 「五年・・・・あなたはこの日を待っていたのね。わたしも待ったのそれくらいかな。延べの時間で」 シンディは遼の前髪をかき上げる。 「・・・・同じって言いたい?」 編集者の目もかまわず、遼はシンディの顎をすくい上げた。 きっと、神話の時代から、どこにも同じ思いをしている恋人たちがいる。相手を想って──待って。 サバンナの岩屋で夕陽を見つめる新婚のマキにも、ウィーンの青銅製の飾り版の下がったマクドナルドで向かい合うしずさんご夫妻にも、日本という極東の国で、恋人とややこしくすれ違っている豊にも。 『サバンナの呪師』─襲撃終劇─ ありがとうございました。 本日の日記------------------------------------------------------- 小夜子は死んだ・・・。 solya兄も死んだようだが、このふたりは運命共同体らしいので、双方ともに致し方なし。 私の方はPCの問題ではなく、私本体の問題・・・とうとう風邪をひいてしまいました。実は金曜日から調子が悪く、土曜日に咽喉科に駆け込んだはいいが、「もはや手遅れです」と宣告を受け・・・。それでもリライトに根詰めていたのだけれど、もぉダメ。 根詰めたおかげで見直しには自信があるので、水曜日が締め切りのところ、先ほど明日の午前中必着でオットに『再校送付』してもらいました。(心優しきオットよ、この後コロッケ揚げてくれ)。 カラダつらいのに、なんで更新なんかしてんの!? とお思いでしょうか──。 ブロガーならば誰も知るように、ブログ更新だけは別腹なの☆ というわけで、病身のまま本日は、おそらくは私以外はけっこうどうでもいいネタであろう「編集用語について」解説させていただきます。(あいうえお順) あ行 青:あお:原稿やゲラに編集者が入れる注意書き。「編集より青が入ってます」 赤:あか:原稿やゲラに著者が入れる注意書き。「著者は赤を入れてください」 アタリ:あたり:挿図や挿画などが入る場所を空欄にしておくこと。 以下同:いかどう:初出の文字に修正を入れて、「以下同」と添えるとその後に出てくるすべての語句を変更してくれとの指示用語。例)「風早」のルビ、「かざはや」で以下同。 イキ :いき:校正で赤字修正にミスがあった場合、棒線でそれを消し、誤解を避けるために「イキ」と書き添える。 色校 :いろこう:色見のために出す,印刷状態に近い紙 打ち合わせスペース:コーヒーを出してくれます。 折:おり:本を印刷する際に一度に印刷するページの単位。雑誌などは普通、16ページ分を一枚の紙に印刷する。これが一折(ひとおり)。8ページの折を半折(はんおり)と呼ぶ。ページの先頭から、1折(いちおり)、2折(におり)と数えていく。切羽詰ると折単位で校了していき、印刷所が短時間で印刷し終えられるよう、帳尻を合わせたりする。 か行 片始まり:かたはじまり:本文が奇数ページから始まること。 企画書:きかくしょ:書籍作成に当たって、編集者が最初に作成する書類。企画している書籍の趣旨、構成、体裁などを明らかにし、これを持ち寄って編集会議の場で検討する。デザイナーや印刷所などに発注する際も、詳しい話はこの企画書をもとに詰めていく。 キャプション:写真や図版などに付く解説文。フォントサイズを落とし、文末の「。」を省くのが倣い。 ゲラ:校正紙のこと。 校正:こうせい:原稿の表記を統一したり、文書中の不自然な文章を修正するために赤を入れる作業。この作業を専門に行う者を校正者と呼ぶ。 校了:こうりょう:編集作業のすべてが終了すること。校了したページは印刷所に回され、やがて本になる。校了後にミスを発見しても修正は不可(こえ~)。 さ行 先割:さきわり:原稿や図版などの一部が欠けた状態のまま入稿してデザインを引いてもらうこと。 字詰め:じづめ:一行に使う文字の数。半角の文字数で計算する場合と全角の文字数で計算する場合がある。 背厚:せあつ:雑誌の背表紙の幅のこと。本の厚さ。 責了:せきりょう:業者に任せた部分を残して校了すること。赤入れが少ない状態で、この程度の直しなら確認しなくてもオッケーだろうというときに責了という形で校了する。 センター置き:本文が頁の真ん中にレイアウトされること。プロローグなどの文章に使う校正指示。例)プロローグはセンター置きにしてください。 た行 縦組み:たてぐみ:本文を上から下へ縦に読むように組むこと。普通は初校から始まる。 台割:だいわり:本の構成を一覧表にしたもので、折・ノンプル・本文・各章の進行状況をチェックできる。本決まりとなる前には「仮台割」と呼ばれ、Version表記で管理されたりもする。 デザイナー:書籍をデザインする人。写真の配置や文字の種類や大きさ、字体、字詰めはもちろん、ページのレイアウトを決めたりする。このリーダー的存在を「AD(アートディレクター)」と呼ぶ。『青木学院物語』では、ご先祖のメモ書き、同盟表、青木学院平面図など、挿図にもデザイナーの手を入れてもらっている。無名の新人に、ここまで真剣になってくれる出版社がどこにあろうか(反語)。 閉じる:ひらがなを漢字に直すこと。この逆を開くという。例)「かえで」を閉じてください→「楓」と修正される。 トルツメ:最も使用頻度の高い校正用語。文字や図版などを削る際、削った場所をそのまま空欄とせず、詰めることを言う。 トレペ:トレーシングペーパーの略。トイレットペーパーではない。初校やゲラ、紙焼き写真などにかぶせて使用する下が透ける薄い紙。各種の指定を書き込む。 読者:どくしゃ:神と同義の。 な行 入稿:にゅうこう:原稿を入れること。 念校:ねんこう:著者が校了した原稿を校正者が最終確認すること。この念校を印刷所に送る。 ノンブル:本のページ数を表記するところのこと。単純にページ数を指しても使われる。 は行 配本:はいほん:完成した本が所定の場所に配備されること。編集部にも印刷所から何部か届く。また,配本される日のことを「配本日」と言う。 箱打ち:はこうち:文字の入っていない先割の初校などに敷き詰められる文字が入る予定の場所。 柱:はしら:章ごとのタイトルなどが横組みで入る、見開き上の両隅部分。 半折:はんおり:8ページの折のこと。 半調:はんちょう:色などの濃さを半分に落とすこと。 非常事態:ひじょうじたい:『インドなんて二度と行くか!ボケ!! …でもまた行きたいかも』『青木学院物語』『レイン3』と出版予定が一ヶ月のうちに三冊重なること。 開く:ひらく:漢字をひらがなに直すこと。この逆を閉じるという。例)「飛雁」をカタカナでひらいてください→「ヒカリ」と校正される。 本文:ほんもん:いわゆる原稿のこと。「ほんぶん」とは呼ばない。 ま行 ママ:「そのまま」の略。文字や図版に「トル」指定を入れ、「アキママ」とすれば、取った文字や図版の位置はそのまま空欄として空けておくことを意味する。 見開き:みひらき:ページを開いて見た状態。偶数ページから始まり,奇数ページで終わる2ページのこと。記事が偶数ページから始まることを「見開き始まり」と呼んだりする。 面付け:めんつけ:校了した各ページを印刷の時のために表裏計8ページ分を1枚の状態にする作業。編集部では直接タッチしない。印刷所で印刷後にこれを裁断して製本する。 戻し:初校、再校、ゲラ、念校などなどに赤を入れて次の作業に移るために業者に渡すこと。「返し」とも言う。 や行 横組み:よこぐみ:本文が左から右へ横に読むように組まれていること。初校の前段階。 ら行 リライト:本文中に差し障りがあると、初校以降でも「リライトお願いします」の文言が入ります。 ここ数週間でみょ~に詳しくなった専門用語集、なにかのご参考になりましたらさいわいです(笑)。 さてさて。今後は今週末に三校が送付される予定となっております。これを来週の今日、26日(月)締め切りのために日曜日に返送で、原稿に対する私ができることはすべて完了することになります。 ブログの更新についてですが・・・病身のため(笑)、今は確定事項を申し上げられないのが心苦しいのですが、今後は連載はアップせずに出版までの四方山話を随時更新してまいりたいと思います。出版まであと一ヶ月ほどとなりました。どうかその日まで、よろしくお付き合いくださいませ。『サバンナの呪師』も併せてお読みいただき、ありがとうございました。小夜子拝 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆
2006年06月19日
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第19節●カオスという意の大団円● それから二日後。 「わが息子たちよ! 戻ってきてくれて嬉しいぞ」 サミア族長は遼に熱烈な抱擁をした上、豊まで抱きしめた。 一時は首都近くまで押し寄せてくるかと思われた反政府軍も、なぜかなりをひそめた。 驚かされたのは、行方不明だと言われていた上の息子ふたりが、なにごともなかったように村人の中にいたことだ。 「バンモとノンモのことじゃろう?」 族長は浮かれきっていた。 「わしもひさびさに無事に知ったが、いまや解放軍ではかなりのカオだそうな。ハルカたちの調査に障りがないように、侵攻の時期をずらすと言っている。安心してゆっくりするがいい」 「・・・・・」 あまりのタイミングの良さに、誰に感謝すべきか嬉しい悲鳴を上げそうになる。 「兄たちはわたしが指笛で呼び戻したんだよ」 呪術師の岩屋で、仮面の少女は平然と言った。 「これで心おきなく、あんたたちがただのよそ者に戻れるってものだろ」 マキと豊が向かい合っている、ちょうど目の前の広場に子供が群れている。 「えっと。ボク大きな声が出せないから、英語話せないの」 「よーし。そんじゃ、今日一日、みんな思いっきり小さい声で話すか」 コーヒー色の子供たちの中に、違和感なく混ざり込んでいる男。 「Aは・・・・Apple, BCD・・・・.Eは何だろ?」 「エレクト!」 ガキ笑いで場が盛り上がり、なかでも遼がいちばん、窒息しそうに大ウケしている。あとは子供たちが口々に“ABCDE”のつくダークワードを口走るやら、実際ぼそぼそと話し出すやら、ぜんぜん関係ないことをわめき散らすやらの、カオス状態に突入していった。 「余裕、余裕。うじうじ喋っても充分聞こえるじゃんよ」 寝っころがったまま、子供のひとりを軽々と抱き上げて遼が笑う。 「・・・ちょっとは未練があるんじゃないの、マキ? おれにはムリしなくていいよ」 豊が肩に手をやると、けろっと彼女はサバンナの空を見上げた。 「時が来れば、シンディも第二夫人として、ここに永住してもらうか」 「やっぱ第二にするわけだ!?」 「あんたもだよ、ユタ。日本の陰陽師のこと、呪術のこと、色々と教えてもらう」 初めて名前を呼んでもらえたことにも気づくことなく、絶句したままでいる豊の頭をコツコツつついたのは、肩にとまったハゲワシだった。 向こうの泥小屋の中では、熱の下がった豊の血液サンプルを太陽にかざして、白衣の静が満足気に頷いている。 「うーん。ソソられる色味だよ、ゆんゆん」 追記:およそ一ヶ月に及ぶチャド・フィールドワークを終えた後、豊は遼と別れてウィーンに短期滞在し、再び文明の洗礼を受けてから晴れて日本に帰国した。 次回は本文の最終話●創世神話●です。 エピローグということで、はるさんワイフがごあいさつ致します☆ 本日の日記------------------------------------------------- 皆さまご心配いただき、ありがとうございました。 ここ一両日中、『青木』の世界にどっぷりつかっておりました・・・・。 なぜならば、『再校が到着』したのです! いや~、初校はなんだったの!というくらいにリライトの嵐となっております。 もはや命を質に入れるくらいの気概でこの再校に賭けます。締め切りは21日必着──来週の火曜日には郵送していなければならないのです。ちなみに三校は24日(土)到着で、締め切りは26日(月)です。なので、日曜日に郵送ならば実質はかなり時間に制約があることになります。三校は受け取りに行って、締め切りの日に持参しようかな。アルファポリスの編集部って、私の住まいから30分くらいのところにあるのです。それなのに郵送で1日とられるとは、なんと近くて遠い・・・・(笑)。 さて、再校に入ってから頭を殴られたかのように感じたことがあります──本日はそのことについて語らせてください。 私はこれまで、勘違いをしていたかもしれません。 商業出版というものは、多少なりとも自分のこだわりを捨てて編集部の方針に合わせなければならないのだと思っていました。確かに、そういう部分はあります。私はこの期に及んでタイトルや装丁のいっさいをアルファポリスにお任せしています。けれどもそれは、自分の意見が通らないのとは違う。 私が最近になって気づかされたことは、商業出版は個人の趣味ではない、ということです。 これまで、私は『青木』のあらゆる事柄にこだわってきました。たとえば、出版の暁には些少なりとも病児に役立てるよう寄付を考えたいとか、装丁に登場人物のイメージを“顔”を入れるかどうかとか──これらは悪いことではないにしろ、もしそのすべてを私の思う通りに叶えてもらった場合、それは完全に私の趣味の本ということになり、これはとりもなおさず作品としてのいわば普遍的な“芸術性”と引き換えにするおそれがあるのです。 自分の意見を通したい場合、自費出版を選んだ方がすべてはうまくいきます。 けれども、自ら商業出版の道を選び取り、出版社からも招いていただいた以上は、ノウハウを知り尽くした立場にある方の意見に耳を傾けるべきだと今、私は考えています。いずれにしても、自費出版には自費出版のよさが、商業出版には商業出版のよさがあるのでしょう。 作者、デザイナー、イラストレーター、製本会社・・・・これらをとりまとめ、一冊の本としての完成を導く出版社、および編集者に心から感謝したいと思います。決して儲かる仕事ではないでしょう。作業は精緻を極めることを要し、個人として報われることは少ない。それでも編集者は『青木』の完成が楽しみだと言ってくれる──世の中で出会う人には、輝いて美しい人がどんなに多いことか。 一冊の本を出版するのに、さらに一冊の物語が書けるのです。 無名の作者に対して、これほどの真摯な努力が詰まった本を出してくれたアルファポリスに、どうか正当な評価がされますように。 次回更新は6月18日(日)を目処に(笑)。 再校についての四方山話になるでしょうか・・・・お楽しみに☆ ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ◆ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆ 追:“44444”のキリ番が近いかと思われますが、どうかおそれないでください。 最高の“しあわせ”が皆さまの上にありますように──。
2006年06月15日
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バラバラバラッ! 空の静寂を切り裂き、ヘリが舞い降りてきたのは、それから十分もしないうちだった。 「な、なに!?」 「そうか・・・・医師団のやつら、ヘリも持ってたんだ。やるじゃねーか、ヤツらも」 しかし。 ドイツ調査隊が作りかけていたという、でこぼこの荒れ地を均したヘリポートもどきのポイントに強行着陸をすると、肩留めのバチスタ的白衣に身を固め、現れた青年は──。 「・・・・うっ・・・・」 豊の天敵であった。嫌味に端正な横顔、チタンフレームの眼鏡の奥の天性のサド眼。 あまりのことに、豊は呻く。遼もふたご座の片割れの姿を認めて目を丸くする。 「おい・・・・なんで二次隊の医療チームにおまえが入ってんだ!?」(←国連の人選ミスとしか・・・・) 「黙らっしゃい。ぼくの大事な大事な弟をこんな姿にしておいて」 静は顔をしかめると、シリコン製手袋の手でビシバシ遼にチョップした。 「ちょっとしたカンだったわけ。二、三日僻地でタダ働きすればサバンナ観光し放題って矢先に、サハラを渡る風の中にゆたの声を聞いたんだ──“たすけてしずさん”って。そんなこと“お願い”されれば、どこであろうがぼくは助けに行くさ。ルルドでも恐山でもマチュピチュでもネス湖でもナスカでも、崑崙山でも邪馬台国でも」(←この世以外も入ってる) 新手の医者の到来に、涙も引っ込んでムッとするマキ。それにかまわず、静はアンプルを取り出して慣れた手つきで注射器に装着し、豊の腕をとって針を射す位置を確かめる。 「うーん。相変わらずせくしいな静脈だよ・・・・ゆんゆん」 「なんとなくヤな予感がするんだが・・・・・・死ぬなよゆた」 「外野はウルサイ」 頭を抱えてしゃがみ込む遼を、静は氷点下の流し目で見下ろし、ついで視線を弟に戻してくると、弟にこの上もなく優しい声を出す。 「豊、おまえはもうぼくの流儀に慣れたよね?」 「・・・・しずさんに慣らされたら最後だと思ってるんですけど」 それから、助手たちにざっと事情を聞くと、静は有無を言わさず弟の身体を抱き上げてヘリに乗せる。 「あ。止利(トリ:はるさんの相生名)はヘリの定員オーバーかもね。残ってもいいよ」 「おまえのヒューマニズムって、やっぱ死んでるな・・・・」 「じゃあね~」 騒然とヘリが虹の彼方に飛び立ったあと。 マキは肩をすくめてプレハブの中継施設に戻り、勝手知ったる様子で通信機を立ち上げた。 次回は本文の最終回前編●大団円●です。 けど、“カオス”と読んでください(笑)。 本日の日記--------------------------------------------------- ワールドカップについては百ほど言いたいこともありますが、皆さま今朝はいかがお過ごしでしょうか。 実は私、トトカルチョに参加しています。なんっかはじめからビミョ~な予感がしてたんだけど・・・なんだろう、誰も血に飢えた男の顔をしていないというか(笑)。 それはともかく、本日、「本当にあった怖いお話」の再開を予定しておりましたが、急きょ題目を「本当にあった嬉しいお話」に変更させていただきます。これもある意味ですごくすごく不思議な、そして私にとってはとても嬉しい偶然のお話です。実は先週の火曜日に起きた、出来たてのほやほやの出来事です。 毎週火曜日にはよーちえんの帰りに娘の英語のお教室があり、英国人の老夫婦のご家庭に送り迎えをしているのですが、ちょうど先週は私の方に用事があり、私の母にその役割を託したのです。一度行ったことのある場所ですし、自宅マンションからほど近いところにあるお屋敷なので、母も充分承知しています。念のために地図と電話番号、携帯も持ってもらってふたりを送り出しました。 ところが、祖母と孫娘で空き地に入ってお花を摘んだりしているうちに、20分も前に出たのに、気づいた時には開始の時間に20分も遅れてしまったそうなのです。焦った母は孫娘の手を引き、違う角を曲がってしまいました。すると、そこへちょうど通りかかった中年の男性が──母はその人物にどうしても見覚えのある感じがしたと言うのです。けれどもそれは、こんな場所ではほとんど万に一つも出会う可能性のない人物の顔でした。 すなわち、もう何十年も会っていない、母にとっての従兄弟──つまり、自分の亡き母の妹の息子だったのです。けれども、ゼッタイに「彼だ!」と確信した母は、「○○さん」「△△さん」と姓と名といろいろ呼んでみたそうです。男性は振り向きません。母もそういうわけで急いでいたこともあり、それ以上は追いかけなかったそうです。 「げーっ! そんなに遅れたの~!」と報告を受けた私がアタマ抱えたその夜、横浜の実家にひとり戻った母に、どこからか電話がかかってきました。 「もしもし、○○ですが、山口さんのお宅でしょうか・・・・」 先ほど母が見かけたという、かの男性です。この従兄弟いわく、「お姉さんかとは思っていたのですが、まさかまさかこんな場所で会うはずもないし、小さなお子さんを連れていたのでお孫さんがいるともまったく思い当たらず、先を急いでいたこともあってご挨拶もしませんで・・・」ということだったのです。 お互いに「お元気ですか」という話になり、母は娘である私の近況を含めておしゃべりに花を咲かせたそうです。そして、その日にそこらへんをウロウロしていたのは、本当にお互いに偶然で、従兄弟の方は仕事で必要な書類を関係者のお宅に取りに上がっていたということで・・・・。 そして、母の従兄弟は「お姉さん、ぼく、編集の仕事を30年やってるんです。まだ初校の段階ならば、きちんと校正しておいた方があとあと非常に楽です。なので、ぼくにぜひ校正を見させてください」と突然に言い出したのです。 驚いたのは母でした。この従兄弟は完全無欠の理系大学を出ていたので、母はてっきりそういった仕事に就いているのだと思い込んでいたのです。それが、よりによって編集者とは・・・・。 この従兄弟の人柄を知っている母は、それならと見込んで自分が目を通し終わった初校をすぐに送付し、実にちょうど昨日、12日の月曜日に校正していただいたものを私が受け取った次第です。 これまでに、アルファポリスの編集者はもちろん(この方も何度も何度も見直してくださっています)、誤字脱字発見器である母、著者である私の三方確認をしてきましたが、さらに新たなる目でプロの編集者に見てもらって、ここでもまたとんでもない間違いを複数発見していただきました。 皆さまご経験のある方もいらっしゃると思われますが、一度読んでしまった文章は、次に見直す時にはもう目が慣れて文字を追ってしまうので、なかなか間違いに気づけないということがままあります。 なので、このような場合にはまったく新しい目、曇りのない眼で確認していただくのが一番なのですが、なかなか400頁にわたる長文を身内以外の方に読みこなしていただくことはお願いしにくいものであることは否めません。実際、なにかとのんびり屋のオットにはこんなコト、おそろしくて頼めません(きっと全然違う文章になって戻ってくるだろう・・・)。なので、この母の従兄弟にお願いできて、これまでに最強の校正をしてもらったと自負しております。それ以外の語句の間違いは、すべて私の責任です。 今週、再校が返る予定です。最強の初校をもとに、ベストを尽くして赤を入れる所存です。 それにしても満を持していたかのようなこの偶然。私はいかなる存在に感謝すればよいのでしょう──。 私にとっての不思議な偶然が続きます。 どうか皆さま、よりよい流れを信じて、私と一緒にいてください。 次回更新は予定から1日ずらして6月16日(金)とさせて下さい。 再校が届いていた場合、この話題になるかもしれません。 「本当にあった怖いお話」も必ず再開しますので、お楽しみに☆ ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ◆ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのか・・・。よろしくお願い致します☆
2006年06月13日
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サバンナの呪師 第17節●青汁● はーっ、と仮面に穿った口から、マキは深いため息をついた。 「こんなことだから憎たらしいんだ、ハルカは」 しぶしぶという動作でマキは遼を押しのけ、豊の上にかがみ込む。 ちょっとTシャツの裾をめくって、 「・・・一時的に発熱するだけさ」 面白くもなさそうに言った。 聞いた遼の顔に、みるみる血の気がさした。 「そうなのか? もう大丈夫なんだな!?」 「なんでもないよ。こんなもの熱冷まし飲ましときゃ治る」 腰の飾り帯にさしたヒョウタンを抜き、マキは青汁そっくりな薬をぐいっと豊の口に注ぎ込む。 「うわっ! ち、窒息するっ!」 「うっとおしいな、大人のくせにっ」 そうか──おれは大人に見えるんだ。少なくとも彼女、あるいは彼女の年齢からは。 大人、ということがどういうことなのか、四苦八苦して探っていたけれど。 誰かひとりでも、自分のことを大人だと思ってくれてさえいれば、案外それで子供卒業ということになるのかもしれない・・・。 ぼんやりと思った瞬間、遼には見えない角度でマキの仮面がずり落ちた。 「・・・・っ」 豊は目を見張る。 ナオミ・キャンベルには幼すぎるが、理知的な目の輝きをした、たしかに美少女だ。 急いで仮面を着けなおし、彼女は厳重に紐を結んだ。 「馬鹿かもね。相手にしてもらえないってわかっていてさ。ハルカに」 賢くて、本当のことをなにもかもわかってしまっている子供特有の繊細さで、マキはつぶやく。憂いを含んだその横顔はどことなくジブリの本物の「もののけ姫」に似ている──豊は思ってしまう。 「シンディって人のことを五年前の独身だった頃からノロケてた、あの人。村に入ってきたとき、岩屋から覗いててすぐわかったよ。彼は結婚してきたんだって」 なんと言っていいのやら、兄がそんなに一途な男だって知ったのも、今が初めてだし。 一途な男はダサイどころか、カッコイイものなんだって思えてしまうのも──。 マキの仮面の切れ目から、唇がつんと尖っているのが見える。 いつの間にか、霧雨はきれいに空から拭い去られた。 虹が出ている。 サバンナの輝く雲間に、くっきりと七色のアーチが輝いている。足元にたどりつけそうなほど。 気のせいか、あの青汁を飲まされただけで胸の苦しさがマシになってきた豊は、ゆっくりと起き上がって膝を抱えた。 大岩に刻まれた浮き彫りの蛇をマキは指でなぞると、 「虹の女神ウンノは、穴蔵に棲む闇の蛇だった」 つぶやいて、豊と並んで空を見上げる。 「けど、天に昇った太陽の英雄を、泣きながらでも追っていける女性だ。わたしもだが、きっとシンディもそういう女なのだろう」 ふと見上げると、さっきまで頭上を旋回していたハゲワシたちと、遼が踊っていた。虹の真下で。 ドラムみたいに膝を叩いている。ハゲワシの舞い踊るリズムにそれなりに遅れもせず、ガゼルの身振りでジャンプしながら、無邪気に笑い転げている。 傍らを見れば、マキの頬をとめどもなく涙が伝っているのに気づく。 「なぜだかわからない。なぜ涙があふれるのか──」 「うん」 仮面の上から、マキは顔を覆った。 「わたしは嫉妬していた。だけど、誰に、だか・・・わからなかった」 「このアフリカに、かもね。大地そのものに。あの人、夢中だよ」 (おれだって嫉妬してた) ライバルにするには強大すぎる。絶対に勝ち目がないって、気持ちいい・・・。 次回更新は●助けてしずさん●です。 しずさん登場! なにより私が嬉しい☆ 本日の日記--------------------------------------- わーいわーい! 桜さんよりいただきました「ジブリバトン」! あんまり嬉しかったので、予定を変更して回答させていただきます☆ Q1.ジブリ作品の中で一番好きな作品は? 別格本尊として『風の谷のナウシカ』 映像、音楽すべてよし。 一番好きと問われれば『天空の城ラピュタ』かな。 メカの重量感と飛翔の浮遊感のコントラストがたまらない。 やっぱジブリはオリジナルストーリーに限ると思う! Q2.よく観る、または特別な思い入れがある作品は? 自分とパパが、メイとそのお父さんだと思いこんでいる娘によく観させられるのが『となりのトトロ』。 特別な思い入れといえば──ジブリのタイトルって「の」が入るのがやたらと多いけど、「の」という言葉になにか思い入れがあるのだろうか・・・。 Q3.好きなキャラクターは誰ですか? ナウシカ。 男の理想主義的なところがなんとなく鼻につくジブリのヒロインの中で唯一、彼らの手の届かない女性像を体現していて小気味がよい。 Q4.自分がなりたいキャラクターは誰ですか? ユパ・ミラルダ 「あの男、ユパです」「討ち取って名を上げろ!」と敵国の剣士たちに口々に囁かれるような人間になってみたい。 Q5.ジブリのキャラで友達にしたいキャラは? 『千と千尋の神隠し』のリン 『魔女の宅急便』のウルスラ Q6.ジブリのキャラで恋人にしたいキャラは? ・出会うなり、そなたは美しい──と言ってくれるアシタカの積極性も捨て難い。 大人になれば、意外にキャラが変わるかもという期待感もある。 ・聖司くんの唐突さもよろしい。 「雫、大好きだー!」がばっ。 Q7.ジブリのキャラで一番会いたくないキャラは? 『魔女の宅急便』で、おばあちゃんが手作りした贈り物に「わたし、ニシンパイって嫌いなのよね」って文句つけるマジ可愛くねーお嬢さん。 Q8.ジブリのキャラの中でペットにしたいのは? まっくろくろすけ(たまにそのへんにいる) カルシファー(声だけならうちにいる) Q9.ジブリのキャラに一日だけなれるとしたら誰を選ぶ? ナウシカになって崇められる。 Q10.あなたは天空の城ラピュタのムスカです。ラピュタを手に入れました。まずなにをしますか? まずはトイレの最新設備を確認する。 Q11.あなたは紅の豚のポルコです。レストランに入ったら注文した料理ではなく豚肉を出されました。どうしますか? 「飛べない豚はただの豚だ」と言って躊躇なく食べよう! Q12.カオナシから好かれてしまいました。どうしますか? めくってみて、中になにが入ってんのか見てみる。 Q13.心に残る名シーン 『風の谷のナウシカ』 ・ペジテの船からアスベルがナウシカをメーヴェごと蹴り出すシーン。 ・装甲車を乗っ取った城オジたちが「わー、どっちに行くんじゃーい!」と大騒ぎになっているところ。 ・命令を聞かず発砲を続ける部下を「やめろっつってんだろ!」みたいに殴りつけるクシャナ殿下。 ・「生きてたよぉ」のあと、「殿下、ご無事で!」と切り替わるクロトワ。 『天空の城ラピュタ』 ・ドーラに「40秒で準備しな」と言われたパズーが、最後に鳩小屋の戸を開けて「みんな元気で・・・」と言うところ。 ・ドーラのフラップターに乗ったパズーが「最後のチャンスだ──すり抜けながらひっさらえ!」と言われたあとに展開する鳥肌モノのシーン。 ・三分待ってやる・・・って待ってないよね!?(byしずさんムスカ)。 ・ひざまずけ!命乞いをしろ!!(同上) 『となりのトトロ』 ・トトロで「ずっと良い子にしてたんだよぅ~」のおばあちゃんの語尾。 ・トトロに会えるかどうか訊かれて、「運がよかったらね」と答えるさつきとメイのお父さんの声。 ・サツキが猫バスに乗っている時、おばあちゃんがメイを捜す「メイちゃーーーん」という声のドップラー現象。 Q14.あなたはどっち派? ◆ジジvsバロン ジジ。 「ぼく、明日になったら白猫になってると思うよ」 かわいい☆ ◆大トトロvs中トトロvs小トトロ 中トロは好きだが、中トトロは・・・小トトロは水さえやってれば300年くらいで大トトロになるんだろうか。 ◆猫バスvsメーヴェ あの非科学的な乗り物を乗りこなしてみたい! メーヴェってドイツ語で「かもめ」という意味だそうな。 ◆ヤックルvsモロ ヤックルの背から、振り向きざまに弓矢を射ってみたい。ばしゅっと。 モロじゃなくて息子たち(名前教えて)ならうちのペットにしてやっても可。 ◆天空の城vs動く城 動く城のコンセプトだけは面白かった。宮崎さん、この城、動かしてみたかったんだなーと。 天空の城に住むのは・・・なんとなくさみしいような。人は地上でないと生きられない、やっぱり。「君はラピュタを宝島か何かのように考えているのかね・・・ラピュタはかつて恐るべき科学力で天空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったのだ・・・」そのとおりだ、ムスカ大佐!否、もはやラピュタ王か・・・(主人公)。 ◆飛行石vsハク 飛行石──私は王族ではないから効力はないかもしれないが、なんか・・・チェルノブイリの中心に今もあるという、真っ青な核物質の、人類が絶対に見ることができない、けれども全宇宙で最も美しいといわれる“青”に似ているなぁ。 Q15.好きな声優さんは? たくさんいます! けど、お名前を存じ上げないのです・・・。 ・ペジテのアスベル&アシタカの松田よーちくん(オットの知り合い) ・なんとなくはるさんのノリに似ているクロトワ ・『風の谷のナウシカ』のナウシカ ・『となりのトトロ』のかんた、と彼のお母さんとおばあちゃん ・『魔女の宅急便』のジジ これ、次に回す人という欄がないのですね。 次に回す必要がないということで、逆に気兼ねなく受け取っていただきやすいかも・・・個人的にお答えをすごく伺ってみたい方に、お声をかけてみようかな☆ solya兄、意外にジブリ好き、じゃない? けど妙齢の男性にかようなバトンを回すのもナンでしょうから・・・「漢字バトン」、凄味のある回答をありがとうございました。兄さにお願いしてよかった。 秋野真珠さま、ムスカ、お好きでしょうか? もしご賛同いただけるならば、お時間のある時にいつかお願いします☆ 架月真名さま、ジブリお好きでしょうか・・・私の印象としましては真名さんご自身になんとなくジブリ的ほんわか雰囲気が☆ お時間があれば、ぜひよろしくお願いします。 桜さん、誰もとめてくれないので(笑)、マジ真剣にお答えしてしまいました。 カミングアウトに近い内容ですが、最後までおつきあい下さりありがとうございました。 これからも素敵な企画、楽しみにしております☆ ありがとうございました。 次回更新は6月13日(火)です。 「本当にあった怖いお話」の続きを、お話させてください・・・。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります! ◆ちょっと貼ってみました。どこにすっ飛ぶのでしょうかこれ!? よろしくお願い申し上げます。
2006年06月11日
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サバンナの呪師 第16節●呪術師VS陰陽師● 玉の汗が浮かんだ腕を、怒りにまかせてグイと伸ばす。 プツッ。紐の切れる手応え。 「・・・・・・ッ!」 マキの面がずれていた。黒い木彫りの曲線の下に、光沢のある褐色の頬が覗いた途端。彼女は息をのんで短剣の柄に手を掛けた。現地語での、早口の呪詛がつぶやかれる。そのとき、あたりに鋭い声が飛ぶ。 「マキ、聞けっ!」 駆けつけた遼を睨み据えて、マキは手にした短剣で豊を今しも突こうとしている。 「本当にいーかげんな人だな、ハルカ。憎めない顔さえしてれば、それで許されると思ってきたの。そうやって世の中渡ってきたの。甘いもんなんだね」 「それ言われると一言もねぇ」 マキははずれかけた仮面を顔に押しつけて、キッと顔を起こした。表情が見えないだけに、どす黒い漆色に光る仮面の奥の憎しみが空恐ろしい。 「あのときまだ八歳で、村の外には出たこともない、これからだって出られそうにないわたしに、さんざん世界中の話をしてうらやましがらせて、英語だって教えて・・・・! ずっと一緒にいてって言ったら、約束したじゃないか。“おまえが大きくなったらな”って!」 (・・・・マジで言ってたのかよっ・・・・) 豊の血の気の失せたこめかみに、兄に対してもムカッと血管が浮き上がる。 「マキっ、とにかく聞いてくれっ!」 頭上に飛ぶハゲタカを散らさんばかりの大音声で遼が叫ぶ。 「おれは二次隊の医者たちを呼んだ。いつ着くのかわかんねーがな! だがな・・・・だけどな、ほんとに待ってたのは──」 ギャー! ギャー! ギャー! 舞い落ちる黒い羽根。 「マキ、おまえだ! おれが一番あてにしてる医者はおまえだ!」 「・・・・・・っ」 マキの手の動きが止まる。次の言葉を待つように、マキはそれからも無言だった。 「ゆたが崖道の洞穴から出てきてから、ずっと気配を感じてた。ここに現れてくれるのを待ってた」 「・・・・・・」 「呪術師は優秀な治療師でもある。チャドの民間療法はすげぇレベルだからな。最近ではエボラザイールの特効薬になる知識までがアフリカ医学会でも認められたとか」 「・・・・・・見返りは?」 「見返りだと? おれはおまえのチャドの誇りを信じるだけだ。呪術師の腕を信じるだけだ。だからおまえもおれの言葉を信じろ!」 (・・・・マジメな顔してる。はるさん・・・・) そう言えば、この兄貴が大声を出すところなんてほとんど見たことがない。相当とんでもないコトがあっても、のほほんとおちょくるだけで。 (ちゃんと叱ってあげてるんだ・・・・) 「シンディ──っておれのワイフだけどな、あいつが待ってるんじゃなかったら、どうせトウキョウなんて帰りゃしねぇさ。シンディがいたから、おれには帰るところがあった」 マキと豊とのあいだに仁王立ちして、 「鳥は翼があるから自由だとか言うけどな、鳥だって帰るところがなけりゃ、野たれ死ぬまで飛び続けるしかないんだ。ぜんぜん自由なんかじゃないんだ」 叫ぶのを、遼は止めない。 「よ・・・・せ・・・・」 それにたまりかねたように、マキがかすれた声を出す。 「やめろよ。村に閉じ込められたアンタなんての、なんの取り柄があるって・・・・」 「マキ!」 遼が奪い取るようにマキを抱きしめた。 次回は●青汁●です。 ・・・・はぁ? 本日の日記--------------------------------------------------- 私のこよなく愛する鳥取県民である、大好きな架月真名さまからいただきました。(私信:真名さん、こちらアップしているのは県民歌のジャケットのB面?です。大山です! 歌詩です! 楽譜です! マニアにはたまらん☆) 『漢字バトン』 最近のおどろな連載から救っていただくべく、楽しんでお答えします☆ さてさて。真名さんから備わっている人、夢を具体化できた人、受け入れる器を持つ人、という意味でいただいた「具」の文字を、謹んで拝領させていただきます。私自身、「具現化」という言葉が好きです。そうでありたい、と肝に銘じております。ありがとうございました。 1.好きな漢字を三つ。 「飛」 すべての漢字の中で、一番キマっている字であるとお見受けしております。 「散」 散るもいいが、「サン」です。漢語で「散れ!」という意味。 この言霊で、不調が消え去ります。 「光」 空気に溶け、宇宙の闇をも貫いていくもの。 2.前の人が答えた漢字に対して自分が持つイメージは? 「華」 中国の自称がまず浮かびます。 草冠使ってるから、やっぱり花が満開の様を会意しているのかな。 華年と書いて「少年」の意を取りますよね。 華のある人の近くにいると、こっちもエネルギーが湧いてきます。 「宿」 守宿を思い浮かべてしまいましたが(笑)──とはいえ、やっぱり星座の方かな。「古から」、「安らかに」、「守る」、この三つの意味を具えた、深い深い意味の会意文字です。 「魂」 めぐりあるく心、かな。 「鬼」が陰ならば、「魂」は陽の気を感じます。 真名さん、三つともナイス選択です! 素晴しい。 3.次の人に回す言葉を三つ。 「月」 「弓」 「久」 深い意味はなく、あくまでも好きな漢字の一端ということで・・・。 逆にとらえどころがなく難しいかもしれませんが、皆さまのなかで浮かんだイメージを聞かせていただければうれしいです。 4.大切にしたい漢字を三つ。 「實」 Honestyです。自分に嘘をつくことだけはできない。 自分にだけはごまかしがきかないんだなぁ。 「仲」 もとはしずさん的立場の会意文字ですが、ここでは「なかよし」という意味で。 なかよしなんだ──人生の中で、出会えるだけの限られた人に言いつ言われつしたい言葉です。 「仲」は本来は次兄という意味です。「伯:長兄」と「季:末弟」の間に「仲」という字の次兄があります。 「知」 知らないでいるよりは、知っておいた方がよい、何事も。 5.漢字の事をどう思う? 遠く殷の時代、占いから始まった文字──漢字。 漢字も書くだけで言霊のはたらきをするのかな。 6.最後に貴方の好きな四文字熟語を三つ教えて下さい。 「森羅万象」を味方につけた、 「百戦錬磨」の無敵を誇る、 「奇想天外」な奴に憧れる! 7.バトンを回す人7人とその人をイメージする漢字を。 はるさんあたりにまわせば物凄い回答が得られるような気がするのですが──R指定が入りそうなので、ここはスルーということで。「兄」とか「弟」とか「迸」とか「漲」とか出てきそう・・・・(笑)。 solya兄:「人」 この人のまわりにはいつも人が集まっていそう・・・けれども、かの人自身は謎に満ちている。そもそもこの兄さにとって「人」の字とはなんぞや。solya兄、まわさんでもええからいつかトライしてみてくだされ。 舞夜じょんぬさま:「舞」 このほかにありません、じょんぬさまの文字。「舞」って、私もとても好きな漢字です。雅です。「輪舞」なんて字面は最高です。「夜」も好きな漢字なので・・・個人的にじょんぬさまのHNは最高だと思っております。じょんぬさま、私、「馬」という字も好きです! 桜さん:「桜」 もちろん「桜」です! 「桜」も好きな漢字です。可憐で儚く、それでいて永久を感じる言葉です。「桜」そのもののイメージの桜さん。なぜこの雅なHNを持つに至ったのか──妄想は尽きません。 三名の方、どうかお時間のある時に、よろしくお受け取りくださいませ。 ご回答を楽しみに、楽しみにお待ちしております。 真名さん、インテリジェンスの香り高いバトン、ありがとうございました! あまり薀蓄にこだわらず、自然体で取り組みました。すっごく楽しかったです。 そして勉強にもなりました。 真名さん、素敵な企画を回していただき、ありがとうございました! これからもよろしくお願いします☆ 次回更新は、6月11日(日)です。 「本当にあった怖い話」の続き、聞いてください・・・・。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。 いつも本当に励みになります!
2006年06月09日
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「ここにいろ」 プレハブの施設に辿り着くと、意識をなくした豊の身体を遼は簡易ベッドに下ろす。 窓の外には、彼もまだ調査には立ち寄ったことがない古い石造建築が、ヤドリギにからみつかれて朽ちている。 根っこが逆さになったかのようなバオバブの巨木のシルエット。流れる霧は、ゆっくりと白くわだかまり、絹に似た雨をもたらしてくる。 美しい場所だった。 死が透明な眼球になり、空中から兄弟たちを見下ろしてさえいなければ。 通信室のドアをこじ開けようと、崖登りに使ったピッケルを突っ込む。南京錠がかかっていたドアは意外なほどあっけなく開き、遼画自家発電機の電源を入れてコンソールを叩くと、一発で無線は通じた。 「先遣チームのハルカだ。すぐにドクターをよこしてくれ。急患が発生したんだ」 良好な電波状態で返事があった。さいわい、親しい知り合いの先輩だ。 《ハルカか! OKだが、チャド谷までだと急いでも明日になるぞ?》 「崖の上、五号遺跡のそばだ。峡谷に入る手前で西に回ってくれ。時間的にはあまり変わらないかもしれないが」 《問題は、反政府軍の動きなんだ》 「わかってる! わかってるけど・・・・」 ヘッドセットに叫び、ふっと弟を振り向いたとき、遼は凍りついた。 「マキ!」 渦巻く霧の白さにまぎれて、小柄な黒い影がヒョウの身軽さで遠目には息があるのかさえもわからない豊の身体に飛びかかってゆく。 「・・・・・・っ」 うっすら目を開けたとき、豊の真上に、たてがみを霧になびかせた黒い仮面の顔があった。 「・・・・・・っ! ・・・・・・っ!」 わめき散らしてやりたいが、大声を出すパワーにいまいち欠けた。 ギャー、ギャー、ギャー、ギャー。 豊に代わって、台地に露出した大岩の上、ハゲワシが乱舞しながら啼き叫んでいる。 「なぜ言わない」 マキの仮面のたてがみが、無慈悲におおいかぶさる。 「こしゃくなやつ・・・・わたしの剣の毒が回ったと、なぜハルカに言わない!」 (やっぱ、きみのせいだったんだ!) 悪い予感が現実のものになったところで、さあ、どうやって仕返ししてくれよう! 次回は●呪術師VS陰陽師●です。 ムボーな仕儀には及ばん方がよいぞ! 本日の日記-------------------------------------------------- 本文・日記ともにぜんっぜん関係のない『鳥取県民歌』のレコードジャケットです。 鳥取を愛する私は、もちろんこの婚家にも持ってきてます☆ この“県民歌”というナゾのジャンルのネタですが、架月真名さまへのオマージュということで。実は次回更新でこの裏面をアップしたいのですが・・・・ものすごく個人的なシュミでごめんなして(笑)。 さてさて。本日も続きを語らせてください──『本当にあった怖いお話』その2 「実家のセカンドハウスにまつわる階段怪談」 母から父の入院の報を聞いた瞬間、私は「ああもうダメなんだ」と思ってしまったことをここで告白したいと思います。その時はまったく病状がわからなかった状況で、私はなぜか確信的にそう感じていました。 さて。ここで話は変わりますが、結婚後、父と私のオットはよく気が合っているようでした。 ひとりっ子で育ち、家庭では男の子が生まれなかった父にとって、オットは男同士の話がわかる者として、やっと山口家にやってきた得がたい息子だったのです。温泉では一緒にお風呂に入り、マッサージ椅子から立ち上がりもしないでよくおしゃべりに興じていました。五十を過ぎて人見知りがちな父をよく知る人にとっては、これは驚くべき光景だったのです。父が入院した後、毎日病院に通う母に準じてお見舞いの回数で勝っていたのは私たち娘姉妹ではなく、このオットでした。 入院から三ヵ月後、父が危篤に陥りました。 その日、ひとりでお見舞いに向かったオットは、エレベーターのタイミングが悪くて階段を使うことにしました。すると、一段一段のぼる後ろから、ぱたっぱたっとスリッパで追うような音が聞こえてきたそうです。振り返っても、もちろん誰もいません。のぼると、また聞こえる。その音を聞きながら、「ああ、お父さんはもういってしまうんだ」と涙が止まらなくなったと──。 さて、お見舞いを済ませたオットは、乗り換えの駅から自宅に“帰るコール”をしました。 すると、受話器が取られて誰かが確かな存在感で電話口に出る音がする。 「あ、ぼくだけど今、●●●の駅にいて、これから帰るんだけど・・・・」 「・・・・・・」 「もしもし?」 「・・・・・・」 電話には確かに誰かが出ているのに、何も話してはこない。 自宅にいるのは、妻である私だけのはずです。私になにかあったのかと、オットは逸る気持ちにかられて自分から電話を切ると、自宅の最寄の駅に向かう電車に飛び乗ろうとしました。 その時、向こうからホームを歩いてくる私に行き会ったのです。 私はこの日、用事があって病院には早い時間に行って、すでに自宅には戻っているはずだったのですが、少しずつ予定がおしてその時間に帰宅となってしまっていました。 キツネにつままれたような顔をしているオットから話を聞いて、私はオットの目の前でもう一度自分で自宅に電話をかけてみました。 「ツーツーツーツー」 何度かけ直してもお話し中になっています。自宅の電話にはキャッチホンがついており、通話中の信号音が出ることはありません。また、不在ならば留守録が作動するはずです。 ドロボウでも入ったかと不思議に思いながら自宅に戻ると、家を出る時には普通に使えていた買って一年もしていない電話機が送信も受信もできない──家の中で、ただ電話機だけがいきなり壊れてしまっていたのです。それきり、原因不明の故障で修理は不可能と電気屋さんにもいわれ、急遽買い直す事態になりました。 父が亡くなったのは、それから二日後のことでした。 さて、ここで前回のセカンドハウスの話に戻りますが、オットが階段で見たものとは・・・・。 その夕暮れ時、オットは二階の部屋で書き物をしていました。夕食は外でバーベキューを計画していた私たちは庭にいました。ふと目を上げたオットは、二階の窓から庭の隅にある木の下に立っている幼女の姿を見たのです。その一瞬後、オットの目の前に──つまり二階の窓越しにその女の子がいて、オットと目が合った瞬間、ふっとかき消えたのだそうです。 いやな感じに襲われたオットは、すぐさま部屋を出て家人のいる表に飛び出そうとしました。 ですが、階段を下りようとして、足が竦んで動かなかったと。 階段には、頭を下にして四つん這いになった少女がいて、その真っ黒な髪が一階の床に届くまでざーっとしだれ落ちていたのです。 妖怪変化には妙に底力を発揮するオットですが、元・人間は苦手な部類というか、こと悪意のある霊には安易に手を差し伸べることはできないそうです。もともと、あるいわく付きの部屋から悪いものを締め出す結界を張ろうとして、手順を間違えて、逆に部屋の中に悪いものを閉じ込めて結界を張ってしまったなどという笑えないミスをよく犯しているオットです。 ここは触らぬ神に祟りなしとばかりに完全に無視を決め込むことにして、その脇をすり抜けて階段を下りたそうです。あとは振り返りもしなかったようですが、それきり階段が見られないと・・・・ひとりで階段脇のトイレに行けなかったのはこういうわけです。 実は、このセカンドハウスを建てる前に、土地を選ぶ段階で第一希望だった場所が火葬場の跡地に近かったこともあり、父は土地の由来などには相当に神経を使っていました。最終的に決めた、現在セカンドハウスの建っている土地は以前は何の建物もなかったいわば原野なので、土地が悪かった、などの理由が見つからないのです。 ただ、私は小耳にはさんだ父の話で、引っかかっているものがひとつあるのです。それは── まだセカンドハウスのための土地を探している時期に、父は関越道を通って新潟に通ったのですが、そのどこかのパーキングエリアである晩、見知らぬ女の子にフロントガラスをコンコンと叩かれたそうです。サイドシートのウィンドウを下げると、「○○寺まで載せてください。親が先に帰ったんです」と言って、いきなり他人の車の中に手を突っ込んできて、ドアキーを上げて乗ってこようとしたそうです。 父は○○寺は知っていたけれど、なんとなくその少女の唐突でぶしつけな態度が気に食わず、「これはタクシーじゃないんだから」と諭し、あわててウィンドウを上げ、その場を走り去ったそうです。 この話を聞いたとき、私はこう思ったものです。 パパ、それは人間だったの──? この件と、セカンドハウスの怪とは何か関係があるのか・・・・。 妹の見た“老婆”は、実は長い髪の“少女”ではなかったか。 土地にはいわくはないとすると、父がそこに何か凶悪なものを連れてきたとしか、もはや考えようがないのです。父が亡くなった今となっては詮索してもせん無いことではありますが──。 父にまつわる不思議な話は、亡くなった後にも続きます。 (まだあるんかい!?) 次回更新は、6月9日(金)です。怖い話はちょっとブレイク! 真名さんからいただいた、“漢字バトン”を楽しくお答えしていこうと思います☆ ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!
2006年06月07日
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標高およそ1千メートル。チャド谷を見下ろす崖の、ここが頂上だ。 薔薇色の朝もやの中、やっと平坦な地面を踏んだ。 「来た来たぁ~。半日以上でしたね」 昨夜合流したムベキが歓声を上げた。 遼は双眼鏡で地平線を覗き、黄金の平原を横切っていくガゼルの群れに顔をほころばせている。 「あっちが通信設備だろうな。行くぞ」 ジープでもいちいち野利上げそうな、石ころと亀裂だらけのサバンナ。汗をぬぐって快調に踏み出したとき。 笑顔は一転してこわばった。豊がついてきていない。 「ゆたっ!?」 膝を抱えたまま草の上に横倒しになった、壊れた人形みたいな身体。 べっとりと汗に濡れ、血の気の失せたその顔を遼はすくい上げた。 「ゆた! どうした? なんかヘンなもの拾って食ったのか?」 「・・・・トウモロコシ茶・・・・くらいかな」 「下痢は?」 「別に・・・・」 症状はこの高熱だけか? 青ざめて病的な無表情。 「なにか動物と接触したか?」 (動物?・・・・マキぐらいかな・・・・) 小憎たらしい顔を思い浮かべて、次の瞬間、強烈なフラッシュバックに襲われる。 あった。接触──した。脇腹の皮一枚をかすった短剣の刃。 (言うな) 毒が塗ってあったかどうか、そこまれの悪意が彼女にあるのかも確認していないのに。 黙っている豊を背負い、遼は立ち上がる。 「とにかく、ここから移動だ。悪くするとライオンも出る」 「大・・・・丈夫。歩けるよ。知ってるでしょう? おれが疲れると熱出すの」 かすれ声で豊は答えると、くにゃっと兄の肩に顔を埋めた。 「ど、どうするんです、ハルカ先生。こんなとこじゃ医者も・・・・」 「ヘンリー教授が一応、医師免許持ってますけど。下まで戻れますか」 「他に考えがある」 猛然たる勢いで、遼は荒れ地の草を踏んでゆく。 「二次隊を直接ここに呼びつける。医師団がそれなりの装備をしてる。時間はかかるが」 「来るなって言いにきたんじゃないですかっ!? 二次隊・・・・」 「こんなとき来ねーようなら、医者なんかしてる意味はねぇ!」 聞く耳を持たない遼の後ろで、ムベキとオタリは何事か話し合っていたかと思うと、 「や、やっぱり教授を呼んできましょう! 人命にかかわることですからっ!」 ダッシュで崖に戻っていった。 「・・・・無理だ。ばりっばりのペーパードクターだぜ、あの人ァ。風土病なんて・・・・」 知りすぎているほど膨らむ危機感を、遼は奥歯で噛み殺す。 次回は●毒殺●です。 物騒なタイトルが続きますが・・・・どうかご無事で。 本日の日記------------------------------------------------- 本日再開! 『本当にあった怖いお話』再開その1 怖いお話といえば・・・秋田の件ですが、これは先に亡くなった女の子の母親が犯人だよね、と事件が発覚してすぐにオットとそう言っていました。 それはそうと、うちのマンションは羽田空港から離着陸する飛行機の明かりが小さく小さく見えるくらいの距離にあるのですが、昨夜はヘリが北東の方向に飛んでいく音が一晩中聞こえていました。各メディアの記者を載せたヘリが、秋田の現地に向かう音です。大きな事件が地方で起きると、決まってこういう音が聞こえてきます。おそろしい世の中です。 さてさて。お待たせいたしました。再校が戻ってくるまでの平穏無事な日々の間、ご好評(?)いただいていた“怖い話”を連載してまいりますので、以下、苦手な方はご注意ください(笑)。 再開の第一弾である今回のお話は・・・・怖い、というよりも“そんなことあるんだな~”と思っていただける内容というべきでしょうか。皆さまはこれについて、なにをお感じになるでしょうか。 「実家のセカンドハウスにまつわる階段怪談」 私の実家である山口家は、横浜にある自宅のセカンドハウスとして、新潟に一軒スウェーデンハウスを持っています。父が自分の退職金をアテにして、50歳になってから構想10年をかけて自ら設計し、あらゆるモデルハウスを見学して設備を整えた自慢のセカンドハウスです。 広い玄関に暖炉、テーブル式の洋風囲炉裏、三階建てでお風呂とトイレが三箇所ずつ、すべての部屋が吹き抜けに面していて、ダイニングからはバルコニーに出られて、お庭とお池を見ながら外でランチもOK──そんな素晴しい別邸です。 ところが、このセカンドハウスが建つまでと、建ってからの一年の間に、これにまつわる非常に不可解な死が立て続けに起こったのです。 ことの始まりとも言うべき出来事は、父が設計した図案を、建築会社の専門の建築士の方に実際の建築に適するように見直しをしてもらった経緯からです。父は一級建築士の資格を持っているとはいえ、この資格を実際に行使したことがなかったので、その必要があったのです。ところが、この建築士の方が父の設計図を見直している途中で急死なさったのです。 担当してくれていた建築士が急に亡くなったので、父は別の会社に頼むことにしました。そして、新しく決まった会社の建築士の方に、今度は無事に設計図の確認をしてもらうことができました。 新しく決まった地元の建築会社の社長さんとも仲良くなり、工事は順調に着工されました。 ところが、この社長さんの奥さまが交通事故に遭って突然に亡くなってしまったのです。地元の見通しのよい直線道路であったにも関わらず、奥さまの車が正面衝突を起こしたと──誰もが不審に思いながらも、父もその葬儀に参列しておりました。 それから程なくして、セカンドハウスの棟上に従事していただいていた棟梁が、別の建築現場で足を滑らせるという転落事故で亡くなりました。この別宅完成までには、実に3人もの方が突然に亡くなっていたのです。 不思議なこともあるものだ、と私の両親は感じながらもセカンドハウスの完成にはとても喜び、横浜から毎週末に泊まりに行っては満足して帰ってきておりました。近隣の方とも仲良くしていただき、楽しい余暇の時間を過ごしていたようです。ただ、当時、私は留学中でしたので、両親からの電話で話を聞くばかりで、このセカンドハウスには足を踏み入れたことがなかったのです。 両親と三人暮らしをしていた妹も、彼らに連れられて遊びに行ったりしていました。ところがそのある日、妹が白昼堂々、不思議なものを見たというのです。 妹から直接聞いた話によると、妹が二階から降りようと階段を見下ろしたところ、見たこともない黒衣の老婆が階下をすぅっと横切っていったそうです。そして、その時に父のいた部屋の方に歩き去っていったと・・・・。 なんでもない白昼夢の話のように聞こえますが、妹は霊的な話を極端に嫌う子なのです。私もこれまでに一度もこういった話を妹から聞いたことがなかったので、少しヘンな感じがしました。妹は某国立大学で心理学の先生をしています。現実主義の彼女がなぜそんなものを見て、そして怯えているのか・・・・。 帰国の後、私は現在のオットと結婚しました。 父はご自慢のセカンドハウスに来るように、再三オットに声をかけていましたが、なかなか予定が合わずに結局、初めて行ったのが結婚後10ヶ月も経った2000年のお正月休みのことでした。実はそれまで、なんとなく私たち夫婦も、足が向かなかったことをここでは正直に言わなくてはならないかもしれません。私とオットは、はっきり“行きたくなった”のです。なぜだかはわからないままに。 セカンドハウスは立派で、父が焼いてくれた鮎もおいしく、バカンスとしては楽しい日々でした。 けれども、オットがなぜか、夜中にゼッタイにトイレにひとりで行きたがらないのです。「ごめん、でもお願いだからついてきて」というふがいないオットに、ため息をつきながらそれでも毎夜トイレについていってやりました。 私たちがふたりで寝ていた部屋は、二階にあってトイレは階段の脇にありました。「なんだってひとりで行けないのよ!」と問いただすと、「だって、階段を見るのが怖いんだもん」と言う。実は、私は妹の体験した話をオットにはしていませんでした。だって、人一倍敏感なオットが、そんな話を聞いたらゼッタイにセカンドハウスには来てくれない、父は本当に来てもらいたがっているんだし、と思って黙っていたのです。階段の下に不思議なものを見た妹と、階段を見るのが嫌だというオット。私もなんだか不可解な思いにとらわれていました。 この初めて両親と行ったセカンドハウスから戻ってきて、一週間も経たないうちに、父の入院の報を母から受けたのです。1月14日のことでした。 (続きます) 次回更新は6月7日(水)、このセカンドハウスの続きのお話をさせてください。 このように私、実際に“見る”ということはないのですが、不思議なことは身の回りによく起こるのです(涙)。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!
2006年06月05日
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サバンナの呪師 第13節●でもすぐ仲直り● 午後からは、いっそうの強行軍になった。 乾季としては珍しいスコールで足もとはグズグズになり、バナナの木ぐらいしか雨宿りの場所はない。岩場はすべり、オタリがあやうく落ちかけた。 (はるさん、おれが来てなかったら、どうするつもりだったのかな・・・・) 先頭に立って藪に分け入る背中を見ながら、ふっと勘ぐってしまう。マキのことだ。 てらいのない優しさは誰にでも、だろ? フィールドワーク1回につき、遊びの恋のひとつやふたつはしているかもしれない。 シンディがいながら、マキの“後見人”なんて、事実上の結婚相手みたいなものになってしまっても、どうせ法律上の重婚になるわけじゃなし。 (おれの目が光ってなかったら、後継ぎ、請けてた?) 「おまえが大きくなったらな」 な~んてセリフを残して村を去ってゆく──場面までアリアリと見えてしまうのが、十歳下の、はるか年下の末弟のツラさだ。 (だったらおれだって一途な男なんてヤメてやる。ばぁ~んと世界中旅しまくって、将来の職業は体験派恋愛作家かなんかに・・・・) 素質があれば、ね。 夜の帳が下り、これ以上一歩も進めなくなると、適当になぎ倒した草木の上にテントを張った。すでに下界のかがり火はオレンジ色のホタルの群れにしか見えない。 テントから脚を投げ出し、下書きノートを読み返す。書くことがありすぎたせいか、脳が虚ろでまるっきり集中できない。 豊とはぐれたムベキを迎えに行った遼が、やがてのっそりとテントに入ってきた。 「どうだ、ゆた? ちょっとはアフリカ好きになったかよ」 「よりによって今、よく聞くねはるさん」 上目でひんやりと豊は睨んだ。 「なんか、全部がセットになっておれを嫌ってる気がする。呪術師のお嬢さんも、内戦もヒルも天気も食べ物も」 「・・・・無理だよな。ごめん」 「でもね、相当好きにもなった。あの回廊、おれを迎え入れて守ってくれたみたいだし」 「ゆたのそういうところが好きさ」 谷の割れ目から降り注ぐ星あかりに遼は目を細め、豊の隣に腰を下ろして、ゆっくりと煙草をふかした。 「オレもな・・・・実は、アフリカ嫌いなんだ。ちょびっと」 「え・・・・?」 豊は耳を疑い、天性のなつっこさをたたえた横顔を見やる。 「この地域を専攻したのは、それでもいくらかマシだったからさ。素朴っていうのか、よくも悪くもおっとりしてる。たいていは、ワイロぶったくろうとして目を光らせてる小役人とか、黒人世界なのに黒人差別する社会とか・・・・そういうの目にするたびに、オレたちの金が困っている人たちのところまで落ちていかねーんだって・・・・自然はともかくとして、貧富の共存はまだまだだなって、調査どころじゃないときもある。いくら慣れても、いい気持ちするもんじゃねぇ」 「はるさんでも、そうなんだ?」 「アフリカだけとは限らねーけどな。そこへきて、いきなりゆたに楽しめってのもな。おまえがブチ切れてないことが奇跡なくらいさ」 「あるよね。自分では悪口言いまくってても、他人がそれを悪く言うとガマンできないってこと」 そう言ったとたん、兄は驚いたように弟の顔を見つめた。 次回は●発熱●です。 どーしたんだゆんゆん! 鬼の錯乱霍乱か!? 本日の日記------------------------------------------------------ 本日は『青木学院物語』こぼれ話をアップする予定だったのですが、『青木』をご存じない方もいらっしゃる手前、なんとなく内輪うけに近いこのお話は後日、出版の後にまわしたいと思います。勝手いたしますが、こちらも楽しみにしていてください☆ さてさて。母に聞いた『青木学院物語』のこぼれ話は後ほどということで、ここではその折に私が“笑っちゃった”母の言葉を皆さまにお話ししてもいいですか!? 母:『青木学院物語』ひととおり読んで思ったんだけど──あなた、鳥取の話書きなさいよ。なんだか優雅な生活してたじゃない。 ──お母さま。『鳥取物語』はすでに書いております・・・・。 それから、「優雅な生活」って・・・・なに??? というわけで、今回のお題は「出版することってなんだろう」──次回更新から再校が到着するまでの間、ふたたび“本当にあった怖い話”を連載するにあたり、今回は出版化ということについてマジメに考えてみました(唐突でごめん! 今回の日記は唐突が続きます)。 とびきりはるかな話からはじめましょう。 あまのはら ふりさけみれば春日なる 三笠の山にいでし月かも 有名なこの歌は、753年、53歳の阿倍仲麻呂が唐より帰国することになって、船出する前、故国をしのんで詠んだといわれています。しかし、彼は帰れなかった。 2004年10月、西安市郊外で一人の遣唐留学生の墓誌が発掘・発見されました。 井真成(おそらく日本名は井部真成:いべまなり) 734年に彼は36歳で客死したのです。墓誌にはこうありました。 「皇帝(玄宗)は死を悼み、(略)白い馬車と旗をあげた葬列により盛大な葬儀が行なわれた。参列者は遠くに落ちる夕日を見て、ため息をつき、墓場を指さして悲しんだ。死は自然の理だが、日本の人々も悲しんでいるだろう。遺骨は異国に埋葬するが、魂は故郷に帰ることを願う」 井真成の存在を千三百年近く、誰も知りませんでした。けれども、彼は確実に、生き、愛し、活躍し、死んだのです。阿倍仲麻呂と一緒に唐に渡りました。すると、古今集に載せられて千百年余、望郷歌としてよみつがれてきた「あまのはら」は今、友への鎮魂歌であることが見い出せるのです。 このはるけさと近さ。 阿倍仲麻呂の歌を詠み、それがよみつがれた千年以上の時間と、井真成の存在が墓誌によって明るみに出た数年は同質です。詩文と弔文──文芸の力とは、そういうものです。 17世紀のイギリスの詩人、ジョン・ダンが書いた詩の一節。 “・・・誰がために鐘は鳴ると問うなかれ、それは汝のために鳴っている・・・” 本もこれと同じです。 忙しく、物騒で、けたたましい現代にあっても、本が持つたたずまいの静けさは変わりません。 見向きもせずに通り過ぎる人、途中で見捨てる人、さほどの感慨も残さず去ってゆく人、どんな人であろうとも、またふたたび戻ってきた時には、黙って静かに受け容れる。 ようやく人がそこに隠れていた感動と出会った時でさえ、本は決して威張ったりしません。相変わらず静かに、そこに存在する。それが本です。 いつまででも人々を待ち続ける本。見えないほど遠くまで行ってしまった誰か、あるいは、まだこの世に誕生していない未来の誰かを辛抱強く待ち続け、その人がようやく手に取ってページをめくった時、「ああ、ここで待っていてくれたのか」と、思わずつぶやいてくれるような本。 このはるけさと近さの同時感覚。書き手の私は、そんなふうにひとを待つことができない──だからこそ、そういう本を書きたいと、心から思うのです。 そういうわけで! いかがでしょう出版社占い! 皆さま、「出版社占い? わけわかんない」と第一印象を抱かれた方もドシドシご参加ください! どちらの出版社と相性がいいか、という占いだそうです(笑)。 ちなみに私、集英社タイプでした。 「勇気・努力・友情!」ってか(笑)。当たってる~☆ 今度、ジャンプの新人賞(?)に応募してみるかな??? (オットは文芸春秋社タイプ。芥川・直木賞ですな・・・あーっはっはっは) 皆さまの結果も、ぜひぜひ教えてください!(知りたい~) 次回更新は6月5日(月)です。全然関係ないけど、『青木』のたっちゃんの誕生日です。 平穏な日々が続くとき始まる“本当にあった怖い話”、本日の日記で更新します。 お楽しみに! ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!
2006年06月03日
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サバンナ呪師 第12節●兄弟ゲンカ● インパラを狙って疾走するチーターの脚のしなやかさ。だが、中高時代、百メートル11秒台を誇った豊の方がわずかに早い。たったった・・・・シャラシャラシャラ──光射す回廊を闇雲に駆け抜ける豊の背後から、微妙な距離感で足音が追跡してくる。 (かんべんしてくれよッ!) 絶叫しそうになったとき。 ぱっと視界が輝いた。外だ。藪を切り開いた広場。 焚き火を囲み、レトルトの携帯食を温めているのは遼たちだった。 「ゆた・・・・時空移動(ワープ)でもしたのか?」 「・・・・はるさん・・・・」 オタリは腰を抜かさんばかりにしているというのに、遼はあまり動じた様子もない。豊も脱力し、オタリのそばにへたった。ムベキは到着していない。一時間差を詰められる程度のトクはしたってことだ。 「・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ワープ・・・って・・・階段・・・回廊がそこに・・・」 遼は助手と顔を見合わせた。 「回廊? 入ったのか、あそこに。崩れてただろ?」 「いや。通れる程度だったよ」 「おかしいな。おまえが出てきた洞穴、もう一度入ったら真っサカサマの崖だろうぜ?」 「そんなことより、追っかけられてるんだ。ゆうべ襲ってきたのも、そのマキだった」 「なにっ?」 遼は立って行って洞穴の口から覗き込んだが、奥は森閑と静まり返り、誰かが出てくる気配もない。注意深く耳を澄ませてみてから、あっさりと彼は断じた。 「誰もいないぜ? しかしゆた、ほんと大丈夫だったのかよ。垂直の崖だぜこりゃあ・・・・」 「そればっかりだよね、兄さんたちは」 思わず豊は口答えしていた。一秒でも早く辿り着きたかった頼れるべき存在なのに。 「年下の顔見ると、“大丈夫か”“危ないぞ”だね。みなさん優しくて結構だけど。今だっておれがひとりで見事ここまで辿り着いたってのに、もうちょっと感動しろよ」 「うーん・・・・そうか・・・・」 今まで誰も気がつかなかったことだが、そう言われてみれば、百パーセント正解だ。遼は気が回らなかった、という顔で、もそもそと栗毛を掻いた。 「たしかに心配だけが先にたっちまって・・・・ほめてやるってのも大切だったよな」 「べつに・・・・ほめてほしかったわけじゃないけど」 むくれた弟君の険悪なムードに気づいて、オタリはひとり、居心地悪そうに縮こまっている。 次回更新は●でもすぐ仲直り●です。 皆さまは兄弟ゲンカとか、しますか? 本日の日記------------------------------------------------------- 皆さま、今日から衣替えですね! 昨日、私も初校提出の後、血塗られた指でよーちえんの夏服の名前付けやらワッペン付けやらを・・・・涙。 というわけで、 初校提出致しました! おかげさまで本日6月1日の締め切りに間に合うよう、昨日初校を黒猫に託しました。 時間指定で今日の午前中に編集部に到着する予定となっております。 皆さまのご協力と応援に感謝申し上げます。ありがとうございます! 孤独な作業が続きますが、皆さまの臨在をひしひしと感じております。どうかもうしばらく、そのお力を小夜子にください! 今後の予定と致しましては、今回送付した初校のゲラを見て、編集部から追って連絡が来るようです。これは予定が立った時点で、皆さまにご報告させてくださいませ。 というわけで、本日の日記は初校提出までの四方山話をまとめてお話し申し上げたいと思います。 ・扉絵について 掲載している絵、編集部に所望されて、泣く泣くコラージュした絵です。表紙には使わないことが決まっているので(とはいえ、表紙についてはまだまったく進展がありません。ご報告はまた後日となりそうです)、もしかしたら扉絵か──けれども、私としてはやはり自分の描いたものはあくまでもイメージであって、扉絵もプロの方にお願いしたい心境ではあります。苦肉の策で“顔”を描かないでおりますが、うーん、どうなんだろ。私自身はなんとも言いようがありません(笑)。 だって、私、実際の彼らの顔を知ってるんだもん。「いろんな方のイメージがありますから」と言われたところで、あの時のみんなの顔が私の中で消えるわけでもないと思うのですが・・・・。それならそうと、まったく彼らを知らない、プロの方にイメージをお伝えした上で描いていただいた方がよりよいような気がするのですが、これはまた後日皆さまにご相談することになってくると思うので、今日はこのあたりで。 ・ページ数について 一般の書籍というものは、8枚毎に綴じていくそうで、つまり、見開き8枚、ページ数にして16ページ毎の増減で一冊の書籍を作り上げていくということなのです。わかりにくいとは思いますが、つまり、すべての書籍は16の倍数のページ数になっている、ということです。 なので、『青木学院物語』が初校でギリギリ16の倍数ページになっていて、それでもまだ字数を足したい、という場合はその字数分をページとして増やせばいいというわけではなく、綴じている紙分すべてを増やさなければならないので、新たに16ページ分を挿絵などを入れて上げ底しなければならない、という事態になるのです。 ゆえに、初校の時点で編集部がこれ以上の文字数の増幅は予算的にもかなりキツイと考えていたようですが、これは私がwebに掲載していた折、読みやすいようにパラグラフ毎に一行空けてあったのを、意図して空けていると考えて、そのまま初校もかなりの行空きで仕上げてくださったため、ページ数を相当数とってしまっていたのです。 なので、初校で行ツメをしたので、400枚を超えてはページの増幅にならないことが決定されました。一番ほっとしていたのが編集部だったと思います(笑)。 しかし、原稿が1ページ増えれば書籍の頁も1ページ増やせばいいというものではなく、1ページならば書籍としては新たに16ページ分を増やして、さらに見栄えがするように文字の割付をすべて変えなければならない、というのは初めて知ることができました。書籍の体をなしたすべてのものに、これほどの暗黙の制約と注意が払われているのですね。 ・登場人物の筆跡について 『青木学院物語』の独特な部分としては、表やメモ書きなど、登場人物の筆跡が随所に出てくることがあげられると思います。ありがたいことに、編集者の方が「再校で手書きの文字を入れてみましょう」と言ってくださいました。私としては、手書き風の活字で満足、と思っていたのですが、これは嬉しいお申し出でした。 ところで── 皆さま、とくに文章を書かれる方におうかがいしたいのですが、登場人物の筆跡って、考えたことありますか? これ、編集者に説明するのが結構たいへんだということに気づいたのです。 たとえば、“ご先祖の字は男性にしてはすごく丁寧できれいな字でした”と私が説明したところで、編集に「ではご先祖の字はこれで」と提示された場合、「きれいだけど・・・・なんかチガウ」ということになりかねないですよね!? また、「アホだけど元気な字」とか、そんなふうに私に説明されても、編集者はゼッタイ理解不能だと思うし。けれども、こちらとしてはそう説明するしかないわけです。筆跡だけじゃなくて、文字の大きさだって、すっごく性格を表わすじゃないですか。 それをいちいち細かく説明していって、さらには理解していただくのは至難の技だということになり、やはり私が必要なぶんの“筆跡”を集めるとの指示を編集部からいただき、これも初校に同封致しました。これ、実際に出版されるにあたっては、どう入るんだろう・・・・楽しみでもあり、どきどきでもあります。 そんなこんなで、ひとつひとつの作業を積み重ねて、出版に備えております。 小学生たちの筆跡に関して、編集者、私をはじめ全員三十路にもなっている関係者が額をつきあわせて「あーでもないこーでもない」と考えあぐねる・・・・これがたまらない瞬間です。 次回更新は6月3日(土)、私が青木学院に入るまでのエピソードをお話しさせていただきます。 私も母から初めて聞いた、こぼれ話です。 ◆お読みいただけたら人気blogランキングへ 1日1クリック有効となります。ありがとうございます。励みになります!
2006年06月01日
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