山口小夜の不思議遊戯

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2005年09月04日
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テーマ: 小説日記(233)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 相生の子供たちは、砂丘の性質上、昨日はあっち今日はそこ、と場所をかえては遊んでいたが、たまに己生の子供たちに遭遇することもあった。


 ──いしきなぁ、戦争せんかぁ。
 砂漠の騎馬民族の王子のような黒い顔をした己生のリーダー田中俊介は、よほど闘争がお好きらしく、武人に会うといつもそう言って挑発したが、武人はそのたびにこの物騒な申し出を一蹴していた。
 ──砂丘でやるは、わしらに不利だっちゃ。
 ──さては相生は怖気づいただな。わしらは毎朝、砂でからだこすっとる。だけ、こないに強いだが。

 怖気づいたと言われたとあっては、武人も黙ってはいない。
 武人はつかつかと前に進み出ると、不敵な笑みを浮かべつつ、
 ──んなら、わしもおまえにそうやってええだな! 

 俊介がどうと倒れこむと、そのまま二人は上になったり下になったり、激しいつかみあいをおっぱじめた。

 武人がキレると、もう剛にだって止められない。双方のじゃりどもも、大将の“かかれっ”という声がないと勝手に手を出せないことになっている。 それでこんな時には、手に汗握って声の限りに、それぞれの大将に声援を送るのだ。
 その後、世にスクラブ洗顔が出回るようになったのを俊介がそう思っているのか、今なら聞いてみたい気がする。

 ───

 そんな日々にあって、ある夜、小夜は鳥取の物音の中に身をまかせていた。
 夏掛けにくるまり、今日の日について思い返して、実に良い日だったと覚えることができた。
 心地よい一日の余韻──それは毎晩続いていることだった。
 こうしてござの上に寝転がって、小川のほとりで啼くふくろうの声に耳を傾けていると、前の世界では、こんなふうに一日を良いものとしてしみじみと感じたたことはなかったのではないか、という思いが脳裏をかすめた。

 横浜での暮らしには、ほとんどなんの不自由もなかった。
 小夜は制服を着て登校し、制服のままコンクリートのグランドで遊び、日曜日にはカトリックの教会に行き、きちんとしていた。
 しかし、今や小夜は自分の中で横浜の生活への懐かしさがどんどん薄れていくのを感じていた。そのこととは、小夜を取り巻く圧倒されるばかりの大自然のただ中にいることが大いに関係していた。



 相生の子供たちには、ある種の聡明さがあった。
 何の道案内もなく原生林に入っていくそのたくましさが、都会の子供たちの誰に見いだせるというのだろう。
 相生の子らは仲間のうちにあって、なにが自分にできるかをいつも考え、自分に課せられた仕事を誇りを持って完遂しようとし、大将の前では立場をわきまえ、さらには天衣無縫に遊びまわる。

 小夜にとって、彼らにはまぎれもない魅力があった。
 もしこのまま横浜に戻ることがなくても、自分は消して大切なものを失うことにはなるまい。



 (第四章のおわり)


 本日の日記---------------------------------------------------------
 昨日に引き続き、砂漠の駱駝といえば、私はキャメル号に乗って鳥取に帰ったことがありますよ。東京は品川駅前から出ている(今も出ているのかな)、小さなマイクロバスです。夜10時に出発して、早朝に鳥取駅に着きました。鳥取時代にお世話になっていた、
 中村さん(本名)というスキーとひょっとこ踊りの得意なお祭りおじさんが、ひとりぽつねんと待っていてくれたのを懐かしく思い出します。私は大学生になっていたので、お互いよく顔が思い出せなかったのですが、
 ──小夜ちゃんかぁ・・・。
 と鳥取弁で声をかけられた時に、もう一瞬でタイムスリップして小学生の私に戻っていました。

 明日から第五章開始になります。
 ●小夜、大将に申し出をする●です。明日も全国的に暑そうですね。タイムスリップして、息抜きしにいらしてください☆






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最終更新日  2005年09月04日 07時53分40秒
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