山口小夜の不思議遊戯

山口小夜の不思議遊戯

PR

バックナンバー

2025年11月
2025年10月
2025年09月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2005年09月21日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 小夜の昔のクラスメートの手紙には、二十世紀梨は二十一世紀になったらその名を変えるのか、という質問がまるで判を押したように並んでいるのにも閉口してしまった。

 小学校低学年にしてはなかなか鋭い疑問であるともいえなくもないが、こうも同じ内容の手紙が届けられたとなるとそれだけでもう野暮である。

 小夜は、その頃にはもうそらで説明をすることができた二十世紀梨のあらましを頭の中に思い浮かべた。

 二十世紀梨という品種は、八雲、菊水と並んで日本梨の一種である。
 松戸覚之助が発見した偶発実生で、1898年に命名。もうすぐ100年の歴史を経ることになる。

 果実は黒斑病に弱いため、幼果期に小袋をかけ、ついでにパラフィンの二重袋をかけて栽培する。
 つまり、二十世紀梨とは、この姿美しくも美味な偶発果実が二十世紀近くに発見されたから名付けられたのであって、たとえ二十一世紀を迎えようが‘二十世紀梨’の名はいつであっても不変であるべきなのだ。

 民俗学的な見地から言うと、日本人は梨の語音が‘無し’に通じるため、財産や幸運がなくなるとか、人が亡くなるとかいって屋敷に植えるのを忌み、縁起ことばでアリノミと言い換える地方もある。


 また、その芯を食べると背が伸びぬとか、腫れ物ができるなどともいう。

 実際に梨の芯は固くて酸っぱいものだから、うっかり食べないように「梨は昼食え、桃は夜食え」という言いなしもあり、一説にはこれは梨につく虫を食べぬようにと言い伝えられたものでもあるらしい。

 このように、桃を文句なしの吉祥果とするなかで、日本全国梨を嫌う地方は多いのだが、ここ梨の産地の鳥取での言い伝えは、それに真っ向から異を唱えるものであった。

 すなわち、鳥取では、家の建材に梨を使えば「何もなし」で盗難に遭わぬといい、鬼門に植えて「鬼門なし」だと喜ぶ。
 梨は相生では麻疹よけのまじないや咳止め、解熱の薬としても使われる。また、なぜだか歯痛の呪(まじない)によく用いられた。歯痛の時に初梨を神に供えたり川に流すほか、梨を三年断って歯痛の生涯起きないことを神に祈願する風習もあった。

 天候については、梨の実が多いと大風、大水になるといい、梨の花の返り咲きは変事の兆しという。
 もっとも、伝統的に梨を嫌う地方があったとしても、それは旧来の種についてであって、二十世紀梨のことではよもやあるまい。

 小夜は都会の子供たちの疑問に対して理路整然とした返答をしてやろうと思い立ったが、鉛筆を尖らせたところでふと手をとめた。

 二十世紀梨について小夜がどんなに熱心に語ったところで、都会の子供たちは彼女が能書きをたれているようにしか感じないだろう。
 その日、彼らは自分たちの舌で二十世紀梨を味わい、瞠目したことであろう。


 もうそれでよい。

 梨の返礼としての手紙の中に、ひとつだけ心に残った文章があった。

 クラスメートだった男の子からのもので、それには「早く帰ってこないと、おしりぺんぺんだよ!」と元気な筆づかいでしたためてあった。

 ──帰る・・・。

 どこに。

 あの制服を着て通うコンクリートの学校にか。

 小夜は、最近横浜のことをちらとも思い出していなかったことに気づかされた。小夜は自分の中で横浜での生活への思いが、もはやまったく薄れていたことを、認めないわけにいかなかった。

 そのこととは、小夜が今、都会の子供たちがそこで七度生まれ変わったとしても経験し得ない大冒険の、そのただ中にいることが大いに関係していたのであろう。


 本日の日記---------------------------------------------------------

 鳥取の方にしてみれば、ツッコミどころ満載の「小夜による二十世紀梨の説明」だったと思われますが、まだ三年生だけぇな。こらえてつかんせ。

 二十世紀梨のお菓子といえば、梨のゼリーがあらしませんかいな。
 まあるくて、真ん中に四つの小穴が開けてある透明なお菓子だが。
 おそらく、輪切りにした梨を模したようなかたちの・・・。

 果実ゼリーっちゃなんは子供のころはよう食べつけんかったですが、この梨のゼリーはほんにおいしいと思ったっちゃ。最近よくある梨のゼリーとちゃうで。ほとんど、飴のような食感のあれだが。あれ、なんていいましたかいな? サイトが見つからんかったけど・・・。

 あと、 ふろしきまんじゅう な。

 あれは国道沿いにあって、市内からもえらい遠いだが、わざわざ車で行って買いよった。ふかしたてのを、その場であついお茶もろて食べたがな。なんぼでも食べられたが。小さいのが八個で四百円もするだが。せぇけど、ありゃぜったいに日本一じゃ。

 こっちでもデパートやぁで‘鳥取フェア’やるときもあるですわ。
 でも、ふろしきまんじゅうはぜんぜん出んが。
 二十数年で、たった一度だけ、横浜の三越のフェアで出品があっただけ。
 広告入って、すぐに母と駆けつけましたが。ふたりしてようけ買いこんで、幾人にも配りもうて帰りました。あげた人たちはみんな、そのおいしさに驚きよったが。

 とんねるずの番組で、‘食わず嫌い王選手権’いうのがあるでしょや。
 あれの前振りで、それぞれがお土産を持ち寄る企画があるが。
 なんで‘ふろしきまんじゅう’持ってこんの、と見るたびに思うだよ。
 他のなんもおいしそうに見えんわして。
 沢田研二なり、ピアニカ前田なりが呼ばれたときに、なんぞふろしきまんじゅうでももってかんかと誰か伝えてくれんかいの。

 そういうわけで、鳥取の銘菓といえば、うちはふろしきまんじゅうと梨のゼリーっちゃなんが好きだったですわ。

 倉吉の‘天女の忘れ物’はまだ食べたことないです(おとといの頁を参照してごしなんせ)。

 明日は●吹雪の晴れた朝●です。なにやらハイジにあるような題名になってしもうたが。タイムスリップして、小夜が雪に埋もれた家のどこから這い出てくるか、見晴らしにきなんせ。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005年09月21日 07時58分51秒
コメント(9) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: