山口小夜の不思議遊戯

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2005年12月03日
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 そこへ、向こうから駆けてくる豊にばったり出くわした。

 豊は綾一郎の姿を認めると、まっすぐそちらに向かって走りこんできた。
 見ればその眦(まなじり)は切れ上がり、眼(まなこ)は炯々として、固めた拳には筋が浮き上がっている。

 ──すせりな、神生討ちはわしにやらせてくれんか。

 普段は面倒がってひとの名を呼ばない豊に、出会い頭にいきなりそう呼びかけられ、綾一郎の心臓はなぜかどきんと一度大きく鳴った。

 ──んだが、おまい・・・・、

 ──戦う理由が出来たっちゃ。あいつら全員、今日が命日にしてくれるわ。

 豊の気迫に、綾一郎は思わず言いたいことを口ごもった。



 ──場数? そがなもの、カンだカン!

 言うや、豊は身をひるがえして、もと来た道を駆け去った。

 ──ゆた! 拳を作るときは親指を握りこめ! でないと折れてまうぞ!
 それから一発目は相手の鼻をねら・・・・、

 速い──。

 ひとり残された綾一郎は、所在なさそうに頭をかいた。

 元斥候のすせりな(すばしこいの意)も舌を巻く電光石火の勢いで、豊は神生の方向に消えていた。

 ───

 さわの五男が、大将をはじめとする神生のおのこ全員をぶちのめしてくれたという報は、すぐに相生の不二屋敷にも伝わってきた。

 豊の母さまは、宵の口に拝殿での神祀のつとめから戻ってきた父さまにすぐに事の次第を詳らかに話した。不二屋敷では、子供たちをほめるも罰するも、すべては父親の役目だった。



 ──なんしてそないなことをしたか、理由を言うだ。

 豊はしばらくうつむいて黙っていたが、やおら顔を上げてくると、父を見据えてこう言った。

 ──・・・・・・あまっちょだ。

 父親はそれ以上何も言わなかった。

 小角さまは傍らを向いて、にやりとしただけだった。



                                 この章のおわり


 本日の日記---------------------------------------------------------

 当たり前のお話ですが、中国や韓国にも十二支の概念はあります。
 というか、日本の十二支というものが、すでに中国から来て根付いたものであるわけです。中国と韓国と日本は、本来は本当に仲のよい兄弟なのですね。

 私が北京に留学していた時、王府井の留学生楼にて実に様々な国の学生たちと一緒に暮らしておりました。

 アメリカやフランス、スペインなどの主要各国はもちろん、メキシコ、ギリシア、ルーマニア、ラトビア、ボスニア、インドネシア、南米全土、アフリカ全域・・・ニュースでしか知ることのできなかった小さな国の国籍を持つ人々──。お国柄の姓名の数々──。

 もちろん、韓国人や日本人も珍重されます。
 特に韓国や日本などを世界地図上で示してもらおうとすれば、欧州人ならばほとんどの人が当てることができません。「両国ともにオリンピックがあった」と私たちが言い張っても、ヨーロッパの人たちには信じてもらえませんでした。

 けれども、彼ら十二支の概念を持たない国の友人たちに、生まれ歳に据えられた動物の話をすると、ものすごく喜んでくれるのです。

 あるスペインの女の子など、自分が「ドラゴン」の年の生まれだと知って、専門分野を「龍」に変えてしまったくらいでした(笑)。

 というわけで──十二支考も今回でおしまいです。

 【十二支】─年賀状に役立たない知識(その5)─
 今回は来年の干支が入っていますね! 皆さま年賀状の用意はできましたか? 私は・・・・・まだです(焦)。

 【酉】
 酉の文字は「醸」(かもす)の意味であり、お酒を造るときに使う壷を象(かたど)っています。
 酉の月(9月)には、万物が熟成しきって収穫のときを迎えます。そのどこか老成したイメージ、そして収穫という繊細な作業を、ひとつひとつ実をついばむトリの姿にたとえたのです。収穫されたものは、さまざまな食べ物などに姿を変えますが、その変身もまた、いきなり飛び去って姿を消してしまうトリに通じるのです。

 【戌】
 戌の文字は「滅」に通じ、万物が衰え、滅びる季節を表わします。
 陰の「気」が勢いを増し、陽の気はわずかに残るのみとなっています。戌の月(10月)になると、動植物は次第に活動を停止し、冬眠を始めたり、種というかたちで地下にもぐったりします。生命は、これまでとは違う姿になって命を守り、次の季節、世代につないでいこうとするのです。大事に命の循環を守ろうとするイメージを、さまざまな場面で人間の生活を守るイヌという動物になぞらえたのです。

 【亥】
 亥の文字は「骸」(むくろ)に通じ、すべての動植物が死に絶え、枯れ木や骸になった姿を表わしています。
 陰の気が極まり、陽の気は消えて、万物は土の中に閉ざされたような状態です。亥の月(11月)になれば、緑を繁らせていた木々も葉を落とし、景色は急に遠くまで見渡せるようになります。そんな視界の開けた平原をまっしぐらに走っていくイノシシが、この季節をたとえる十二支になりました。

 十二支というものが、自然の移ろいといかに深く結びついて生まれてきたか、これはほんの一端です。私たちも自然の流れによって日々を暮らせたら、どんなにか身体が楽なのでしょうね。


 明日は第八章「血湧き肉踊る夏」のはじまり●綴の役割●です。
 豊の作品がまたお目見えします。今回も諸事情によりあらすじのみですが、充分楽しんでいただけると思います。
 タイムスリップして、分校の本棚の前に何時間でも座り込んでいなんせ。


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最終更新日  2005年12月03日 05時16分55秒
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