山口小夜の不思議遊戯

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2006年04月29日
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父と子と 』 第16節─ワイン─

 「ワインはいかがいたしましょう」

 それは、忘れていた。
 息子がメニューをめくった。
 私もめくった。

 ワインは身体にとてもよい。ポリフェノールが動脈硬化を防ぐのだ。
 しかし、それは赤ワインの話だ。

 が、こうなったら「赤」だ。
 いや、だが赤ワインのこの効能は、今では誰もが知っている。当然、この息子も知っているというのに、ここでおめおめと「赤」を飲めるか!

 「白」だ。
 「白」の効能は、殺菌作用だ。
 であるからこそ、生ものには「白」なのだが、時にアタることもある生ガキを殺菌してくれない 「赤」で食してこそ、挑戦といえるのではないか。私は息子を前にした父親だ。
 私は息子を見つめた。
 「白」で来る。そう踏んだ。
 「生ガキ」と言えば「白」だ。この王道を、たかが36年しかものを食べていない、つまりグルメとしては明らかに未熟な息子が覆そうとするならそれは「ただの無知」だ。
 と、世間から決めつけられることになっている。

 息子は「白」だ。
 ならば私は「赤」だ。


 そして、息子が言った。
 「『ボルヴィック』を」
 (やられた、ボルドーの『赤』で来たか!)
 すかさず、私は言った。
 「ブルゴーニュの『赤』っぽい『白』でいこう。『モンラッシェ』を」


 ──と、私は思った。
 何しろ、息子がそれとなく、しかし素早く走らせた流し目の辿り着いた先は、ワインリストの右下・隅の「ロゼ」の項だ。息子は言葉で本音が出にくいわりには、視線が雄弁な方である。いや、わざと視線に語らせているのかもしれない。結構、ヤななつなのだ。

 いや、「ロゼ」のどこが「赤」っぽい「白」だ。
 強いて言えば、「白」っぽい「赤」ではないか。

 見たか菜摘子、私はまだまだ息子には負けてない。
 ともかくも、『モンラッシェ』と来れば、名の知れた「白」である。
 そこに気づいたか、息子はやや怪訝そうに、私の顔を見た。
 私は悠々と見返した。
 私は静かに息子に言った。
 「醗酵のさせ方が『赤』っぽいんだ」

 それ以上は言わなかった。
 ワインとなれば、私は身の程を知っている。

                                ─つづくよ─
                                まだつづくんかい!(湯)




 本日の日記-----------------------------------------------

 「大切に、大切に書いて下さい」
 と、編集者の方に何度も言われるのです。
 もちろん私にとって自分の作品の中の文章はどれひとつをとっても大切なものですが・・・・・もっと大切に思う人もいるのだということを目の当たりに感じると、すごく不思議な気持ちがします。

 つまり・・・・・私が作品に感じているのは親の愛で。
 編集者が作品に感じるのは「神の愛」ではなく、「恋人」あるいは「結婚相手の愛」なのかも。
 このことに、昨日 架月真名さま にお返事を書いている最中に気づかせていただきました。ちなみに私、真名さんママ大好きです☆ ちなみに私、一族の誰ぞが主催している「ヅラ研究会」のメンバーです。なので、「姉歯さん」を初めて見たとき(つまり、まだ頭髪偽装までは追及されていなかった折)、五秒以内に会長に発見メールしてました。

 ということで、本日は『 編集者は恋人(あるいは伴侶)の愛 』について。

 作品は自分の子供──よく言われる言葉です。
 私自身も実生活では一人娘の母ですが、自分の子が親から離れて・・・・・結婚相手に大切にされていくような、編集者とのやりとりで、自分の作品に対してはそんな感じがしています。
 ただ、なんというか・・・・・結婚のときによく言われる、親友達からは「しあわせになれよ」とか相手からは「しあわせにするよ」とか、なんだかその感覚に私、違和感があるのです。

 もちろん、「しあわせ」にしてもらいたいし、「しあわせ」にもなりたいけど・・・・・。
 でも、十年近くも結婚生活を送ってみると、結婚って結局、「苦労を一緒にしてくれる」からうれしい、というか「しあわせ」なんだと今は思うようになりました。
 そして、それはそのまま編集作業にも当てはめられることで──出版に向けて、つまり自作の物語を独り立ちさせるときに、作者はその準備段階として見直し、書き直しという手入れをする。孤独で、心細い作業です。このとき、編集者という存在が私のそばに忽然と降臨し、創作のエネルギーが方向を誤って虚しく発散するのを身を挺して防いでくれます。
 つまるところ、編集者は一緒になって苦労してくれる。これはとりもなおさず「伴侶の愛」ではないでしょうか。

 そして──毎日こちらを覗きに来てくださって、必要とあらば手を差し伸べてくださる皆さま。
 私にとって皆さまの愛も、「伴侶の愛」と言い換えることができるのです。
 広義において、皆さまも『青木学院物語』の編集者であると、私は確信しています。

 ありがとうございます。
 明日は●作品は自分の子供ではない●です。
 小夜子に力を!


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【GWが始まりましたね! 皆さまの楽しいご予定、聞かせてくださいな☆】
 今日はこれからオットの恩師主催の「子ども会」です(笑)。
 門下の子供のいる者たちが家族を連れて集い、近くの広大な公園でバーベキューをするのです。
 私にとって・・・敵陣ではありますが、結婚してから双方の大学はとても仲が良くなりました(笑)。
 最近はやっぱり少子化なのか・・・うちのチームが親的にも子供的にも最年少。
 ふたりめ・・・どうすっかなぁ・・・。







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最終更新日  2006年04月29日 08時29分21秒
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