山口小夜の不思議遊戯

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2006年05月01日
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父と子と 』 第18節─愛しているよ─

 私たちは向かい合い、あとは沈黙して座っていた。

 私と息子は、すぐ腹を読み合う。
 しかし、果たして「意志の疎通」というものは、本当にできているのか。
 自問してみると、いや、できてはいる。
 もし、何も通じていないのなら、私は毎日、息子と対面し、
 「愛しているよ」

 そんな台詞を、日本人が口にできるか!

 だいたい、
 「愛しているよ」
 と言って、
 「僕も愛しています、パパりん」
 と答えたとしたら、それこそ嘘だ。
 やってられない無意味な会話だ。

 「愛しているよ」
 「僕は愛していません」
 「そーか、それなら、家を出ろ」
 そんなショートした会話を日々交わす親子がいるのか、私は知らない。


 「愛しているよ」
 とは、はっきり言えず、多分これは「原因その1」となって、気がつけば小さな口喧嘩をしていることもあった。
 妻は誇り高く、勝ち気で、豪胆かつ繊細な精神を持つ女性である。
 「愛してる?」
 と、若かりし頃はよく私に聞いてきた。


 そこが穏やかで気持ちがよいからこそ、拝殿で溌剌と仕事もできる! 帰宅だって遅い!
 ──と、こうなってしまうくらいに、私は「家庭的」だった。

 ともかくも、菜摘子と私は、お互いに選び合って一緒になったのだ。
 息子は違う。
 息子は何も選んでいない。
 私と妻との息子として生まれてきたこと自体に、彼はなんの責任も負っていない。
 私は、息子を愛さずにはいられない。

 私は息子を見つめた。
 特に、瞳のある顔を見つめた。
 いまだに皴ひとつない、その切れ長の目は、かつての私と寸分たがわぬものだが、息子は私のクローンではない。
 私は息子が大学に入学した折から息子と住まいを別にしており、その後において彼がどういうふうに年を重ねてきたのか、初めて女の子を連れ込んだときシーツをどうしたのか──いや、それは知っているが──この、渡る先に鬼ばかりいる世の中に、どのような戦略をもって対応してきたのか、そういうところまでは知らない。

 (頑張れよ・・・・・)
 私は悲喜こもごもに、そう思った。



                              ─つづくよ─




 本日の日記-----------------------------------------------------

 皆さま小夜子に同情してください・・・・泣。
 実は今日、舞浜のホテルに泊まる予定だったのです!
 そして明日、“東京ディズニーリゾート”を朝から一日満喫しようと思ったのです。

 けど・・・・・昨夜オットにホテルをキャンセルしてもらいました(ホテル側の温情により、キャンセル料はかろうじてなし:姉さん事件ですホテルよ、ありがとう)
 だって、締め切りまでは遊んだりしないで、しっかり作業しないと。
 皆さまにここまで支えていただいて、一日でもその命綱をたゆませることは小夜子の矜持に関わる。

 よって、今年のGWは小夜子一家は家でお留守番だ!
 皆さまのGWに幸あれ。

 さて、昨日、 架月真名さま より、『 編集者との相性 』についてテーマにしてみたら如何とのリクエストをちょうだいしました。真名さんありがとうございます!
 本日は急遽、このテーマについて私個人としての経験をお話させていただこうと思います。

 う~ん、どうなのでしょう・・・・。
 編集者と作者の距離が近いのは、漫画家さんに言えることだそうです。
 編集者とともにストーリーを考えなければ掲載を許されない漫画家さんも多くいるとか。
 これは漫画家の世界に詳しい方にご指導いただければと思います。
 要するに人それぞれ、十人十色の編集者との関わり合い方があるのでしょうけれど・・・・・。

 私は人気ブログランキングに登録しておりますが(いつもご協力ありがとうございます! 本当に励みにさせていただいております!)、同じ「小説」部門に登録していらっしゃるなかで、サイトの紹介文に「出版します」とアピールされている方のブログをよく拝見しに行ったりしています。
 そこで気づかされることは、皆さまなんとなく編集者さんとうまく疎通ができてなさそう・・・・という印象でしょうか。
 あるいは、自分にとって編集者は「仮想敵国」くらいの存在に思っていないと、作者としてのアイデンティティがうまく確立できない方もいるのかもしれません。
 もしくは、本当に相性が合わないか・・・・・。本当に相性が合わないと感じる場合は、やはり担当を変えてもらうか、編集者とサシで話し合って、方向性を共通のものにするべきなのでしょうか。

 編集者と一度も会っていないという状況は、私にとってはやはり異常に感じます。出版という道を先導する編集者は、作者にとって大切な大切な存在です。「赤ペン先生」ではないのですから、できるかぎり直接にお目にかかっておいた方がよいのでは、と思います。
 ものを書く者であれば、一度の出会いで相手に対する相当なデータを得ることができるでしょう。PCや書類のやりとりの向こうにいるあの人は、字面ではこうだけど本当はあったかい人、という自分なりのデータを直接的に得ていれば、文面からとらえる誤解などが生じることを防ぐことにもなると思うのです。

 ──前置きが長くなりました。
 私の場合、編集者の態度としては、「普通だったらこうなるよ」という意のチェックをくださいます。
 カッコ付きで「話の背景を教えてもらえれば考慮します」という意味で「普通に読めばこの部分は読者はこう捉えますよ」との注意を喚起してくれるのです。手前味噌な例で申し訳ないのですが、たとえば、

 長いこと入院していて姿を見せなかった楓が、ひょっこり現われる場面があります。このとき、私は、
 「 楓の話題をあえて誰も口に出さなくなった頃、ひょっこりあいつが帰ってきた 」という文章でこの場面を表現しました。これに対して、
 「 あいつは帰ってきた 」ではないですか──との編集者からのチェックが入りました。

 「 ひょっこりあいつが帰ってきた
 「 ひょっこりあいつは帰ってきた
 悩みます、これは。

 編集者の指摘に対して、一もニもない場合もあります。アキラの「愛しててん」のセリフのときなどがそれに当たります。
 私は「愛しててん」と聞いた──でも実際に初見の読者の方が少しでも疑問に思うのならば、この部分は改変するべきです。その後、皆さまのお力をいただき、編集者のOKが出たことはご周知のとおりです。

 けれども、「あいつは帰ってきた」様の指摘の場合、私は異を唱えることもあります。
 この一文の「あいつ」の部分を「楓」と直接的に書いてしまうと、この差は歴然とします。
 「ひょっこり楓が帰ってきた」
 「ひょっこり楓は帰ってきた」

 私たちは普段、どうしても会いたかった懐かしい人がふいに戻ってきたとき、
 「あいつが帰ってきたんだって」と仲間に話すことでしょう。
 「あいつは帰ってきたんだって」と言ってしまうと、なんとなく違和感があります。よそよそしいのです。

 ただし、一般的には「あいつは帰ってきた」の語法の方がおそらくは正しい。
 普通の文章だったらそうなるでしょう。それはでもおかしいんだ、と私は悩み、「このままでお願いします」と打信する。
 (あの・・・・「あいつは帰ってきた」の方がいい、と思われる方はぜひご一報ください。私の石アタマに一石を投じてください。お願い致します)

 私の場合、内容については編集者が「ここをこうしてください」とは決して言いません。
 「普通だったらこうですよ」という意の指摘があるだけです。
 そのあとは、私が自分で考えなくてはならない。すなわち、「当たり前」のことを指摘するのが編集者の役割だといえるのでしょう。ただし、「当たり前」のことをあえて指摘する側に徹することのできる編集者は、私などの者からはまさに「至芸」を持つ編集者と称することができます。
 編集者からいただいた指摘を選別し、納得のいく指摘に対して新しくなにを打ち出してくるか、これは私の自由です。
 「いい物作りの、お手伝いがしたい」──このスタンスを自ら任じている私の編集者は、まさに私にとっては理想の編集者であると思っています。

 真名さん実はね。
 以前から感じていたのですが、真名さんと私の編集さんと、なんとなく似たところがあるのです☆
 どこがどう似ているのか、はっきりとは言えないのですが、どこかかぶっている部分は確実にあります。
 なので、真名さんのおかげさまで、私は編集者と自分との相性が、とってもいいのだと信じることができるのです。


 明日は本日の内容を引き継いで●コンクラーベ●についてです。
 小夜子に力を!

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最終更新日  2006年05月01日 17時09分53秒
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