毎日新聞 2015年01月30日
小規模な田んぼを市民で共有(シェア)して米を自給する試みを広めようと、埼玉県川越市の市民団体がクラウドファンディング(CF)を利用して資金集めをしている。仕掛け人は、コンピューター専門の元防衛省技官だった増田純一さん(68)で、各種防衛システムへのインターネット技術導入のアドバイザーだった人物だ。「田んぼが日本を守る」という一念でデジタルから農業へ転身し、「シェア田んぼ」の普及にまい進している。【高橋望】
増田さんは、 市民団体「かわごえ里山イニシアチブ」 の代表を務める。2014年6月から、無農薬、無化学肥料による米作りを支援し、生きもののにぎわいを取り戻す活動を通じて、環境保全と里山を取り戻す地域活動に取り組んでいる。
昨年末には川越市吉田の休耕田で「かわわシェア田んぼ」1号田(約1000平方メートル)を設けた。「かわわ」には「川越の輪」の意を込めている。1口(100平方メートル、1万円)単位で10口の会員募集をしたところすぐに集まり、その後も問い合わせが寄せられているという。
田んぼは用意できたが、収穫に必要な農機具や資材購入費、資材置き場賃貸費などを確保するため、CFの 「READYFOR?(レディーフォー)」 を利用して、計72万円の資金調達を呼びかけることにした。募集期間は1月29日から3月末まで。リターン(見返り)は出資額に応じて収穫した米などが予定されている。
増田さんは、1972年に防衛庁(当時)に入庁してから2008年に退官するまで、技官としてIT研究一筋の経歴を持つ。
日本でインターネットが普及する兆しがみられた94年、その将来性にいち早く着目し、防衛省や自衛隊にインターネット技術の導入推進を図った。また、スーパーコンピューターによるウォーゲームシミュレーション研究のほか、ネット活用や技術の推進、サイバー戦研究などIT分野の光と影の両面から先進的な取り組みに従事してきた。現在も日本薬科大講師としてコンピューターについての教壇に立っている。
そんな増田さんが、「田んぼが日本を守る」との考えに行き着いた。「デジタル社会や技術がもたらしてくれたワクワク感と同じように、農的生活には、また別世界のワクワク感があった」。きっかけは、近所の特別養護老人ホームが無農薬による米作りをしており、そこに入会して田んぼ活動を始めたことだった。
「農業がみんなの暮らしの一部になれる時こそ、農業問題の解決と豊かな地域づくりが達成する」とする増田さんは、「田んぼの価値、日本の里山がもたらす風景や環境の価値が、経済理論だけでは測れない価値をもたらすはず。非農家、消費者の力で実現したい」と力強く語る。「かわわシェア田んぼ」は2号田、3号田と拡大を計画しており、参加者の追加募集も随時行い、「シェア田んぼ」の全国展開を夢見ている。
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