福禄太郎の書評と時事評論
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椎名誠の自伝的小説シリーズの「新入社員篇」、温かみのある文章で当時を振り返っている。本書は第1章 グリーンスネイク第2章 塔屋の車座布団第3章 トタン雨第4章 よかちんちん第5章 まんじゅしゃげこわい第6章 張ったり横丁の人々第7章 派閥天丼第8章 小瓶のウィスキー最終章 さよなら鯨やんあとがき解説 菊池仁(編集者としての椎名誠の後継者)という構成だ。 小さな業界新聞社に就職したところから始まるので「哀愁の町に霧が降るのだ」のおしまいのところと、かぶっている。「哀愁の町に霧が降るのだ」では、会社に女子社員が1名いたが、この物語では男ばかりだ。それから「哀愁の町に霧が降るのだ」では、羽生理恵子なる麗人がシーナのマドンナとして出てくるが、この小説では、マドンナは木村の彼女である原田瑞枝であるなど、少し違っている。完全な自叙伝ではなくいずれも小説としてある程度加工してあるからだろう。 会社が引けた後で会社に忍び込んでポーカーをする、さらに屋上でポーカーをするというのがすごい。個性的な人々がいるし、会社に隠れてアルバイトをしている先輩社員もいるし、人の入れ替わりが早いのも中小企業ならではと思った。企業の展示会に行くと、業界紙の記者ということでプレゼントがもらえて中に現金が入っているというのはマスコミならではと思った。先輩に服装を注意されるなど、いろいろ指導を受けてだんだんサラリーマンらしくなる。社員旅行の話もある。記者として取材に訪れた銀座松屋の万年筆売り場に人に、「前年同月比」と言うところを「前月同月比」と言って馬脚をあらわしてしまう。 編集長の原島(仕事は部下に任せっきり)と先輩の藤本がいなくなって、仕事だけが残って一人でこなすことになった。このように人が減るけれど補充がされずに仕事をすべて引き受けなくてはならないことも、会社生活では、たまにあることで身につまされた。それにしてもちゃんと「マンスリーサーベイ」の編集を一人でこなしているのだかたいしたものだと思った。
March 12, 2006
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