テン・テン・テレツク・ステテコ・テン・テン・『おもしろ亭』にようこそ

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2016年01月24日
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スットコ・テケ・ツク・テケ・トン・シャン・テン・テン・ツク・ポン・テケ・シャン・テン・トコ・テン・テケ・ツク・ポン・シャン


へィ、ようこそのお運びで、ありがとうございます。


季節は寒中・・、どこもかしこもお寒うございます。


こうゆう寒いときは、どうぞ寄席の方へいらして


笑って温まっていただきたいと思います。


え〜、江戸の文化・文政年間になりますと、落語や講談を演じる「寄席」


が登場してきまして、庶民の人気を集めるようになってまいりました。


この頃、江戸市中には120軒以上もの寄席ができまして、


三笑亭可楽一門とか三遊亭円生一門などから名人たちが出て、


これらの寄席を掛け持ちして回っていたそうでございます。


初めの頃のお客層は、江戸勤番のお武家さんとか


商家の手代、町方の隠居なぞでして、寄席は裕福な閑人のたまり場だったそうですが、


安政5年に大地震が起きまして、

市街地復興で手間賃が増えた大工や職人たちで

客席が埋まったそうでございます。


この頃、江戸では落語170軒以上、講談200軒以上の寄席ができたそうでして、


地震が寄席の数を増やした・・というわけでございます。






江戸の千住という処に、ある講釈師が住んでおりまして、


「どおも、近ごろの客の好みが変ったンかなァ・・。


昔の出し物が、さっぱり通じねェ・・。


まぁ、そうも云ってらンねェから、客受けするネタァ、なンか見ッけなきゃあなンねェが・・。


今どきの世相なんかァ、もじってみるかナ・・?」


・・なんて、しきりに悩んでおりまして・・。


あるとき、下町の通りを歩いてますってェと・・・。





  「さてさて、ネタァ・・、ネタァ・・・と。


    おッ、向こうからやって来るなァ、ネタ屋じゃねェ。・・瓦版屋じゃねェか。


    ちょうどいい。奴っこさンなら、おもしれえネタァ、たんと持ってるに違えねェ」


  「おや、講釈の旦那じゃござンせんか・・」


  「なんでェ、瓦版屋か。近頃ァ不景気だが、何ンかおもしれェ話しはねェかい?」


  「まぁ、こういうご時世でやすから・・、


    おもしれェ話ってェのは、ねェんでやすがね。


    ドタバタ話しならありやすぜ」


  「へぇ〜、そいつァ、どんな話しだい?」


  「おッと待ったァ。旦那は講釈師だ。


    ここで、べらべらしゃべったら、只でネタァやることになる・・」


  「そんな気遣(きずけ)ェは無用だ。


    なにも、全部聞こうってンじゃあねェ。ほんの世間話、立ち話じゃァねェか」


  「じゃあ、近頃、耳寄りのドタバタ話しでやすがね・・」


  「おうおう」




  「両国の『小泉屋』ッてェ乾物屋ァ、ご存じで・・?」


  「しらねェな・・」


  「去年の春先に店開きしたんでやすがね・・」


  「うむ・・」


  「はじめの内ァ、夫婦仲睦まじく商売してたンでやすが、


    今年に入って直ぐ、夫婦別れしちゃいやした」


  「ほう・・。夫婦喧嘩でもしたンだナ・・」


  「それが、嬶(かかあ)と料亭主人の間で、言ったとか言わねェとかが元で、


    亭主のやつが、嬶(かかあ)ァ追ン出したってわけで・・」


  「ずいぶんと乱暴な話だな」


  「まぁ、嬶(かかあ)の方も、かなりのアバヅレらしいんでやすがね・・」


  「・・かなりのアバヅレでも、この不景気な世の中だ・・。


    家ェ追ン出されたら、さぞかし難儀ィしてるンじゃねェかい?」


  「それが・・、もともと目白あたりの豪邸に住む町名主の娘でしたンで、


    今ァ、実家に戻って、別れた亭主の悪口ィ、あらいざらい吠えまくってるそうで・・」


  「かなりのジャジャ馬らしいな・・」


  「へェ、長家では、『かなりのジャジャ馬』・・いえ、


    ・・・『毒舌ジャジャ馬』ってェあだ名が付いてェやした・・」


  「毒舌もはくのかい?」


  「へェ、長家の井戸端会議じゃァ、天下の誰彼かまわず、毒舌でぶった切りでやすから、


    その話しッぷりがおもしれェってんで、井戸端会議場の周りァ、


    ・・連日、野次馬で黒山の人だかりでやした」


  「うらやましい才能だ・・」


  「そこで、亭主が嬶(かかあ)の才能を見込んで、


    出入りの料亭で、ちょうど雇われ女将(おかみ)を探してたんで、


    ・・そこへ嬶(かかあ)ァ口入れしやした・・」


  「なるほど・・」


  「ところが、その料亭が『伏魔殿』だったわけで・・」




  「なんだい、そりゃあ? ・・・(こいつァ、面白い噺が出来上るかナ・・?)」


  「・・あまりしゃべると、瓦版が売れなくなるんで・・」


  「なにを心配してやんでェ。ほんの世間話、立ち話じゃねェかい」


  「『伏魔殿』ってのは、嬶(かかあ)が付けたあだ名で、


    ほんとの名は、『むねむね屋』と言いやす」


  「そいツも、うさん臭ェ名前だな?・・・(ますます、面白くなってきやがった!!)」




  「ところが、この料亭の使用人達の間では、


    ・・永年にわたって、店の金をネコババするという伝統が有りやして・・」


  「使用人が料亭を喰らうのかい・・?」


  「へェ・・左様で、これが生半可のもんじゃァねェんで・・・・」


  「ほほう、どんなンだい・・?」


  「へェ、・・番頭が、店に内緒で競走馬を買ッちまう・・なんてェ、朝飯前ェで。


    手代から丁稚にいたるまで、吉原での遊興費の付けとか、


    自分ンちの冠婚葬祭費なんかの付けとか、


    習い事や、ガキの手習いの月謝の付けとか、


    隣の嬶アとの不倫旅行の付けとか、


    毎日の、米・味噌・醤油・酒代・床屋代・・そのほかにも、


    ありとあらゆる考えられるもの全部、店へ回しておりやした」


  「凄まじいもンだナァ・・!!」




  「へェ、・・これを見かねた毒舌新女将は、店の塵芥(ちりあくた)ァ大掃除するってンで、


    使用人達と毎日すったもんだのくり返しで、客など、そっちのけでやした」


  「そりゃあ、商売ェどころじゃねェな・・」




  「あるとき、料亭で公儀の接待が行われることになりやしたが、


    料亭主人の『むね衛門』が招待者の人選に横やりを入れたことが


    公儀の耳に入りやして、大問題となりやした」


  「そりゃあ、問題になるなぁ・・」



  「公儀のお取り調べに、毒舌新女将は、そうゆ〜話しは聞いたと言うし、


    料亭主人の『むね衛門』は、言ってないと言うし、水掛け論となりやした」


  「なるほど・・」



  「小泉屋の亭主は、これ以上、公儀とのゴタゴタに巻き込まれたくねェってんで、


    嬶(かかあ)を新女将の座から降ろして、ついでに、離縁してしやいやした」


  「ついでに離縁かい・・、それで一件落着したのかい?」


  「ところが、その話を聞いた井戸端会議の野次馬連中が、収まりつかなくなりやして、


    あんなおもしれぇ嬶(かかあ)ァ追ん出すたァ、とんでもねェ亭主だ・・と、


    一気に亭主の人気は逆落(さかおと)し。乾物の売り上げァ、半分になりやした」



  「人気とは儚(はかな)いもンだナ。それで、『むね衛門』のほうは、どうなったィ・・?」


  「これが、トンプ−チンを料亭に送り込んでいたとか・・、


    日本橋の橋の隣に、勝手に『むねむね橋』を作ってオロシヤ国に進呈していたとか・・、


    ボンゴの外交官を自分ンちの門番にしてたとか・・、


    汚職だ、賄賂だ、どう喝だ、泣き落としだァ、なんだかんだと次から次へ呆れるくれぇ、


    うさん臭ェ話がいろいろと出て来やして・・、


    町奉行所でも、どこから手ぇ付けていいンだか、さっぱり分からねェ始末で・・。


    とりあえずしょっぴいておこうッてんで、奉行所の役人にしょっぴかれやした・・・。


    ・・あまりしゃべると、瓦版が売れなくなるんで・・」


  「なにを心配してやんでェ。ほんの世間話、立ち話じゃねェかい」



  「へェ、・・で旦那、まだ、ゴタゴタぁ続きやす・・」


  「おうおう」


  「小泉屋の亭主はってェと、変な遊びィ覚えちゃいやして・・」


  「・・どんな遊びだい?」


  「へェ、・・竹ひごで丸い輪っかをいくつも作りやして・・、


    ・・これを通行人の首めがけて、相手かまわず次々と投げるんでやす・・・」


  「・・へえ〜、もしかして変人じゃあねェのかい。・・なんてェ遊びだい?」


  「へェ、世間では『丸投げ』と呼んで、そこを避けて通りやす」



  「ふ〜ん? よっぽど暇なのかねぇ・・?


    それで商売ェのほうは、でぇじょうぶなのかい?


    商売ェ敵(がたき)もずいぶんとあるんだろうに・・」


  「へェ、・・どういうわけか、どこの商売ェ敵(がたき)もみんなそろって、


    ・・・店ン中ァ、シッチャカメッチャカでやすが、


    小泉屋も店ン中ァ、番頭以下、丁稚までが抵抗勢力になりやして、


    ・・毎日、すったもんだで、台所は火の車だそうで・・」



  「・・それじゃァ、人気もまた逆落しだろう・・」


  「へェ、・・・落ちた人気を、また上げようってんで、


    ・・・わけの分からねェ国と商売ェおッ始めようかってェ話しで・・」


  「そいつァ、また博打(ばくち)みてェな話だな・・?


    ・・・(でェぶ、ネタァ出そろったが、もうチョィだナ・・)」


  「いけねェ!! 油ァ売ってるうちぃ、瓦版を刷る刻になッちまったぃ」


  「まだ、いいじゃねェか。あとちょっと・・、で仕上がる」











おたいくつさまで・・


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最終更新日  2016年01月24日 15時20分39秒


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