約束さ永遠のミステリ~ 妄想と考察と日常の闇鍋

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2025年12月02日
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テーマ: 読書感想文(764)
カテゴリ: 読書感想
『屍の命題』 である。
とある湖畔の別荘に集められた6人は、やがて全員が死体となって発見された。なぜか死亡時刻も死因もバラバラだった。「犯人」は何を意図していたのか。究極の「雪の山荘」ミステリついに刊行。(楽天ブックスより引用)
雪の山荘で起こった連続殺人事件。最終的に全ての人間が死んでしまう点は、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』のようだ。しかしそこはやはり門前典之氏である。腕の無い死体や、胴体を切断された死体が出てくるのだ。しかもそれらは単なる雰囲気づくりではない。
作中で篠原が見た「巨大な甲虫の亡霊」もインパクトがある。大きな甲虫がもぞもぞ動くのを想像すると、中々に気持ちが悪い。もっとも、気持ち悪さで言えば正体の方が気持ち悪いかもしれない。なぜならそれはストレスからくる幻覚でも見間違いでもない。なんと切断された雅野医師の上半身が動いていたというのである!
後半部分は探偵が推理するパートだ。探偵である蜘蛛手は、その卓越した推理力でもって、手記と少々の現地調査から事件を解いてみせる。
事件の犯人は同一人物ではなく、各人が犯人であり、同時に被害者でもあったのだ。つまり、各殺人の犯人は、直前に被害者であった人物なのである。篠原に殺された蓑田が京華を殺し、京華が鷹舞を殺し、鷹舞は雅野を殺す...と、ドミノ倒しのように連鎖していくのだ。
最後の篠田は自殺だが、彼を追い詰めたのは阿武澤となる。こうして犯人と被害者はぐるりと円を描くように巡るのだ。最後に美島夫人が女装した美島教授であったことも暴かれて、事件は解決する。
ハードカバー版で読んだのでちょっと読みにくかったが、しかしそれが気にならない程に面白かった。吹っ飛んだ腕が凶器になったり、上半身だけ這い回ったりとか「無理だろ」と思いつつも、実は理屈はきちんと通っているのである。リアリティはないかもしれないが、理屈の上では破綻していないのだ。この荒唐無稽さと理屈がぎりぎりで融和している感じが、バカミスと言われる所以であろうか。個人的にかなり好みの作品だ。
犯人が被害者になるのではなく、被害者が犯人になるというのも斬新だ。「物騒なピタゴラスイッチみたいだ」というのが私の感想だった。そしてそんなとんでもトリックからは、人間のじとりとした悪意が見えてくる。「死ぬ前にあいつを道連れにしてやる」という思いが次の事件を起こすのだ。それに気づけば、プロローグの蓑田の内心の意味も変わってくる。最初は助けを求めて手を伸ばしたのかと思っていた。しかし本当は、蓑田は京華を殺すつもりで腕を伸ばしたのだ。
京華には少し同情するし、美島教授の動機にはどん引だが、結局のところそれらは些細なことなのだろう。本の中でも書かれている通り、インパクトのある話こそが推理小説で大事なことだ。そう意味では、この本は大成功だ。もしインパクトのある話が読みたいなら、『屍の命題』はピッタリであろう。





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最終更新日  2025年12月02日 16時06分17秒
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