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幼いふたりの子供が この世に生を受けてわずか一年と三年 飢餓地獄をさ迷いながら 息絶えていった 子供達の母は 若干二十三歳 母一人で 誰にも頼ることなく 幼児二人を育てていくことに気も狂わんばかりに疲れ果て 優しかった母の心は 次第に地獄の鬼と化した 若い母親を擁護するものなど何もない 悔やみきれない自分のおろかさを一生背負いながら 罪を償って それでも生きていくしかない しかし、この信じられないような出来事の中に 現在社会の深い闇がある 日本の社会が半世紀もの間無視し続けてきた病巣がある 人をつくる教育はどこに行ってしまったのだ 世の中で最も強い親子の絆はどうなってしまったのだ 困ったときはお互い様という 近所同志のあったかい人間関係はどうなってしまったのだ この出来事は他人事ではない 自分達のつくり出した社会の病巣に 我とわが子、我が孫までが 気づかないままに飲み込まれてしまうのだ
2010.09.13
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偉大な俳優であり、コメディアンであった藤田まことが今年二月に帰らぬ人となった退職してからは暇な時間も増えてテレビを見る時間も多くなった私はこのごろ再放送される「はぐれ刑事純情派」を見るのを楽しみにしているたった一時間のドラマで事件は鮮やかに解決するのだがなんとも言えない人と人との人情味があふれている「人情紙ふうせん」といわれて久しい世の中このドラマを見ていると乾ききった砂漠の砂に隅々まで水がしみこんでいくような気がするいらいらしたこころの中もしっとりと落ち着いた気分になる政治も混乱の真っ只中にあり経済も不景気はとどまる気配もないほとんどが脇目も振らず働くしかない時代に古めかしい人情などを求めることなど何ほどのものになるのかそう思いつつもこのまま何か大切なものが置き忘れられてやがて人々の記憶の中にもなくなってしまうそんな世の中がやって来るのではないかと漠然とした不安を感じるのは私だけだろうか
2010.05.11
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毎月たった一度だけボランティアの真似事をしていますアイアイディケアーセンターという老人福祉施設でお年寄りと一緒に歌を歌うことですもう四年くらいになりますセンターに通う老人にはひとりひとりさまざまな理由があって通っていると思いますが私に与えられている時間は午後二時から三時までの一時間でお年寄りと話しをしているような時間もなく、事情もあまり聞いたことはありません今日は母の日が近いこともあって、母にちなんだ歌を歌ってみました唱歌の「かあさんの歌」と、さだまさしの「無縁坂」を歌ってみましたカラオケはあるのですが限られたものしかなく、いつもアカペラで歌っていますほとんどがお母さんをしてきたお年寄りのおばあさんなので日ごろ無表情なお年よりも何かしら感じるところがあったのか私の配った歌詞を見ながら、ところどころ知っているところを口ずさんでくれましたこのごろ、最後は川中美幸の「二輪草」のデュエットで終わることにしていますお年よりは女性のところを歌ってもらって、私は男性のところを歌います最初は蚊の鳴くような声でしたが、最近は大分大きな声が出るようになってきましたもう一息で完全な二輪草が出来そうです、もう何ヶ月かあとには楽しみです
2010.05.09
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失われた十七年 警察権力よおごるな どんなに権力を行使しても 彼の失われた十七年は 取り戻すことは出来ない 考えても見よ 幼女殺害犯として服役した十七年 男は人生の最盛期に全ての自由を奪われ 殺人犯としての汚名だけが残された 父も母も 晴れてわが子の無罪のこの日を 知ることもなく 悲嘆のうちにこの世を去った 思えば思うほど 例えようもなく煮えくり返る 胸のうちを 誰にぶつけて生きていけばいいのだ 警察権力よおごるな どんなに権力を行使しても 彼の失われた十七年は 取り戻すことは出来ない
2009.06.05
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嘆き 何が核だ 何がミサイルだ 人々の心は恐怖におびえ 笑うことさえも もうとっくに忘れられた やせ細った田畑に 育つ穀物などほんの一握り 今日家族で分け合って 食べた夕食も 明日また食べられる あてもない 明日に持てる希望などない 生きるためだけに ただひたすら生きている しかしその間にも 過ぎ行く時は容赦なく 全ての人々の いのちを縮める せめておなか一杯食べて 腹の底から笑い転げる その日が訪れるまで 時を与えてほしい 何が核だ 何がミサイルだ そんなものは誰一人 幸福に出来ない そんなものは誰一人 望んではいない
2009.05.31
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うつむくな こころが荒れて いらいらしていると 見えるものも見えず 聞こえるものも聞こえない うつむいては駄目だ 夜空を見上げれば 温かい月の光の微笑がある 宝石の輝きにも負けない 満天の星のきらめきが見える 巷の雑音ばかり 気にしていては駄目だ 川原の土手で耳を澄ませば 絶え間なく流れる水音さえも 元気を出せよと語りかけている 大連から来たという女の子 きのうの帰りは 星空が綺麗だったね と語ったとき 同じ空を見た人に 身近なぬくもりを感じた
2009.05.29
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食わず嫌い 最近納豆を食べるようになった 子供の頃から母親が 好んで食べていたが あのネバネバした見た目の 悪さのせいか 口にしようとしなかった 還暦を迎えて 糖尿病も気になり始めた スーパーで買ってきて食べてみると 意外とおいしい その日から毎日 納豆を食べている 六十年も人間をやってきて 数え切れないほどの 人との出会いがあった 食わず嫌いの人も沢山あった もしかしたら かけがえのない人との 出会いもあったかもしれない そう思うと少し人生を 損したように思えてくる
2009.05.24
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生きること 生きることは苦しい 生きることはつらい こんな思いをするなら いっそのこと 死んでしまったほうが どれくらい楽かと 思うことがある もう自分には 生きる楽しさなんて 人並みの幸せなんて やってこないのではないかと 思うことがある それでも いのちの鼓動を 止めることなく もがき苦しみながら 時の流れにじっと 耐えていれば 時の流れはまるで 洪水のように あらゆる苦しみの 全てを流し去って その跡に いきいきとした 希望の芽を萌えださせる 生きることは苦しい 生きることは楽しい この繰り返しが人生 せいぜい生きて百年 中途半端をやめて 目一杯生きてみてやれ
2009.05.17
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ほたる 少年時代に脳裏に焼きついた 美しく不思議な光 田植えの頃になると 近所の友達と集まって よくほたるを取りに行った 遠くにほたるを見つけると だれかれとなく歌った ほーほーほーたる来い こっいの水はあーまいぞ そっちの水はにーがいぞ ほーほーほーたる来い ふるさとを流れる千種川の 米田橋の上で 群れながら近づいてくるほたるを 竹箒で払い落として捕まえた 静かな川面にひと時 子供の声が響いた 家にもって帰って ほたるを蚊帳にはなした 電気を消して この世のものとも思えない 不思議な光を見つめながら いつの間にか深い眠りについた 川幅も広くなった 当時木橋だった米田橋も 幅広く頑丈な橋になった でも、もうほたるは飛ばなくなった 子供達の声も聞こえなくなった あの美しい光の乱舞は もう見ることは出来ないのか
2009.05.09
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人は生まれるとき 時(とき)を選ぶことは出来ない 人は生まれるとき ところを選ぶことは出来ない そして、人は生まれるとき 親を選ぶことは出来ない 自由な意思も与えられずに ある日、あるところで、ある親のもとに 突然ひとの生命が誕生するのだ 生命の誕生は残酷だ その時からひとは己の運命を背負って 歩き始める ひとはそれぞれに幸せに出会うために 人生という行き先さえ見えない道を歩き始める ただひたすら幸せとの出会いを求めて せいぜい生きても100年のいのち 命の誕生を目一杯祝ってやろうじゃないか 疲れて道に立ち止まっていたら 疲れた体を力いっぱい後押ししてやろうじゃないか そして必ず幸せに出会えると 力強く元気付けてやろうじゃないか
2009.05.06
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ある酒場にて なじみの酒場に最近 いつ行っても顔を合わす 女がいる その時にはいつも相当に酔いが回っていて わたしの顔を見ると「はまちゃんお久しぶりー」 といって私の隣に座ってくる しかし次のお客が来ると また、「お久しぶりー」と声をかけて 他の席へと渡り歩く お客は面白そうに相手をして デュエットをしたり馬鹿話をしたり 大いに店の雰囲気は盛り上がる いつもお店が閉まるまでいる 女は決まって「砂に消えた涙」を歌う どうしてこの歌を歌うのかお客は知らない 家にひとりいたら気が狂いそうになるという 恋人を知り合いの女にとられたという 泣いても泣いても忘れられないという 毎日飲んで、騒いで 最後に悲しい歌を歌って 店が閉まる頃には疲れて眠り込んでしまう 悲しい女、さびしい女、打ちのめされた女 人前では決して弱さを見せない女だから 目の前で見る光景は残酷にすら見える もうそろそろ泣くのをやめて元気を出せ 男とその相手の女に言ってやれ そんな男、のし付けてやるって言ってやれ もうそろそろ泣くのをやめて元気を出せ 男とその相手の女に言ってやれ そんな男、のし付けてやるって言ってやれ それだけ悲しんだら それだけ苦しんだら きっと、きっと新しい出会いが待っているから
2009.05.03
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さくら 華々しく咲いて潔く散る 良いか悪いかは その人の生き方であり とやかく言うことではない 私のような団塊の世代には 古い武士道のようなものが まだ頭の片隅にしぶとく 残っているようである 最近の政治家などを見ていると あまりの潔さの無さに イライラが募り血圧が上がる 時は春、爛漫と咲いた桜も 時を知り、何の未練も残さず 潔く散っていく 信念を貫き通して生き その散り際の潔さを己の美学とする そんな心はもう失われてしまったのか 人間らしいと言えばそれまでだが
2008.04.06
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宿敵巨人との初戦! ずらりと並ぶホームランバッターを相手に 安藤7回まで1失点で耐えた。 いや、耐えたと言うより良く攻めた。 阪神の投手陣もこれを見習って攻めてほしい。 逃げたらやられる。 最後の1回は久保田が抑えて結果は6対1の楽勝! 明日はヤクルトから取ってきたグライシンガーの先発だろう。 厄介なピッチャーだ。相当点を取りにいかないとやばいなー。 新井のバッティングが少し心配だ。 今岡も今日は1本ホームランを打ったが、まだまだの感がする。 明日はこの二人に何とかしてもらおう。
2008.04.04
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タイガース4連勝!5年ぶりだ。巨人はもろくも4連敗!エースの上原を中日戦に温存したが、策士策におぼれるが如く、上原で星を落とした。あれだけの戦力を持ちながら、原監督は何を考えているのだろう。下手な策を労せず、横綱相撲を取ればいいのに。一軍の将の器量の問われるところだ。巨人が少し負けておいてくれると、阪神としては気が楽だ!どこに勝っても1勝は1勝だ!こうなったら、広島を3タテして開幕ダッシュだ!
2008.04.01
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阪神タイガースがまた勝った これで開幕三連勝! トラキチの私には何よりも 血が滾る思いがする 政治も経済も、世の中の出来事も 暗いばかりの中で 私にはこれほど痛快なことはない この調子で夏まで持つかなー あまり調子が良いと 早くも不安が沸いてくる どんなに調子がよくても トラファンはいつも疑心暗鬼 それでもタイガースは 泥臭くて大好きだ!
2008.03.30
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JR岡山駅の悲劇より JR岡山駅プラットホームで 仕事帰りのお父さんが 不意に背中を押されて 電車にひかれ帰らぬ人となった ひとりの少年の挫折が生んだ 衝動的な犯行として 大きく報道されている 人ごとではない これはながい日本の繁栄の 歴史の中で作られてきた 一つの人格の犯行だ ものが全ての社会の中で つぶされた家庭、つぶされた学校 ゆがめられた社会的価値感 この中で作られた 一つの人格の犯行だ いのちが血を流して 泣き叫んでいる もっと生かしてくれと いのちが懇願している 頼むからもっと大切に してくれと いのちが訴えている 俺たちみんな 人間らしくいきいきと 生きていきたいんだと 人ごとではない これはながい日本の繁栄の 歴史の裏で見過ごされてきた 一つの人格の犯行だ
2008.03.27
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愛と拳銃 もしも、俺が拳銃を握っていたら 冷たい鉛の銃弾にかえて 愛という名の銃弾をこめて 貴女の胸の真ん真ん中を狙って撃っただろう たとえ、その拳銃が非力で 銃声にさえ気づかれなくても 俺は貴女の胸の真ん中を狙って ただ、引き金を引き続けただろう 報われることのない愛と知り 絶望の淵に追い込まれても 俺は愛という銃弾にかえて 憎しみの銃弾をこめることは なかっただろう 俺の恋は そんなに薄っぺらなものじゃあない 俺の愛は そんなにちっちゃなものじゃあないと ぼろぼろ、ぼろぼろ 泣きながら 何度も何度も 自分に言い聞かせただろう 悲しみに打ちひしがれた暗闇の中で 気が狂いそうな時間(とき)を 過ごしても 俺のこめかみに当てた最後の一発は 愛と憎しみの交錯する 絶望という弾丸ではなく 新しい旅立ちという 希望の弾丸をこめただろう
2008.03.12
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運 命 私に運命など あるのだろうか いや、そんなものが あるはずがない すべてが 単なる偶然との 出会いに過ぎないのだ つらい悲しいことに 出会うたびに これが運命なのだと 言い聞かせ どうしようもない壁を いつまでも乗り越えられず これも運命と 飲み込んでしまう 運命など あるはずがないと 思いながら いのち尽きるまでに 運命を切り裂く出会いを 心のどこかで望んでいる 自分がいる
2008.03.11
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私の初恋は小学五年生のころ初恋の人の名前は恵子さんといいました。お下げ髪の良く似合うかわいい少女でした五十年経った今でも、その頃の顔がはっきりと思い浮かびますクラスの人気者で、男の子の憧れの的でした特にこれといって自慢できるものもない私は、話をする機会も少なくいつも遠くから見ていることぐらいしか出来ませんでしたところがある日、クラスの席替えで偶然にも、彼女と席を並べることになりましたそれからは、毎日学校に行くのが楽しくて仕方ありませんでしたしかし、しばらくすると、彼女は私にはほとんど関心のないことがわかりましたやはり、彼女の関心は勉強の良く出来る子や運動の好く出来る子の方に向いていました私は奮起しました何とかして自分のほうに目を向けてもらおうと、嫌な勉強も、親がびっくりするくらい毎日懸命に頑張りました学期末になって通信簿をもらう時、先生からみんなの前で「一番頑張ったのははまちゃんだ、良く頑張った」とほめてもらいましたそんなことがあってから、彼女とは急に話も出来るようになり、彼女の目も私に注目されるようになりました六年生になっても、私は委員長、彼女は副委員長をするなど、クラスの中でも注目の的になっていましたしかし、今から考えても男とは誠に身勝手なもので、中学生になってほかの小学校の生徒も一緒になると、彼女だけでなく、勉強も運動も出来る魅力的な女の子が何人もいることに目が行くようになりました私が生徒会の副会長、生徒会長に選ばれて有頂天になっていた中学3年間の間に、初恋の人「恵子さん」はすっかり私の心の中から薄れてしまっていましたそれから45年くらいの月日が流れました幼稚園の先生をしていたこと、結婚して神戸のほうで暮らしていることを聞いたことはあるのですが、今までに何回もあった同窓会にも彼女の顔は一度も見ることはありませんでした60歳の定年に手が届くようになって、時々こどもの頃を懐かしく思い起こすことがありますが、そのたびに彼女に今一度会ってみたいと思う気持ちが強くなります今なら「私が今あるのはあなたのおかげなんですよ」と素直な気持ちで感謝の言葉が言えそうな気がしますしかし、当の彼女はそれを聞いても笑い出してしまうかも知れませんが
2008.03.10
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四角いリングの中で渾身の力を込めた パンチが数え切れないほど交錯した 12ラウンドの終了のゴングが鳴るまで 両者一歩も引くことなく戦った そして、戦いは終わった 内藤大助は負けなかった 17回もチャンピオンを防衛した挑戦者に 背水の陣で迎え撃った内藤大助 戦い終えた両者は 何度も何度もお互いの健闘を讃えあった その戦いを見たもの全てが いつまでもその感動に酔いしれた いじめられっこ達よ 勇気を奮い立たそう かつては彼も何度も何度も 卑劣ないじめにくじけそうになった しかし、彼は誰にも負けない努力と強い精神力で いじめっこ達を黙らせてしまったではないか いじめっこ達よ いじめはもうこのへんでよさないか 弱いものをいじめても 何の感動もない空しい自己満足が残るだけだ 心の底から感動に震えるような体験もある 人も自分も一緒になって喜べるものがある そんなものにチャレンジしてみないか 君達にもきっと出来るはずだ
2008.03.09
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平和の果て 公園のベンチで寝ていたおじさんが おなかにライターのアルコールをかけられ 火をつけられた 全身に大やけどを負いながら 噴水の池に飛び込んで いのちだけはとりとめた 高校生数人が ホームレスのおやじ狩りだといって 間違えてやったものだ 地域に迷惑をかけているので 死んでしまってもかまわないと 思っていたという 朝のテレビでアナウンサーは 人間は誰もが生きる権利があるのだと 大きな声で力説していた 今日は ひと月たった一度の私のボランティアの日 デイサービスのお年寄りに 私の下手な歌を聞いてもらう日 終戦記念日も近いせいか 日ごろは口にしない軍歌を唄った お年よりも一緒に懐かしそうに唄った 戦争を知らない私に 戦争を語る資格はないのだが 軍歌を唄っているうちに なぜか怒りがこみ上げてきた 戦争では多くの若いいのちが空に、海に散っていった 彼らにも一人ひとりに生きる権利はあったはずだ しかし、彼らは一言も語らず死んでいった 時代といえばそれまでだが 彼らの背負っていたものは とてつもなく大きいものだった 守りきれないとしりつつ いのちがけで守り通そうとした 死んでいった彼らに 今の百分の一の自由でもあげることができたなら 彼らはどんな笑顔を見せてくれるだろう 彼らの口からどんなことばが聞けるのだろう 耳を疑いたくなるような高校生の屈折した正義感 日々テレビから聞こえる 「生きる権利」というむなしい響き 彼らの死はいったい何だったのだろう 軍歌が終わって 今流行の「千の風になって」をお腹の底から唄った 海や空に散っていった若い兵士たちも この詩のように晴々とこの大空を 自由自在に吹き渡っていてほしい
2008.03.08
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お酒のあまり飲めない私でも、気楽にカラオケが唄えて お客にもあまり気を使わせることもない そんな居心地の良さが好きで、足を運ぶようになったスナック ママに冗談混じりで言った言葉が本当になって 私にはほとんど縁のなかったボランティアをすることになった と言っても、私には歌を唄うぐらいしか能がない デイケアに通われているお年寄りの食後に1時間程度 私の歌を聞いてもらおうというものである 私は、いくら素人が上手に歌を唄っても、プロの歌手とは 表現力や説得力には雲泥の差があり 関心を持って聞いてもらえるのは、せいぜい1曲ぐらいで しかも、よほど上手でないと3番まで唄う間に 飽きられてしまうぐらいに思っている 何曲も続けて唄うと、聞く人も苦痛で、すぐに飽きられてしまって この活動は長続きしないと思っていた いろいろとトークを混じえながらやってみようと考えていた しかし、実際に行ってみると 耳の遠いお年寄りも何人かあるようで 込み入ったトークは、なかなか理解してもらえないことがわかった やっぱり、唄うしかない 親が歌好きだったせいか、子供の頃から なぜか古い歌も耳でおぼえており 1000曲ぐらいは唄える自信がある わずかな時間でも、お年寄りが若い頃の思い出に浸れたらと スナックでは唄うと笑われるかも知れないと思いながらも お年寄りの若い頃に流行った歌を出来るだけ選んで唄っている 唄い終わると、突然おばあちゃんが立ち上がって 大きな声で叫ぶときもある 病気による言語障害で、私には何を話されたのかは理解できないが 目からぽろぽろと涙がこぼれているのを見て この歌には何か深い思い入れがあったのだろうと思い 私の歌でも役に立つこともあるのだなと感じている スナックのママにはいつも感謝している 人付き合いが苦手で、進んで人前にも出たがらない私に わざわざ古いカラオケの機械までデイケア施設にセットしてもらって こんな機会をつくってもらったことを 酒場でにぎやかに歌を唄うのも、それはそれで結構楽しいものであるが 私のつたない歌でもじっと聞いてくれるこの場所は 私にとっても何となくいい場所になりつつある
2008.03.07
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おとうさん、おかあさん あなたは、人差し指をクルクル回して 「しおからとんぼ」を捕まえたことがありますか 小川の中を泥んこになって 「ふな」や「なまず」を追っかけたことがありますか そっと木陰に手を伸ばして 「せみ」を手づかみで捕まえたことがありますか 目の前でクルクル指を回しても やっぱりとんぼは目を回さなかった いくら追いかけても「ふな」や「なまず」は 上手に網をすり抜けて逃げていった 捕まえたと思った瞬間、馬鹿にしたように せみはおしっこをひっかけて 隣の木に飛んでいってしまった そんな時、きっと こども心に、手ごわい「いのち」の抵抗を 体で感じていたのですよ やっと捕まえた「しおからとんぼ」も 「ふな」や「なまず」や「せみ」も やがては虫かごや金魚鉢のなかで死んで ピクリとも動かなくなってしまった そんな時、きっと 小さな心に、「いのち」の終わりのはかなさを 感じていたのですよ いま、あなたの目の前で子供が夢中になっている ゲーム機を覗いてみませんか 全てのキャラクターが、リセットボタンを押すだけで 何度死んでも生き返ってくるのです 殺すことも、生き戻すことも自由自在 いとも簡単に生き返る「いのち」に やがては何の不思議も感じなくなってしまう 大切なものを感じないまま 大きくなっていませんか 大切なものを見ることもなく 大きくなっていませんか 今度の日曜日 こどもと野原でも歩きながら 本物の「いのち」にふれてみたら 今までよりも、もっと、もっと 優しい気持ちがふくらんでくるかも
2008.03.06
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十五夜 すすきの穂が風に揺れて まんまるなお月様が 山の上にぽっかりと浮かんでいる 今も昔も変わることなく だけど、 お餅つきをしていた兎も 牛車に乗って帰っていったかぐや姫も 人間が月の世界に足を踏み入れた瞬間に どこかに隠れてしまった もう、かぐや姫は二度と この大地に降り立つことはない 大気は淀み、水は汚染され 緑の大地も、ひとの心さえも すっかり変わってしまった かぐや姫のあこがれた大地では 人はみな、大いなる大地の恵みに感謝し 人も、動物も ありとあらゆる生き物がいきいきと いたわり、助け合って生きてきた もう、かぐや姫は この大地に降り立つことはない かぐや姫には この大地のどこにも 住める場所はないのだから
2008.03.05
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元旦の午前0時02分 今年も年賀メールが届いた 私の携帯の中のメールが 四百二十三通目になった 娘からのメールも数通あるが そのほとんどは貴女からのもの メールをもらったと言っても ほとんどは、返信メール それでも大事にしまいこんで もう三年以上にもなる 私の携帯は、五百通を超えると 一通のメールが増えるたびに 一通のメールが消えてしまう ある日、突然、私がこの世からいなくなって 誰かが私の携帯を覗いたら 可笑しくて笑ってしまうだろうな きっと、なんとたわいないメールだと 馬鹿にされてしまうだろうな メールが五百通になれば 一つづつ過去のメールが失われていく 今この中にあるメールもいつか すべてが新しいものに変わるだろう 過ぎていく 時間(とき)の流れのように しかし、今、四百二十三通のメールを すべて削除してしまったら 私は、灰になってしまうような気がする
2008.03.04
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凍らない海 もう11月だというのに 海にはわずかな流氷が 漂うだけで まだ、海の凍る気配はない 真っ青に晴れた空の下 青く光る海と流氷の中を 一頭の北極熊が泳いでいく 北へ北へひたすら泳ぐ アザラシの戯れる 氷の楽園を信じて もう半年も ほとんど餌にありつけない 絶えられない空腹感が 北へ北へと向かわせる もう11月だというのに まだ海が凍る気配はない たどり着く楽園のないことも 知るすべもなく ただひたすら北極熊は 北へ北へと泳いで行く
2008.03.03
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地球温暖化 幼稚園児がひとり取り残された 誰も気づくものはなかった 真夏の太陽の下で、50℃にも上がる狭い自動車の中で 苦しみ、もがき、泣き叫びながら 誰にも手を差し伸べられることもなく、幼いいのちが消えていった 思うたびに、たとえようのない無念さで 胸が張り裂けそうになる しかし、思えばこの地球はどうだ 逃げ場のない自動車空間そのものではないのか 人間は、この幼稚園児そのものではないのか 逃げ場のない地球という空間の中で、思想、宗教、人種など あらゆることを都合よく正当化して、世界中で争いは絶えない だが、この間にも絶え間なく、絶え間なく温度の上昇は続いている 気づかないままに、脱水症状はますます進み やがて、声を出すことも、立ち上がることも出来なくなったとき はじめて人間は居場所のなくなっていることに気づくだろうが それではあまりにも悲しすぎる いま気づきさえすれば、争いをやめてあらゆる知恵を結集すれば この地球空間に、いのちを奮い起こす快い冷風を送ることも 出来るだろうに
2008.03.02
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20年も続いたスナックでしたが、5月の末にお店を閉めてふるさとの石垣島に帰っていきました。お店に通っている間にいろいろ聞いた話を、ぜひ曲にしたいものだと思っていたのですが、曲は結局出来上がらず、書きかけの詩だけが残ってしまいました。 ひめじのひと はるか南の石垣の 島をはなれて十九年 ネオンかがやく魚町に 生きる女になりました 酔ったお客の心ない ことばに泣いた日もあった 島の碧さが恋しくて まくらに涙しみました ひとの優しさしりました 恋の悲しさ知りました 島の訛りもいつの日か 播磨の水にとけました
2008.03.01
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いのちの詩 遠い子供の頃の目に 焼きついているもの 山間の川面に光る鮠の 一瞬のきらめき あれは、いのちのきらめきではなかったのか 今にも掴めそうな手のひらから 目にも止まらぬ素早さですり抜けていった あれは、いのちの躍動ではなかったのか ぎりぎりと照りつける、真夏の太陽の下 声を限りに鳴き続けるニイニイゼミ あれは、いのちの叫びではなかったのか そっと手を伸ばして息を呑んだとき 一瞬にして手のひらから潜り抜けていった あれは、いのちの瞬間移動ではなかったのか 焼け付いた川原の砂の上に 干からびた鮠の屍骸 ほこりだらけの道端に カラカラのニイニイゼミの屍骸 失われたいのちの空しさと いのちあるものの素晴らしさが 遠い子供の頃のまなこを通って こころの中にしみこんだのではなかったか
2008.02.29
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青少年に想う 子供は親のせいだという 親は学校や社会が悪いという 子供も親も、学校も社会も もつれにもつれた糸を解くのに 血の汗を流して頑張っているのに ますます糸はもつれていく 右を見ても、左を見ても みんなが「ヨーイ・ドン」で走り続けている 「立ち止まれば置いて行かれる」 脳裏にこびりついたそんな言葉に押されるように みんな ただひたすら 走り続ける 一度 疲れきった足を止めて 地べたにどっかと座り込んで 澄み切った青空を見上げてみないか したたり落ちる汗を拭きながら 心地よい自然の風の中で つかれたからだを休めてみないか あったかい味噌汁とにぎりめしでもほおおばりながら 自分は何に向かって走り続けているのだろうと考えてみないか ゆっくりと自分の道を見定めてからでも遅くはないだろう 長い人生だ みんなが健康でありさえすれば
2008.02.28
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私の初恋は小学五年生のころ 初恋の人の名前は恵子さんといいました。 お下げ髪の良く似合うかわいい少女でした 五十年経った今でも、その頃の顔がはっきりと思い浮かびます クラスの人気者で、男の子の憧れの的でした 特にこれといって自慢できるものもない私は、話をする機会も少なく いつも遠くから見ていることぐらいしか出来ませんでした ところがある日、 クラスの席替えで偶然にも、彼女と席を並べることになりました それからは、毎日学校に行くのが楽しくて仕方ありませんでした しかし、しばらくすると、彼女は私にはほとんど関心のないことが わかりました やはり、彼女の関心は勉強の良く出来る子や運動の好く出来る 子の方に向いていました 私は奮起しました 何とかして自分のほうに目を向けてもらおうと、 嫌な勉強も、親がびっくりするくらい毎日懸命に頑張りました 学期末になって通信簿をもらう時、先生からみんなの前で 「一番頑張ったのははまちゃんだ、良く頑張った」とほめてもらいました そんなことがあってから、彼女とは急に話も出来るようになり、 彼女の目も私に注目されるようになりました 六年生になっても、私は委員長、彼女は副委員長をするなど、 クラスの中でも注目の的になっていました しかし、今から考えても男とは誠に身勝手なもので、中学生になって ほかの小学校の生徒も一緒になると、彼女だけでなく、勉強も運動も 出来る魅力的な女の子が何人もいることに目が行くようになりました 私が生徒会の副会長、生徒会長に選ばれて有頂天になっていた 中学3年間の間に、初恋の人「恵子さん」はすっかり私の心の中から 薄れてしまっていました それから45年くらいの月日が流れました 幼稚園の先生をしていたこと、結婚して神戸のほうで暮らしていること を聞いたことはあるのですが、今までに何回もあった同窓会にも 彼女の顔は一度も見ることはありませんでした 60歳の定年に手が届くようになって、時々こどもの頃を懐かしく 思い起こすことがありますが、そのたびに彼女に今一度会ってみたい と思う気持ちが強くなります 今なら「私が今あるのはあなたのおかげなんですよ」と素直な気持ちで 感謝の言葉が言えそうな気がします しかし、当の彼女はそれを聞いても笑ってしまうかも知れませんが
2008.02.27
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悲劇の清徳丸 大漁を迎える 家族の笑顔を見るのが 何よりの楽しみだと 今日も厳寒の海を突いて マグロ漁の親子船は 手を振る家族を後に 暗い港を 勇んで出港して行った 誰がこんなことを 予測しただろう 運命といえば あまりにも悲しい 七千トンの自衛艦 イージス艦「あたご」との 衝突事故という結末を まるで、巨大な像が 一匹の蟻を踏み潰すかのように 巨大な戦艦は一瞬にして はえ縄漁船を切り裂いた もう一週間になる 必死の捜索の甲斐もなく 二人が見つかったという 知らせはない 子供と孫を 一瞬にして失った おばあちゃんの 悲痛な叫び声が いつまでも耳に残る 今日も厳寒の海は 容赦なく荒れ狂う 深く暗い海の底で 救いを待っている 父と息子 家に灯りが消えたと 搾り出すように 防衛大臣に訴えた おばあちゃんの声 忘れてはならい おごってはいけない ひとのいのちは 七千トンの鋼鉄の戦艦よりも もっともっとあったかく ずっしりと重たいものだ
2008.02.26
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あぶらぜみの嘆き このクソ暑いのにやかましいなどと 言わないでくれ 俺たちは六年ものあいだ 真っ暗な土の中で この日の来るのをじっと待っていたんだ 俺たちの鳴き声は いのちの叫びだ 俺たちに与えられた ほんのひとときに 唄うことを許された 愛の賛歌だ 地上での俺たちのいのちは せいぜい数週間 そんな俺たちだから 命がけの恋をして この大地の上に 生きたあかしを残したい 不幸な仲間は カマキリやクモの餌食になった 不幸な仲間は 虫かごに入れられたまま たった一度の愛も語らず死んでしまった このクソ暑いのにやかましいなどど 言わないでくれ 俺たちは六年ものあいだ 真っ暗な土の中で この日の来るのをじっと待っていたんだ
2008.02.25
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おとうさん、おかあさん あなたは、人差し指をクルクル回して 「しおからとんぼ」を捕まえたことがありますか 小川の中を泥んこになって 「ふな」や「なまず」を追っかけたことがありますか そっと木陰に手を伸ばして 「せみ」を手づかみで捕まえたことがありますか 目の前でクルクル指を回しても やっぱりとんぼは目を回さなかった いくら追いかけても「ふな」や「なまず」は 上手に網をすり抜けて逃げていった 捕まえたと思った瞬間 馬鹿にしたように せみはおしっこをひっかけて 隣の木に飛んでいってしまった そんな時、きっと こども心に、手ごわい いのちの抵抗を 体で感じていたのですよ やっと捕まえた「しおからとんぼ」も 「ふな」や「なまず」や「せみ」も やがては虫かごや金魚鉢のなかで死んで ピクリとも動かなくなってしまった そんな時、きっと 小さな心に いのちの終わりのはかなさを 感じていたのですよ いま、あなたの目の前で子供が夢中になっている ゲーム機を覗いてみませんか 全てのキャラクターが、リセットボタンを押すだけで 何度死んでも生き返ってくるのです 殺すことも、生き戻すことも自由自在 いとも簡単に生き返る「いのち」に やがては何の不思議も感じなくなってしまう 大切なものを感じないまま 大きくなっていませんか 大切なものを見ることもなく 大きくなっていませんか 今度の日曜日 こどもと野原でも歩きながら 本物の「いのち」にふれてみたら 今までよりも、もっと、もっと 優しい気持ちがふくらんでくるかも
2008.02.24
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吾亦紅 飲み屋帰りの 冷え切ったからだを 冷たい布団に もぐりこませて じっと目を閉じる すぎもとまさとの 吾亦紅の歌ばかりが やけにぐるぐる 頭の中を回る 思えば自分を生きたことの ない私 もうとっくに 人生の半ばは過ぎた それでも懲りもせず 道草ばかりの孤独な旅を 今もなお たどり続けている 笑いあり、涙あり 一握りの幸福感と 数え切れないほどの 挫折感を胸に抱えたまま もう残された時間(とき)は どのくらいあるのだろう なんだか少し旅に疲れた 風に揺れながら可憐に咲く 名前も知らない野の花を 道端の草むらに大の字になって 心行くまで眺めていたい
2008.02.23
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