2004年08月01日
XML
「はーちゃんとりょうくん、急いで帰るしたくをしなさい! 
あなたたちのお母さんが、会社でたおれて入院したんだって。
今お父さんがむかえに来るそうよ」
 いつもみたいに学童保育でママのむかえを待っていたら、
そう言いながら福田先生がプレイルームにとび込んで来た。
 (ママが入院した?なんで?うそでしょ?どうして?どうして?)
私の頭の中に、今朝げんかんで「いってらっしゃい」と手をふってくれた、
ママの顔が一杯になって頭のなかでぐるぐるしていた。。
「ついたよ」とパパの声がして、気がついたら、学校よりもずっと大きな

ママが入院した病院だった。弟のりょうが、のどちんこが見えるくらい大
きな口をあけて、ビルを見上げて「でっけ~」と言った。
 ビルの中は少し暗くて、ほけん室みたいなにおいがした。
「あれ?はーちゃんじゃない?」
とつぜん後ろから声がした。
ふりかえるとやさしそうなかんごふさんがコッチを見ていた。
(見た事あるような気もするけど、だれだっけ?)と思っていると、
「こうちゃんのママ」とパパが言った。

 そっか思い出した、こうすけのママだ。
こうすけは、保育園から小学三年生になった今も、ずっといっしょのクラスの
いじめっ子で、すぐに私にちょっかい出して来てはいじわるをしてくる

こんどは頭の中に、こうすけがいじわるそうにニヤッとわらった顔が大きく
うかんで来た。
(なんでこんなにやさしそうな人から、こうすけみたいないじわるが生まれて
きちゃったんだろう?)
パパと話しながら歩いているこうすけのママの背中を見ながら、


 まっしろなカーテンの向こうのベッドの上にママがいた。
ママのうでから、とうめいなチューブがのびていて、上の方のビンにつながっていて、
そこでオレンジ色の水がポタポタと砂時計みたいに落ちていた。
ママはすごく顔色が悪かった。ママが死んじゃう!って思って
「ママしんじゃいやだ~!」
と言おうとした時、いきなりりょうがママにとびついてなき出した。

 「しんぱいかけてごめんね」って、ママは青白い顔で言った。
あんまり大声でりょうが先になきだしたもんだから、
私は何も言えなくなってしまった。
いつもそうなんだ。りょうはチビだからって、すぐにママにあまえるんだ。
私は、おねえちゃんってそんだと思った。

「ほらほら、そんな事したら、もっとママの病気が悪くなっちゃうだろ?」
 パパがりょうをママのベッドからおろして言った。
ママが、りょうの頭をなでて、私たちの手をにぎりながら
「しんぱいかけてごめんね、ふたりともパパのお手伝いをしてあげてね?」
と言った。すると、
「はーちゃんとりょうくんがいいこにしていれば、ママはすぐによくなるからね!
しんぱいしなくてもだいじょうぶだよ!」
こうすけのママがウインクしながらそう言った。
 そっか、私たちがいい子にしてればママはすぐによくなるんだ!
でも、いい子にするって、どうすればいいんだろう?
びょういんからの帰り道、私はずっとずっと、いい子ってなんだろうと考えていた。

 次の日から、私がママのかわわりに学童保育にりょうをむかえに行って、つれて帰る事になった。
でも、りょうはワガママばっかり言ってなかなかキチンと歩こうとしない。
とうとう、「ぼくつかれた」とか言って、
とちゅうの公園のベンチでランドセルを下ろしてすわりこんでしまった。

「より道しちゃだめだよ、りょう。早く帰ろうよ!」
と私が言っても、りょうはそっぽ向いてる。
私はだんだんはらが立ってきた。
「あんたがそんな事ばっかりするから、ママは病気になっちゃったんだからね!」
と、つい大きな声でどなってしまった。
のどのおくがなんだかにがくなってきて、なみだがひとつぶポロッとこぼれた。
するとりょうも、目にためたなみだを、いっしょうけんめいこぼさないように、
グッと歯を食いしばってコッチを見てた。
(ヤバイ!言いすぎた) と思ったしゅんかん、
「な~に兄弟ゲンカしてるんだよ!」後ろから聞いたことのある声がした。
こうすけだった。
私は、あー、またいじわるされる、と思った。
するとこうすけは、自分の自転車のカゴにりょうのランドセルをヒョイと乗せて、
ビックリしているりょうに向かって
「おまえのねえちゃん、おこるとすげーこわいよな?」と言った。
そして、「後ろに乗ってしっかりつまれよ」と言うと、
私のほうにクルッとふりかえって
「オマエは後から帰ってこいよ!お・ね・え・ち・ゃ・ん!」
と、いつもみたいに、いじわるくニヤッっとわらって私に言った。
私はいっしゅん、何がおこったのかわかんなかった。
ん~?こうすけって、いじめっこなんじゃなかったの?頭の中がグルグルしていた。

「早くしないとおいてくぞ~!」
こうすけの自転車の後から、えらそうにりょうさけんできた。
「ちょっとまってよ~!」
私は大きな声でそういうと、こうすけの自転車をいっしょうけんめい追いかけた。
風を切って走っていると、なんだかちょっと気持ちがよかった。。



 その夜、ふとんに入ってうす暗いてんじょうを見ていたら、
またママの事がしんぱいになってきた。
ママはもうねたかな~と思っていると。
となりのふとんからヒックヒックとしゃくりあげる声がする。
いつもママといっしょにねてるりょうは、さびしくってねられないらしい。

「うるさいな、私、今日ウンと走ってつかれているだから。しずかにかにしてよ!」
と私が言うと、いつもなら言い返してくるはずなのに、りょうはないてるままだった。

しかたがないな。りょうはまだ一年坊主のあまえんぼうなんだもんな。
私は、りょうのふとんに入って
「いい子にしてたら、ママが早くよくなるって、
こうすけのママも言ってたでしょ?だからもうなかないの」
りょうの顔をのぞきこみながらそう言った。
「おねえちゃんなんかママみたい」
 そう言ってりょうはしずかに目をつむると、いつのまにかねてしまった。

次の日の帰り道も、こうすけはだまってまた自転車にりょうを乗せて、私の前を走っていた。
だけどこうすけは、きのうみたいにビュンビュン自転車をとばさなかった。
 その時、ポツッポツッ・・・いきなり夕立がふり出した。
「いけな~い、せんたく物ほしっぱなしだ!」と、私が大きな声を出した。
するとこうすけが、
「オマエはコレに乗って先に帰れ!」と自転車を止めてさけんだ。

 ベランダのせんたく物を全部カゴに入れ終わったころ、
途中で雨やどりしていたこうすけとりょうが帰って来た。
「こうすけのおかげでバッチリだよ」
と私が言うと、こうすけはちょっとてれくさそうにニヤッとわらった。

 「わーきれい!見て見て!」りょうがまどの外を指さした。

見上げると雨上がりの空に、きれいなにじがかかっていた。




そらいろ







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2004年12月06日 20時06分03秒
コメント(4) | コメントを書く
[ショートストーリー(フィクション)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

晴れママ

晴れママ

カレンダー

コメント新着

chevy1817 @ Re:美しき日本?美しき国会?なんじゃそりゃ!?(02/20) 議院は所属する政党に行動を制約されてし…
chevy1817 @ Re:毎週末、夫婦でデートが恒例行事に♪(01/28) たとえそれが日常品のショッピングでもい…
チャーリー@ Re:あけましておめでとうございます!(01/05) 今年もよろしくです。 すごく楽しそう…
chevy1817 @ Re:あけましておめでとうございます!(01/05) 初詣が新年早々のデートとなってよかった…
KOPPE1966 @ Re:あけましておめでとうございます!(01/05) 謹賀新年です。 私は、今年も(?)、初…

バックナンバー

2026年10月
2026年09月
2026年08月
2026年07月
2026年06月

© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: