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2023年02月20日
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おちゃめで勉強熱心な ひらめちゃんが突然聞いてくる。
「先生のこどもの時の夢ってなに?」

小学4年生ごろに、自分たちは教師にそんな質問したことがあったかな。
いまおもいだすと、そんな質問をだしぬけに教師にしたことはなかったような気がする。60年前の教師はそれぞれぎりぎりな感じがして、そっとしておいてあげたいと小学生が思ってしまうほどだった。
彼らに子供時代の夢を聴く、ってそれはちょっと憚りがある。
戦争時代の4年と戦後の混乱は、いくら占領期を知らない小学生にも想像できるほど都市の風景は傷痕をそこここに残していた。






10年後に北山修が「戦争を知らない子供たち」という歌詞で世相に登場したときにも強い違和感がフックしていて、実際自分の周囲であの歌詞をカラオケで機嫌よく歌う同世代を見かけた事がない。いくら戦地の体験がないからといって、戦争を知らない子供でいられるはずもなかった。
大阪の国鉄省線(運輸省の鉄道という意味、現在のJR環状線)で森之宮、京橋にさしかかれば旧砲兵工廠の焼けただれた瓦礫と構造物がいやでも目にはいる。街頭でベロベロになって酔っ払っている大人はそこここにいたのである。子供だけが戦争を知らないなどありえない。

だからひたすら貸本屋の手塚治虫に沈潜したのだという事なのかもしれない。小学4年にはもうキューバ危機もケネディ暗殺も日常の話題だった。

しかし、 可愛い小4少女ひらめちゃんが聴いてくる質問にはしっかり受け止めて場外ホームランを打つのが大人のつとめだ。

「小6で卒業文集って作文で書いてだしたんだよ。
いま周りの大人たちはまもなく消えてゆく。
ボクだけが21世紀にとどいて21世紀の小学生とお話できるんだ。
それを思うと今からワクワクして夜も寝られない」

それを横で聴いていた小学4年生の三浦少年は「それって僕たちのこと?」って聞く。

ひらめちゃんは納得できたのか、ニコッとしてまた漢字の小テストに向かった。








(次回につづく)
絵本を英語訳版で敬呈したら「解雇理由」にされた英語講師の物語

第79話









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最終更新日  2023年02月20日 00時57分00秒
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