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失業中で不眠症の中年男が、とぼとぼと夜の街を歩いている。宛はない。ただ、眠れずに夜の街を散歩している。ある建物の前でふと足が止まった。ドアが半開きになっていてその隙間から灯りが漏れている。中から「おじさん」と言う女の子の声が聞こえたような気がした。男は気のせいだろうと、そのドアの前を通りすぎようとした。するとまた「おじさん」と言う声が聞こえる。男はドアの隙間から中を覗いてみた。マネキン置き場だった。(マネキンか、誰かいるのかな)男は目を凝らして中を見る。 「おじさん、あたしを外に連れてって」裸の若い女の子が部屋の片隅で見詰めている。 男は一瞬驚いて、小さな声が「あっ」と漏れた。 女の子は無表情に少し開いたドアの方に歩いてくる。男は言葉もなく立ち尽くしている。 「あたし、マネキンなの。今日だけ人間になれるの。おじさん、あたしをどこかに連れてって。でも、夜の間だけ。夜が明けると、マネキンに戻っちゃうの」女の子は、一糸まとわぬ姿で微笑んだ。 「君、ほんとにマネキンなの? 他にもマネキンがあるけどマネキンのままじゃない」男は驚きの中にも冷静さを保ちながら裸の女の子に言った。 「今日はあたしの番なの。明日は他の子。明後日はまた他の子。30体、マネキンがあるから、次、あたしの番が来るのは1ヶ月後なの」女の子は、静に微笑みながら、ゆっくり話した。 (優しい穏やかな声だな。それに綺麗な子だな。こんな可愛い裸の女の子にデートに誘われて断ることもないな) 「そうだね、デートに行こうか。でも、服を着てもらわないと外に行けないよ」男はもう、マネキンだろうと何だろうと、そんなことはどうでも良かった。 「そう、服を着ないと外に出られないの。じゃ、ちょっと待っててね」 女の子は段ボールに入った下着とワンピースを身につけてハイヒールを履いた。 「うん、それで良いよ。どこいこうか? 俺、今、失業中であんまりお金ないからなぁ」 「あたし、外が歩けるだけで良いの。何も要らないし、あなたに外を案内してもらえたら、それで良いの」 「そうなの?」 (素直な子だな。今時、珍しい女の子だな。しょうがない、金もないし、女の子もああ言ってることだし、吉野家でも行ってみるか) 男と女の子は、環七沿いの歩道をとぼとぼと歩く。吉野家の前で男は足を止めた。 「俺、失業中でお金ないからさ、ここで良いかな」 「あたし、初めて。ここは何をするところなんですか?」 (おい、ほんとに知らないのかよ。吉牛だよ。まあ、マネキンだったって言うんだから知らないよな、それがほんとだったら・・・) 「うん、吉牛。牛丼屋さん、って言っても分からないのかな? まあ、いいや、入ろうよ」 「はい」 「俺、豚生姜焼き定食が好きなんだけど、君は何にする?」 「あたしも、同じもので良いです」 「そう。じゃあ、豚生姜焼き定食、二つ、お願いします」 注文を取りに来た男性店員が、あまりにも綺麗な女性に、ふと見とれたのを男は見逃さなかった。 (この子、綺麗だもんな、見とれるのも無理ないよな・・・マネキンか、そう言えば、マネキンみたいな綺麗な顔だよな・・・) 「わあ、美味しそう。いただきます」 「お金がないからさ、ごめんね。でも、美味しいことは美味しいよ」 男と女の子は食事を済ませ、夜道を一緒に歩く。 (俺のアパートに連れて行こうかな・・・) 「ねえ、良かったら、俺のアパートでビールでも飲まない?」 「ビール? あなたのアパート?」 「無理にって言う訳じゃないから・・・嫌だったら良いんだよ」 「いいえ、そうじゃなくて・・・分からないんです。ビールって何か、アパートって何か・・・」 「そうか、マネキンだったんだもんね。俺の家に来ない?」 「はい、喜んで」女の子は急に笑顔になった。 男のアパート。 「さあ、入って。狭くて、汚いけど、ごめんね」 「いいえ、私がいる倉庫より、綺麗です」 「もう、マネキンごっこはやめて、地に戻りなよ」男は、ちょっとジレて言った。 「あたし・・・ほんとにマネキンなんです。あなたと、牛丼屋さんで、豚生姜焼き定食を食べられて、幸せです。それに・・・あなたの・・・」 「アパート?」 「そう、あなたのアパートにも来られて、幸せです」 「う~ん。そうか。君がそこまで言うんなら、そう言うことにして、ビール、飲もうか? 飲めば、分かるよ」 「はい」 ふたりはほろ酔いになって男のベッドに腰掛けている。 「そう言えば、君の名前、聞いてなかったね」 「あたし、名前ないんです」 「そう。分かった。じゃあ、イブちゃんって呼んで良いかな? アダムとイブのイブちゃん」 「はい、イブですね。あなたのお名前は?」 「俺? 俺は田中俊郎。よろしくね」 「よろしく」女の子は酔いで顔を赤くしている。 男はイブの肩に腕を回した。イブはうつむき加減に目を閉じた。ふたりは唇を重ねてベッドに倒れ込んだ。 外が白み掛けている。夜明けが近い。 イブは急いで服を着る。そして男を起こしてキスをした。 「あたし、もう帰らないと。時間がないの」 「さっきの倉庫?」 「そう」 「送っていこうか?」 「大丈夫。それより、一つ約束して欲しいの。今晩、違う子がまた人間になるの。明後日も、その次も・・・でも、あたしだけを待っていて欲しいの。一ヶ月後よ、あたしがまた人間になれるのは・・・」 「うん、分かったよ。俺、イブちゃんだけを待つよ」 「あたし、あなたが好き・・・」 「俺も・・・」 男は一ヶ月待った。あの倉庫の扉の前に来た。倉庫は灯りが消えていた。男はそっとドアノブを回した。ドアは簡単に開いた。そして灯りのスイッチを探して灯りをつけた。男の目に入った光景・・・解体された、マネキンが乱雑に転がっていた。その中に一体、あの日のワンピースを着た上半身だけのマネキンを見付けた。男は駆け寄り、マネキンを抱き上げた。マネキンの目から涙がこぼれた。 (あたし、イブだよ。約束を守ってくれたのね、俊郎さん。ありがとう。でも、さようなら。大好きな俊郎さん・・・) 男の耳には確かにあの日の女の子の声でそう聞こえた。男は上半身だけのマネキンを抱き締めて、涙を流し、イブの唇にキスをした。
2013.01.05
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振袖のそぞろ歩きの大師前 弘法様も法難逃る 焼き立てのせんべい香る紙包み ツインテのヘア彼氏とかじる 夕暮れの犬鳴き吠えて呼ぶ巳年 サイレン遠くチノ涙ぐむ 君知らず飛ぶ体液の熱き肉 飲んで上げるといつかの刹那(せつな) 冬来たり暦進むは物理なり 約束事は人格の技 稼ぎ時どこ吹く風の守護の民 神社仏閣始終神無(かんな)さ
2013.01.03
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いつかどこかの誰かの幸せかぁ・・・ あなたの? あたしの? 誰でもない誰か? 刹那の永遠で・・・無限回の初めてだっけ? その時、あたしたち、至近の無限遠で沈黙するんだよね^^ 覚えちゃったぁ、ひろの詩^^ ねぇ、ショーウインドウのあたし可愛いでしょ。 マネキンと二重写しにガラス映る整った君の顔。 どっち選ぶ? マネキン!? ひろ、ぶっとばすぞぅ! http://www.youtube.com/watch?v=kJbXw0tL7Rk 写真は某下着メーカーさんの楽天での広告写真から拝借しました^^;
2013.01.03
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2013年1月2日水曜日。今年最初に開いたEvernote。書かなければ白紙が続きます。紙のノートや手帳と同じです。 下の写真は下着の広告から拝借しました。メーカーさん、宣伝になると思いますので怒らないでね^^;
2013.01.02
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