免許更新で「要認知症診断」 100
倍に ?!
【 JSDR 2016
】
2017 年春、改正道交法でさらに変わる認知症の取扱い ◆Vol. 12016 年 12 月 12 日 ( 月 )
高齢運転者による交通死亡事故のニュースが連日のように報道され、高齢者の自動車運転への関心が高まっている。
そんな中、 2017
年 3
月に施行予定の改正道路交通法では高齢者の認知機能検査の要件が強化される。
全交通事故件数 が減少し続ける中、高齢運転者による事故件数は相対的に増加しており、高齢者の運転に関する規制強化は避けられない情勢だが、それに伴う課題も多いようだ。
特に法改正により、運転免許更新時に認知症に関する診断書が必要となる人の数が、現在の年平均で数百人から 4
万 -5
万人と 100
倍近くに増えるのではとの見方を示す専門家もいる。
東京都で開催された第 35
回日本認知症学会学術集会( JSDR 2016
、 12
月 1-3
日)での大阪大学大学院医学系研究科精神医学講座教授の池田学氏のプレナリーセッションと、独自取材による認知症と自動車運転の最新動向を紹介する。
道交法上の認知症、これまでの取り扱いは ?
池田氏によると、道交法に認知症に関する条項が初めて記載されたのは 2001 年。当時の改正では精神病とてんかんが絶対的欠格事由から相対的欠格事由に要件が緩和され、新たに認知症と睡眠障害が運転に支障を来す恐れのある疾患や病状として個別の判断を求め、免許更新時の病状申告書の提出を義務付けた。
2009
年改正の現行法では 70-74
歳で運転免許更新時の高齢者講習受講、ならびに 75
歳以上の運転者への認知機能スクリーニング(講習予備検査)を義務化。ここで「認知症の恐れがある者」に分類され、なおかつ一定期間内に信号無視などの一定の違反行為があった場合、医師の診断(臨時適性検査)を義務付けた。
この違反行為は 75
歳以上の高齢運転者約 1600
人を対象とした検討で「認知症の恐れがあると考えられた人の運転行動の主要な 5
つの特徴(信号無視、交差点走行不適、道路変更不適、一時不停止、加速不良)」に基づき選定された 15
の「基準行為」として示されている( 2008
年日本認知症学会「警察庁からのお知らせとお願いについて」)。
その後、 2013
年には病状申告書の虚偽記載への罰則規定が、 2014
年には医師の任意通報制度に関する規定が新たに追加された。
2017
年 3
月の改正法では、 75
歳以降の免許更新時のスクリーニングで「認知症の恐れあり」と判定された人の全てが違反や事故の有無に関わらず、医師の「臨時適性検査」の対象となる。認知症に関する記載が強化されてきた背景として池田氏は「他の疾患と異なり、病識が乏しくなっている認知症患者は、本人に悪意がなくても、自ら病状を申告することが困難なことがある」と話す。
法改正による実地臨床への影響は
今回の法改正に伴い、免許更新時に医師による「臨時適性検査」の対象となる 75
歳以上の運転者の数は現在の年間平均 200-300
件から、 4
万 -5
万件以上に増加するのではとも考えられている(警察庁交通局運転免許課 2015
年 10
月 13
日都道府県・指定都市認知症施策担当者会議「道交法の一部改正について」)。
国内の認知症専門医の数は約 2000
人。法改正により専門医への受診が激増する可能性もある。
これにより、池田氏をはじめ、実地臨床医が懸念するのは「認知症診療における患者と医師の信頼関係構築が困難になること」だ。「認知症診療の基本は早期診断・早期治療。診断書を公安委員会に提出することで、初期の段階で運転免許という日常生活の手段が奪われることは適切な認知症治療そのものを危うくする」との指摘もある。
さらに「認知症が進行した場合、運転は不可能になることは自明。しかし、実はごく軽度の認知症と自動車運転能力の関連は明らかでなく、認知症治療薬使用と自動車運転に関するエビデンスもほとんどない」と池田氏。認知症と一口に言っても、背景疾患や運転に与える影響はさまざまだ。
道交法上の医師の診断書は、認知症に該当するか否かの判断に関する意見を公安委員会に提供する位置付けで、最終的な免許更新の可否は公安委員会が判定する仕組みとなっている。
また、一部の認知症について医師が「 6
カ月以内に回復の見込みあり」と診断した場合には、この間に免許の保留・停止を行い適性検査や診断書の提出を再度行うことなどを求める但し書きもある。
しかし、実際は個別の認知症の状態はあまり考慮されず、認知症の診断書のみで免許停止の判断が行われているとの指摘もある。
池田氏は「一部の認知症専門医は、こうした診断書を作成した経験もある程度あり、患者や家族からの不満を受け止める立場からは逃れられないことを承知していると思う。しかし、地域医療を担う医師にとっては、臨時適性検査のために患者や家族との信頼関係が築けなくなることは大変な事態と考えている」と話す。
コメント:高齢者の運転に関しては、今年の初めての試みがありますが、非常に難しい問題です。年齢で運転免許証の返還を決めれるものでもなく、また認知症の患者さんでも、運転能力は問題なく、日常生活に最低限必要な人もあります。自主的に返還してもらえれば一番よいのですが、どのようになるかは全く不透明です。 「 MCI やごく初期の認知症の人の運転能力が一般高齢者に比べ、危険とのエビデンスはほとんどない。ごく初期の認知症や MCI の人に関しては医学的な認知症の診断ではなく、実際の運転技能を実車テストなどで運転の専門家が判断する必要があると考えている」とのことなので政府にそのように早急に指示してもらわないといけないと思います。 認知症の診断をかかりつけ医や、認知症サポート医に委ねられても、普通の日常診療と一緒に行うのは無理かと思われます。
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