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2019.12.18
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カテゴリ: 邦画

「ルパン三世 THE FIRST」は、モンキー・パンチ原作のコミックの劇場版第10作。
 全国上映作としては、「ルパン三世 DEAD OR ALIVE」以来23年振りとなる。
 シリーズ初の3DCGアニメ長編。
 監督・脚本は山崎貴。


粗筋

 第二次世界大戦の最中。
 考古学者ブレッソンは、強力なエネルギー源と成り得る「エクリプス」の在処を突き止め、日記に書き記す。
 世界征服を企むナチスは、「エクリプス」を我の物にしたがっていた。日記を寄こすよう、ブレッソンを脅迫するが、日記は娘夫婦に託していて、手元には無かった。ナチスは、ブレッソンを殺害し、娘夫婦を追跡。
 カーチェイスの結果、娘夫婦は事故死。夫婦の幼い子供だけが生き残る。
 ブレッソン・ダイアリーと称されるようになった日記の行方は不明となった。

 十数年後。
 ブレッソン・ダイアリーが発見され、オークションに掛けられる。
 そこへルパン三世が登場。「エクリプス」は、元々ルパン三世の祖父に当たるルパン一世が狙っていたお宝なので、孫である自分が手に入れるべきだ、と主張し、盗もうとする。
 が、女性警備員により阻止されてしまう。女性警備員は、日記を金庫へ持って行くと言いながら、付き添っていた別の警備員を倒し、日記を持ち逃げしようとする。
 舞い戻って来たルパンは、女性警備員から日記を奪い取るが、直後に峰不二子に奪われてしまう。
 女性警備員は、実はレティシアという、秘密組織に属する女性で、組織の命令で日記を盗もうとしていたのを知ったルパンは、彼女と組み、日記を取り返そうと考える。
 峰不二子は、盗んだ日記を雇い主である秘密組織へ引き渡す。
 秘密組織は、レティシアのバックアップとして、峰不二子を雇っていたのだった。
 秘密組織のリーダーであるゲラルトは、組織に属する研究員ランベールに、日記を解読するよう命じる。
 が、日記は頑丈なケースに収められていて、無理に取り出そうとすると日記が破壊される仕組みになっていた。仕組みを解除出来るのはルパンくらいしかいないので、ゲラルトは、レティシアに対し、ルパンを連れて来い、と密に命じる。
 ルパンは、レティシアと共に秘密組織のアジトである飛行機に到着。日記を隠し場所から盗み出すと、日記を収めたケースの複雑な鍵を解除する。
 その時点で、レティシアは祖父であるランベールに通報。
 ルパンは一旦は捕まるが、拘束されていた峰不二子と一緒に飛行機からレティシアを連れて脱出。
 日記は飛行機に残したままだったと思われていたが、実はルパンがすり替えていて、ルパンの手元にあった。
 ルパンは、レティシア、峰不二子、そして仲間の次元大介と石川五右衛門と共に、日記が記すエクリプスの在処へと向かう事に。
 レティシアは、ランベールを実の祖父だと信じて疑っていなかったが、実は事故死したブレッソンの娘夫婦の子供だった。日記を収めたケースを開ける為のキーワードが「レティシア」だったのも、それが理由だった。
 ルパンはその事実をレティシアに伝え、ゲラルトとランベールを阻止する為に更なる協力を求める。
 エクリプスの在処に辿り着いたルパン一行は、レティシアが日記を解読出来た為、様々な罠を突破し、エクリプスを目の前にする事が出来た。
 が、その時点でゲラルトとランベールが現れる。罠を自分らで突破出来ないと読んだ彼らは、ルパンに突破させ、エクリプスを奪えばよい、と考えていたのだ。
 ゲラルトとランベールは、レティシアを人質にして、エクリプスを奪う。
 エクリプスとは、ミニブラックホールを作り出す装置だった。
 ランベールは、エクリプスを操作し、ミニブラックホールを発生させ、残したルパン一行を始末し、エクリプスを自分のものにしようとしたが、ゲラルトに阻止され、殺される。
 ゲラルトとレティシアは、秘密組織の拠点へ移動する。
 2人を出迎えたのは、第二次世界大戦末期に死んだ筈のヒトラーだった。
 秘密組織は、第三帝国の復活を企むナチスの残党だったのだ。
 ゲラルトは、どこかで生きていると信じて疑っていなかったヒトラーを前に、大いに感動。これまでの努力が報われた、と。
 ゲラルトは、ヒトラーをエクリプスに案内し、操作法を教える。
 ヒトラーは、エクリプスを勝手に操作し、ミニブラックホールを作り出してしまう。
 その時点で、ゲラルトは気付く。
 目の前に立っているのはヒトラーではなく、変装したルパンだ、と。ルパン一行は、間一髪でミニブラックホールから逃れ、秘密組織の拠点に先回りして制圧し、ゲラルトを迎え入れたのだった。
 ヒトラー総統をどこにやった、とゲラルトは激高。
 ルパンは当たり前の様に答える。ヒトラーは、史実通り、とっくに死んでいる、と。ゲラルトがヒトラー生存の根拠としていた数々の証拠は、インターポールがナチスの残党を炙り出す為に流した偽情報だったのだ。
 ゲハルトは、ルパンを殺そうとするが、ミニブラックホールに吸い込まれ、死ぬ。
 ミニブラックホールは、エクリプスも破壊し、エクリプスが人類に悪用される可能性は無くなった。
 ルパンはそれを見届けると、レティシアに最後の挨拶をした後、仲間と共にその場から逃げる。



感想

 物凄いお宝を巡って、ルパン一行と悪の組織が戦いを繰り広げ、最終的には大き過ぎるお宝を葬り、その場を去る。
 これまでのルパンの長編と大差は無い。
 違うのは、フル3DCGアニメになっている、という事。
 一昔前のフル3DCGアニメは、キャラクターの動きがぎこちない等問題点が多く、映画として観るには苦しい面もあったが、最近のは技術の進歩もあり、そうした問題も克服され、セルアニメに取って代われるものになっている(ディズニーは完全に3DCGアニメに移行している)。
 本作も、観ていて違和感は無く、映画として普通に楽しめた。
 ただ、キャラクターデザインは、型が決まっているルパンシリーズのレギュラーキャラクターを覗くと、ディズニーアニメのキャラクターか、と思ってしまう程オリジナル感に乏しい。
 完全なオリジナルデザインは不可能だったのかも知れないが、もう少し原作(モンキーパンチの漫画)に寄せたデザインに出来なかったのか。
 映像は、ディズニーアニメを制作する専用ソフトに、ルパンシリーズのキャラを取り込んでみた、といった感が否めなかった。

 ストーリーそのものも、3DCGでなければ実現出来なかった、という内容にはなっていない。
 ストーリーがある程度固まった時点で、従来のセルアニメではなく、3DCGアニメにしよう、と決まったらしい。

 悪の組織として、ナチスの残党が登場。
 今更何故ナチスやヒトラーにしたのか、よく分からない。
 格好の悪役ではあるが。
 欧米では、ヒトラー/ナチスを悪役やパロディとしてでも登場させると議論を招きかねないが、日本ではそこまで神経質でないらしい。

 今回の「お宝」はミニブラックホールを発生させる装置だった。
 装置を最初に発見し、その威力を知った怪盗ルパン一世が、考古学者ブレッソンと組んで在処を記す日記を作成し、自身が考案した複雑な仕掛けのケースに収めて保管する事にした、という経緯が明らかにされる。
 ブラックホールは、現在はそれなりに知られているが、ルパン一世が活躍していた時代はまだ一般知識ではなかったと思われる。
「ブラックホールを生み出せる装置です」といったところで、その価値や重大性を理解出来たとは想像し難い。
 ルパン一世がどうやってその重大性を理解し、ブレッソンと共に日記を作成し、子孫に託そうと考えたのか、説明はなされていないし、子孫に託して何を期待していたのかも説明されない。

 声優として、俳優の広瀬すず(レティシア役)、吉田鋼太郎(ランベール役)、藤原竜也(ゲラルト役)が起用されている。
 プロの声優を何が何でも使え、という訳でもないが、話題の俳優を起用さえすれば興行収入も期待出来る、という発想は改めた方がよろしいのではないかと思う。

 これまでのルパンシリーズは、制作された時代を反映していたが、本作の舞台は第二次世界大戦終結から10数年後、となっていて、1960年前後、という事になる。
 ルパンシリーズはそれぞれが単独で完結しており、他のシリーズ作と繋がりが全く無いからこそ成せる業。
 これを整理しようとしたら、時系列的には合理性に欠けてしまうだろう。

 タイトルの「ルパン三世 THE FIRST」は、英訳すると「LUPIN THE THIRD THE FIRST」になってしまい、3作目なのか、1作目なのか、もしくは3世が登場するのか、1世が登場するのか、分かり辛い。
 制作の時点で、「『THE FIRST』のサブタイトルを付けてしまうと、『ルパン三世、一世』になってしまいますよ」と指摘する者はいなかったのか。
 それとも、分かり辛くなるのを承知でこのタイトルにしたのか。

 フル3DCGアニメ化し、コストが掛かった為か、地上波で初公開するのではなく、劇場公開してコストをなるべく回収し、その後地上波で公開し、コストを完全に回収出来る体制を取ったらしい。
 本作では、その目論見通りに進んだ様だが、この手がずっと使えるとは思えない。
 日テレは本シリーズをどこに持って行くつもりなのか。







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Last updated  2022.06.25 10:57:52
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