非常に適当な本と映画のページ

非常に適当な本と映画のページ

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Category

カテゴリ未分類

(341)

洋画

(282)

邦画

(85)

邦書

(140)

洋書

(57)

ニュース

(736)

DVD

(8934)

Comments

Favorite Blog

まだ登録されていません
2022.02.20
XML
カテゴリ: 洋画

 キングスマン・シリーズ第3弾。
 第1弾と第2弾で登場した独立スパイ機関「キングスマン」の誕生の秘話を描いている。
 舞台は第1次世界大戦の時代なので、第1弾と第2弾の登場人物は一切登場しない。
 主人公を演じるのは、007シリーズにも出演していたレイフ・ファインズ。
 女執事のポリー・ワトキンズを演じるのはジェマ・アータートン。彼女も007シリーズに出演経験がある(007 慰めの報酬のストロベリー・フィールズ役)。
 また、ファインズとアータートンは、2010年に公開された「タイタンの戦い」で共演している。
 原題は「The King's Man」。


粗筋

 1902年。
 英国貴族オーランド・オックスフォード公(レイフ・ファインズ)は、軍人であったが、戦いの日々に嫌気が差し、退役後は赤十字の活動に従事していた。
 オックスフォード公は、第二次ボーア戦争の最中の南アフリカを、赤十字活動の一環として妻エミリー、息子のコンラッド、そして執事のショーラ(ジャイモン・フンスー)と共に訪問。
 訪問先の英国軍基地で、旧友の指揮官キッチナー(チャールズ・ダンス)と、その副官のモートン(マシュー・グード)と面会する。が、敵側のボーア人兵士が放ったライフルの凶弾により、エミリーは命を落としてしまう。

 1914年。
「羊飼い」と名乗る男が、とある断崖絶壁の小屋で会議を開いていた。
 そこではロシアの怪僧ラスプーチン、女スパイのマタ・ハリ、セルビアのテロリストのプリンツィプ、ロシアの革命家レーニン、ドイツのニセ預言者ハヌッセン等、世界を揺り動かす事になる悪名高い人物らが一堂に介していた。
「羊飼い」の目的は、従弟同士となるイギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世を反目させ、世界規模の戦争を引き起こす事だった。
「羊飼い」は、集まった各人に、その目的の為に行動を起こす様命じる。

 一方、オックスフォード公はキッチナーの依頼を受け、成人した息子のコンラッド(ハリス・ディキンソン)と共にオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ・フェルディナンド大公を護衛する。何者かが大公を狙っている、との情報があったのだ。オックスフォード公は一度は暗殺を未然に防ぐものの、最終的に大公はプリンツィプに射殺されてしまう。
 この事件を引き金に、世界は瞬く間に後に第一次世界大戦と呼ばれるようになる、これまでに無い規模の戦争に突入。戦局はイギリスに不利な方へ、そして敵対するドイツに有利な方へと傾いていく。
 大公の暗殺は単発的な事件ではない、と悟ったオックスフォード公は、女執事のポリー・ワトキンズ(ジェマ・アータートン)に命じて、国家権力に頼らない諜報網の構築を開始した。
 キッチナーは、戦線からの離脱を思い留まる様にと説得する為ロシアに向かっていたが、乗船していた巡洋艦ハンプシャーが何者かが放った魚雷により撃沈されてしまった。
 ラスプーチンが裏で手を引いてニコライ2世に戦線からの離脱を強要していると知ったオックスフォード公は、コンラッド、ポリー、ショーラを引き連れてロシアに潜入。激闘の末、ラスプーチンを始末する事に成功する。これで、ロシアは戦線に踏み留まる事になり、大戦はイギリスにとって有利に運ぶと思われた。
 コンラッドは英国軍に入隊し、ドイツと戦う事を強く希望する様になる。妻を戦闘で失っているオックスフォード公は、息子の考えに難色を示した。結局、コンラッドは父の反対を振り切り英国軍に入隊。
 オックスフォード公の裏からの根回しにより、前線に向かう直前のコンラッドは上官から帰還を命じられる。父の露骨な根回しに反発したコンラッドは、下士官のアーチーと入れ替わり、最前線へと向かう。最前線で、ドイツ側の重要な情報を入手する活躍を見せたが、アーチーと入れ替わった事が仇となり、別の上官からドイツ軍のスパイと誤認され、射殺されてしまった。
 妻エミリーに続き、息子のコンラッドにも先立たれてしまったオックスフォード公は悲嘆に暮れ、酒に溺れるようになってしまう。
 しかし、「羊飼い」率いる組織が動き続けていると知ったオックスフォード公は立ち直り、世界中の諜報ネットワークを駆使してドイツ軍の暗号を読み解く。
 オックスフォード公はアメリカにドイツの陰謀を伝えるが、アメリカのウィルソン大統領はマタ・ハリによる淫行を盗撮され、それをネタに脅迫されていたので、身動き出来なかった。
 オックスフォード公は盗撮フィルムを取り返すべく、ポリーとショーラと共に断崖絶壁にある「羊飼い」の本拠に乗り込む。
「羊飼い」は、キッチナーと共に死んだと思われた副官モートンだった。モートンはイギリス人ではあったが、イングランドを恨んでいて、大英帝国を潰す為に世界戦争を引き起こしたのだった。
 オックスフォード公はモートンを倒し、盗撮フィルムを取り返す。
 盗撮フィルムはウィルソン大統領の元に送られる。脅迫から解放された大統領は、イギリス側に付く形で、第一次世界大戦に参戦。
 その結果、大戦はイギリス側の勝利に終わった。
 しかし、結果的にイギリスは国力が弱まり、ドイツはヴィルヘルム2世が退位して共和制となり、ロシアは革命によりニコライ2世が家族と共に殺害されて共産国となってしまった。
 凶悪な「羊飼い」との死闘を終えたオックスフォード公は、ポリー、ショーラ、アーチーらと共に、サヴィル・ロウにある高級テーラーに、国家権力から独立した諜報機関を新たに設立する。それが「キングスマン」となる。

 一方、モートン亡き後もその組織は死に絶えていなかった。
 組織の生き残りである偽預言者ハヌッセンが前任者の意向を引き継ぐべく新たに「羊飼い」となり、同じく生き残りのレーニンと、新規メンバーの若者を引き合わせる。
 その若者とは、アドルフ・ヒトラーだった。



感想

 人気シリーズとなったキングスマンの第3弾。
 といっても、組織の誕生秘話を描いていて、時系列的には第1弾と第2弾より一世紀近く前の話となる。

 キングスマン・シリーズは、良い意味でも悪い意味でも観る側の期待というか、予測を裏切る。
 第1弾では、キングスマンのベテランメンバーが颯爽と登場し、そのまま最後まで引っ張ってくれるのかと思いきや、中盤で殺されて退場。後半は新規メンバーが引き継ぐ形でクライマックスになだれ込む。
 第2弾では、第1弾で殺されたと思われたベテランメンバーが実は生きていた事が明らかにされる。主人公の座に戻って大活躍するのかと思いきや、以前程の精彩は無く、第1弾の新規メンバーが主人公のままクライマックスになだれ込む。
 今回の第3弾は、父がいかにしてキングスマンという組織を設立し、子に引き継がせたのかを描くのかと思いきや、子は殺されて途中退場。組織は子がいない中で設立される。
 期待や予想をここまで裏切らなくても、と思わないでもない。

 本作の主人公は、結局オックスフォード公、という事になるが、言動に100%共感出来る人物なのか、というとそうでもない。
 戦いばかりの日々に嫌気が指して赤十字の活動に従事する様になった、との事だが、それはあくまでも隠れ蓑で、実は戦いを裏で支える活動をしていた。
 祖国イギリスにとって有利な方向へ運ぶように、と。
 ドイツと敵対するロシア帝国の戦線離脱を阻止する為、オックスフォード公は皇帝に戦線離脱を説いていたラスプーチンを始末。結果ロシアは戦線に居残り、国が疲弊し、革命が勃発して帝政が崩壊し、レーニンにより共産国ソビエト連邦へと移行してしまう。
 アメリカは第一次世界大戦を「欧州の内輪揉め」と見なして参戦に反対する声が大勢を占めていたが、ウィルソン大統領自身は参戦には前向きだった。しかしマタ・ハリによる脅迫で身動きが取れなかった。そこでオックスフォード公はマタ・ハリから情報を絞り出して脅迫の材料となっていた淫行フィルムを奪取。よってアメリカは大統領の望み通り参戦し、多数の若者がアメリカから遠く離れた欧州で血を流す事になる。
 こうして見ると、オックスフォード公が全く行動を起こさなかった方が無駄な血が流れずに済んだのでは、と思ってしまう。 
「羊飼い」の動機も、捻じれた部分はあったが、完全に間違っていた訳ではない、と。
 味方より敵側の動機に何となく共感してしまう点は、キングスマン・シリーズならでは。
 オックスフォード公が最終的に何を狙っていたのかも分かり辛い。
 イギリスの国益の為に動いていた、という割には長引いた大戦でイギリスの世界的地位は落ちていき、その後の第二次世界大戦で決定的に没落するので、オックスフォード公の活動は全くの無駄だった事になる。
 オックスフォード家の名を守る為、にしては、自身の失態で妻も子も亡くしてしまっている。
 戦争の最中の南アフリカを妻子を伴って訪れるなんて、何を考えていたのか、としか言い様が無い。
 残された子に関しては、戦争の最前線に向かわすのを阻止する為に浅かな裏工作で逆に子の反発を買ってしまい、子が自ら最前線に向かう道を選んで命を落としてしまっている。
 オックスフォード公は、結局祖国も家族も守れなかった。

 レーニン、ラスプーチン、マタ・ハリ、プリンツィプ、ヒトラー等、歴史上で悪役扱いされている人物らは実は裏で繋がっていて、組織の指示の下で動いていた、というのは発想としては面白いが、一堂に介して互いと顔見知りだった、というのは無理がある。
 国籍や人種が異なり、母国語も違うので、作中の様に共通語となる英語で会話しているのは違和感しか抱かない。
 それぞれが個々の思惑で対等の立場で協力し合っていた、というのならともかく、「羊飼い」という独裁的な人物の指揮の下で手足となって動いていた、というのもおかしい。
「羊飼い」の動機が全世界を対象としたものだったならともかく、個人的なものに留まっているのだから。
 レーニンらは、「何故お前の個人的な恨みの為に命を懸けて動かなければならないのだ」と疑問に思わなかったのか。

 謎の組織を率いる「羊飼い」の正体が、キッチナーの副官モートンだった、というのも、意外ではあるのと同時に、難点にもなってしまっている。
 組織はレーニン、ラスプーチン、ヒトラー等、歴史に名を連ねる者で構成されているのに、その指導者が歴史上の人物ではない、というのはしょぼ過ぎる。
 動機も、一スコットランド人として、我が物顔で自分らを支配するイングランドやイングランド人を許せなかったという、連合王国イギリス内の揉め事に過ぎなかった。その程度で世界を混乱に陥れるのは、遠回しにやり過ぎ。もっと単刀直入にイングランド内でテロ事件でも起こしていた方が効果的だっただろうに、と思ってしまう。
 キッチナーの副官を務めながら時折イギリス国外の断崖絶壁の小屋に足を運び、メンバーを集めて世界を混乱に陥れる為の会合を開いていた(現在だったらオンライン会議も可能だが)、というのもおかしい。
 キッチナーは、頻繁に休暇(だろう)を申し出る副官を、不審に思わなかったのか。
 モートンがいかにして国籍豊かなメンバーを掻き集めて悪事を働かせていたのか、その資金的バッキングはどうしていたのか等の説明も全くなされていない。
 これくらいの悪事を展開出来る組織となると、相当な資金力が無ければならない(資金力が無かったら人材が集まらない)。となると、「世界中の誰もが知らない悪の秘密組織」として存在する事も出来ない筈。
 その面で、矛盾が生じている。

 本作は、第一次世界大戦前後の史実をベースにしているが、当然ながら史実を捻じ曲げている部分も多い。
 フェルディナンド大公が暗殺された自動車に同乗していた人物が、ラスプーチンの暗殺に加わっていて、しかもマタ・ハリとも直接対決した、というのはいくら何でも無理がある。
 イギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世が家系で見ると従弟同士だったのは事実だが、3人が幼少期に一カ所に集まって顔を合わせていた、というのは有り得ない。また、本作の様にあからさまに互いを意識して牽制し合っていたとも思えない。

 キッチナーが乗船していたハンプシャーは実在した軍艦だが、本作の様に魚雷で撃沈されておらず、ドイツ帝国海軍が敷設した機雷に触れて沈没している。

 ラスプーチンは史実でも最終的に暗殺されるが、暗殺したのはイギリスからやって来た貴族ではなく、皇帝ニコライ2世の親族。
 作中と同様、暗殺者らは毒入りの菓子を食べさせて毒殺を試みたが、ラスプーチンがいくら食べても死ぬ兆しが見えなかったので、銃で射殺しようと計画を変更。ラスプーチンは被弾しながらもその場から逃走し、川に転落。間も無く死体となって発見されるが、死因は溺死だったという。
 史実のラスプーチンは本作で描かれた以上の怪人だった。

 マタ・ハリは終始ヨーロッパで活動しており、アメリカ大統領との接点は無い。
 第一次世界大戦中の活動も果たしてどの程度戦況に与えていたのかは不明確で、そもそもスパイだったのかも不明。

 本作では、「一匹狼のテロリスト・プリンツィプは実は「羊飼い」率いる秘密組織の下で動いていた」という風に描かれているが、史実のプリンツィプは一匹狼ではなく、セルビア独立を掲げる組織に属していた。
 その組織はフェルディナンド大公の暗殺を何度も試みており、プリンツィプが偶々というか漸く成功したに過ぎない。プリンツィプより前に別の者が成功していた可能性もあったし、プリンツィプが失敗してもその後に別の人物が成功していた可能性もあった。
 フェルディナンド大公はどっち道何者かに暗殺される運命にあったといえる。
 プリンツィプは犯行時まだ二十歳前とあって、死刑は免れるが、衛生状態の悪い監獄に収監された為、数年後に病死している。
 本作での描かれ方は、狂気に満ちたテロリストだが、セルビアでは第一次世界大戦を引き起こした罪人と評する者がいる一方、セルビア独立のきっかけを作った英雄と評する者もいるという。

 オックスフォード公の情報収集は、世界中の召使を駆使した結果、という事になっている。
 当時は有力者が召使や家政婦や執事を雇うのが当たり前で、そういう者なら外部から潜入するより怪しまれずに正確な情報を得られる、という発想かららしい。
 現在も召使等は起用されているが、昔程ではないし、有力者も滅多やたらに召使を採用しないから、現在のキングスマンはどうやって情報収集しているのか。

 本作は、キングスマンの誕生秘話を描いているが……。
 第1弾ではキングスマンのリーダーが敵側に通じていた事になっているし(だからこそベテランメンバーは内部の裏切りにあって死亡[した事に])。
 第2弾では、麻薬組織によるミサイル攻撃で壊滅状態に陥る。
 キングスマンは創立当初の目標から逸脱している。
 オックスフォード公は、自分が誕生させた組織の行く末をどこまで予見していたのか。
 国を守れず、家族も守れず、設立した組織もレガシーにはなっていない。
 やる事成す事全てが無駄だった、という主人公も珍しい。







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2022.03.02 23:49:48
コメント(0) | コメントを書く
[洋画] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: