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2022.09.13
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カテゴリ: 洋画

 1985年製作のアメリカ合衆国の映画。
 シルヴェスター・スタローンの出世作「ロッキー」シリーズ第4弾。
 スタローンが脚本・監督を務めている。
 敵役のドルフ・ラングレンの実質上のデビュー作。
 スタローンは本作でブリジット・ニールセンと出会い、後に結婚にまで至ったが、間も無く離婚している。
 原題はRocky IV。


粗筋

 一度は敗戦を記したクラバー・ラング(Mr.T)を倒し再び世界ヘビー級チャンピオンへと返り咲いたロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン)は、家族や友人に囲まれながら幸せな生活を送っていた。
 そんなある日、ソビエト連邦のアマチュアボクシングヘビー級王者イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)一行が訪米。一行は、ソ連のプロボクシング協会加入を発表した上で、世界チャンピオンとの対戦を希望した。
 アマチュアボクシングの経験しか無い選手がいきなり世界チャンピオンと対戦するのは前代未聞。
 ロッキーも協会も、ソ連側のプロパガンダに付き合う必要は無いと考えていた。
 一方、ロッキーのかってライバルであり、友人でもあるアポロ・クリード(カール・ウェザース)は、歴史に残る対戦になる、と感じていた。自分は現チャンピオンのロッキーを倒した経験もある元チャンピオンで、経歴上は遜色無いので、対戦を申し出たい、と。
 が、ロッキーはその決断に反対する。アポロは現役を退いてから5年も経っていた。ドラゴとは15歳近くの年齢差がある。地位も名声もあり、幸せな家族もいるのに、老体に鞭打ってどうする、現チャンピオンである自分も年齢的に全盛期をとうに過ぎていると自覚しているんだぞ、とアポロを説得しようとする。
 アポロは、ロッキーに対し、「引退して時間が経っても、戦士としての自分は変えられない、ドラゴを見て戦士としての自分の血が騒ぐのを抑え切れない」と語り、ドラゴとの対戦に挑む。
 アポロ対ドラゴのエキシビションマッチはラスベガスで開催された。
 アポロは、スーパースターのジェームス・ブラウンが歌う華やかな演出の中、陽気にリングに上がる。
 一方、ドラゴは、アメリカ流の派手なパフォーマンスに呆れの表情を見せていたが、アポロを眺めていく内にそうした表情も消え、臨戦態勢に入っていく。
 試合が始まると、アポロは現役時代のトレードマークでもあった軽いフットワークでドラゴを翻弄し、余裕を見せていた。しかし、ドラゴが反撃に転じると、アポロはその強烈なパンチにより一方的に打ちのめされていく。
 最早エキシビションではなく、ドラゴが本気でアポロを粉砕しようとしている事に気付いたロッキーは試合を止めようとする。しかしアポロはそれを拒否し、諦めずに立ち向かっていく。ドラゴの強打を浴び続けたアポロはリングに倒れ、そのまま息を引き取った。
 アポロの葬儀後、ロッキーはドラゴとの対戦を了承する。
 敵地・ソ連での開催という悪条件を受け入れ、ロッキーはアポロのトレーナーだったデューク、義理の兄ポーリーらと共にソ連へ渡る。
 銀世界に囲まれた大自然の中で、ロッキーは環境を生かした過酷なトレーニングを行う。
 一方、ドラゴはソ連政府の科学者チームに囲まれ、最新技術に基づくトレーニングを行い、肉体をより強靭にしていった。
 当初は試合に反対していたロッキーの妻エイドリアン(タリア・シャイア)も、夫の下へやって来て、応援する。
 試合当日。
 ソ連国民が埋め尽くすモスクワの試合会場の貴賓席には、ソ連政府首脳陣の姿が並んでいた。
 ロッキーに対する猛烈なブーイングの中、試合開始のゴングが鳴る。
 ドラゴの強烈なパンチにより、ロッキーは幾度もダウンを取られる。しかし、その度に立ち上がっては反撃してくるロッキーの姿に、ドラゴも戸惑いを感じる様になる。
 試合が進むにつれ、ドラゴもダメージを負い、乱戦になっていく。
 当初はドラゴの快勝を期待してロッキーに対し敵意を見せていたソ連の観衆も、ロッキーの勇敢な戦いに熱狂する様になり、ロッキーコールまで出て来る。
 試合はただの殴り合いになっていき、ドラゴは14ラウンドで遂にノックアウトされる。
 既に観客の心を掴んでいたロッキーは、歓声を浴びながらリングを後にした。



感想

 ロッキーシリーズ第4弾。
 第1作(シリーズ作になる事は想定されていなかったらしいが)はアカデミー賞を受賞しているが、にも拘らずというか、だからこそというか、続編が制作される事に。
 ただ、ロッキーがハードなトレーニングを自らに課して身体を鍛え、強敵と試合する、という展開は変えようが無いので当然の如くマンネリに陥り易い(ロッキーをリング外で戦わせてアクションヒーローにしてしまう、という荒業も有り得なくもなかったのかも知れないが、それだとスタローンのもう一つの代表作ランボーと被る)。
 本作は、時代を反映して、米ソ冷戦の要素を盛り込んで新鮮味を出そうとしている。
 それが功を奏したか、興行的には成功。批評家にはイマイチだったが。公開から30年以上経っているので、最近は批評家の見方も変わっている様で、第1作程の名作ではないにせよ、時代を反映した作品と見なされるようになっている。
 その一方でスタローンは自身が手掛ける映画が批評家の餌食になるのに懲りたらしく、映画に出演こそするものの脚本から監督まで一人何役もこなすのを控える様になってしまった。

 ロッキーシリーズは、スピンオフとしてアポロの息子がボクサーになる展開で制作が続き、遂にはアポロの息子がドラゴの息子と対戦する、という展開にまで発展(クリード2)。
 そちらでは、ドラゴ(本作のドルフ・ラングレンが引き続き演じる)は、本作での試合に負けて一気に地位を失い、ロッキーらに恨みを抱き、息子をボクサーに育て上げてアポロの息子と対戦させる事で因縁を晴らす、という設定になっている。
 ドラゴがそこまで陰湿で粘着的なキャラだとは思えないのだが。

 本作はボクシングというスポーツを取り扱っているが、映画とあって、展開はご都合主義的な部分が多い。

 アポロが試合を絶対止めるなとロッキーに言い付け、ロッキーがそれに従った結果、アポロが命を落とす、という展開はその代表的な例。
 所詮スポーツなのだから、危険と感じたら試合をしてい本人が何を言おうと周りが試合を止めるのが当たり前。この手の選手が「自分はもう戦えない、無理だ、試合を止めてくれ」と自ら申し出る事は無いだろうし、あの状況でアポロが自身の状況を冷静に捉えていたとは思えない。
 ロッキーシリーズは重要キャラが死んでいくのが定例で、今回はアポロがその標的にされたといえる。

 ドルフ・ラングレンは、本作が事実上の出演作(その前に007シリーズで端役で登場していたらしいが)。
 オーディションを受けた時点では、背は高いものの細過ぎるという理由で一度は起用が見送られたらしいが、ランドグレンは武術の心得があった事から、格闘の素人でもなく、繰り出すパンチにスタローンが興味を持って起用を決めたという。
 細かった身体もスタローンと共にトレーニングする事で鍛え抜き、撮影に挑んだとか。
 本作をきっかけにランドグレンはスターの仲間入り。
 スタローンやシュワルツェネッガーを超える存在にはなれなかったが、順調にキャリアを重ねる事が出来た。
 エクスペンダブルズでもスタローンと共演しているので、二人は気はそれなりに合うらしい。

 ドラゴの妻を演じるのがブリジット・ニールセン。
 役柄とは異なり、ロッキー役のスタローンと交際し、結婚にまで至るが、早々と離婚(離婚前にアクション映画コブラで共演している)。
 クリード2にも、ドラゴの元妻という役柄のまま出演。
 クリード2にはスタローンも出演しているので、元夫婦で共演する形となったが、同じシーンで登場しない様配慮され、撮影現場で一緒になる事は無かったという。
 もし同じシーンで登場していれば話題になったと思うが、ハリウッドスターも流石にそこまでビジネスには徹せないらしい。

 最近はボクシングも興業性が重視され、ボクサーらもただ金の為に戦う形になってしまっている。
 金の為に戦うので、勝とうと負けようと試合後に無事リングから降りて稼いだファイトマネーを自分で使える様でなければ意味が無いと割り切っている。
 それ以前に、自分に有利な形で試合を運べるよう契約し、そうでなければ契約すらしない。
 よって、本作の様にファイトマネーそっちのけで命懸けでリングに上がっているという悲壮感や絶望感は現在の試合には無い。
 最近のボクシングがイマイチ面白みに欠けるのも、映画の試合以上のショーというか、エキシビションマッチになり下がってしまっているからか。

 ソ連書記長として、元ソ連大統領ゴルバチョフのそっくりさんが登場。
 ゴルバチョフはつい最近(2022年)亡くなったばかりなので、一瞬ハッとさせられた。

 本作は、米ソ冷戦が終わりを迎えつつ時代に制作された。
 米ソ冷戦なんてソ連崩壊によりアメリカの一方的な勝利で終わってしまっている以上、振り返るのも意味の無い色褪せた歴史の出来事、と思われてきたが、ロシアのウクライナ侵攻により西と東の分裂が鮮明になり、新たな冷戦に突入。
 米ソ冷戦以上に不確定要素の多い情勢に。
 冷戦も、一周してまた戻って来た感じ。
 本作のテーマも、色褪せておらず、寧ろ永遠のテーマである事が証明されたのは、皮肉と言えば皮肉。







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Last updated  2023.02.17 23:16:51
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