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2018.10.10
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カテゴリ: エッセイ
父はそのベストを5着作ってもらった。
一着は長男が欲しいと言ったのでプレゼントした。
もう一着も知人にあげたと母は聞いていた。
手元にあったのは3着だったが、3カ所の介護施設で一着づつ無くなったので、父が他界したときには我が家に一着も残っていなかった。

母はせめて一着でも残しておいて仏前に置いてやりたかったらしく、施設にベストを3着とも持ち込んだ自分を責めた。

しかしながら遺品の整理をしていたときに知人にあげたといった一着を見つけたときは泣いて喜んだ。

父や母にとってそれほど大切だったベストは介護施設で【あからさま】に姿を消した。

・・・

現在は『つつみ隠さないではっきりする様』『露骨』という意味で用いられる【あからさま】という言葉。


古文の世界での【あからさま】は現在と同じ意味はもちろんだが、現在とは異なった意味も有していた。
『かりそめに』『ほんの少し』という意味だ。

これには深い意味がある。

その言動を発する者が【あからさま(かりそめ/ほんの少し)】と思っていても、受け取る者には【あからさま(明確/露骨)】なのだ。

当然古文の世界では趣のある言葉でもあった。
清少納言は[枕草子]の中で、『をかしげなる稚児の、あからさまに抱(いだ)きて遊ばしうつくしむほどに』と文章を残している。

もう我々現代人は、趣のある【あからさま】に出会うことはないのだろう考えると、古人(いにしえびと)の方が心豊かで幸多い人生を生きていたのかもしれないとも思う。





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最終更新日  2018.10.10 01:02:37
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