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熟年離婚の舞台裏 ナニワのおばちゃんさん
2007/05/22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 シュークリームについて、私は長い年月をかけて研究してきた。

 アメリカでシュークリームと言うと靴クリームが出てくるという。アメリカでシュークリームを食べたかったら「クリームパフ」と注文するそうである。「パフ」とだけ言うと、化粧用のスポンジが出てくるから注意する。

 元祖フランスでは「シュー アラ クレーム」といい「シュー」はキャベツのことである。かといって注文したらクリームが包まれたキャベツが出てくる恐れはなくシュークリームを食べることができるそうである。もっともこれはケーキ屋さんのことで、キャベツ畑であれば「俺のキャベツのアラを見つけてクレームを付ける気か」と怒鳴られる可能性がある。君子危うきに近寄らずである。

 このシュークリームを好む人は多い。文科省財務局食料品管理部緑地課の統計によれば、100人中97人は年間285個以上食べているという。
 値段は、豆粒みたいなものを除くと、1個80円から3000円くらいまでと実に幅が広い。驚いたねえ。
 しかし長年研究したからといって、3000円のものを食べたと勘違いしないでほしい。あえて言うが、私が食べてきたものは2800円以下のものばかりである。別の言い方をすれば150円以上のものは食していない。ここでは80円程度のものに限って話をすすめていこう。

 シューにクリームを入れるには二つの方法がある。一つはシューの頭に横から切れ目を入れて大きく開き、クリームを上から入れる。二つ目の方法は、注射器のようなものでシューの横からブスッと注入する。一の方法をとるのは大抵値段が高い。従って私の研究対象になるのは二の方法で製造したものになる。

 シュークリームをレストランで注文すると、他のケーキのようにフォークがついて出てくることはほとんどない。仕方がないので直接手で持ってみるが、これが柔らかすぎてたよりない。おにぎりとは違うのだ。高級品ほど崩れやすい(それなのにおにぎりは100円以上する)。だが急いで口に入れようとかぶりついてはいけない。問題発生の予感がする。この予感を働かせるには最低5年の歳月を要する。 

 普通飲み物はコップなどのように深みのある入れ物に入れる。大きな固形物は皿に盛り付け、箸やナイフ、フォーク、スプーンなどの小道具をあやつって食する。一方、食べる側の口の構造も器を選ぶ。


 ではシュークリームに関してはどのような食し方が作法にあっているのだろうか。十数年という期間のうち10分を費やして研究に研究を重ね、考えた末、小笠原流にたよることにした。小笠原といってもバットをかまえたあの小笠原ではない。行儀作法を教えるあの小笠原である。 
 小笠原流には「いづれも時宜によるべし」とある。これを今風にいうと「TPOに添って行動しなさい」ということだ。
 さて、小笠原流による食し方をするためにシュークリームを観察した。

 コップやカップに入れるにはシューはあまりに固形物である。皿に置くのはいいが、ナイフやフォークで食べるにはクリームは液状でありすぎる。スプーンではシューの扱いが困難である。道理で小道具が付属してこない訳だと納得できる。従って手づかみでかつ、注意深く食べることがいいと判断するのだ。ここまで悟るのに15年の歳月を費やした。

 さて第一の注意事項は、注射器のあとを見つけることにある。この穴を指でふさいでかぶりつくのだ。ところがここからが難しい。シューには極端に薄いところがあり、クリームはそこを破って噴出してくる。

 小笠原流には「どのような席においても自然に振る舞うこと」とある。
 クリームの噴出を素早く発見し、別の指で優雅にかつ自然に押さえなければならない。だが負けてはならじとクリームはさらに別の場所から噴出し始める。シューの底からもふきだしてくる。ったく不届きなクリームである。

 小笠原流ではさらに「自信と余裕を持って楽しく食事をする」と追い討ちをかける。
 私もさらに別の指で押さえにかかる。だがシューの破れは形も大きさも様々で押さえる指の圧力にも違いが生ずる。シュークリームの形が予想外に変形し、十指に余る箇所からクリームが噴出してくる。このような状態に至れば
「やめればいいじゃん」


 最後に小笠原流は 「相手に失礼がなく、ゆとりを持っていただくことこそが食事のマナーです」と追記されている。

 おそるおそるあたりを見回し、私の上品かつ繊細な食し方が小笠原流に反していないことに安堵感を覚えるが、ふとテーブルを見るとクリームが「ポタッ」とこぼれている。予想外の多さだ。無視できる量ではない。うかつだった。どこかに油断があったに違いない。
 心の中で満足感が急速に痩せ細っていくのがわかる。
 指ですくい取りなめてしまうか、このままあきらめて立ち上がるべきか、しばし苦渋の選択の中に身を置いて考える。

 ここまで二十年という歳月が私を通り過ぎていた。小笠原流の奥義は極めたが、それにしてもシュークリームは奥深い。







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最終更新日  2007/05/22 05:24:32 PM
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