つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2008.04.06
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カテゴリ: Book




初期に頻繁に見られた描きなぐるような荒れた絵も好きで,長編を書いていた頃の妙にお綺麗な絵はむしろ物足りなかったけれど,最近の 「STAY」シリーズ や本作の絵などを見ると,私好みの方向に絵が上達してる気がする.たとえば前掲シリーズ「First Love」の愛とか,本作三編目の「アガサさん」の表情だ.眼や唇の描き方など特に練達で,いつまでも見ていたいほど,もうれつに可愛い.

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西さんはよく男の男に対する恋心や欲情の感覚を描く.しかも異性愛者の男の私から見ても説得力を感じるような描写だ.本作はとくにそういう話は無いけど,男をかっこよく描くことで,女よりの視点で男の体を見ているような気分になる.表題作の給湯室の場面は,浜子さんの表情はもちろんだが寿三郎くんの体も含めて視覚的に好きな場面だ.



三編目「海の満ちる音」の女性(アガサさん)は縫製工場に勤めている.田舎から訪ねてきた姉に,こんな工場で働いても何のキャリアにもならないでしょうと言われて,本が読めるわ,と彼女は答える.なんだかいかにもで恥ずかしいのだがこういう答えをする娘にときめいてしまう.

この短篇はまた,西炯子の技巧的な頂点にある作品だと思う.同じアングルからの絵を何枚か並べて,瞳や口や指の動きだけを変えて描き,微かな感情の動きを逃がさずに捉えて見せる.60余頁にわたる作中のほぼ全ての見開きで,このコマ送り表現が使われているのに,引っかかり無くさらりと読ませる手腕に,怖いほどの巧さを感じる.



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表紙の配色がセックスピストルズみたいでかわいくて綺麗だ.デザインをてがけた「黒木香+ベイブリッジ・スタジオ」の黒木香って,まさかあの黒木か.どうでもいいけど喉に引っ掛かった魚の骨のように気になっている.


昔から西さんは,あとがきが面白い.本作でも笑い転げた.野中広務の魅力はわからんでもない.古賀誠はどうだろう?侠客めいた彼の佇まいと柔らかい笑顔が気に入っている.西さんのほかに川原泉,遠藤淑子両氏にも意見を聞きたい.


西炯子を教えてくれたあのひと,そして本作を教えてくれた方に感謝します.今日の私もこんなに幸せです.







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Last updated  2008.04.06 22:38:51 コメント(4) | コメントを書く


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フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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