つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2008.07.27
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カテゴリ: Other topics



だからといってそれほど好きなわけでもなく、どちらかというと歴史的な位置、後世の日仏両国での評価のされ方などに興味を持って、彼の人となりを知りたい気分で出かけました。

いやー面白かった。というか、北海道でかつて観た洋画家の個展としては最高レベルのものでした。フランスの県や美術館がかかわっていることもあり、ボリュームも、バリエーションもすばらしい。説明も一貫性があって、冗長なとこや難解なとこがほとんど無い。

1992年に発見され、フランスの国家指定を受けて保存、修復された巨大な群像画がメインで、晩年手がけた教会の壁画がもうひとつの目玉。

他には、自画像、裸婦、絵巻物など日本の古典作品の技法を用いた動物画、子供をモチーフにした一連の作品、身の回りの家具や食器などのデザイン。いずれもフランスだけでなく国内の多数の美術館や個人蔵作品から重要なものを丁寧にセレクトした姿勢がうかがえます。

教会を模した小さな小部屋の四方の壁に、壁画の下絵やステンドグラスが配置された展示は、出色でした。えらく狭かったけど。

*

藤田がすごいすごいと言われることについて初めて直観的に納得できました。スタイルをころころ変えているのではなく、その時代ごとに取り入れたスタイルを捨てることなく、後年に至るまで保持し続け、かつ変化していくように見えました。重層的な成長とでもいうような。

個人的には、アトリエの衝立に用いられたかわいらしいデザインに萌え悶えました。カサゴやエイやノコギリザメなどの魚類に犬や猫、そして女性の足、アダムとイブと蛇がからまる木といった宗教的なアイコンが、等しくキュートなシルエットとしてちりばめられていたのですが、その不思議なセレクトがとにかく楽しかったです。



しかし見終わってからふつふつと不満が出ました。見せられたことではなく、見せられなかったものについて。

彼が宗教画を描いたモチベーションには、戦争画家として協力しながら戦後は排除した母国での複雑な事情が背景にあることはたぶん間違ありません。なのに、それに関する言及は見事に省かれています。微妙で危険な部分を削ぐことは、興行上の判断として当然予想されたけど、あんまり露骨に避けてるのを見ると、つくづく根性ねえなあと思います。

他の画家ならともかく、藤田嗣治という複雑で危険な対象を真剣に紹介するのに、それを避ける態度というのはいかにも無様に思えたのです。いちばん面白いところじゃない?そこに命を懸けないで、どこに命を懸けるの、キュレーターという人種は。結局批評ということができない人たちばかりがそろって純粋な「興行」をした、ということなのでしょう。啓蒙でも批評でもなく。つまらんね。つまらん。がっかりだ。

たぶん、遺族の判断が大きく働いているのでしょう。彼らの立場からすれば、傷つけられたのだから、しかたがない。だけど、私たちの立場としてはやはり、それは間違いない損失なのです。だって、考えるための機会すら奪われたのだから!真剣に紹介したいと思う主催者であれば、遺族とぎりぎりの交渉をして何かしらの言及はするはずだと思うのは間違いでしょうか。

彼の作品の一部は遺族のものだけれど、われわれ全員のものでもあるでしょう。美術批評家が、歴史学者が、真剣に議論しなきゃいかんでしょう。なおのこと、余計がんばって慎重かつ正確に説明しようとしなきゃ、いかんでしょう。配慮ばっかりしてて、俺たちは先に進めるんですか?NGワードすべからく避けて通って、繰り返す歴史の危機を乗り越えるための知恵を身につけられるのかい?

見た者ひとりひとりが疑問を捨てず、探し、ぶつけ合わなきゃいけない。それが見る者にとって、ある種の苦痛であり、かつ最大の喜びのはずだから。それが片仮名のゲージュツをそれ以上の何かにする唯一の途だから。

当事者意識(画家の描いたものは画家個人や所有者だけのものでなく、俺らの遺産でもあるという意識)を誰かに向って表現して、はじめてぼくらはゲージュツ以上の何かを得ることができるのだから。つまりそれは、一人称の芸術論を望む者にだけ、与えられる果実なのだから。

要するに今はっきりしてることは、今回の主催者にはそれを期待するのは空しいってことだけだ。だったら私らがやらなきゃいかんのだ。一番面白い部分を、私らが自分で知るスリルを味わえるってことだ。まったくありがたいことだ。

くそったれ興行主と物分かりの良い消費者連中でなく、疑問を捨てず物分かりの悪い偏狭なアート愛好の輩にこそ、光あれ。






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Last updated  2008.07.28 00:12:09 コメントを書く


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inalennon @ Re[1]:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子(09/19) フィンちさん >この世は なんてままなら…
フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
inalennon @ Re:4年はあっという間(03/04) ハオさん >バーチュー&モイヤー組見…
ハオ@ 4年はあっという間 バーチュー&モイヤー組見ました。 優雅…

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