inatoraの投資日記

inatoraの投資日記

2005年01月26日
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最近、週一回夕方に会社の有志5~6人の持ち回しでコーポレートファイナンスの勉強会を実施しています。

その表向きの趣旨は、「企業分析と証券市場に関する専門的知識をざっくりと知っておくことで、実務で利用する機会が出てきたときのたたき台とする」というものですが、勉強会をやろうと言い出したのは実は私で、「個人的な証券投資のためにこのあたりの知識をより体系的に知っておきたい」という非常に私的な動機です。

私自身は、以前にもコーポレートファイナンスの本を流し読みしたことはあるのですが、頭に入っていない部分もかなりあって、さらに理解を深めたいと思ってのことです。

ちなみに、使用しているテキストは以下のものです。

「コーポレート・ファイナンス---戦略と応用」
アモワス・ダモダラン/著
三浦良造/〔ほか〕訳
東洋経済新報社

この本はMBAの標準的教育過程で勉強する企業分析論に関する内容が網羅されていて、ビジネススクールの学生で企業分析論を勉強する人にとっては必読書に近い位置付けになっています。また、著者のアモワス・ダモダランというのはアメリカの大学でもかなり著名なビジネススクールの教授の一人です。



そんなわけで始めた勉強会ですが、この手のコーポレートファイナンス関連のテキストを読み進めていくうちに「あること」にだんだん気づいたのです。それは、「テキストに書かれている理論体系が『市場は効率的である』ことをある程度暗黙の前提としている」ということです。

すなわち、数理ファイナンスで言うところの「効率的市場仮説」であり、新古典派経済学で言うところの「合理的期待形成仮説」です。

もちろん、「ケーススタディー(現実の企業に対する理論の適用)」をとりあげる場合にはそのあたりをうやむやにして「現実への説明があたかもそれなりに出来ているかのように」書いているのですが、どうしても小手先の誤魔化しをしている部分があるのは否めません。

そうした「効率的市場仮説」を臭わせる部分はところどころに見られるのですが、典型的な一例としては、バリュエーション(企業価値の評価)における「資本コスト(投資家が要求するリターン)の推定」などに現れています。

すなわち、標準的コーポレートファイナンスのテキストでは、資本コストを推定する方法の一つとして「資本資産評価モデル(CAPM:キャップ・エム)」を利用することを挙げています。よりテクニカルに話をすると、以下のような資本資産評価モデル(CAPM)の式

E(Ri)-Rf=β(E(Rm)-Rf)

・E(Rm):市場インデックスの期待リターン
(過去の市場インデックスの平均リターンで代用)
・β:個別銘柄iの市場インデックスに対する感応度
(個別銘柄のリターンを市場インデックスのリターンで回帰して算出)
・Rf:リスクフリーレート

・E(Ri):個別証券の期待リターン(=求める資本コスト)

において、「E(Rm)」「β」「Rf」の3項目が測定できるので、残りのE(Ri)(すなわち、資本コスト)を算出できるというロジックです。

将来収益の予測(もしくは、来期の収益とその後の成長率)が所与で、資本コストを算出済みであれば、「収益還元法」により株式価値を算出することが出来ます。

このロジックでは、ある個別銘柄の本源的価値を算出するための基礎情報の一つとして「株価」(正確には、株価のボラティリティー)をみる作業を要請しています。もちろん、「効率的な市場においては株式の価値やリスクは市場に織り込まれている」ということで、このロジックに間違いはありません。

しかし、現実には「市場が効率的であるかどうか」という問題は置いておくとしても、「その企業の本源的価値を推定するために株式市場での意見(=株価)をお伺いする必要がある」という行為自体に違和感があると私は感じます。



こうしたバリュエーションにおいても、いつのまにか「効率的市場仮説」を刷り込まれていると考えると、コーポレートファイナンスの勉強も油断できません。

「株式投資に勝つために企業の本源的価値に関する研究をしていたはずなのに、いつの間にか『効率的市場学派』に取り込まれていた」という洗脳をさせられる可能性がなくはありません。

実際にも、数理ファイナンスにおいては過去において多数のMBA取得者をこうした形で洗脳することに成功しています。(「市場がランダムだ。」というバートン・マルキールのような輩のことです。)

行動ファイナンスという新しい分野の出現により、今後はそううまくいくかはわかりませんが、一定の割合で洗脳される人が出てくることは避けられないと思います。

今日の言葉:
「『自分は勘違いしていない』と思った時点で既に勘違いをしている可能性がある。」





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最終更新日  2005年01月26日 22時58分53秒
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