inatoraの投資日記

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2005年10月26日
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前回はEVについて説明しましたので、今回はEBITDAを説明します。念のため、これらの定義を再掲載しておきます。

*****************************

(1)EV
英語:Enterprise Value
日本語:企業価値
算出式:EV=株式時価総額+有利子負債-現預金

(2)EBITDA
英語:Earnings before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization
日本語:利払い税引き前減価償却償却前利益


*****************************

EBITDAの定義はそれほど難しいものではありません。日本語では、「税金」「借入金利払い」「(有形固定資産の)減価償却」「(無形固定資産の)償却」を差し引く前の利益となります。

さらに、EBITDAを「営業利益基準+減価償却費」で定義するならば、そこには「営業外損益項目」や「特別損益項目」も排除することになります。

こうした定義から、EBITDAは当期純利益と比較して、諸々の「特殊項目」や「一時的項目」を排除した「その企業が行っている中核事業から得られる収益力の指標(米国会計でいうところのプロ・フォーマ)」と解釈できなくもありませんが、その一方で「株主が得られる真の利益(バフェットがいうところのオーナー利益)」とは程遠いという問題点があります。

EBITDAの有効性を擁護する立場に立つと、以下のメリットを強調することになるでしょう。

(1)減価償却は現金支出を伴わない費用なので、EBITDAはその企業が持つ中核事業におけるキャッシュフロー獲得能力を表すのに有効である。

(2)税制・金利水準・減価償却基準などは各国によって異なるので、それらの影響を除いた収益であるEBITDAは企業の国際間比較をするのに有効である。

しかし、これらの主張も企業分析面として問題がなくはありません。この2つの有効性を必ずしも額面どおり受け取れない理由について考えてみたいと思います。


(1)減価償却は現金支出を伴わない費用なので、EBITDAはその企業が持つ中核事業におけるキャッシュフロー獲得能力を表すのに有効である。

これについてですが、「EBITDAが利益の経済的実質を語るにあたってどの程度信頼が出来るか?」にかかっているかと思います。以前の日記「利益の経済的実質に関する考察」シリーズ

利益の経済的実質に関する考察(その1:PERの前段階)

利益の経済的実質に関する考察(その2:発生主義と現金主義)

利益の経済的実質に関する考察(その3:企業間信用の場合)

利益の経済的実質に関する考察(その4:資本的支出と収益的支出)

利益の経済的実質に関する考察(その5:特別損益の取り扱い)

利益の経済的実質に関する考察(その6:会計方針の変更)

を見ていただければ分かるかと思いますが、「営業利益+減価償却」が利益の経済的実質を満たす基準であるとは言えません。そこには、「企業の競争力を維持するための支出だが、即座に費用として計上されない項目」が抜けているからです。



したがって、典型的には、有形固定資産の稼働率が収益力を決定する事業を行っていて、それを維持するために常に設備投資を必要としている重厚長大型企業などが当てはまりますが、実際にはもっと広い企業に適用されるはずです。

また、「営業外項目」や「特別項目」を無視することが出来るかどうかについても考慮しなければならず、企業によっては、これらを考慮した収益こそが真の収益力であるということにもなります。


(2)税制・金利水準・減価償却基準などは各国によって異なるので、それらの影響を除いた収益であるEBITDAは企業の国際間比較をするのに有効である。

この視点でEBITDAを使用するのはグローバルな事業展開をしている企業に多く、具体的な業種で言うと、医薬品産業・通信産業・自動車産業・ハイテク産業などが当てはまるのではないかと思います。

例えば、ファイザー製薬(アメリカ)と武田薬品(日本)を比較する場合、アメリカと日本では法人税率・金利水準・減価償却基準が異なるので、これらの影響を除外することで両社の医薬品産業としてどれだけ収益力を発揮しているかについての比較をEBITDAで考えようというものです。



しかし、常識的視点でみれば誰にでも分かるような問題点がここにはあります。それは、「ファイザーは日本の会社ではないし、武田はアメリカの会社ではない。」ということからくる問題点です。

*税制の影響の排除に対する問題
税制の影響を排除することに対する問題ですが、現実にはそれぞれの企業はその国の税制に基づいた法人税率で税金を納めなければなりませんし、それを払って初めて株主利益となります。したがって、例えば、「日本は税率が高いから純利益が少なくなっているが、それを除くと実は収益率が高い」という論理は現実的ではありません。

*金利水準の影響の排除に対する問題
金利水準の違いについてですが、金利水準が異なるからその影響を排除するというのもずれた論点です。なぜならば、現実には金利情勢を考慮した資本政策(財務レバレッジをどの程度かけるかなど)を実施しなければ企業は立ち行かないからです。例えば、アメリカの借入金利が4%、日本の借入金利が1%であるならば、アメリカで事業を行っている企業のほうが、資本利益率に対するプレッシャーが高いのは当然の話です。

*減価償却費の影響の排除に対する問題
減価償却の問題については、個々の企業によって事情が異なるので、それを考慮すべきだということに尽きます。会計制度の違いというよりは、利益の経済的実質に焦点を当てるべきだと思います。


そんなわけで、EBITDAは利益の経済的実質を語るに当たって非常に怪しい部分があることが分かります。そして、皮肉な話ですが、EBITDAをしきりに主張している企業ほど、それを適用するための前提条件を満たしていないものであることがよく分かります。

ITバブルとその崩壊を経て倒産したワールド・コムやエンロン、その他のハイテク産業など枚挙にいとまがありません。

今日の言葉:
「からっぽの袋はまっすぐ立つのは難しい」
(ウオーレン・バフェット)

P.S.
私見ですが、EV/EBITDA倍率の適用は「キャッシュリッチで、有形固定資産が少ない企業」に限定するのが保守的ではないかと思います。あるいは、有形固定資産が多い企業については「その維持コストがどの程度か」をよく勘案してそれを差し引いて使用すべきだと思います。





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最終更新日  2005年10月26日 08時28分48秒
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