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2025.04.03
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この前、日野啓三の 『Living Zero』を読み返していて、思い出した。
そういえば、この人もブライアン・イーノの音楽が好きだったんだよなあ。
特にハロルド・バッドとの共作になる『鏡面界』と『パール』がお気に入りだったらしい。
単調で静謐な音響空間がお望みの人にはもってこいの音楽だ。
日野啓三によると、イーノの音楽は感情に訴えないところと形(構造)がない点がいいらしい。
感情に対応しないということは、要するに、脱人間的波動領域の音楽と言ってもいいかもしれないね。
もっとわかりやすく言えば、非人間的な音楽(人間をテーマにしていない音楽)ということになるのかな。
日野啓三流に言えば、こうなる。



これ、ちょっと笑っちゃうよね。
でも、とてもわかりやすい喩えではある。
砂というのは、とりもなおさず鉱物ということであり、イーノの音楽は日野啓三が好きな鉱物ととてもよくマッチするということだと思われる。
『鏡面界』に収録されている「フィールド・オブ・クリスタル」という曲なんか、日野啓三にとってはタイトルからして「まさにJ・G・バラード・ワールドの音」ということになる。
鉱物だけではない。
タイトルに光や空気や風といった単語がくっつくだけで、この人は敏感に反応してしまう。 笑
例えば、「ウインド・イン・ロンリー・フェンス」にはこんなコメントをつけている。
「廃屋敷の傾いた垣根に鳴る風。アンドリュー・ワイエスの絵の中で鳴っている音だ」
なるほど、そうきたか!
確かにアンドリュー・ワイエスの絵の中ではよく風が吹いている。
でも、この曲を聴いてアンドリュー・ワイエスの絵を思い浮かべるって、やっぱり初めからこの画家のファン以外にはあり得ないよなあ。

たぶんこの画家の画集を何冊も持っていたのではないか。

わしは残念ながら、この画家のことはよく知らない。
でも、二、三の絵なら印刷媒体で見たことがある。
そう言えば、代表作の『クリスティーナの世界』は『2001年宇宙の旅』(小説)の中にも出てくるんだよね。
今ふと思い出した。

そして、そのリビングルームの壁にはゴッホの『アルルのはね橋』とワイエスの『クリスティナの世界』が掛けてあるんだよね。
これって誰の趣味かなあ。
この部屋を用意した謎の知的生命体がボーマンの頭の中からピックアップしたのだろうか?
まあ、作者のアーサー・C・クラークの思惑が絡んでいるのは間違いないけど…




ところで、この女性(クリスティーナ)は、こんな殺風景な丘の上で一体何をしているんだろう。
実は、彼女、難病による下半身付随のため、歩くことがままならない状態らしい。
それで、腕を脚がわりにして、家まで這って帰ろうとしているのだそうだ。
なんでも、彼女は車椅子を使いたがらなかったらしい。
まさに、脚がダメでも腕があるじゃないってことだろうか。
いつもこんな感じで移動していたようだ。
まあ、生き物としてはとても自然なこと。
モロイだって脚がダメになると、腕の力だけで森の中を這い回ったではないか。
そんなクリスティーナに対して可哀想と感じるのはちょっと的外れかもしれない。
たぶん作者ワイエスもそうは思っていなかったのではないか。
でも、画面にそこはかとなく漂う寂寥感は何なんだろう?
それはただこのワイエスという人が、がらんとした空間に人がポツンと佇むことによって醸し出される「ひとりぼっち感」を気に入っていたというだけの話ではないだろうか。

実際、インタヴューに答えて彼はこんなことを言っている。
「私は今に至るまで人生の大半をひとりぼっちで過ごしてきました。それが気に入ってもいるのです。」
「もし私の作品が生きているとしたら、それは人びとから妙に離れている感じがするせいかもしれません ー
一種の孤立感です。」
どうやら、ワイエスという人はひとりぼっちで自然の中を動物のようにほっつき歩き、あたりに潜む何やらマジカルなものの波動を感じとるのが好きだったようだ。
また、小鬼や妖精や魔法使いといったハロウィン的なもの、超常現象や亡霊や廃墟といったゴシックホラー的なものにも強く惹かれていたようだが、それはこの画家がアメリカンゴシック的想像力の系譜に連なっている証かもしれない。


『海からの風』


『November First』

「風の強い秋の日にとうもろこし畑の中でただじっとして、かさかさという乾いた音に耳を傾ける、これほど胸が高鳴ることはないと思います。」




「実際雪は私を酔わせる。ぞくっとするほど感動してしまいます。 ー あの静謐。信じられないくらいだ。」

「私は冬と秋が好きですが、その季節にはいわば風景の骨格とでも言えるものが感じられる。 ー そしてその寂しさ、冬の何もかもが死に絶えた感じなども。だが何かがその下で待っている。」

幼い頃から病弱で、終生アメリカ東部の片田舎から出ることなく、水彩やテンペラ画を描き続けたアンドリュー・ワイエス。 
その絵は一般的にはリアリズムと言われているが、それらをマジックリアリズムと呼ぶ人もいる。
それはリアリズムという手法を通して、自然の中に息づく「抽象的なきらめき」をマジックのようにあぶり出すみたいな意味合いかもしれない。
そして、画面に漂う不穏な空気、あるいは異世界に通じるかのような霊的な気配。
日野啓三もそうしたものに惹かれていたのかもしれない。





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Last updated  2025.04.06 08:20:51
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ポポイ!アンフラマンス・ホウ! @ Re[1]:うわー、ここで三浦か!(10/04) 周梨槃特さんへ なんだか面白そうな話で…
周梨槃特@ Re:うわー、ここで三浦か!(10/04) 3週間ほど前になるでしょうか。 私もちょ…
ポポイ!アンフラマンス・ホウ! @ Re[1]:NA コレクション 28(06/11) 周梨槃特さんへ この度のアズライトとア…
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