メールの恋ってやつですか!?

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只野一生

只野一生

2002.11.05
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 協定書と離婚届に署名・捺印をもらってきた老弁護士は、主婦にその旨連絡した。

「子どもさんの引き取りですが、夫だった方は、あなたのお姉さんにお願いしたいそうです。それと、何かあった場合の窓口も、すべてお姉さんにお願いしたいそうです。その件、よろしいですか」
「はい、わかりました」
 最後まで姉が絡むのか、と思いながらも、子どもの奪還まであと一歩と迫った主婦は、異論を述べなかった。
「私の意見では、お子さんが大きくなったときに、わだかまりなくお父さんに会えるようにしておいた方がいいと思います。だから、あまりお子さんには、大きくなっても今回のことはいろいろ言わない方がいい。あなたも仕事、がんばらなくてはだめだよ」
 老弁護士は、依頼者の主婦に対してそう因果を含めた。

 一見、年長者としてのアドバイスに聞こえるが、私は、この老弁護士に全く賛成しない。

 考えてもみるがいい。自分が死んでも連絡をよこすなという「覚え書き」まで送りつけ、自分を人質にして養育費「免除」をかすめ取った父親に対して、そもそも子どもが「わだかまりなく」会える道理がなかろう。そうした「父親の真実」は、わざわざ話さなくても、子どもが成長するにつれて自然とわかってくることだ。

 子どもにとって父親に対する心情的余地を確保するには、そうした事実経過をいっさい隠すだけでなく、歪曲や捏造を加えて、主婦を不条理に悪役にしたてあげて父親を美化しなければ不可能である。



 子どもは、これから女手ひとつで育ててくれる母親を、一方的に悪者にしてまで偽造した「真実」によって作られた父親像を決して欲しないだろう。

 たしかに父親は大切だが、真実を曲げてまで無謬としなければならないというものではないし、母親の立場や主張と両立できないなら、なおさら曖昧にしてはならないのだ。事実をありのまま話せばいい。その上で、子どもが判断すればいい。そういうものだろう。そういうものじゃないのか、老弁護士よ。

 法律事務所に行って離婚届を受け取った主婦は、その足で役所に届け出た。そして、長く別居生活で使ったアパートを本籍地とし、新たに子どもを迎え入れられるもう少し広いアパートに転居した。

 新しいアパートは、若干日当たりは悪いが2DKで家賃七万円。もとのアパートから一〇分ほど歩いたところにあるが、町名は変わらない。そこには主婦の母親も当分一緒に住むことになった。

 母親は商売を従来通り続けるので、片道約一時間半をかけた通勤となるが、実の娘や孫と直系親族だけで水入らずの暮らしが実現したことで、たいそう喜んでいるように私には見えた。

 以前、主婦がしばらく母親の自宅兼仕事場に厄介になったときも、母親はやけに張り切っているように見えたが、やはり同じような理由で喜んでいたのかもしれない。

 引っ越した主婦は、姉に息子の引き取りを依頼した。人からありがたがられることが生き甲斐の姉は、喜んで引き受けた。
 姉は、さっそく夫に電話を掛け、引き取りの日時を約束した。

 そう。姉は夫の新居の電話番号を知っていたのだ。主婦はもちろん知らない。しかし、姉は決して主婦に番号を教えなかった。もとい、これは過去形ではない。現在も教えられていない。

 夫を「舎弟」などとして事情も知らずに庇い立てている、同居人のマッサージ師の影響や圧力もあるのかもしれない。しかし、どちらにしてもおかしな話である。

 普通、たとえ夫から「教えないでくれ」と頼まれていたとしても、妹から聞かれたのなら、こっそりでも番号を教えてやるのが身内として当然の情ではないのか。



 ことほどさように、姉は終始、夫の協力者、もとい共犯の役割を果たしてきた。
 主婦が私を信用していることに対して姉は嫉妬していたが、自分のとっている行動を考えれば、私に関係なく、主婦が信用したくてもできないことに、この姉はなぜ気がつかないのだろう。

 こんな姉に介入された主婦は、自業自得な面もあるが、やはり身内に恵まれない気の毒な人だなあ、と私は改めて思った。





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Last updated  2003.05.05 09:03:11


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