あの、ゆるやかな日々

あの、ゆるやかな日々

2023年11月19日
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KANさんが亡くなったことが公表されて二日。12日に亡くなったということなので、亡くなった日からちょうど1週間。いろいろなミュージシャンからコメントが寄せられている。一通りネットで見られるものは見た。皆、それぞれ早すぎる訃報に無念をにじませた内容で、彼の人となり、活躍ぶりが感じられるいい内容だった。中でも、ASUKAさんのコメントが、お互いの子供のころのエピソードも交えて、心のこもったものだった。本当に残念だ。名もなき一ファンの一人として私なりの思いを書きたくて書く。以下、敬称は略させていただく。

私がはじめてKANを見た、聴いたのは1987年のある深夜のテレビ番組だった。かなり前のことなので詳細は定かでないが、確か12時を過ぎたくらいの時間の、あまり視聴率の高くない時間帯だったと思う。たまたまテレビを見ていて、ピアノを弾きながら歌うデビューしたばかりでまだほとんど知られていないKANを見た。長袖のTシャツにジーンズのような服装だったと思う。そう、デビューアルバムの「テレビの中に」のジャケット写真のような。そして、一瞬で釘付けになった。曲は「BRACKET」。2枚目のシングルだ。こんなにしゃれたかっこいい曲をピアノで歌うことができるんだ、と衝撃を受けた。当時、私もかなり音楽に傾倒していて、自分で曲を作り、ピアノを弾いてリズムマシン、DX7で多重録音してコンテストに応募したりしていた。同じくらいの年齢のミュージシャンのカッコよさに、これはレベルが違う、と思い知らされた。

すぐにCDを買った。「NO-NO-YESMAN」。どの曲もしゃれていて毎日のように聴きまくった。特に好きだった、いや、今でも好きなのは「今夜は返さない」「STYLISTIC」そして、タイトル曲の「NO-NO-YESMAN」。当時流行っていた打ち込みをとても効果的に使っていて、とにかくしゃれていた。デビューアルバム「テレビの中に」もすぐに買って聴いた。このアルバムがまた、例外なくどの曲もよかった。しいてあげれば、中でもよく聴いたのは「セルロイドシティも日が暮れて」「テレビの中に」「TOP SECRET」「FAIRY TALE」。秋の少し冷え込んできたころの夕方に原宿の表参道あたりを歩きながら聴くとぴったりくる、そんな感じのセンスのいいメロディ、アレンジにすっかりまいってしまった。

3枚目の「GIRL TO LOVE」もよく聴いた。このアルバムの中で好きなのはまず「適齢期LOVE STORY」。スピード感がすごい。そして「君はうるさい」。私はチューリップが好きで、チューリップを手本として音楽をやっていた。財津和夫の歌詞はとても落ち着いた大人っぽい世界観を持っている。たとえて言うなら20代後半くらいの大人の男性と、20代半ばくらいのOLのラブストーリー。それと比べると、KANの書く詞の世界は高校生のカップルという感じか。とても新鮮だった。実は初期のKANは作詞は別の人という曲が多い。2曲目のシングル「BRACKET」も作詞は別の人だ。それでも出来上がる曲は同じ世界観を持っているのが不思議だ。3枚目のシングルになった「だいじょうぶI’M ALL RIGHT」も秀逸。当時人気のあった大江千里の作る曲に雰囲気が似ている。ひょっとして何か意識するものがあったのだろうか。「恋はTONIN’」などはKANにしか作れない曲だと思う。あえてあげれば、根本要あたりの作る曲にこんな感じのものがあるかもしれない。しかし、曲が同じでも根本要が歌ったんではKANのこのようなポップな世界は表現できそうもない。そして、なんといっても素晴らしいのが4年後にシングルカットされた「言えずのI LOVE YOU」。歌詞も、メロディも、アレンジも。

と、この後のアルバムももちろんいいのだが、私はデビューからの3作にKANのすべてが詰まっていると思う。なので、「愛は勝つ」がヒットしたときは、正直に言って「えっ、これが売れるの?もっといい曲があるのに」と思った。もちろん「愛は勝つ」は名曲だ。直球勝負の歌詞、覚えやすいメロディ、とヒットする名曲の要素を十二分に持っている。こうした曲も作れる、歌える、というのもKANの魅力だが、私は個人的にはやはり初期の3作品がベストだと思う。

また、ある時、KANがテレビで自分の音楽のルーツを語るのを見た。「愛は勝つ」が売れた後、今から20年くらい前だったと思う。その時、初めてピアノで弾いたクラシックの曲が「人形の夢と目覚め」で、初めて弾いたポップスの曲は「あの、ゆるやかな日々」だと話しながら、目の前のピアノを弾いた。驚いた。「人形の夢と目覚めは」私もピアノ発表会で弾いた記憶があるが、習い始めの子どもがバイエルやツェルニーのような練習曲ではなく、タイトルのついている曲で最初に弾く曲の定番だ。そして、「あの、ゆるやかな日々」。チューリップのアルバム「TAKE OFF」に収録されている曲だ。小曲だが、名曲だ。私は今でもピアノの前に座るとまずこの曲を弾く。家族からは「いつもおんなじだね」と言われながらも。驚いた。KANもチューリップファンだったんだ、と。考えてみれば、チューリップのメンバーと同じ福岡出身。年齢も私とほぼ同じ(調べてみたら学年は一つ下だった)。好きな音楽もなんとなく似ている…。こうして点から考えて、チューリップが好きだったとしても不思議はない。KANの今年の3月のツイッターに「ドラムの上田さんに、TAKE OFFのCDにサインしてもらった」と喜んでいる書き込みがあった。あれだけの実績を挙げているミュージシャンでも好きなミュージシャンのサインをもらって喜ぶんだ、と私もうれしくなった。

3月に「洒落にならない御報告」を見て、えっ、と思ったのだが、最近はがんも結構治る人が多いので、楽観していた。入院したりしながらも、ラジオ番組にも出ていたりしていたので、こんなに急に亡くなるとは全く思っていなかった。とにかく、いろいろな意味でショッキングな訃報だった。





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最終更新日  2023年11月23日 23時47分06秒
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