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「成長期待がある分、PERは新興市場の方が東証1部より高くあるべき」
という話がありますが、果たしてそうでしょうか。
昨年のライブドアショック以来下がり続けた新興市場ですが、
「下落したとはいえ、マザーズ(あるいはジャスダック、ヘラクレス等)の平均PERはまだ○○倍であり、割安とは言えない」
といった論調を過去に何度か目にしました(当時からさらに下がっているので、今の平均PERだとまた別の論調が主流なのかもしれませんが)。
ブログだけではなくて投資雑誌や投資情報サイトなどでも見かけたので、おそらく実際、新興市場の平均PERは高かったのでしょう。
しかし、個別銘柄をみるとどちらかと言うと新興市場銘柄のPERの方が低くなっている印象がありましたので、なんとなく違和感がありました。
東証1部の大企業のPERはいつも軒並み20倍以上で、まったく買う気が起きませんでした。それに対して新興市場では、PERで15倍未満の企業をたくさん見ることができましたし、10倍未満の企業でさえも結構ありました。
ちゃんと確かめてはいませんが、これは恐らく、新興市場では一部の高PER企業が平均PERを押し上げているのだと思われます。
我々は「平均PER」と聞く時、以下のような数字の罠に気をつけなければいけません。
企業A 時価総額1000億円 利益100億円 PER10倍
企業B 時価総額100億円 利益1億円 PER100倍
企業C 時価総額600億円 利益15億円 PER40倍
以上のような企業A、B、Cがあるとき、平均PERはどうなるでしょうか?
(1)文字通り「PERの平均」を取る。
(10+100+40)/3= 50倍
(2)PER=時価総額/利益であるから、時価総額合計を利益合計で割る。
(1000+100+600)/(100+1+15)= 14.7倍
これはやや極端な例ではありますが、計算方法が違うだけでPERはものすごく変わってしまいます。
PERの本来の意味を考えれば、(2)の計算方法が妥当なことは明らかですが、 東証発表の平均PERの計算要領 をみると、
PER=株価合計/EPS合計
となっています。つまり、(2)のような時価総額の大小を考慮する方法でないどころか、(1)の方法でもありません。株価の大小が平均PERに大きく影響する計算方法であると言えます。
一応、注記を読むと、1単元が1000株以外の銘柄と1単元1000株の銘柄を公平に比べるために、「単元数/1000」を掛けた値を使用するということになっているみたいですが、まったく無意味な補正です。
これだと、例え時価総額が小さい銘柄でも、発行済株式数も十分小さければ株価とEPSは高くなってしまうため、平均PERに与える影響が大きくなってしまいます。
そのような銘柄が赤字スレスレだった場合はPERが異常に高くなってしまうので、平均PERも異常に高くなってしまいます。
また、
利回り5%=PER20倍、利回り10%=PER10倍
で、この場合利回りが5%も違ってもPERは10しか違わないのに対し、
利回り1%=PER100倍、利回り2%=PER50倍
となり、この場合は利回りが1%しか違わないのにPERは50も違ってしまうことになります。
このように平均を算出するにあたって、PERというものは非常に使い勝手が悪いと言えますので、各機関の発表する「平均PER」の類の数字がどのような前提で計算されているかを必ずチェックしないと、とんでもなくミスリードされてしまうことになります。
こんなの、難しい数学でもなんでもなくて極々基本的な四則演算だと思うのですが、東証までもがこんないい加減な数字を発表していることに驚きを覚えます。役に立つどころか、害になるのでなるべく聞きたくない数字です。
話が完全にずれてしまいました
そうそう、新興市場と東証1部のPERはどちらが高いべきか、という話ですが、以上のくどい説明から、巷で言われるような、
新興市場の平均PER>東証1部の平均PER
という状態には、実際にはなっていない(いなかった)と思われます。
では次に、どっちの平均PERが「高くあるべきか」についてですが、これは状況によって変わってくると思われます。
「新興市場の方が成長期待が強いので、高いPERが正当化される」という主張には、リスクの観点が抜けています。
言うまでもなく一般に、東証1部企業の方が新興市場企業より信用力があり、財務が堅固で倒産の危険性が小さいですので、割引率が小さくなります。
その反面、成長力という意味では確かに新興企業には劣るでしょう。
ここでおなじみ(?)のキャッシュフロー定率成長モデルの登場です。企業価値(厳密には企業の事業価値)は以下の式で表されます。
企業価値=C/(r-g)
C:キャッシュフロー(≒利益)
r:リスク(=割引率)
g:成長率
株価(あるいは時価総額)は市場参加者の企業価値に対する評価に他なりませんので、企業価値=時価総額、キャッシュフロー=利益と読み替えて、
時価総額=利益/(r-g)
時価総額/利益= PER=1/(r-g)
となります。このあたりについては、森生明「 MBAバリュエーション 」あたりが分かりやすいので、勉強してみたい方はどうぞ。
つまり、
新興市場:
リスクが大きい→rが大きくなる→PERが低くなる
成長率が大きい→gが大きくなる→PERが高くなる
東証1部:
リスクが小さい→rが小さくなる→PERが高くなる
成長率が大きい→gが小さくなる→PERが低くなる
となり、双方ともにPERが高くなる要因と低くなる要因を併せ持っています。
リスクが敏感に意識される地合のときは新興市場のPERが低くなり、成長力が評価されやすいときは新興市場のPERが高くなる(東証1部についてはその逆)ということになります。
現在は、会計不信やアメリカの景気先行き不安などでリスクが意識される地合いですから、新興市場のPERは低くなって当然です。
逆にいえばこれらの不安要素がクリアになればPERが高くなることが予想されるわけで、ここでもマーケット参加者の心理状態を読むことが重要になってくるわけですね。
私の判断は、「現状、市場は不安になりすぎ」ですので、信じて安いと思う株を買ってホールドするのみです。
オプションの話と共通する部分がありますね。
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