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2004.11.24

あるニホンクマの物語（３）

(2)

テーマ：野生の動物は好きですか？(14)

カテゴリ：野生の動物は好きですか？

ここにもお腹を空かせた若いオスのクマがいました。名前はゴンと言います。

ちょっと間の抜けた、気の弱いクマです。

「腹へったなあ。目が回りそうだ。」
フンフン・・地面に鼻をくっつけて、食べ物をさがしますが、何も見つかりません。
「もうここら辺りは、目ぼしい草の根っこさえもなくなってしまったなあ。こうなったら、もっと遠くに足を延ばすしかないなあ。」
そう言いながら、とぼとぼと歩いていきます。

どれほど歩いたことでしょう。
当てもなく、うろついていたゴンの目の前に山小屋が見えてきました。

普通ならば、気が弱く用心深いゴンは、そんなところには近づきません。
しかし、あまりにもお腹が空いていて、食べ物のこと以外は何も考えられなくなっていました。
しかも、その山小屋の開いた入り口からは、食べ物のいい匂いがしてくるのです。
ゴンは、我慢できず、ふらふらっと入り口から山小屋の中へ入っていきました。

入り口の敷居をまたいだゴンは、いい匂いがどこから来るのか探るように、二本足で立ち上がり、鼻をくんくんさせました。
とそのときです。
「ぎゃあ～。」
と、鼓膜が張り裂けるかと思うばかりの大きさで、悲鳴が起こりました。
ゴンは、あまりに突然のことに、腰をぬかさんばかりにびっくりして、ひっくり返ってしまいました。
ゴンは起き上がるやいなや、後ろも見ずに、一目散に逃げ出しました。

やみくもに逃げてきたので、どこをどう走ってきたのか、覚えていません。

ゴンは、知らず知らずのうちに、人間の住んでいる里の近くまで来てしまっていたのでした。

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