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2006年04月21日
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カテゴリ: 食文化
 塩は人間のみならずあらゆる生き物に欠かせないミネラルです。塩は、化学的には塩化ナトリウム、つまり塩素とナトリウムが結びついたものです。塩の結晶はどなたでも見たことがあるように美しい立方体です。塩素イオンとナトリウムイオンが交互にそして立体的に積み重なった結果あの立方体が生まれます。しかし、ここで大切なのは結晶でありながらイオンの集合体である事です。イオンとは物質が水の中に溶け出し、他の物質から電子をもらったり、与えたりして電荷を帯びた物のことを言い、化学反応を語るときにはけっしてはしょれない物質というものの性質なのです。結晶という物は共有結合と言う電子を共有し合うことによる原始同士の強固な結びつきで形成されるものなのですが、塩はいくつかある例外の中に含まれています。塩素イオンはマイナスの電荷を帯びており、ナトリウムイオンはプラスの電荷を帯びている。このことによりプラスとマイナスで引き合って結晶を形作っています。この結晶は、いわば静電気でくっついている様なものですから、水と出会うとすぐにイオンに戻ります。この二つのイオンのうち、ナトリウムイオンは特に生命と深く関わっています。筋肉の収縮も神経細胞の情報伝達もナトリウムイオンがなければ成り立ちません。そもそも人間の体液は、約0.9%の塩分濃度を持っていて、生理食塩水はこの塩分濃度に調整されています。これは生命が誕生した太古の海水の塩分濃度と同じだと言われています。塩は、生命のメカニズムに組み込まれており、さらにはあらゆる生物のDNAにも必須な物質としてきざみこまれているいるのです。ちなみに、現在の海水の塩分濃度はもっと濃く、2~3%くらい、日本人の大好きなお吸い物の塩分濃度は1~1.5%位のようです。
 塩は人類にとっても不可欠なものですから、地域によって塩を採取する努力をしてきました。大きく分ければ海水から採る、岩塩から採る、塩湖から採るといったところでしょうか。岩塩も塩湖も基本的には海水が陸の隆起によって海から切り離され干上がったものですから、やはり母なる海からの恵みであることに変わりはありません。生命誕生後、40億年が過ぎても、またロケットで月に降り立つほどの知恵を手に入れても母なる海に生かされているのが生命と言う物なのですね。
 日本は島国ですから塩は海水から採っていました。さまざまな製塩法が考え出されましたが、古来行われていた代表的な方法は塩田法と藻塩法です。塩田法は区画された砂浜に海水を満たし天日で水分を蒸発させて塩を採るというものです。藻塩法は、海藻に海水を、かけては乾かしかけては乾かして塩を採る方法だったようですが、最終段階では塩の結晶をたっぷり付けた海藻を焼くことにより、塩と海藻の灰を採り、それをさらに水に溶かして釜で炊くなどして塩を精製していたのだと思います。

百人一首の中にこんな歌があります。

来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ

                          権中納言定家

 生命の深遠な不思議さも、人類の文明も、原始生命が誕生した海に存在した塩にその根底があるのかもしれません。この単純な化学構造でたいして貴重でもない塩があらゆる生命に必須な物である事は、自然界にはありえないような複雑な科学物質を作り出している人間にとって、文明のあるべき方向を考えさせる事実だと私は思うのですが。

 最後に豆知識ですが、一般に、調味料は水には溶けにくく、お湯には溶けやすいと思われがちです。例えば砂糖は確かにその通りで、冷たい水にはほとんど溶けてくれず、お湯にはよく溶けます。しかし、塩はその結晶構造から、水でもお湯でもほとんど溶けやすさが変りません。ご存知でしたか?






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最終更新日  2006年04月21日 19時32分43秒
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