死ぬまでうたたねブログ

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2005.07.27
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カテゴリ: 漫画
杉浦日向子著。ちくま文庫。解説北方謙三。


吉原の遊女達を主人公とした短編集。

表題の「二つ枕」はシリーズで四編から成る。

「初音」…大店のまだ若い売れっ子花魁と、「遊び人の叔父」に初めて吉原に連れてこられた商家の箱入り息子との一夜。

「麻衣」…中店かそれよりも下位の店の女郎と、今日で家から勘当されたという間夫との一夜。

「萩里」…中店の女郎と、雨に紛れてやってきた初会の客との一夜。

「雪野」…大店中の大店、花魁と金持ちな問屋の主人との年季の入った掛け合いで更けていく一夜。


色々な客と遊女との組み合わせを描いていることも、舞台は全て遊郭の二階、花魁の部屋で、会話に頼った進行であることも、「それがウソだ」「ウウ、あいつめがにくいの」「コレサあやまった」などの台詞も、「二つ枕」が洒落本を踏まえて書かれたものであることを示している。踏まえて書かれた、というよりももはや洒落本の映像化であろう。

洒落本を初めて読んだ時、まるで舞台の脚本だと思った。

ト書きのように台詞よりも小さい文字かつカタカナで「フト抱キツキ口ヲ吸フ」なんて書かれてたりする。

会話だけでそれぞれたった一夜のことを描いているだけなのに、奥行きがある。花魁の粋やさみしさや優しさや愛嬌が読みとることができる。


「吉原は男の天国、女の地獄」という言葉がある。恐らく明治になってからの言葉ではないかと思うけれど。
「かごの鳥」の逃げられない遊女達。借金が終わるまで客を取らされて、折檻が日常茶飯事の苦界。

そんなイメージを持っている人も多いかも知れない。そう説明する解説書もたくさんあるし。

確かに吉原にはそういった一面もあっただろう。

けれど、吉原の遊女達を「可哀想」「みじめ」という言葉でだけ捉えるのは彼女たちに失礼だ。それこそ、彼女たちの尊厳を傷付けることだと思う。


悲しいことばかりではなくて、客と恋することだってあったし、その駆け引きを楽しむこともあっただろうし、自分の美しさに対する自信もあっただろうし、粋を極めることを面白がっていたはずだ。

「性」のとらえ方が今よりも大らかだったということもある。
少し話がずれるけれど、西洋にあるような性の隠匿性は江戸にはない。厚い壁ではなくて、一枚の襖、一枚の屏風の向こうで行われるセックス。決して特別ではない、日常のヒトコマ。


「二つ枕」にも遊郭遊びを描いた洒落本にも性描写はほとんど出てこない。客と遊女のだましだまされ、惚れて惚れられの会話の掛け合いを楽しむものだ。






◇◇もうすこ~し軽やかにおもろくレビューを書くつもりでしたが、ついつい暑苦しくなってしまいます。
日向子さんはそのへんのとこが上手くてほんとに粋なんでございます。◇◇





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Last updated  2005.07.27 22:43:20
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ほんに粋です  
りょりそん さん
たまかさんは江戸文学を勉強していらっしゃるんですよね。杉浦漫画に出てくる表現なんかの出典も分かって、より深い面白味をあじわえるんじゃないか、と羨ましく思います。
二つ枕の言葉の掛け合い、本当に粋ですー。
遊郭は肉体を重ねるだけの場所ではないですよね。あと、二つ枕に出てくる遊女が色んなタイプなのも面白いです。 (2005.07.28 18:29:30)

Re:ほんに粋です(07/27)  
杉浦たまか  さん
りょりそんさん
>たまかさんは江戸文学を勉強していらっしゃるんですよね。杉浦漫画に出てくる表現なんかの出典も分かって、より深い面白味をあじわえるんじゃないか、と羨ましく思います。
日向子さんが何を参考にして描いたかがなんとなくわかる時はたまにあります。
でもいくら江戸を勉強してるっていっても日向子さんの江戸にかける思いの深さには到底叶わないなあ、と思います。少し悔しさもあるかもしれません。


>二つ枕の言葉の掛け合い、本当に粋ですー。
>遊郭は肉体を重ねるだけの場所ではないですよね。あと、二つ枕に出てくる遊女が色んなタイプなのも面白いです。
お客のタイプもいろいろですよね。
今思いましたが、杉浦漫画にはほとんど悪人てでてきませんね。
(2005.07.29 15:33:47)

おーそうかも  
りょりそん さん
>今思いましたが、杉浦漫画にはほとんど悪人てでてきませんね。

そういえばそうかもしれませんねー。罪人はいるけどそれも何か根っからの悪って感じではないし。
「とんでもねえ野郎」の桃園は悪人といえば悪人かしら?でも私、彼のキャラクター大好きなんです。こんな男がいたら惚れてるな、と。奥方が出来すぎてるので、ずるいなーとも思うんですけどね。 (2005.07.30 02:46:01)

Re:おーそうかも(07/27)  
杉浦たまか  さん
りょりそんさん
私も桃園好きです。
でも彼を女として仕留めることは私には確実にできないですね。
大恩寺もいいですが、彼にもやんわりとお断りされてしまいそう… (2005.07.30 22:30:56)

北方謙三氏  
まきこ。 さん
日記の内容と全く関係がないのですが。

今日、北方謙三氏が小っちゃくて、真っ赤な車を
運転しているところに遭遇してしまいました。
あんなにキュートな車なのに、中にうずくまるように座っている彼はやっぱりハードボイルドで・・・。
ちょっとほくそ笑んでしまったら、目が!

誰かに伝えたくて、ついついここに書いてしまいました。
あしからず。。。

ちなみに「二つ枕」はまだ読んでいないです。
ぜひ今度貸していただけたら、と。
(2005.07.31 21:21:33)

Re:北方謙三氏(07/27)  
杉浦たまか  さん
まきこ。さん
杉浦日向子さんの漫画、解説の方がおおっ!って方なことが多いです。高橋源一郎とか(好きじゃないけど)。宮部みゆきさんも弟子を名乗って(?)おられるようだし。

いいな~、どこでみたんですか??
有名人見たい。たぶん気付けてないことがいっぱいありそう。 (2005.07.31 21:54:24)

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