2006年01月08日
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2005年11月04日


■Share-Projectの試み

 首都圏を中心に、金融ビジネスに興味のある大学生・大学院生が横断的に集まる大規模な勉強会に「Share-Project」(呼び名は「シェアー・プロジェクト」であって「洒落プロジェクト」ではない)という集まりがある( http://www.share-project.com/ )。毎年100名を超える学生が集まって、プロの金融マンを講師に呼ぶなどして、熱心に勉強しており、「オープン・アカデミー」を標榜する学生団体として運営されている。
 今年のテーマは「インベストメント・バンキング」と「アセット・マネジメント」であった。Share-Projectには10社強の主に金融関連の企業が協力しているが、当社も協力しているご縁で、筆者は、「アセット・マネジメント」コースの課題である、株式ファンドの商品企画案の講評をやらせて貰った。
 学生にとって、このコースは極めて真面目で熱心な参加を要するもので、数回にわたるプロの金融マンの講義などを参考にしつつも、商品のコンセプト・運用哲学・運用プロセスを定めて、具体的なポートフォリオを作って提出することになっていた。運用会社でいえば、「商品企画部」といった部署が担当する仕事を一から十までやった感じだ。
 最終的に、筆者の手元に提出された企画とポートフォリオは16個あった。

■評価の観点と具体的方法

 評価のポイントとして筆者が注目したのは、(1)アクティブ・リターンを獲得するアイデア、(2)ポートフォリオのリスクコントロール、(3)商品のコンセプトだ。ただし、(1)と(2)については、「思っていること」が実際のポートフォリオに表れていなければ意味がない。
 そこで、すべての提出ポートフォリオを、日立製作所のRiskscopeというプロ用の株式ポートフォリオの分析ソフトを使って分析して、リスクの大きさ、リスクの種類別の内訳(業種によるリスクか、企業規模などの特性値によるリスクか、銘柄個別のリスクか、など)、リスクをもたらしている要因から見たファンドの性格などを、プロのポートフォリオと同じ観点で評価してみることにした。
 たとえば、投資の教科書には、相関のない20個のリスク資産を等金額で組合せると個別銘柄のリスクがかなりの程度分散できるというようなことが書いてあるが、これを「20銘柄くらいの銘柄を持てばリスク分散は十分だ」といった形で中途半端に理解して応用すると、実際の株式ポートフォリオの場合、お互いに無相関の銘柄を見つけることは難しいので、現実のポートフォリオのリスクはこうした理解とかなり異なる結果になる。

 そこで、一つ一つのファンドについて、分析のアウトプット帳票を眺めて、運用の考え方がポートフォリオに的確に反映しているかどうか、また余計なリスクをとっていないだろうかという点について、基本的に手加減無しに評価してみることにした。

■リターン獲得のアイデア

 先ず、ベンチマークよりも高いリターンを求めるに当たって、学生達がどのようなアイデアを考えたかの概略を筆者の頭に残った印象に従っていくつか列挙してみよう。


<学生が考えたリターン獲得のための投資アイデア>

  • キャッシュフローの割引現在価値(DCF)分析を重視する割安株運用

  • 商品価格の上昇傾向を捉えるための関連銘柄を商品指数を参考に組合せる

  • 株価が下がっていてかつ値動きが乏しい不人気銘柄に投資する逆張り運用

  • 「上方修正」と「注目度の低い銘柄」の共通集合を買う運用

  • M&Aの標的になりやすい会社という視点から評価した割安株運用

  • 高ROEで自己資本比率の高い銘柄を重視する

  • 国際競争力のある日本企業に投資する

  • 女性向けの商品の充実・女性の登用など「女性」を重視した銘柄選択

  • GARP(成長と割安のバランスを評価する)を標榜するやや割安系の運用

  • 過去3ヶ月の株価の下落率の大きな銘柄に着目する運用

  • 業績が回復した企業の特性に似ている企業に投資する

  • マネー誌をネガティブ・インディケーター的に読む銘柄評価

  • 高齢化に対応した企業を買う

  • CSRの観点も含めて優良成長企業を評価する





  •  なかなか面白いのではないだろうか。幾つかは、ブラッシュ・アップすれば、プロの運用にも応用が利く考え方だと思う。なお、一般の個人投資家や、最近出版される初心者向けの本などによくあるようなテクニカル分析に頼る投資アイデアは学生達の作ったファンド案の中には一つもなかった。
     リターン獲得のアイデアに関して、一般的な補足を述べると、「良い会社」と「儲かる銘柄」の差をよく考えて欲しい。たとえば、現在ROEが高い会社があるとして、この企業の評価が株式市場の参加者に十分知られているとすれば、この銘柄を買っても、ベンチマーク以上に大きく儲かるのは、ROEがさらに高まるようなイベントが予想外に起きた時だろう。しかし、そうした確率はあまり高くないかも知れない。
     またCSR(企業の社会的責任)が企業価値の評価に影響するとすれば、「現在CSRが良い状態の企業」と「現在CSRの状態が良くない企業」(これから良くなる可能性を孕む企業)とではどちらが良い投資対象かは難しい問題だ。「CSRがかなり悪い企業が、少しマシになる」というような状態がプラスのリターンを生むイベントであるかも知れない。
     こうした事に気がついた学生のグループもいくつかあって、投資家の人気の逆張りを意図したファンド案(大雑把な運用で商品としてのレベルは高くないが筆者は一番好きだった)や、成長材料が投資家に評価されているかどうかをマネー誌の記事を見て判断するというような考え方を述べたファンド案もあった。
     ロジカルに一番まとまっていると思ったのは、利益の上方修正と投資家の注目度が低いことを合わせて使おうとする運用で、これは、収益予想の上方修正が株価に反映するまでの時間的余裕がある銘柄(上方修正発表後に投資しても有効な可能性の高い銘柄)を割り出そうとするもので、理屈が通っている。収益予想の数字の変化と株価をよく見ることは株式投資の基本動作だからこの方面からアプローチすることは、経験の積み方としても好ましい。
     ただし、上方修正も、しばらくぶりにいきなり発生したものか、何度か続けて上方修正されているものなのか、といった状況の差で、将来の株価への影響が異なることが多い。端的に言って、何度も続けて上方修正していると、投資家は注目するようになるし、上方修正するのが普通だろうと期待する傾向があり、上方修正が発表される時点では株価に織り込まれていることが多いし、将来下方修正したときの影響が大きいことがしばしばある。そうしたことも含めて、工夫と改善の余地は多々あるのだが、思考の方向性がよいのではないかと思った。





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    最終更新日  2006年02月10日 02時06分30秒
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