2006年01月09日
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2006年1月5日


 投資家のみなさま、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。今回は、年初ということもあり、2006年の株式市場を考える上でポイントとなると思われる日銀の量的緩和政策の解除の問題を中心に、株式市場の大まかな展望、これらを前提としたときの投資戦略などについて検討してみようと思います。  


■量的緩和の意味

 11月の消費者物価指数が対前年比で0.1%とはいえプラスに転じてきたことで、日銀の量的緩和政策の解除時期をめぐる話題がヒートアップしてきた。
 はじめに、日銀の量的緩和政策について概要をまとめておく。量的緩和政策は、デフレ脱出のための政策として、短期金利の「ゼロ金利政策」に加えて導入されたもので、市中銀行の日銀当座預金残高を、短期金利が十分にゼロに張りつく5兆円程度のレベルを超えてさらに増やすように市中銀行に対して資金を供給する政策だ。日銀は、この政策を解除するにあたっては、(1)消費者物価の対前年比変化率がプラスになることと (2)これが継続的にプラスになり逆戻りしそうにない場合に、(3)さらに経済情勢を勘案して、これを解除する、と総裁談話で何度も確認し、いわば市場に対して約束している。消費者物価指数の対前年比がいよいよプラスに転じたことで、この条件が満たされそうだとして、量的緩和政策の解除に関心が高まってきた。
 市中銀行の日銀当座預金残高は、現在、30兆円から35兆円くらいのレベルにあるが、これまで、日銀が市中銀行への資金供給を増やしてきたものの、市中銀行の貸し出しが伸びなかったために、広義のマネーサプライ(M2+CD)は低い伸びにとどまっていて、すでに短期金利がゼロまで低下していることも相俟って、量的緩和政策が、単独でデフレに抗しうるほどに有効な政策だったようには思えない。ここにきての、インフレ率の陽転は、内外の景気回復に後押しされたことと、原油をはじめとする一次産品価格が上昇したことが原因と思える。
 量的緩和政策にあえて効果があったとすると、一つには(1)日銀当座預金に法定準備として必要な以上に資金が積み上がった状態(注:金融市場ではこれを「ブタ積み」と称する。日銀当座預金には金利が付かないので、通常は市中銀行にとって機会コストが掛かる状態なのだが、ゼロ金利状態では、ブタ積みは資金の安全な保管状態を意味する)が存在することが、ゼロ金利解除がまだまだ先であることを示唆するので、こうした予想形成によって長期金利が低く抑えられる効果(注:これを「時間軸効果」という)があり、もう一つは、(2)日銀が異例の政策を行っているという「アナウンスメント効果」だった。だが、何れにせよ、肝心のマネーサプライ(広義の)が思うように増えなかったのだから、日銀の量的緩和政策は、デフレ脱却に対して直接的な効果を持っていなかったと考えていいだろう。インフレ率は、日銀の力だけでコントロールできるものではないのだ。
 なお、いわゆる「リフレ派」と呼ばれるような論者たちは、マネーサプライが伸びなかったのは、日銀が「インフレ期待」(国民がインフレを予想すること)を喚起しなかったからだと、「期待」への働きかけの不足を問題視するが、これは、そもそも日銀は少なくとも直接的にインフレ率をコントロールする力を持っていないのだから、守る手段のない約束をして、国民を騙してみよ、というのは、将来の日銀のコミットメントの価値を損ないかねない無理筋の議論である。


■量的緩和解除を巡る駆け引き

 日銀としては、ゼロ金利を脱して短期金融市場が正常に機能する状態を作りたいだろうし、80年代後半に金融引き締めが遅れて、バブルを加速してしまった苦い経験があるから、ブタ積みを早期に解消して金融政策が効く状態にしておきたいという意図を持っているだろう。最近の量的緩和解除に向けた地ならしとも思える福井総裁の一連の発言は、こうした意図に沿ったものだと考えられる。
 日銀の意図を素直に汲むと、たとえばプラスのインフレ率がある程度継続しているはずの今年の4月頃には、ブタ積みの水準を下げる形で、量的緩和政策の解除が始まるといった展開が予想される。もちろん、この場合にも、ゼロ金利をしばらく継続することを約束しながら段階的に物事を進めることになりそうだ。

 今のところ、彼らの戦略は、(1)まず名目成長率に関する目標(たとえば2%)を日銀に共有させて、(2)これとの関連で日銀にプラスのインフレ目標を実質的に持たせて、(3)これらへのコミットメントを通じて量的緩和政策を継続させようとするものに思える。名目成長率目標が体内にインフレ目標を抱え込んだいわばトロイの木馬であって、これで日銀の手足を縛って思い通りに征服しようというような作戦と見受けられる。筆者は、日銀の独立性を軽視するようにも見えるこうした考え方に賛成できないが、政治的な力関係の影響を受ける現実の金融政策がこうした勢力の影響を受ける可能性も否定できない。
 彼らおよび彼らの背後にいるとみられる一部の官僚の意図するところは、推測の域を出ないが、財政・金融政策を一体的に運営したいという経済政策的な価値観の他に、今年9月の自由民主党総裁選、さらには2007年の参議院選挙まで好調な景気を維持して、「改革」を標榜した一連の経済政策を正当化して、政治的なポジションを強化したいということではないかと推測される。報道に基づく憶測の域を出ないが、政治的には、小泉首相の後継者として安部晋三官房長官を担ぐ形で影響力を持ちたいということだろう(これらの推測は、筆者の個人的な見解にすぎないことをお断りしておく)。
 いずれにせよ、量的緩和の解除は、その時期が近づいているように見えるものの、時期も含めて不確定要素を増している。







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最終更新日  2006年02月10日 02時37分54秒
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