2006年01月09日
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2006年1月5日


■量的緩和解除が株式市場に与える影響

 量的緩和が解除されると何が起こるだろうか。ゼロ金利が継続する以上、たいした影響はないという意見もあるが、筆者は、債券市場と株式市場の波乱要因になる可能性があると考えている。
 量的緩和政策の解除、即ち日銀によるブタ積みの縮小は、先の「時間軸効果」の逆転を通じて、長期金利に大きな影響を与えるのではないだろうか。大きなブタ積みが存在するということは、ゼロ金利解除までのプロセスが長いということで、ゼロ金利解除が遠いということだ。逆に、ブタ積みが縮小すると、遠からぬ将来にゼロ金利の解除があるという予想が生じる。長期金利には、将来の短期金利を先読みして形成される要素があるから、量的緩和解除が始まった時、或いは解除のプロセスの途中のある時点で、長期金利が跳ね上がる公算が大きい。
 たとえば、現在1.5%前後の長期国債利回り(以下「長期金利」)が、2.5%レベルに急上昇する。少なくとも可能性として、そうした事態があり得ることを考えておく必要があるだろう。
 そうした場合に、株価にはどんな影響が出るだろうか。
 これは筆者の個人的な見解に過ぎないが、その場合、平均株価は15%から20%程度下落する公算が大きいと思う。
 株式の適正レベルを考えるときに、筆者は、株式の期待リターン=長期金利+リスクプレミアム=益利回り+長期利益成長率、という関係に着目する。益利回りとはPERの逆数であり、PER20倍で5%、25倍なら4%だ。長期の利益成長率を何で観測するかは難しい問題だが、大まかには名目GDPの成長率で考えることにしている(注:経済成長には上場企業以外の企業の寄与があるので上場企業の長期利益成長率は名目GDP成長率を僅かに下回る公算が大きいと言われている)。 現状の23倍レベルのPER(今期予想ベース)は4%台半ばの益利回りであり、名目GDP成長率は期待も込めて2%という辺りだろう。長期金利をほぼ現在の1.5%と考えると、リスクプレミアムは5%を割っているものの、4%台半ば以上の水準を確保しており、「まあまあ」のレベルにある。 リスクプレミアムに関しては海外のファイナンス学界でも長期にわたる論争があるが、大きく要求する場合で6%くらい、小さい場合で2.5%くらいの数字が妥当ではないかと言われることが多い。現実には、投資家の心理により(注:従って、過去のリターンの履歴等に影響を受ける。この問題については別の機会に改めて取り上げたい)変動していると考えられるが、筆者は、「5%あればまずまずの水準」、「4%は低いが我慢できる」、「3%は低すぎる」というくらいに考えている。
 たとえばPER25倍の時に量的緩和の解除が起こって長期金利が2.5%になった状態を考えると、リスクプレミアムをほぼ現在並の4.5%程度確保するためには、名目GDP成長率を2%として、5%の益利回りが必要であり、適正PERは20倍に下落する。株価では、2割の下落要因である。
 量的緩和の解除が4月くらいに始まるのか、秋以降(総裁選後?)にずれ込むのか、或いは名目GDPないしインフレ目標で日銀が縛られて量的緩和の解除自体が難しくなるのか、判断の前提に景気や株価の問題も絡む複雑なパズルだが、量的緩和の解除時期を巡って、株価も大きな影響を受けることになるだろう。

 もっとも、投資家は(プロも含めて)、こうした金融政策を巡る駆け引きを効果的に予測することはできないだろうから、予測に血道を上げるよりは、予測が難しいことを前提にしてどうすればいいかを考える必要がある。
 具体的な方法として提案したいのは、一つには、長期金利の動きを見ることであり、もう一つには株価水準に関して具体的な判断基準を設けることだ。
 前者に関しては、「長期金利が2%を超えたら投資の前提を改めて全面的に見直す」ということでどうか。毎日のニュースで気にかけるべきは、日経平均の上下よりも、長期金利の動きだと申し上げておく。
 なお、日経平均は、主として、2000年4月の銘柄入れ替えによって前後の連続性が失われている(注:計算内容の51.4%が一気に入れ替わった。この前後に10%、価格で2千以上下ズレしたことと、新規採用のハイテク銘柄が冴えなかったことで、現在の日経平均は大きく出遅れている)。
 ちなみに1989年末のTOPIXは2881.37であり、昨年末の1649.76は約57.25%(端数切り捨て)に相当するが、1989年末の日経平均38950円にこの比率をかけると22298円(端数切り捨て)となる。旧来の日経平均のレベル感でいうと、現在の株価水準は、1万6千円台というよりも「2万2千円台まで戻った」と考えるくらいでちょうど良いのだ。実際に、大規模入れ替え以前の旧銘柄で(上場廃止銘柄は除外して計算する)日経平均を計算すると、やはり2万2、3千円の水準になるようだ。


■「バブル」を前提とした投資戦略

 筆者は、先ほどの適正株価の算式から、PER25倍(益利回りは4%)を超える株価はバブル的だと判断している。ここで、「バブル的」というのは、長期的に維持できないという意味だ。
 まず、日本政府がこれだけの財政赤字を抱えていて、長期金利のよりも名目GDP成長率の方が高い状態を長期間維持することは難しいだろう(注:ごく大雑把な理論では、長期金利はほぼ名目GDP成長率に収斂するとされる。財政状況が悪いのだから自然な状態では国債利回りはこれよりも高くて不思議はない)。そうすると、益利回りはリスクプレミアムを上回らねばならないから、益利回り4%、つまり株価はPER25倍で一杯一杯という見当になる。
 ごく大雑把にいえば、長期金利≒名目GDP成長率、といった現在のような状況では、PER20倍以下なら積極的に買い、25倍から上は買わない、33.3倍以上はもう売ってしまう、というくらいの行動基準を持つといいのではないだろうか。個々の投資銘柄の水準でこのルールに例外が生じることはあるが、平均株価が下落する時は、割安な株は割安ななりに下落することが多いから、個々の投資銘柄を選ぶルール以外に、こうした基準を、少なくとも参考にすることは悪くないと思う。
 年初でもあるので、個人的な相場観を言ってみると、現在の市場の雰囲気とPERで23倍からさらに上を伺う株価の動きは前述のように「バブル的」だと思っている。企業利益の拡大を確認しないままPERの拡大をこれ以上続けるようなプロセスには、結局無理があるように思う。しかし、バブルの形成初期には、資産価格の上昇自体が資産効果(株価や地価の上昇が消費の増加につながったり、金融機関のリスクテイク能力の改善を通じて信用拡大に回ったりする効果)を通じて、実物経済にポジティブな影響(同時にポジティブなサプライズでもある)をもたらす公算が大きく、量的緩和の解除からの長期金利上昇といったネガティブなショックを受けなければ、株価はさらに上昇し、実物経済も予想以上に好調だ、というようなおめでたい状態が起こる可能性が相当程度ある。
 これは、資産価格の上昇に関して、いわゆるポジティブ・フィードバックが働く状態であり、ジョージ・ソロスが言う「再帰的プロセス」(あまりいい用語とは思わないが)が機能している状態だ。こうしたプロセスを通じて意外かつ維持不可能な資産価格が形成されることがあり、その運動(要はバブルが膨らむことだ)を見極めることと、その結果将来生じる資産価格と資産の本質的価値との乖離が維持不能になって資産価格が崩落するプロセス(バブル崩壊だ)を見極める上で、ソロスの概念的な枠組みは役に立つ。
 量的緩和の解除が遅れるようなことになると、こうした典型的なバブルのコースに入る可能性があり、この場合、バブルがいつ弾けて大損するかは分からないが、投資家は株価の上昇と共に、大きなリスクを抱えることになる。もちろん、量的緩和の解除をはじめとしてネガティブなショックが生じる可能性が今後いつでもある。



以上





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最終更新日  2006年02月10日 02時38分45秒
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