2006年08月18日
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■決算期の有無は運用に影響するか



 「決算期を前にして、(ファンドマネジャーが)動きづらい」といった相場コメントを聞くことがあるが、実際問題としては、そうなるべき必然性は乏しい。何となく、そんなことではないか、と想像してみたくなる気持ちは分かるし、相場の動きが乏しいときには便利なコメントでもあるのだが、実は、的確とは言い難い。雑貨屋か何かが、年末に棚卸をしているような状況とは、事情が異なるのだ。

 もっとも、運用報酬が期末の株価に影響される、成功報酬で決まるようなヘッジファンドなどのファンドマネジャーや、短期間で交代することもある、日本の運用機関の中間管理職などが、期末の株価を気にしたり、いわゆる「ドレッシング買い」に手を染めたりすることは、全くないわけではない。そういえば、筆者がかつて勤めた会社の上司には、ライバル他社が大量に保有する銘柄を、期末の引け値に向かって売って、相手のパフォーマンスを下げようとした人物がいたこともあるが、さすがに、こんな行動は例外的だ。
 機関投資家のデメリットとして、決算期の存在を挙げる意見には、正直なところ疑問を持つ。

■顧客の存在は大いに影響する

 決算期の影響が大きくないのに対して、そもそもプロの投資家がプロたる所以である、顧客というものの存在は、運用内容に大いに影響すると思われる。
 プロの運用は、顧客の依頼に基づいて行われる以上、(1)顧客に約束した戦略で運用しなければならないし、(2)常に顧客への「言い訳」を用意して運用しなければならないし、(3)運用の途中で顧客の意見や希望が影響することもある。また、(4)顧客の資金追加や解約は運用そのものにも運用ビジネスの成否にも影響するし、(5)成功報酬など運用報酬への考慮を通じて運用内容は影響を受けるし、(6)顧客を介在してライバルの動きにも影響される。

(1)顧客との約束
 投資顧問の場合は、運用の契約を顧客と結ぶ際に、どのような内容の運用を行うか、運用スタイルやリスクの大きさまで事細かに取り決めることが一般的だ。また、年度単位や、場合によっては四半期単位で運用計画を提出し、顧客の承認を得て運用するので、ファンドマネジャーは、顧客の意向に大いに影響されることになる。

 問題は、「顧客が納得する運用方針」がどのような傾向性を持ちやすいか、ということだが、一言で言うと、「最近のトレンド」を拡大するようなバイアスを持つことが一般的だ。「最近」の長さが問題だが、過去一年から二年程度と考えて、おおむね当たりの場合が多いだろうか。たとえば、過去に割安株のパフォーマンスが良ければ、「割安株に重点を置いて運用します」という運用方針は、資料用のデータ集めも含めて、説明しやすい。運用する側も、運用を任せる側も、お互いに自信はないものなのだが、自信のない同士が意見の摺り合わせを行うと、どうしても、最近のデータによる見栄えがいいものが選ばれがちになるのだ。

 しかし、殊にヘッジファンドにおいて顕著だが、アクティブ運用は、「市場の価格形成の歪み」が修正される場合に、狙ったリターンが生まれる、というのが、そもそもの運用原理だ。たとえば、過去の2、3年、運用が非常に上手く行ってパフォーマンスが良かった、というような事態は、この「価格の歪み」が相当程度使い果たされたことを示唆する可能性が大きく、今後については、決して望ましいことではないかも知れない。しかし、選ぶ側も(たとえば年金基金の常務理事も)、自分の実質的な顧客(たとえば年金基金の母体企業の経営者)に対して、納得しやすい説明が必要なので、過去の運用実績に偏重した運用会社、あるいは運用方針の採用が行われやすい。

(2)顧客への言い訳準備の必要性


 そもそも、株式というものは、出資者の有限責任が一大特色なのだし、率直に言って、倒産の可能性がある銘柄への投資は、大いに儲かることが多い。多くのファンドマネジャーも、こうしたことを知らないわけではないのだが、運用会社の中間管理職がある種の「事なかれ主義」に染まっているケースが多く、現場のファンドマネジャーも、万一倒産銘柄を、倒産するその時まで保有していると、後が面倒なので、株価が下がった場合に(たとえば100円割れで)、機械的に投げ売りしたりすることが、しばしばある。

 ある意味では、ファンドマネジャーの覚悟や、運用者と顧客のコミュニケーションの問題なのだが、こうした考慮が運用に影響することはある。
 また、いざという時のための「言い訳」を用意するために、アナリストのレポートがある銘柄でないと買えない、などという、いささか情けないファンドマネジャーも存在する。

(3)顧客の意見や希望
 投資顧問の場合は、大体、四半期に1度程度、顧客に運用状況を説明する場合が多い。投資信託のファンドマネジャーも、かつては運用だけで良かったが、近年は、同じ資本系列の外の販売会社が増えてきたこともあり、「ご説明」に駆り出される機会が増えてきた。運用ビジネスは、突き詰めて考えれば考えるほど、マーケティング活動が重要なビジネスであり、近年、ますますマーケティング活動の比重が高まっている。

 こうした「ご説明」の際には、顧客から、明確な指示というほどではないが、「意見」や「希望」を言われるケースがある。顧客に限らず、相手が上司の場合でもそうなのだが、伝える側にも明確に責任がある「指示」ではなくて、「意見」や「希望」は、かなり邪魔な場合が多いし、扱いに困ることが少なくない。「ご意見」を採用しないでいて、結果的に失敗した場合、顧客の心証が、かなり悪くなることを覚悟せざるを得ない。

 もちろん素人の意見ということもあり(玄人の意見も似たようなものなのだが)、顧客の意見には、直近のマーケットの動きに影響された、トレンド・フォロー的なバイアスのあるものが多い。






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最終更新日  2006年08月18日 13時28分14秒
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